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適用項目 SUSE Linux Enterprise Server 15

5 IBM Zでのインストール

この章では、IBM Z上でSUSE® Linux Enterprise Serverのインストールを準備する際の手順について説明します。LPARおよびz/VMの側でインストールを準備する際に必要な情報をすべて示します。

5.1 システム要件

このセクションでは、SUSE Linux Enterprise ServerがサポートするIBM Z向けハードウェアのリストを示します。次に、ユーザのIBM Zシステムで使用されるMicroCode (MCL)のレベルについて説明します。これは、インストールを行ううえで非常に重要なことです。このセクションの末尾では、インストールする追加ソフトウェアとインストールに使用する追加ソフトウェアについて説明します。

5.1.1 ハードウェア

SUSE Linux Enterprise Serverは、以下の各プラットフォームで正常に動作します。

  • IBM zEnterprise System z196(2817)

  • IBM zEnterprise System z114(2818)

  • IBM zEnterprise EC12(zEC12)(2827)

  • IBM zEnterprise BC12(zBC12)(2828)

  • IBM z Systems z13 (2964)

  • IBM z Systems z13s(2965)

  • IBM LinuxONE Emperor(2964)

  • IBM LinuxONE Rockhopper(2965)

5.1.1.1 メモリ要件

インストール方法が異なれば、インストール時のメモリ要件も異なります。インストールの完了後に、システム管理者はメモリを必要なサイズに減らすことができます。SUSEによる推奨要件は次のとおりです。

1GB

z/VMの下でインストールする場合

1GB

LPARの下でインストールする場合

1GB

KVM下でインストールする場合

注記
注記: リモートインストールソースのメモリ要件

NFS、FTP、またはSMBインストールソースからインストールする場合、あるいはVNCが使用されるたびに、最小512MBのメモリが必要です。この要件を満たさないと、インストールが失敗しがちです。また、メモリ要件は、z/VMゲストに可視的なデバイス数や、LPARイメージに影響を受けることに留意してください。アクセス可能なデバイスが数百あるインストールの場合は、さらに多くのメモリを要することがあります。

5.1.1.2 必要なディスク容量

ディスク要件は、インストール処理に大きく依存します。一般的に、システムが適切に動作するために、インストールソフトウェア自身が必要とする以上のディスク領域が必要です。選択肢ごとの最小要件は、次のとおりです。

800MB

最小インストール

1.4 GB

最小インストール+基本システム

2.6 GB

デフォルトのインストール

3.6 GB+

推奨(グラフィックデスクトップ、開発パッケージ、javaの場合)

5.1.1.3 ネットワーク接続

SUSE Linux Enterprise Serverシステムと通信するには、ネットワーク接続が必要です。次のような1つ以上の接続またはネットワークカードを使用できます。

  • OSA Express Ethernet (Fast EthernetおよびGigabit Ethernetを含む)

  • HiperSocketまたはゲストLAN

  • 10GBE、VSWITCH

  • RoCE (RDMA over Converged Ethernet)

次のインタフェースも引き続き含まれますが、サポートされなくなりました。

  • CTC (または仮想CTC)

  • ESCON

  • IUCV用のIPネットワークインタフェース

KVM下でインストールする場合は、VMゲストからネットワークへの透過的なアクセスを可能にするために、次の要件が満たされていることを確認してください。

  • 仮想ネットワークインタフェースがホストネットワークインタフェースに接続されている。

  • ホストネットワークインタフェースが、仮想サーバが参加するネットワークに接続されている。

  • 2つの個別のOSAネットワークポートをグループ化して、結合されたネットワークインタフェースを構成することで、冗長なネットワーク接続を提供するようにホストが設定されている場合、この結合されたネットワークインタフェースの識別子はbond0になります。または、結合されたインタフェースが複数存在する場合は、bond1bond2などになります。

  • ホストのネットワーク接続を冗長に設定していない場合は、単一ネットワークインタフェースの識別子を使用する必要があります。識別子は、enccw0.0.NNNNという形式になります。NNNNは、使用するネットワークインタフェースのデバイス番号です。

5.1.2 MicroCodeレベル、APAR、およびFix

現在のリリースのSUSE Linux Enterprise Serverに対する制限事項と要件に関するドキュメントについては、http://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/documentation_suse.htmlのIBM developerWorksを参照してください。利用可能な最高のサービスレベルを常に使用することをお勧めします。最小要件については、IBMサポートにお問い合わせください。

z/VMの次のバージョンがサポートされています。

  • z/VM 5.4

  • z/VM 6.2

  • z/VM 6.3qclibの出力を向上させるため、APAR VM65419以降をインストールすることを強くお勧めします。

新しいMicroCodeレベルをインストールする前に、VM APARの有効化が必要になる可能性があるため、インストールの順序については、IBMサポートにお問い合わせください。

5.1.3 ソフトウェア

LinuxベースではないNFSまたはFTPを介してSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする場合は、NFSサーバまたはFTPサーバのソフトウェアで問題が発生する可能性があります。Windows*の標準FTPサーバではエラーが発生する可能性があるので、一般にこれらのマシンへのインストールはSMB経由で実行することをお勧めします。

SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムに接続するには、以下のいずれかの方法を使用する必要があります(SSHまたはVNCによる方法をお勧めします)。

ターミナルエミュレーション機能を持つSSH (xterm互換)

SSHは標準のUnixツールのため、どのUnixおよびLinuxシステムに含まれています。Windowsの場合は、Puttyという名前のSSHクライアントがあります。無償で使用でき、http://www.chiark.greenend.org.uk/~sgtatham/putty/から利用できます。

VNCクライアント

tightvncパッケージの一部として、Linux向けにvncviewerというVNCクライアントがSUSE Linux Enterprise Serverに付属しています。Windows向けにもtightvncを提供しています。http://www.tightvnc.com/からダウンロードしてください。

Xサーバ

目的に合ったLinuxまたはUnixワークステーション上でのXサーバ実装を探します。WindowsおよびmacOS*用の商用X Window System環境は、数多くあります。その一部は、無償の試用バージョンとしてダウンロードできます。MochaSoft提供のMocha X Serverのトライアルバージョンをhttp://www.mochasoft.dk/freeware/x11.htmから取得できます。

ヒント
ヒント: 追加情報

IBM ZでSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする前に、SUSE Linux Enterprise ServerのDVD 1のルートディレクトリにあるREADMEを参照してください。このファイルは、このドキュメントを補完するものです。

5.2 一般情報

このセクションでは、さまざまなインストールの種類および初回インストールでのIPL処理について説明します。SUSE Linux Enterprise Server上のIBM Zの詳細な技術情報については、http://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/documentation_suse.htmlを参照してください。

5.2.1 インストールタイプ

このセクションでは、IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise Serverで実行可能なさまざまな種類のインストールの概要について説明します。SUSE Linux Enterprise Serverは、z/VM内のゲストまたはKVM内のゲストとして、LPARにインストールできます。

インストールのモード(LPARまたはz/VM)に応じて、インストールプロセスの開始およびインストールしたシステムに対するIPL処理の方法としていくつかが考えられます。

5.2.1.1 LPAR

IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise Serverを論理パーティション(LPAR)にインストールする場合は、そのインスタンスにメモリとプロセッサを割り当てます。高負荷の運用マシンには、LPARへのインストールをお勧めします。LPARでの実行では、高水準のセキュリティ標準を実現することもできます。外部インタフェースまたはHiperSocketを通じて、LPAR間のネットワーク接続が可能です。KVMによる仮想化に対応したインストールを検討している場合は、LPARへのインストールを強くお勧めします。

5.2.1.2 z/VM

IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise Serverをz/VMで実行する場合、SUSE Linux Enterprise Serverは、z/VMでゲストシステムとして機能します。このモードの利点は、z/VMからSUSE Linux Enterprise Serverを全面的に制御できることにあります。カーネルの開発やカーネルベースのデバッグには、非常に役立ちます。Linuxゲストとの間で、ハードウェアを簡単に追加したり取り外したりできます。追加のSUSE Linux Enterprise Serverゲストを容易に作成でき、数百のLinuxインスタンスを同時に実行できます。

5.2.1.3 KVMゲスト

IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise ServerをKVMゲストとしてインストールするには、KVMホストサーバインスタンスをLPARにインストールする必要があります。ゲストインストールの詳細については、手順5.3「KVMゲストのインストールの概要」を参照してください。

5.2.2 IPLオプション

このセクションでは、初めてのインストールの際に行うIPL処理に必要な情報を提供します。インストールのタイプに応じて、異なるオプションを使用する必要があります。検討対象として、VMリーダ、CD-ROMまたはサーバからのロード、およびSCSI接続されたDVD-ROMからのロードの各オプションがあります。ネットワーク経由で行うソフトウェアパッケージのインストールでは、IPLメディアは不要です。

5.2.2.1 VMリーダ

VMリーダからIPLを実行するには、最初に必要なファイルをリーダに転送します。管理しやすいように、IPLに必要なファイルとスクリプトを含むミニディスクを所有するユーザlinuxmntの作成をお勧めします。このミニディスクには、Linuxゲストが読み取り専用アクセスします。詳細については、5.3.4.2.1項 「z/VMリーダからのIPL」を参照してください。

5.2.2.2 リムーバブルメディアまたはサーバからのロード

LPARにIPLする場合は、カーネルイメージを、SEまたはHMCのCD/DVD-ROMデバイスから直接ロードするか、またはFTPを介してアクセスできる任意のリモートシステムからロードすることができます。この機能はHMCから実行できます。インストールプロセスでは、インストールデータのファイルシステム内での場所とデータのコピー先にするメモリ内の場所のマッピングを含むファイルを必要とします。

SUSE Linux Enterprise Serverには、このようなファイルが2つあります。どちらのファイルもDVD 1のファイルシステムのルートディレクトリにあります。

  • suse.ins。インストールを始める前に、Linuxrcにネットワークアクセスを設定するために必要です。

  • susehmc.ins。ネットワークアクセスなしでインストールできます。

HMCの左側のナビゲーションペインでシステム管理とサーバ › システムの順に展開し、扱うメインフレームシステムを選択します。SUSE Linux Enterprise ServerをブートするLPARをLPARの一覧から選択し、Load from Removable Media or Server (リムーバブルメディアまたはサーバからロード)を選択します。

次に、ハードウェア管理コンソールCD-ROM/DVDか、またはFTPソースを選択します。後のオプションを選択した場合は、サーバのアドレスまたは名前と、自分の資格情報を入力します。適切な.insファイルがサーバのルートディレクトリにない場合は、このファイルへのパスを入力します。ロードするソフトウェアの選択メニューに移動し、適切な.insエントリを選択します。OKをクリックしてインストールを開始します。

5.2.2.3 SCSI接続のDVDからのロード

SCSI DVDからIPLを実行するには、DVDドライブに接続されたFCPアダプタにアクセスする必要があります。SCSIドライブのWWPNおよびLUNの値が必要です。詳細については、5.3.4.1.2項 「FCP接続SCSI DVDからのIPL」を参照してください。

5.2.2.4 zPXEによるネットワークからのロード

zPXEによるネットワークからのIPLingでは、カーネル、RAMディスク、parmfileを提供するCobblerサーバが必要です。ZPXE EXECスクリプトを実行することにより開始できます。詳細については、5.3.1.3項 「zPXE用のCobblerサーバの使用」を参照してください。zPXEは、z/VM上で使用できます。

5.3 インストールの準備

インストールに使用するデータをアクセス可能にする方法、さまざまな手段によるSUSE Linux Enterprise Serverのインストール方法、およびSUSE Linux Enterprise ServerのインストールシステムのIPLを準備して使用する方法について説明します。また、ネットワーク設定とネットワークインストールについても説明します。

5.3.1 インストールデータを利用できるようにする

このセクションでは、SUSE Linux Enterprise ServerのIBM Z向けインストールデータをインストール時にアクセス可能にする方法について詳しく説明します。コンピュータとシステム環境に応じて、NFSまたはFTPによるインストールを選択します。Microsoft Windowsワークステーションを実行している環境では、Windowsネットワーク(SMBプロトコルを含めて)を使用して、IBM ZシステムにSUSE Linux Enterprise Serverをインストールすることができます。

ヒント
ヒント: DVDからのIPL

DVDからIPL処理して、そのDVDをインストールメディアとして使用することができます。これは、ネットワークを介してインストールメディアを提供するインストールサーバを設定することに制約がある場合に、非常に便利です。前提条件はFCP接続SCSI DVDドライブです。

注記
注記: ハードディスクからのインストールに非対応

DVDのコンテンツをDASDのパーティションに格納することでハードディスクからインストールすることは不可能です。

5.3.1.1 LinuxワークステーションまたはSUSE Linux Enterprise ServerのDVDの使用

コンピュータ環境でLinuxワークステーションを実行している場合は、そのワークステーションを使用して、NFS経由またはFTP経由でインストールデータをIBM Zインストールプロセスで使用できるようにします。SUSE Linux Enterprise ServerでLinuxワークステーションを実行している場合は、14.1項 「YaSTを使ったインストールサーバのセットアップ」の説明にあるようにYaSTのインストールサーバモジュールを使用して、インストールサーバ(NFSまたはFTP)を設定できます。

5.3.1.1.1 NFS経由

NFS(ネットワークファイルシステム)を使用して、インストールメディアを使用できるようにします。

重要
重要: マウントされたデバイスのNFSを使用するエクスポート

ファイルシステムのroot(/)をエクスポートしても、DVDなどのマウントされたデバイスのエクスポートが暗示指定されるわけではありません。次のように、/etc/exportsでマウントポイントを明示的に指定します。

/media/dvd  *(ro)

このファイルを変更した後、sudo systemctl restart nfsserverコマンドを使用してNFSサーバを再起動します。

5.3.1.1.2 FTP経由

LinuxシステムでのFTPサーバの設定には、 pure-ftpd または vsftpdなどのサーバソフトウェアのインストールと設定が含まれます。SUSE Linux Enterprise Serverを使用している場合は、インストール手順について第35章 「YaSTを使用したFTPサーバの設定を参照してください。匿名ログインを使用したインストールデータのダウンロードはサポートされていないため、ユーザ認証がサポートされるようにFTPサーバを設定する必要があります。

5.3.1.1.3 DVDに収録されたSUSE Linux Enterprise Server

IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise ServerのDVD1には、Intelベースのワークステーション向けのブート可能なLinuxイメージおよびIBM Z向けのイメージが収録されています。

Intelベースのワークステーションの場合はこのDVDからブートし、使用する言語とキーボード配列に関する質問に答えて、レスキューシステムを開始するを選択します。この操作には64MB以上のRAMが必要です。レスキューシステム全体がワークステーションのRAMに常駐するため、ディスク領域は必要ありません。この方法では、ワークステーションのネットワークキングを手動で設定する必要があるため、Linuxとネットワーキングに関する経験が要求されます。

IBM Zの場合は、5.3.4.1.2項 「FCP接続SCSI DVDからのIPL」で説明しているとおり、このDVDからLPAR/VMゲストをIPL処理します。ネットワークパラメータを入力したら、インストールシステムはDVDをインストールデータのソースとして処理します。IBM Zでは、X11対応の端末を直接接続できないので、VNCによるインストールまたはSSHによるインストールを選択します。SSHはまた、ssh -XでX接続をSSHにトンネルさせることで、グラフィカルインストールを提供します。

5.3.1.2 Microsoft Windowsワークステーションの使用

ネットワーク内でMicrosoft Windowsワークステーションが使用可能な場合は、そのコンピュータを使用して、インストールメディアを使用できるようにします。その最も簡単な方法は、Windowsオペレーティングシステムにすでに含まれているSMBプロトコルを使用することです。必ずSMB over TCP/IPを有効にしてください。この機能によって、SMBパッケージをTCP/IPパッケージにカプセル化できるようになります。詳細については、Windowsオンラインヘルプ、またはネットワーキングを対象にしたその他のWindows関連マニュアルを参照してください。もう1つのオプションは、FTPを使用することです。この場合は、Windows用のサードパーティソフトウェアも必要です。

5.3.1.2.1 SMBを使用する

SMBを使用してインストールメディアを使用可能にするには、WindowsワークステーションのDVDドライブにSUSE Linux Enterprise ServerのDVD1を挿入します。次に、DVD-ROMドライブの文字を使用して新しい共有を作成し、ネットワーク内のどのユーザでも使用できるようにします。

YaSTでのインストールパスは次のとおりです。

smb://DOMAIN;USER:PW@SERVERNAME/SHAREPATH

各プレースホルダは次のような意味です。

DOMAIN

ワークグループまたはActive Directoryのドメイン(オプション)。

USER , PW

このサーバとその共有にアクセスできるユーザのオプションのユーザ名およびパスワード。

SERVERNAME

共有をホストするサーバの名前。

SHAREPATH

共有へのパス。

5.3.1.2.2 NFSを使用する

Windowsワークステーション用にNFSサーバサービスを有効にするサードパーティ製品のマニュアルを参照してください。SUSE Linux Enterprise ServerのDVDが含まれているDVD-ROMドライブを、使用可能なNFSパスで指定する必要があります。

5.3.1.2.3 FTPを使用する

Windowsワークステーション用にFTPサーバサービスを有効にするサードパーティ製品のマニュアルを参照してください。SUSE Linux Enterprise ServerのDVDが含まれているDVD-ROMドライブを、使用可能なFTPパスで指定する必要があります。

Microsoft Windowsの一部のリリースにバンドルされているFTPサーバは、FTPコマンドのサブセットのみを実装するので、インストールデータの提供には適しません。この制約がWindowsワークステーションにも当てはまる場合は、必要な機能を提供するサードパーティのFTPサーバを使用します。

5.3.1.2.4 FCP接続SCSI DVDドライブの使用

5.2.2.3項 「SCSI接続のDVDからのロード」の説明に従ってSCSI DVDからIPLすると、インストールシステムによってDVDがインストールメディアとして使用されます。この場合、FTP、NFS、またはSMBサーバにはインストールメディアは必要ありません。ただし、VNCまたはXによるグラフィカルインストールを実行するには、インストールの際にネットワークを設定する必要があるので、SUSE Linux Enterprise Serverのネットワーク設定データは必要です。

5.3.1.3 zPXE用のCobblerサーバの使用

ネットワークからのIPLingでは、カーネル、initrd、インストールデータを提供するためのCobblerサーバが必要です。Cobblerサーバを準備するには、次の4つのステップを実行する必要があります。

  • インストールデータのインポート

  • 配布の追加

  • プロファイルの追加

  • システムの追加

5.3.1.3.1 インストールデータのインポート

メディアをインポートするには、DVDまたはネットワークソースにあるインストールソースをCobblerサーバ上で使用できるようにする必要があります。次のコマンドを実行してデータをインポートします。

tux > sudo cobbler import --path=PATH1 --name=IDENTIFIER2 --arch=s390x

1

インストールデータのマウントポイント。

2

インポートした製品を識別する文字列(例: sles12_s390x)。この文字列は、インストールデータのコピー先のサブディレクトリとして使用されます。SUSE Linux Enterprise上で稼動しているCobblerサーバの場合は、この文字列として/srv/www/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIERを使用します。Cobblerが別のオペレーティングシステムで実行されている場合、これは別のパスになる可能性があります。

5.3.1.3.2 配布の追加

配布を追加することで、IPLに必要なカーネルとinitrdをzPXEを介して提供するよう、Cobblerに指示します。Cobblerサーバ上で次のコマンドを実行して、IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise Serverを追加します。

tux > sudo cobbler distro add --arch=s390 --breed=suse --name="IDENTIFIER"1 \
  --os-version=sles122 \
  --initrd=/srv/www/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIER/boot/s390x/initrd3 \
  --kernel=/srv/www/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIER/boot/s390x/linux4 \
  --kopts="install=http://cobbler.example.com/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIER"5

1

配布のカスタム識別子(SLES 15 IBM Zなど)。一意にする必要があります。

2

オペレーティングシステムの識別子。sles12を使用します。

3

initrdへのパス。パスの最初の部分(/srv/www/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIER/)は、Cobblerによってデータがインポートされた場所と、インストールデータのインポート時に選択したサブディレクトリ名によって異なります。

4

カーネルへのパス。パスの最初の部分(/srv/www/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIER/)は、Cobblerによってデータがインポートされた場所と、インストールデータのインポート時に選択したサブディレクトリ名によって異なります。

5

Cobblerサーバ上のインストールディレクトリへのURL。

5.3.1.3.3 プロファイルの調整

配布パッケージを追加するとき(5.3.1.3.2項 「配布の追加」を参照)、対応するIDENTIFIERを持つプロファイルが自動的に生成されます。次のコマンドを使用して、必要な調整を行います。

tux > sudo cobbler distro edit \
--name=IDENTIFIER1 --os-version=sles102 --ksmeta=""3
--kopts="install=http://cobbler.example.com/cobbler/ks_mirror/IDENTIFIER"4

1

プロファイルの識別子。配布パッケージを追加したときに指定した同じ文字列を使用します。

2

オペレーティングシステムのバージョン. プロファイルの適用先の配布。ここのインポートステップでは、--name=IDENTIFIERで指定した文字列を使用する必要があります。

3

キックスタートファイルのテンプレートに必要なオプション。SUSEでは使用しないため、例で指定したように空の値を設定します。

4

カーネルパラメータのスペース区切りのリスト。例に示すように、少なくともinstallパラメータが含まれている必要があります。

5.3.1.3.4 システムの追加

最後に必要なステップは、Cobblerサーバへのシステムの追加です。zPXEを介して起動するIBM Zゲストごとにシステムを追加する必要があります。ゲストは、z/VMのユーザIDによって識別されます(次の例では、linux01というIDが想定されています)。このIDの文字列は小文字でなければならないことに注意してください。システムを追加するには、次のコマンドを実行します。

tux > sudo cobbler system add --name=linux01 --hostname=linux01.example.com \
--profile=IDENTIFIER --interface=qdio \
--ip-address=192.168.2.103 --subnet=192.168.2.255 --netmask=255.255.255.0 \
--name-servers=192.168.1.116 --name-servers-search=example.com \
--gateway=192.168.2.1 --kopts="KERNEL_OPTIONS"

--koptsオプションを使用して、通常はparmfile内で指定するカーネルとインストールパラメータを指定できます。パラメータは、PARAMETER1=VALUE1 PARAMETER2=VALUE2という形式のスペース区切りリストで入力します。欠落しているパラメータがあれば、インストーラにプロンプトが表示されます。完全な自動インストールを実現するには、ネットワークやDASDに対するすべてのパラメータを指定し、AutoYaSTファイルを用意する必要があります。次に、上記と同じネットワークパラメータを使用してOSAインタフェースを装備したゲストの例を示します。

--kopts=" \
AutoYaST=http://192.168.0.5/autoinst.xml \
Hostname=linux01.example.com \
Domain=example.com \
HostIP=192.168.2.103 \
Gateway=192.168.2.1 \
Nameserver=192.168.1.116 \
Searchdns=example.com \
InstNetDev=osa; \
Netmask=255.255.255.0 \
Broadcast=192.168.2.255 \
OsaInterface=qdio \
Layer2=0 \
PortNo=0 \
ReadChannel=0.0.0700 \
WriteChannel=0.0.0701 \
DataChannel=0.0.0702 \
DASD=600"

5.3.1.4 DVDまたはHMCのフラッシュディスクからのインストール

IBM ZサーバにSUSE Linux Enterprise Serverをインストールするには、通常、ネットワーク用のインストールソースが必要になります。ただし、一部の環境では、この要件を満たせないことがあります。SUSE Linux Enterprise Serverでは、LPAR上でのインストール用のインストールソースとして、既存のDVDやハードウェア管理コンソール(HMC)のフラッシュディスクを使用できます。

DVDのメディアまたはHMCのフラッシュディスクからインストールするには、次の手順に従います。

  • install=hmc:/

    parmfile(5.4項 「parmfile: システム設定の自動化」を参照)またはカーネルオプションに追加します。

  • または、手動モードで、linuxrcの次の項目を選択します。

    [Start Installation (インストールの開始)]

    [インストール]

    [Hardware Management Console (ハードウェア管理コンソール)]

    インストールメディアは、HMCに挿入する必要があります。

重要
重要: ネットワークの設定

インストールを開始する前に、linuxrcで必ずネットワークを設定してください。後でブートパラメータを渡す手段がないにもかかわらず、ネットワークアクセスが必要になる可能性が高いからです。linuxrcで、[Start Installation (インストールの開始)]をクリックし、[ネットワーク設定]を選択します。

重要
重要: Linuxシステムを最初にブートする必要性

Linuxシステムがブートするのを待ってから、DVDまたはHMCのフラッシュディスクのメディアへのアクセスを許可するようにしてください。IPL処理を行うと、HMCとLPARとの間の接続に支障が生じる可能性があります。すでに説明した方法を最初に試行して失敗した場合は、アクセス権を付与してHMCオプションで再試行できます。

注記
注記: Installation Repository

アクセス権の割り当ては一時的なものであるため、DVDやフラッシュディスクファイルをインストール用のリポジトリとして使用し続けることはできません。インストールリポジトリが必要な場合は、オンラインリポジトリを登録して使用してください。

5.3.2 インストールタイプ

このセクションでは、それぞれのインストールモードでSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする際に必要な手順および適切な情報の入手方法について説明します。これまでに説明した準備手順を完了したら、目的のインストールモードでのインストールの概要を確認し、SUSE Linux Enterprise Serverをシステムにインストールします。

5.3.1項 「インストールデータを利用できるようにする」で説明したように、Linux on IBM Zのインストールモードには、次の3種類があります。

  • LPARによるインストール

  • z/VMのインストール

  • KVMゲストのインストール

手順 5.1: LPARインストールの概要
  1. インストールに必要なデバイスを準備します。5.3.3.1項 「LPARインストールのIPLの準備」を参照してください。

  2. インストールシステムをIPL処理します。5.3.4.1項 「LPARインストールでのIPL処理」を参照してください。

  3. ネットワークを設定します。5.3.5項 「ネットワーク設定」を参照してください。

  4. SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムに接続します。詳細については、5.3.6項 「SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムへの接続」を参照してください。

  5. YaSTを使用してインストールを開始し、インストールしたシステムをIPL処理します。詳細については、第8章 「インストール手順を参照してください。

手順 5.2: z/VMインストールの概要
  1. インストールに必要なデバイスを準備します。5.3.3.2項 「z/VMへのLinuxゲストの追加」を参照してください。

  2. インストールシステムをIPL処理します。5.3.4.2項 「z/VMインストールでのIPL処理」を参照してください。

  3. ネットワークを設定します。5.3.5項 「ネットワーク設定」を参照してください。

  4. SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムに接続します。詳細については、5.3.6項 「SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムへの接続」を参照してください。

  5. YaSTを使用してインストールを開始し、インストールしたシステムをIPL処理します。詳細については、第8章 「インストール手順を参照してください。

手順 5.3: KVMゲストのインストールの概要
  1. 仮想ディスクイメージを作成し、ドメインXMLファイルを作成します。詳細については、5.3.3.3項 「KVMゲストインストールのIPLの準備」を参照してください。

  2. インストールターゲットを準備し、VMゲストのIPL処理を実行します。詳細については、5.3.4.3項 「KVMゲストインストールでのIPL処理」を参照してください。

  3. 5.3.5.3項 「ネットワークの設定とインストールソースの選択」

  4. SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムに接続します。詳細については、5.3.6項 「SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムへの接続」を参照してください。

  5. YaSTを使用してインストールを開始し、インストールしたシステムをIPL処理します。詳細については、第8章 「インストール手順を参照してください。

5.3.3 SUSE Linux Enterprise ServerのインストールシステムのIPLの準備

5.3.3.1 LPARインストールのIPLの準備

適切な有効化プロファイルとIOCDSを使用して、ESA/S390モードまたはLinux専用モードで起動するようにIBM Zシステムを設定します。この方法の詳細については、IBMのマニュアルを参照してください。5.3.4.1項 「LPARインストールでのIPL処理」に従って手順を進めます。

5.3.3.2 z/VMへのLinuxゲストの追加

最初の手順として、z/VM環境のLinuxゲストによって使用されるシステム内の1つ以上のDASDを接続してフォーマットします。次に、z/VMでの新しいユーザを作成します。この例は、パスワードLINPWDを使用するユーザLINUX1のディレクトリ、1GBのメモリ(2GBまで拡張可能)、32MBの拡張RAM (XSTORE)、複数のミニディスク(MDISK)、2つのCPU、およびOSA QDIOデバイスを示しています。

ヒント
ヒント: z/VMゲストへのメモリの割り当て

メモリをz/VMゲストに割り当てるときは、メモリサイズが、優先的に選択するインストールタイプのニーズに適していることを確認します。詳細については、5.1.1.1項 「メモリ要件」を参照してください。メモリサイズを1GBに設定するには、CP DEFINE STORAGE 1Gコマンドを使用します。インストールが完了したら、メモリサイズを必要な値に戻します。

例 5.1: z/VMディレクトリの設定
USER LINUX1 LINPWD 1024M 2048M G
*____________________________________________
* LINUX1
*____________________________________________
* This VM Linux guest has two CPUs defined.

CPU 01 CPUID 111111
CPU 02 CPUID 111222
IPL CMS PARM AUTOCR
IUCV ANY
IUCV ALLOW
MACH ESA 10
OPTION MAINTCCW RMCHINFO
SHARE RELATIVE 2000
CONSOLE 01C0 3270 A
SPOOL 000C 2540 READER *
SPOOL 000D 2540 PUNCH A
SPOOL 000E 3203 A
* OSA QDIO DEVICE DEFINITIONS
DEDICATE 9A0 9A0
DEDICATE 9A1 9A1
DEDICATE 9A2 9A2
*
LINK MAINT 0190 0190 RR
LINK MAINT 019E 019E RR
LINK MAINT 019D 019D RR
* MINIDISK DEFINITIONS
MDISK 201 3390 0001 0050 DASD40 MR ONE4ME TWO4ME THR4ME
MDISK 150 3390 0052 0200 DASD40 MR ONE4ME TWO4ME THR4ME
MDISK 151 3390 0253 2800 DASD40 MR ONE4ME TWO4ME THR4ME

この例では、ミニディスク201を、ゲストのホームディスクとして使用します。200のシリンダを持つミニディスク150は、Linux swapデバイスです。また、2800のシリンダを持つディスク151は、Linuxインストールデータを保持するメディアです。

ここで、DIRM FOR LINUX1 ADDを使用して、(MAINTユーザとして)ゲストをユーザディレクトリに追加します。ゲストの名前(LINUX1)を入力して、F5キーを押します。次のように、ユーザの環境を設定します。

DIRM DIRECT
DIRM USER WITHPASS

最後のコマンドは、リーダファイル番号を返します。次に示すように、この番号は、次のコマンドを実行するのに必要です。

RECEIVE <number> USER DIRECT A (REPL)

ユーザ LINUX1 として、ゲスト上でログインできるようになります。

dirmaintオプションが使用できない場合は、IBMのドキュメントを参照してこのユーザを設定してください。

5.3.4.2項 「z/VMインストールでのIPL処理」に従って手順を進めます。

5.3.3.3 KVMゲストインストールのIPLの準備

KVMゲストインストールでは、仮想マシンを定義するドメインXMLファイルと、インストール用の最低1つの仮想ディスクイメージを用意しておく必要があります。

5.3.3.3.1 仮想ディスクイメージの作成

デフォルトでは、libvirtはVMホストサーバ上の/var/lib/libvirt/images/でディスクイメージを検索します。イメージは、ファイルシステム上の他の任意の場所に保存することもできますが、管理を容易にするため、1つの場所にすべてのイメージを保存することをお勧めします。次の例では、/var/lib/libvirt/images/に10GBのqcow2イメージを作成します。詳細については、Section 30.2, “Managing Disk Images with qemu-imgを参照してください。

  1. KVMホストサーバにログインします。

  2. 次のコマンドを実行してイメージを作成します。

    tux > sudo qemu-img create -f qcow2 /var/lib/libvirt/images/s12lin_qcow2.img 10G
5.3.3.3.2 ドメインXMLファイルの作成

ドメインXMLファイルは、VMゲストの定義に使用します。ドメインXMLファイルを作成するには、エディタで空白ファイルs12-1.xmlを開き、次の例のようなファイルを作成します。

例 5.2: サンプルのドメインXMLファイル

次の例では、単一のCPU、1GBのRAM、および前のセクション(5.3.3.3.1項 「仮想ディスクイメージの作成」)で作成した仮想ディスクイメージを持ったVMゲストを作成します。仮想サーバが接続されているホストネットワークインタフェースは、bond0であると想定しています。使用するネットワークのセットアップと一致するようにソースデバイス要素を変更します。

<domain type="kvm">
 <name>s12-1</name>
 <description>Guest-System SUSE Sles12</description>
 <memory>1048576</memory>
 <vcpu>1</vcpu>
 <os>
  <type arch="s390x" machine="s390-ccw-virtio">hvm</type>
  <!-- Boot kernel - remove 3 lines after successfull installation -->
  <kernel>/var/lib/libvirt/images/s12-kernel.boot</kernel>
  <initrd>/var/lib/libvirt/images/s12-initrd.boot</initrd>
  <cmdline>linuxrcstderr=/dev/console</cmdline>
 </os>
 <iothreads>1</iothreads>
 <on_poweroff>destroy</on_poweroff>
 <on_reboot>restart</on_reboot>
 <on_crash>preserve</on_crash>
 <devices>
  <emulator>/usr/bin/qemu-system-s390x</emulator>
  <disk type="file" device="disk">
   <driver name="qemu" type="qcow2" cache="none" iothread="1" io="native"/>
   <source file="/var/lib/libvirt/images/s12lin_qcow2.img"/>
   <target dev="vda" bus="virtio"/>
  </disk>
  <interface type="direct">
   <source dev="bond0" mode="bridge"/>
   <model type="virtio"/>
  </interface>
  <console type="pty">
   <target type="sclp"/>
  </console>
 </devices>
</domain>

5.3.4 SUSE Linux Enterprise ServerのインストールシステムのIPL処理

5.3.4.1 LPARインストールでのIPL処理

LPARに対してSUSE Linux Enterprise ServerをIPL処理するにはさまざまな方法があります。推奨されているのは、SEまたはHMCのLoad from CD-ROM or server機能を使用する方法です。

5.3.4.1.1 DVD-ROMからのIPL

インストールするLPARをマークして、Load from CD-ROM or serverを選択します。ファイルの場所を指定するフィールドを空白のままにするか、最初のCD ROMのルートディレクトリへのパスを入力して、[続行]を選択します。表示されるオプションのリストで、デフォルトの選択を指定します。ここで、Operating system messagesによって、カーネルブートメッセージが表示されます。

5.3.4.1.2 FCP接続SCSI DVDからのIPL

SCSILoad typeとして選択し、LOAD手順を使用して、SCSIからのIPLを実行できます。SCSIブリッジまたはSCSIストレージで指定されているWWPN (Worldwide port name)とLUN (Logical unit number)を入力します。これは16桁の数字ですが、末尾のゼロを省略しないようにします。ブートプログラムセレクタは2にする必要があります。FCPアダプタをLoad addressとして使用し、IPLを実行します。

5.3.4.2 z/VMインストールでのIPL処理

このセクションでは、z/VMシステムにIBM Z対応のSUSE Linux Enterprise ServerをインストールするようにインストールシステムをIPL処理する方法について説明します。

5.3.4.2.1 z/VMリーダからのIPL

FTPを介してインストールシステムを転送するには、新規に定義されたz/VMゲスト内では、有効なTCP/IP接続とFTPクライアントプログラムが必要です。z/VM用のTCP/IPの設定は、このマニュアルの範囲を超えています。適切なIBMマニュアルを参照してください。

z/VM Linuxゲストとしてログインし、IPLを実行します。IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise ServerのDVD  1にある/boot/s390xディレクトリの内容を、ネットワークのFTP経由で使用できるようにします。このディレクトリから、linuxinitrdparmfile、およびsles12.execの各ファイルを取得します。80文字の固定ブロックサイズでファイルを転送します。サイズを指定するには、FTPコマンド locsite fix 80 を使用します。linux (Linuxカーネル)とinitrd (インストールイメージ)はバイナリファイルとしてコピーする必要があるので、バイナリ転送モードを使用します。parmfilesles12.execはASCIIモードで転送する必要があります。

この例は、必要な手順を示しています。この例では、IPアドレス192.168.0.3を指定して、FTPサーバから、必要なファイルにアクセスできます。ログインはlininstです。実際のネットワークでは異なる場合があります。

例 5.3: FTP経由のバイナリ転送
FTP 192.168.0.3
VM TCP/IP FTP Level 530
Connecting to 192.168.0.3, port 21
220 ftpserver FTP server (Version wu-2.4.2-academ[BETA-18](1)
Thu Feb 11 16:09:02 GMT 2010) ready.
USER
lininst
331 Password required for lininst
PASS
******
230 User lininst logged in.
Command:
binary
200 Type set to I
Command:
locsite fix 80
Command:
get /media/dvd1/boot/s390x/linux sles12.linux
200 PORT Command successful
150 Opening BINARY mode data connection for /media/dvd1/boot/s390x/linux
(10664192 bytes)
226 Transfer complete.
10664192 bytes transferred in 13.91 seconds.
Transfer rate 766.70 Kbytes/sec.
Command:
get /media/dvd1/boot/s390x/initrd sles12.initrd
200 PORT Command successful
150 Opening BINARY mode data connection for /media/dvd1/boot/s390x/initrd
(21403276 bytes)
226 Transfer complete.
21403276 bytes transferred in 27.916 seconds.
Transfer rate 766.70 Kbytes/sec.
Command:
ascii
200 Type set to A
Command:
get /media/dvd1/boot/s390x/parmfile sles12.parmfile
150 Opening ASCII mode data connection for /media/dvd1/boot/s390x/parmfile
(5 bytes)
226 Transfer complete.
5 bytes transferred in 0.092 seconds.
Transfer rate 0.05 Kbytes/sec.
Command:
get /media/dvd1/boot/s390x/sles12.exec sles12.exec
150 Opening ASCII mode data connection for /media/dvd1/boot/s390x/sles12.exec
(891 bytes)
226 Transfer complete.
891 bytes transferred in 0.097 seconds.
Transfer rate 0.89 Kbytes/sec.
Command:
quit

ダウンロードしたREXXスクリプトsles12.execを使用して、LinuxインストールシステムのIPLを実行します。このスクリプトは、次のように、カーネル、parmfile、およびRAMディスクを、IPL用のリーダにロードします。

例 5.4: SLES12 EXEC
/* REXX LOAD EXEC FOR SUSE LINUX S/390 VM GUESTS       */
/* LOADS SUSE LINUX S/390 FILES INTO READER            */
SAY ''
SAY 'LOADING SLES12 FILES INTO READER...'
'CP CLOSE RDR'
'PURGE RDR ALL'
'SPOOL PUNCH * RDR'
'PUNCH SLES12 LINUX A (NOH'
'PUNCH SLES12 PARMFILE A (NOH'
'PUNCH SLES12 INITRD A (NOH'
'IPL 00C'

このスクリプトでは、sles12コマンドを使用して、SUSE Linux Enterprise ServerのインストールシステムのIPLを実行できます。Linuxカーネルが起動し、そのブートメッセージが表示されます。

インストールを続行するには、5.3.5項 「ネットワーク設定」の説明に従います。

5.3.4.2.2 FCP接続SCSI DVDからのIPL

z/VMでIPLを実行するには、次のように、 SET LOADDEV パラメータを使用して、SCSI IPLプロセスを準備します。

SET LOADDEV PORTNAME 200400E8 00D74E00 LUN 00020000 00000000 BOOT 2

たとえば、適切な値でLOADDEVパラメータを設定したら、FCPアダプタのIPLを実行します。

IPL FC00

インストールを続行するには、5.3.5項 「ネットワーク設定」に従って処理を行います。

5.3.4.2.3 zPXEによるCobblerサーバからのIPL

zPXEによってCobblerサーバからIPLを実行するには、Cobblerサーバからz/VMゲストに対して、FTP経由でzpxe.rexxスクリプトを転送する必要があります。z/VMゲストでは、TCP/IP接続とFTPクライアントプログラムが機能している必要があります。

z/VM LinuxゲストとしてIPLにログインし、ASCIIモードの80文字の固定サイズでスクリプトを転送します(例は、例5.3「FTP経由のバイナリ転送」を参照)。zpxe.rexxスクリプトは、インストールDVDの/boot/s390x/zpxe.rexx、またはSLE Cobblerサーバの/usr/share/doc/packages/s390-tools/zpxe.rexxにあります。

ご使用のゲストのPROFILE EXECzpxe.rexxに置き換わることになります。既存のPROFILE EXECのバックアップコピーを作成し、ZPXE REXXからPROFILE EXECに名前を変更します。または、'ZPXE REXX'というコンテンツを含む新しい行を使用して、既存のPROFILE EXECからZPXE REXXを呼び出します。

最後のステップでは、設定ファイルZPXE CONFを作成し、そこで接続先のCobblerサーバとIPLの実行対象とするディスクをZPXE REXXに対して指定します。xedit zpxe conf aを実行して、次のコンテンツでZPXE CONFを作成します(それに応じて例のデータを置き換えます)。

HOST cobbler.example.com
IPLDISK 600

次にz/VMゲストにログインすると、Cobblerサーバに接続します。Cobblerサーバ上でインストールがスケジュールされている場合は、それが実行されます。インストールをスケジュールするには、Cobblerサーバで次のコマンドを実行します。

tux > sudo cobbler system edit --name ID1 --netboot-enabled 12 --profile PROFILENAME3

1

z/VMのユーザID。

2

ネットワークからのIPLingを有効にします。

3

既存のプロファイルの名前(5.3.1.3.3項 「プロファイルの調整」を参照)。

5.3.4.3 KVMゲストインストールでのIPL処理

ゲストインストールを開始するには、まず5.3.3.3.1項 「仮想ディスクイメージの作成」で定義されているVMゲストを起動する必要があります。そのための前提条件として、最初に、IPL処理で必要とされるカーネルとinitrdを使用できるようにします。

5.3.4.3.1 インストールソースの準備

インストールシステムへのVMゲストのIPLを実行するには、インストールシステムのカーネルとinitrdをVMホストサーバにコピーする必要があります。

  1. KVMホストにログインし、インストールソースを提供するリモートホストやデバイスに接続できることを確認します。

  2. 次の2つのファイルを、インストールソースから/var/lib/libvirt/images/にコピーします。リモートホストからデータが提供される場合は、ftpsftp、またはscpを使用してファイルを転送します。

    /boot/s390x/initrd
    /boot/s390x/cd.ikr
  3. KVMホスト上のファイルの名前を変更します。

    tux > sudo cd /var/lib/libvirt/images/
    tux > sudo mv initrd s12-initrd.boot
    tux > sudo mv cd.ikr s12-kernel.boot
5.3.4.3.2 VMゲストのIPLの実行

VMゲストのIPLを実行するには、KVMホストにログインし、次のコマンドを実行します。

tux > virsh  create s12-1.xml --console

VMゲストの起動が完了したら、インストールシステムが起動し、次のメッセージが表示されます。

Domain s12-1 started
Connected to domain s12-1
Escape character is ^]
Initializing cgroup subsys cpuset
Initializing cgroup subsys cpu
Initializing
cgroup subsys cpuacct
.
.
Please make sure your installation medium is available.
Retry?
0) <-- Back <--
1) Yes
2) No

2) いいえと答え、次のステップでインストールを選択します。5.3.5.3項 「ネットワークの設定とインストールソースの選択」の説明に従って、作業を行ってください。

5.3.5 ネットワーク設定

カーネルがその起動ルーチンを完了するまで待機します。基本モードまたはLPARでインストールを行う場合は、HMCまたはSEのOperating System Messagesを開きます。

最初に、linuxrcのメインメニューでStart Installationを選択し、次にStart Installation or Updateを選択してインストールプロセスを開始します。Networkをインストールメディアとして選択し、インストールに使用するネットワークプロトコルの種類を選択します。5.3.1項 「インストールデータを利用できるようにする」には、さまざまなタイプのネットワーク接続でインストールデータを使用できるようにする方法が説明されています。現在は、FTPHTTPNFSSMB/CIFS(Windowsファイル共有)がサポートされています。

インストールデータを受け取る際に使用するネットワークデバイスとして、使用可能なデバイスのリストからOSAまたはHiperSocketsを選択します。このリストにはCTC、ESCON、またはIUCVデバイスも挙げられていることがありますが、これらはSUSE Linux Enterprise Serverではサポート対象外となっています。

5.3.5.1 HiperSocketsインタフェースの設定

ネットワークデバイスのリストからHipersocketデバイスを選択します。続いて、次のように読み取りチャネル、書き込みチャネル、およびデータチャネルの各番号を入力します。

例 5.5: サポートされているネットワーク接続の種類とドライバパラメータ
Choose the network device.

 1) IBM parallel CTC Adapter (0.0.0600)
 2) IBM parallel CTC Adapter (0.0.0601)
 3) IBM parallel CTC Adapter (0.0.0602)
 4) IBM Hipersocket (0.0.0800)
 5) IBM Hipersocket (0.0.0801)
 6) IBM Hipersocket (0.0.0802)
 7) IBM OSA Express Network card (0.0.0700)
 8) IBM OSA Express Network card (0.0.0701)
 9) IBM OSA Express Network card (0.0.0702)
10) IBM OSA Express Network card (0.0.f400)
11) IBM OSA Express Network card (0.0.f401)
12) IBM OSA Express Network card (0.0.f402)
13) IBM IUCV

> 4

Device address for read channel. (Enter '+++' to abort).
[0.0.800]> 0.0.800

Device address for write channel. (Enter '+++' to abort).
[0.0.801]> 0.0.801

Device address for data channel. (Enter '+++' to abort).
[0.0.802]> 0.0.802

5.3.5.2 OSA Expressデバイスの設定

ネットワークデバイスのリストからOSA Expressデバイスを選択し、ポート番号を指定します。続いて、読み取りチャネル、書き込みチャネル、およびデータチャネルの各番号を該当の有無に応じて入力します。OSIレイヤ2のサポートを有効にするかどうかを選択します。

新しい2ポートのOSA Express 3ネットワークデバイスをサポートするポート番号が追加されます。OSA Express 3デバイスを使用しない場合は、「0」を入力します。OSA Expressカードにはまた、OSI layer 2 supportモードで実行したり、もっと一般的な従来のlayer 3モードを使用するオプションもあります。カードのモードは、他のLPAR上のシステムを含むデバイスを共有するすべてのシステムに影響します。不明な場合は、z/VMやz/OSなどの他のオペレーティングシステムで使用するデフォルトモードとの互換性を確保するために「2」を指定します。これらのオプションに関する詳細については、ハードウェア管理者にご相談ください。

例 5.6: ネットワークデバイスドライバのパラメータ
Choose the network device.

 1) IBM parallel CTC Adapter (0.0.0600)
 2) IBM parallel CTC Adapter (0.0.0601)
 3) IBM parallel CTC Adapter (0.0.0602)
 4) IBM Hipersocket (0.0.0800)
 5) IBM Hipersocket (0.0.0801)
 6) IBM Hipersocket (0.0.0802)
 7) IBM OSA Express Network card (0.0.0700)
 8) IBM OSA Express Network card (0.0.0701)
 9) IBM OSA Express Network card (0.0.0702)
10) IBM OSA Express Network card (0.0.f400)
11) IBM OSA Express Network card (0.0.f401)
12) IBM OSA Express Network card (0.0.f402)
13) IBM IUCV

> 7

Enter the relative port number. (Enter '+++' to abort).
> 0

Device address for read channel. (Enter '+++' to abort).
[0.0.0700]> 0.0.0700

Device address for write channel. (Enter '+++' to abort).
[0.0.0701]> 0.0.0701

Device address for data channel. (Enter '+++' to abort).
[0.0.0702]> 0.0.0702

Enable OSI Layer 2 support?

0) <-- Back <--
1) Yes
2) No

> 1

MAC address. (Enter '+++' to abort).
> +++

5.3.5.3 ネットワークの設定とインストールソースの選択

ネットワークデバイスのすべてのパラメータを入力すると、該当のドライバがインストールされ、対応するカーネルメッセージが表示されます。

次に、ネットワークインタフェースパラメータの設定に、DHCP自動設定を使用するかどうかを決定します。DHCPは、設定可能なデバイスが少なく、特殊なハードウェア設定が必要なため、ここでは、NOを選択する可能性が高くなります。このようにすると、以下の各ネットワークパラメータの入力を求められます。

  • インストールするシステムのIPアドレス

  • 対応するネットマスク(IPアドレスで指定していない場合に入力)

  • サーバにアクセスするためのゲートウェイのIPアドレス

  • ドメイン名サーバ(DNS)で扱う検索ドメインのリスト

  • ドメイン名サーバのIPアドレス

例 5.7: ネットワークパラメータ
Automatic configuration via DHCP?

0) <-- Back <--
1) Yes
2) No

> 2

Enter your IP address with network prefix.

You can enter more than one, separated by space, if necessary.
Leave empty for autoconfig.

Examples: 192.168.5.77/24 2001:db8:75:fff::3/64. (Enter '+++' to abort).
> 192.168.0.20/24

Enter your name server IP address.

You can enter more than one, separated by space, if necessary.
Leave empty if you don't need one.

Examples: 192.168.5.77 2001:db8:75:fff::3. (Enter '+++' to abort).
> 192.168.0.1

Enter your search domains, separated by a space:. (Enter '+++' to abort).
> example.com

Enter the IP address of your name server. Leave empty if you do not need one. (En
ter '+++' to abort).
> 192.168.0.1

最後にインストールサーバの詳細情報の入力を求められます。この情報として、IPアドレス、インストールデータを格納しているディレクトリ、ログインアカウント情報などがあります。必要な情報をすべて入力すると、インストールシステムがロードされます。

5.3.6 SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムへの接続

インストールシステムをロードしたlinuxrcでは、インストール手順の制御に使用するディスプレイの種類を指定する必要があります。可能な選択肢は、X11 (X Window System)、VNC (Virtual Network Computingプロトコル)、SSH (テキストモード、またはSecure Shellを介したX11インストール)、またはASCII Consoleです。VNCまたはSSHの使用をお勧めします。

ASCII Consoleを選択すると、YaSTがテキストモードで起動するので、端末で直接インストールを実行できます。YaSTをテキストモードで使用する方法については、第5章 「テキストモードのYaSTを参照してください。ASCII Consoleは、LPARにインストールする場合にのみ役に立ちます。

注記
注記: ASCII Console用端末エミュレーション

テキストモードでYaSTを操作するには、VT220/Linuxエミュレーションを備えた端末(ASCII consoleともいいます)でYaSTを実行する必要があります。3270端末などでYaSTを使用することはできません。

5.3.6.1 VNCでのインストールの開始

VNCを使用してインストールをリモート制御するには、次の手順に従います。

  1. インストールオプションVNCを選択すると、VNCサーバが起動します。コンソールに表示される短いメッセージは、vncviewerとの接続にどのIPアドレスとディスプレイ番号が必要かを示します。または、JavaScript対応ブラウザでインストールシステムに接続するためのURLが表示されます。

  2. クライアントシステム上のVNCクライアントアプリケーションを起動します。vncviewerまたはVNC JavaScriptクライアントとJavaScript対応Webブラウザを使用します。

  3. SUSE Linux Enterprise ServerのインストールシステムのIPアドレスとディスプレイ番号の入力を求められた場合は、これらの値を入力します。

  4. JavaScript対応ブラウザを使用して接続する場合は、次の形式で、インストールシステムのIPアドレスと適切なポート番号が含まれているURLを入力します。

    http://<IP address of installation system>:5801/
  5. 接続が確立された後、YaSTを使用してSUSE Linux Enterprise Serverのインストールを開始します。

5.3.6.2 X Window Systemでのインストールの開始

重要
重要: X認証メカニズム

X Window Systemを使用する直接インストールでは、ホスト名に基づくプリミティブな認証メカニズムに依存します。現在のバージョンのSUSE Linux Enterprise Serverでは、このメカニズムが無効になっています。SSHまたはVNCによるインストールが推奨されています。

X転送を使用してインストールをリモート制御するには、次の手順に従います。

  1. Xサーバを使用してクライアント(インストールされるシステム)の接続が可能なことを確認します。DISPLAYMANAGER_XSERVER_TCP_PORT_6000_OPEN="yes"変数を/etc/sysconfig/displaymanagerファイル内で設定します。その後に、Xサーバを再起動し、コマンドxhost CLIENT_IP_ADDRESSを使用して、サーバへのクライアントのバインドを行うことができるようにします。

  2. インストールシステムで入力するように指示されたら、Xサーバが稼働するコンピュータのIPアドレスを入力します。

  3. YaSTが起動されるまで待機してから、インストールを開始します。

5.3.6.3 SSHでのインストールの開始

名前がearthであるインストールシステムにSSHを使用して接続するには、ssh -X earthを実行します。Microsoft Windows上で実行しているワークステーションでは、SSH、telnetクライアント、およびhttp://www.chiark.greenend.org.uk/~sgtatham/putty/から入手できるターミナルエミュレータPuttyを使用します。接続 › SSH › X11の順に選択して、PuttyでEnable X11 forwarding (X11転送を有効にする)を設定します。別のオペレーティングシステムを使用する場合は、ssh -X earthを実行して、earthという名前のインストールシステムに接続します。ローカルXサーバが使用可能な場合は、SSHのX転送がサポートされます。使用可能でない場合は、YaSTによって、ncursesのテキストインタフェースが表示されます。

ログインプロンプトが表示されます。「root」と入力し、パスワードを使用してログインします。「yast.ssh」と入力してYaSTを起動します。その後、YaSTの指示に従ってインストール手順を実行します。

第8章 「インストール手順に記載されているインストール処理手順の詳細な説明に従って、処理を行います。

5.3.7 IBM ZでのSUSE Linux Enterprise Serverのブート手順

SLES 10および11のブートプロセスは、以下に示したスキームに従っています。詳しくは、http://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/documentation_suse.htmlの資料を参照してください。

  1. カーネルを指定します。

  2. 指定されたカーネルのinitrdを入力または作成します。

  3. initrdとカーネルの正しいパスを/etc/zipl.confに指定します。

  4. /etc/zipl.confに指定された設定をシステムにインストールします。

SLES 12では、IBM ZでSUSE Linux Enterprise Serverをブートする方法が変わりました。この変更にはいくつかの理由があります。

  • 他のアーキテクチャとの整合性: 管理者の観点から、SLESシステムの動作はすべてのアーキテクチャで同一であるべきです。

  • Btrfs: ziplブートローダは、SLESの新しいデフォルトのルートファイルシステム、Btrfsと技術的に互換性がありません(1.2項 「Btrfs」を参照)。

  • Snapperによるシステムロールバックのサポート: Snapperは、Btrfsと組み合わせて使用することで、システムロールバックに使用可能な、ブート可能システムスナップショットを提供します(第7章 「Snapperを使用したシステムの回復とスナップショット管理を参照)。

このような理由から、SLES 12から、IBM Z対応のSUSE Linux Enterprise Serverでは、GRUB 2がziplに取って代わりました。AMD64/Intel 64アーキテクチャのGRUB 2では、ファームウェアレベルで、ファイルシステムにアクセスするためのデバイスドライバが組み込まれています。メインフレームにはファームウェアがないため、GRUB 2へのccwの追加は、大変な作業であり、GRUB 2にziplを再実装する必要も生じます。そのため、SUSE Linux Enter rise Serverは、2段階のアプローチを使用します。

第1段階:

カーネルとinitrdを含む別のパーティションが/boot/zipl (UEFIプラットフォームにおける/boot/efiに類似するもの)にマウントされます。このカーネルとinitrdは、/boot/zipl/configの設定を使用して、ziplを介してロードされます。

この設定は、initgrubというキーワードをカーネルコマンドラインに追加します。カーネルとinitrdがロードされると、initrdは、ルートファイルシステムをマウントするために必要なデバイスを有効化します(/boot/zipl/active_devices.txtを参照)。その後、GRUB 2ユーザ領域プログラムが開始され、/boot/grub2/grub.cfgを読み込みます。

第2段階:

/boot/grub2/grub.cfgに指定されたカーネルとinitrdは、kexecを使用して起動されます。/boot/zipl/active_devices.txtにリストされたすべてのデバイスがアクティブになり、ルートファイルシステムがマウントされます。ブートの手順が他のアーキテクチャと同じように進みます。

5.4 parmfile: システム設定の自動化

インストールプロセスは、parmfileで不可欠なパラメータを指定することで、部分的に自動化することができます。parmfileには、ネットワーク設定とDASD設定に必要なすべてのデータが含まれています。また、parmfileを使用して、SUSE Linux Enterprise Serverのインストールシステムおよびそのシステムで実行しているYaSTインスタンスに接続する方法を設定することもできます。したがって、ユーザ操作は、YaSTダイアログによって制御される実際のYaSTインストールで必要になるだけです。

次のパラメータをインストールルーチンに渡して、インストール用のデフォルト値として適用させることができます。ここで使用しているすべてのIPアドレス、サーバ名、および数値は、あくまでも例にすぎません。これらの値は、実際のインストールシナリオで必要になる値に置き換えてください。

parmfile内の行数は10に制限されます。各行に複数のパラメータを指定します。パラメータ名は大文字小文字を区別しません。各パラメータはスペースで区切ります。パラメータは任意の順序で指定できます。PARAMETER=valueの文字列は、必ず1行に収めてください。例を次に示します。

Hostname=s390zvm01.suse.de HostIP=10.11.134.65
ヒント
ヒント: インストール時のIPv6の使用

デフォルトでは、マシンにIPv4ネットワークアドレスのみを割り当てることができます。インストール時にIPv6を有効にするには、ブートプロンプトでipv6=1(IPv4とIPv6を受け入れ)パラメータまたはipv6only=1(IPv6のみを受け入れ)パラメータのいずれかを入力します。

いくつかのブートパラメータは必須です。必須パラメータがない場合、自動プロセスは停止し、値の手動入力を要求してきます。

使用可能なブートパラメータのリストは、第7章 「ブートパラメータに記載されています。

5.5 parmfileの例

parmfileに記述できる文字数は最大で860文字です。目安として、79文字以下の行を最大10行とします。parmfileの読み取りでは、すべての行が間に空白を挟まずに連結されます。したがって、各行の末尾(79番目の文字)はSpaceとする必要があります。

コンソールでエラーメッセージを受け取るには、次のコードを使用します。

linuxrclog=/dev/console
例 5.8: VNCおよびAutoYaSTを使用してNFSからインストールする場合のparmfile
ramdisk_size=131072 root=/dev/ram1 ro init=/linuxrc TERM=dumb
instnetdev=osa osainterface=qdio layer2=1 osahwaddr=
pointopoint=192.168.0.1
hostip=192.168.0.2
nameserver=192.168.0.3
install=nfs://192.168.0.4/SLES/SLES-12-Server/s390x/DVD1
autoyast=http://192.168.0.5/autoinst.xml
linuxrclog=/dev/console vnc=1
VNCPassword=testing
例 5.9: NFS、SSH、HSI、およびNFSによるAutoYaSTを使用したインストール用のparmfile
ramdisk_size=131072 root=/dev/ram1 ro init=/linuxrc TERM=dumb
AutoYast=nfs://192.168.1.1/autoinst/s390.xml
Hostname=zsystems.example.com HostIP=192.168.1.2
Gateway=192.168.1.3 Nameserver=192.168.1.4
InstNetDev=hsi layer2=0
Netmask=255.255.255.128 Broadcast=192.168.1.255
readchannel=0.0.702c writechannel=0.0.702d datachannel=0.0.702e
install=nfs://192.168.1.5/SLES-12-Server/s390x/DVD1/
ssh=1 ssh.password=testing linuxrclog=/dev/console
例 5.10: VLANでのインストール用のparmfile
ro ramdisk_size=50000 MANUAL=0 PORTNO=1 ReadChannel=0.0.b140
WriteChannel=0.0.b141 DataChannel=0.0.b142
cio_ignore=all,!condev,!0.0.b140-0.0.b142,!0.0.e92c,!0.0.5000,!0.0.5040
HostIP= Gateway= Hostname=zsystems.example.com nameserver=192.168.0.1
Install=ftp://user:password@10.0.0.1/s390x/SLES15.0/INST/ usevnc=1
vncpassword=12345 InstNetDev=osa Layer2=1 OSAInterface=qdio ssl_certs=0
osahwaddr= domain=example.com self_update=0
ifcfg=eth0.201=192.168.0.2/16,192.168.0.1

5.6 vt220ターミナルエミュレータの使用

最新のMicroCodeレベルでは、標準のラインモードターミナルのほか、統合されたvt220ターミナルエミュレータ(ASCIIターミナル)を使用できます。vt220ターミナルは/dev/ttysclp0に接続されます。ラインモードターミナルは/dev/ttysclp_line0に接続されます。LPARによるインストールでは、デフォルトでvt220ターミナルエミュレータが有効になります。

HMCでASCII Consoleを起動するには、HMCにログインし、Systems Management (システム管理) › システム › IMAGE_ID の順に選択します。LPARのラジオボタンを選択し、Recovery (回復) › Integrated ASCII Console (統合ASCII Console)の順に選択します。

ブート時にカーネルメッセージをシステムコンソールからvt220ターミナルにリダイレクトするには、次のエントリを、/etc/zipl.conf内のparameters行に追加します。

console=ttysclp0 console=ttysclp_line0

その結果、parameters行は次の例のようになります。

parameters = "root=/dev/dasda2 TERM=dumb console=ttysclp0 console=ttysclp_line0"

/etc/zipl.conf内の変更を保存し、ziplを実行してシステムを再起動します。

5.7 IBM Zに関するさらに詳しい情報

IBM Zに関するさらに詳しい技術ドキュメントを入手するには、IBM Redbooks (https://www.redbooks.ibm.com/Redbooks.nsf/domains/zsystems)またはIBM developerWorks (https://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/)を参照してください。SUSE Linux Enterprise Server固有のドキュメントについては、https://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/documentation_suse.htmlを参照してください。

5.7.1 Linux on IBM Zに関する一般的なドキュメント

Linux on IBM Zに関する一般情報については、次のドキュメントを参照してください。

  • Linux on IBM eServer zSeries and S/390: ISP and ASP Solutions (SG24-6299)

これらのドキュメントは、Linuxの現在の状態を反映していない可能性がありますが、説明されているLinux展開の原則は変化していません。

5.7.2 Linux on IBM Zについての技術的問題

Linuxカーネルとアプリケーションのトピックについて詳細な技術情報を得るには、次のドキュメントを参照してください。最新のcode dropについては、これらのドキュメントの最新版をインターネットで参照してください(http://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/index.html)。

  • Linux on System z Device Drivers, Features, and Commands

  • zSeries ELF Application Binary Interface Supplement

  • Linux on System z Device Drivers, Using the Dump Tools

  • IBM zEnterprise 196 Technical Guide

  • IBM zEnterprise EC12 Technical Guide

  • IBM z13 Technical Guide

Linuxアプリケーション開発用のRedbookは、http://www.redbooks.ibm.comにもあります。

  • Linux on IBM eServer zSeries and S/390: Application Development (SG24-6807)

5.7.3 Linux on IBM Zの詳細設定

より詳細なIBM Zのシナリオについては、次のRedbook、Redpaper、およびリンクを参照してください。

5.7.4 IBM Z上のKVMでの仮想化

IBM Z上のKVMの詳細については、次のドキュメントを参照してください(https://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/documentation_dev.html)。

  • Installing SUSE Linux Enterprise Server 12 as a KVM Guest」 (SC34-2755-00)

  • KVM Virtual Server Quick Start」 (SC34-2753-01)

  • KVM Virtual Server Management」 (SC34-2752-01)

  • Device Drivers, Features, and Commands for Linux as a KVM Guest (Kernel 4.4)」 (SC34-2754-01)