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SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP2

ガイド

発行日: 2023 年 12 月 11 日
本書について
概要
利用可能なマニュアルとリソース
フィードバックの提供
マニュアルの表記規則
1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとは
1.1 ソフトウェアコンポーネント
1.2 ソフトウェアリポジトリのセットアップ
1.3 製品のライフサイクルとサポート
2 インストールの計画
2.1 ハードウェア要件
2.2 インストールイメージ
2.3 オフラインマイグレーション
2.4 インストール方法
2.5 インストールワークフローの概要
2.6 インストールに必要なデータ
2.7 パーティショニング
3 オペレーティングシステムのインストール
3.1 インストールワークフローの使用
3.2 ネットワークからのSLES-SAPメディアの使用
3.3 外部AutoYaSTプロファイルの使用
3.4 SLESインストールのSLES-SAPインストールへの変換
4 SAPアプリケーションのインストール
4.1 SAPインストールウィザードを使用してインストール可能な製品
4.2 最初のステップ
4.3 SAPインストールウィザードの使用
4.4 インストールプロファイルを使用したインストールの続行
4.5 SAPインストールウィザードを使用しないSAPアプリケーションのパーティショニング
4.6 AutoYaSTを使用したSAPアプリケーションの自動インストール
5 SAP HANAクラスタのアップグレード
5.1 アップグレードの準備
5.2 SAP HANAクラスタのアップグレード
5.3 アップグレードタスクの完了
6 SAPメディアセット用のインストールサーバの設定
7 SAP HANAクラスタの設定
7.1 前提条件
7.2 セットアップ
7.3 SAP HANA-SRウィザードを使用した無人セットアップ
7.4 Hawkの使用
7.5 詳細情報
8 チューニング
8.1 sapconf 4を使用したシステムのチューニング
8.2 sapconf 5を使用したシステムのチューニング
8.3 saptuneを使用したシステムのチューニング
8.4 sysctlを使用したカーネルパラメータの手動チューニング
8.5 ワークロードメモリ保護のチューニング
9 ファイアウォール
9.1 firewalldの設定
9.2 HANA-Firewallの設定
9.3 SAProuterの統合
10 ClamSAPを使用したマルウェアに対する保護
10.1 ClamSAPのインストール
10.2 SAP NetWeaverでのウィルススキャナグループの作成
10.3 SAP NetWeaverでのClamSAPライブラリの設定
10.4 ClamSAPの実行
10.5 詳細情報
11 RDPを介した接続
12 オペレーティングシステムイメージの作成
12.1 KIWIによるイメージの作成
12.2 インスタンスをマスタイメージとして使用する前にクリーンアップする
13 重要なログファイル
A SLES-SAP用の追加ソフトウェア
A.1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの基本製品の特定
A.2 SUSE Connectプログラム
A.3 PackageHub
B AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニング
C 補足メディア
C.1 product.xml
C.2 独自のAutoYaST Askダイアログ
C.3 追加のパッケージをインストールする
C.4 補足メディアのディレクトリ例
D GNU利用許諾契約書
D.1 GNU Free Documentation License

Copyright © 2010–2023 SUSE LLC and contributors.All rights reserved.

この文書は、GNUフリー文書ライセンスのバージョン1.2または(オプションとして)バージョン1.3の条項に従って、複製、頒布、および/または改変が許可されています。ただし、この著作権表示およびライセンスは変更せずに記載すること。ライセンスバージョン1.2のコピーは、GNUフリー文書ライセンスセクションに含まれています。

SUSEの商標については、http://www.suse.com/company/legal/を参照してください。サードパーティ各社とその製品の商標は、所有者であるそれぞれの会社に所属します。商標記号(®、 ™など)は、SUSEおよび関連会社の商標を示します。アスタリスク(*)は、第三者の商標を示します。

本書のすべての情報は、細心の注意を払って編集されています。しかし、このことは絶対に正確であることを保証するものではありません。SUSE LLC、その関係者、著者、翻訳者のいずれも誤りまたはその結果に対して一切責任を負いかねます。

本書について

SUSE® Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SAPのソフトウェア開発のための参照プラットフォームです。SAPアプリケーション用に最適化されています。このドキュメントでは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールとカスタマイズについて詳細に説明します。

SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの一部でもあります。

1 概要

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsガイドは、次の章に分かれています。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとは

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの概要。

インストールの計画

ハードウェア要件、インストールワークフロー、パーティショニング、他のインストール計画に関する情報。

オペレーティングシステムのインストール

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの基盤となるSUSE Linux Enterprise Serverオペレーティングシステムのインストール。

SAPアプリケーションのインストール

SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsへのSAPアプリケーションのインストール。オペレーティングシステムのインストール直後、または実行中のシステムのいずれか。

SAPメディアセット用のインストールサーバの設定

組織内で使用されるすべてのインストールメディアのサーバの設定。

ソフトウェアコンポーネント

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsを設定するためのツールの説明。

2 利用可能なマニュアルとリソース

このマニュアルの複数の章に、システム上またはインターネットで利用可能な追加のドキュメントリソースへのリンクが含まれています。

3 フィードバックの提供

このドキュメントに対するフィードバックや貢献を歓迎します。次のチャネルがあります。

サービス要求およびサポート

ご使用の製品に利用できるサービスとサポートのオプションについては、http://www.suse.com/support/を参照してください。

サービス要求を開くには、SUSE Customer Centerに登録されたSUSEの購読が必要です。https://scc.suse.com/support/requestsに移動して、ログインし、新規作成をクリックします。

バグレポート

https://bugzilla.suse.com/にあるドキュメントで問題を報告します。レポーティングの問題には、Bugzillaアカウントが必要です。

このプロセスを簡略化するために、このドキュメントのHTMLバージョンの見出しの横にあるReport Documentation Bug (ドキュメントバグの報告)リンクを使用できます。これらにより、Bugzillaで適切な製品とカテゴリが事前に選択され、現在のセクションへのリンクが追加されます。バグレポートの入力を直ちに開始できます。

貢献内容

このドキュメントに貢献するには、このドキュメントのHTMLバージョンの見出しの横にあるEdit Source (ソースの編集)リンクを使用してください。GitHubのソースコードに移動し、そこでプル要求を開くことができます。貢献にはGitHubアカウントが必要です。

このドキュメントに使用されるドキュメント環境に関する詳細については、https://github.com/SUSE/doc-slesforsapにあるリポジトリのREADMEを参照してください。

メール

ドキュメントに関するエラーの報告やフィードバックは<>宛に送信してください。ドキュメントのタイトル、製品のバージョン、およびドキュメントの発行日を記載してください。また、関連するセクション番号とタイトル(またはURL)、問題の簡潔な説明も記載してください。

4 マニュアルの表記規則

このマニュアルでは、次の通知と表記規則が使用されています。

  • /etc/passwd: ディレクトリ名とファイル名

  • PLACEHOLDER: PLACEHOLDERは、実際の値で置き換えられます。

  • PATH: 環境変数

  • ls--help: コマンド、オプション、およびパラメータ

  • user: ユーザまたはグループの名前

  • package_name: ソフトウェアパッケージの名前

  • AltAltF1: 押すキーまたはキーの組み合わせ。キーはキーボードのように大文字で表示されます。

  • ファイルファイル › 名前を付けて保存: メニュー項目、ボタン

  • AMD/Intel この説明は、Intel 64/AMD64アーキテクチャにのみ当てはまります。矢印は、テキストブロックの先頭と終わりを示します。

    IBM Z, POWER この説明は、IBM ZおよびPOWERの各アーキテクチャにのみ当てはまります。矢印は、テキストブロックの先頭と終わりを示します。

  • 第1章、章の例: このガイドの別の章への相互参照。

  • root特権で実行する必要のあるコマンド。多くの場合、これらのコマンドの先頭にsudoコマンドを置いて、特権のないユーザとしてコマンドを実行することもできます。

    root # command
    tux > sudo command
  • 特権のないユーザでも実行できるコマンド。

    tux > command
  • 通知

    警告
    警告: 警告の通知

    続行する前に知っておくべき、無視できない情報。セキュリティ上の問題、データ損失の可能性、ハードウェアの損傷、または物理的な危険について警告します。

    重要
    重要: 重要な通知

    続行する前に知っておくべき重要な情報です。

    注記
    注記: メモの通知

    追加情報。たとえば、ソフトウェアバージョンの違いに関する情報です。

    ヒント
    ヒント: ヒントの通知

    ガイドラインや実際的なアドバイスなどの役に立つ情報です。

  • コンパクトな通知

    注記

    追加情報。たとえば、ソフトウェアバージョンの違いに関する情報です。

    ヒント

    ガイドラインや実際的なアドバイスなどの役に立つ情報です。

1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとは

概要

SUSE® Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SAPユーザ固有のニーズに対応するソフトウェアとサービスのバンドルです。すべてのSAPソフトウェアソリューション用に最適化された唯一のオペレーティングシステムです。

対象となる使用例は次のとおりです。

  • UnixからLinuxへのマイグレーションとプラットフォームの再構築

  • SAPアプライアンス

  • SAPクラウドの展開

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、以降のセクションで説明されるソフトウェアコンポーネントとサービスで構成されます。図SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリングは、SUSEの他の製品でも利用可能なソフトウェアコンポーネントとサービス(緑色)およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでのみ利用可能なソフトウェアコンポーネントとサービス(青色)の概要を示しています。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリング
図 1.1: SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリング

1.1 ソフトウェアコンポーネント

図1.1「SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリング」で示されているように、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SUSE Linux Enterprise Serverがベースとなっていますが、SUSE Linux Enterprise High Availability Extension、インストールワークフローなどのいくつかの追加のソフトウェアコンポーネントが含まれています。これらのソフトウェアコンポーネントについては、以降のセクションで簡単に説明します。

1.1.1 SUSE Linux Enterprise Server

現在のリリースはSUSE Linux Enterprise Server 15 SP2をベースとしています。SUSE Linux Enterprise Serverは、物理環境と仮想環境の両方でミッションクリティカルなコンピューティングに対応する非常に相互運用性の高いプラットフォームです。

1.1.2 SUSE Linux Enterprise High Availability Extension

このコンポーネントは次のもので構成されます。

  • ポリシー重視の柔軟なクラスタリング

  • クラスタ対応のファイルシステムとボリューム管理

  • 継続的なデータレプリケーション

  • セットアップとインストール

  • 管理ツール

  • リソースエージェント、SAPにも対応

  • 仮想化対応

SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionには、特にSAPアプリケーションと作業するための次の2つのリソースエージェントが用意されています。

  • SAPInstance: SAP製品のインスタンスを開始および停止できます。

  • SAPDatabase: SAPアプリケーションでサポートされているすべてのデータベース(SAP HANA、SAP MaxDB、SAP ASE、Oracle、Sybase、IBM DB2)を開始および停止できます。

SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionに関する詳細については、『管理ガイド』(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)、およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリのホワイトペーパーおよびベストプラクティスガイド(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。

1.1.3 簡素化されたSAP HANAシステムレプリケーションのセットアップ

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionのコンポーネントおよび2つの追加のリソースエージェント(RA)を使用したSAP HANAシステムレプリケーションをサポートしています。また、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、クラスタのセットアップを簡素化するYaSTウィザードが付属しています。

1.1.3.1 SAPHanaリソースエージェント

SUSEのこのリソースエージェントは、SAP HANAデータベースインスタンスでテイクオーバーが必要かどうかを確認することで、スケールアップシナリオをサポートします。純粋なSAPソリューションとは異なり、テイクオーバーは自動化できます。

これはマスタ/スレーブリソースとして設定されています。マスタは、プライマリモードで実行されているSAP HANAデータベースに対応し、スレーブは同期(セカンダリ)ステータスで動作するインスタンスに対応します。テイクオーバーの場合、セカンダリ(スレーブリソースインスタンス)を自動的に昇格して、新しいプライマリ(マスタリソースインスタンス)にすることができます。

このリソースエージェントは、次のスケールアップシナリオのシステムレプリケーションをサポートしています。

  • パフォーマンス最適化シナリオ:  同じSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionクラスタの2つのサーバ(AとB)。一方はプライマリ(A)、他方はセカンダリ(B)。プライマリサーバ(A)からのSAP HANAインスタンスはセカンダリサーバ(B)に同期的に複製されます。

  • コスト最適化シナリオ:  AとBの基本的なセットアップは、「パフォーマンス最適化シナリオ」と同じです。ただし、セカンダリサーバ(B)は、開発またはQA用の追加のSAP HANAデータベースなどの、非生産的な目的にも使用されます。運用データベースは、ハードディスクなどの永続的メモリにのみ保存されます。テイクオーバーが必要な場合、テイクオーバーが処理される前に、非生産的なサーバは停止されます。生産的なデータベースのシステムリソースは、SAPフック呼び出しスクリプトを介して可能な限り迅速に増加します。

  • チェーン/多層シナリオ:  3つのサーバ(A、B、およびC)。そのうちの2つは同じSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionクラスタにあります(AおよびB)。3番目のサーバ(C)は、外部に配置されます。プライマリサーバ(A)のSAP HANAシステムはセカンダリサーバ(B)に同期的に複製されます。セカンダリサーバ(B)は、外部サーバ(C)に非同期的に複製されます。

    AからBへのテイクオーバーが発生する場合、BとCの間の接続はそのままです。ただし、Bは2つのサーバ(AとC)のソースになることはできません。これはスタートポロジであり、現在のSAP HANAバージョン(SPS11など)ではサポートされていないためです。

    SAP HANAコマンドを使用して、すべき操作を手動で決定できます。

    • BをAに接続できるように、BとCの間の接続を切断できます。

    • 外部サイト(C)へのレプリケーションがローカルシステムレプリケーションより重要な場合、BとCの間の接続を保持できます。

すべてのシナリオで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、シングルテナントとマルチテナント(MDC)両方のSAP HANAデータベースをサポートしています。つまり、複数のSAPアプリケーションにサービスを提供するSAP HANAデータベースを使用できます。

1.1.3.2 SAPHanaTopologyリソースエージェント

クラスタの設定をできるだけ簡単にするため、SUSEではSAPHanaTopologyリソースエージェントを開発しました。このエージェントはSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionクラスタのすべてのノード上で実行され、SAP HANAシステムレプリケーションのステータスと設定に関する情報を収集します。これは、通常の(ステートレス)クローンとして設計されています。

1.1.3.3 SAP HANAクラスタを設定するためのYaSTウィザード

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには現在、ベストプラクティスに従って、このようなクラスタの初期セットアップを管理するYaSTウィザードが追加で付属しています。ウィザードはパッケージ yast2-sap-haの一部で、 HA Setup for SAP Products (SAP製品のHAセットアップ)を介して、YaSTを使用して起動できます。

詳細については、第7章 「SAP HANAクラスタの設定を参照してください。

1.1.3.4 詳細情報

詳細については、以下を参照してください。

1.1.4 インストールワークフロー

インストールワークフローは、SUSE Linux Enterprise ServerオペレーティングシステムとSAPアプリケーション両方のガイド付きインストールパスを提供します。詳細については、2.5項 「インストールワークフローの概要」を参照してください。

さらに、インストールワークフローは、補足メディアを使用して、サードパーティベンダーまたはお客様が拡張できます。補足メディアの作成方法の詳細については、付録C 補足メディアを参照してください。

1.1.5 ClamSAPを使用したマルウェア保護

ClamSAPは、ClamAVマルウェア対策ツールキットをSAP NetWeaverおよびSAP Mobile Platformアプリケーションに統合し、クロスプラットフォーム脅威検出を可能にします。たとえば、ClamSAPを使用して、SAPアプリケーションがHTTPアップロードでの悪意のあるアップロードをスキャンできるようにします。

詳細については、第10章 「ClamSAPを使用したマルウェアに対する保護を参照してください。

1.1.6 SAP HANAセキュリティ

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、安全性の高いSAP HANAインストールの設定に役立つ追加の機能が含まれています。

1.1.6.1 SAP HANAのファイアウォール

SAP HANAのセキュリティ保護には、多数の追加のファイアウォールルールが必要な場合があります。SAP HANAのファイアウォール設定を簡素化するため、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、事前設定済みのルールを提供し、SuSEfirewall2と統合するパッケージ HANA-Firewall が含まれています。

詳細については、9.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照してください。

1.1.6.2 SAP HANA用の強化ガイド

ベースとなっているオペレーティングシステムを強化する方法については、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。そこで、『OS Security Hardening for SAP HANA』というドキュメントを見つけてください。

1.1.7 簡素化された運用管理

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、簡素化された運用管理を可能にするいくつかの機能を組み合わせています。

1.1.7.1 saptuneを使用したシステムのチューニング

システムチューニングアプリケーションsaptuneを使用すると、SAPがSAP S/4HANA、SAP NetWeaver、またはSAP HANA/SAP BusinessOneを使用するために推奨している、システムの自動的かつ包括的なチューニングが可能となります。これを行うために、saptuneは、tunedプロファイルを有効にします。以上により、使用しているハードウェアコンポーネントによって、使用可能なRAM容量などいくつかのカーネルパラメータをチューニングできます。

詳細については、8.3項 「saptuneを使用したシステムのチューニング」を参照してください。

1.1.7.2 SAPアプリケーションの依存関係を提供するパターン

SAPアプリケーションのソフトウェア依存関係の取り扱いを簡素化するため、SUSEでは、特定のアプリケーションに関連する依存関係RPMパッケージを組み合わせた複数のパターンを作成しました。

  • SAP BusinessOneサーバベース

  • SAP HANAサーバベース

  • SAP NetWeaverサーバベース

重要
重要: パッケージがパターンから欠落している可能性がある

ソフトウェアパターンのパッケージの選択は、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの特定のリリース(サービスパックまたはメジャーバージョン)の開発中に定義されます。このパッケージの選択は、この特定のリリースの有効期間にわたって維持されます。ご使用中のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのバージョンよりも後でリリースされたSAPアプリケーションで作業する場合、依存関係がパターンから欠落している場合があります。

SAPアプリケーションの依存関係に関する明確な情報については、SAPが提供するドキュメントを参照してください。

1.1.7.3 ClusterTools2

ClusterTools2は、Corosync/pacemakerクラスタを設定および管理するのに役立つツールを提供します。これらの中には、可用性の高いシステムリソースを作成するのに役立つwow、クラスタを管理できるClusterServiceがあります。

また、ClusterTools2では、通常のクラスタタスクを自動化するスクリプトを提供します。

  • チェックを実行するスクリプト。たとえば、システムがpacemakerクラスタを作成するために正しく設定されているかどうかの確認に使用。

  • 設定を簡素化するスクリプト。たとえば、Corosync設定の作成に使用。

  • システムを監視するスクリプトと、システム情報を表示または収集するスクリプト。たとえば、ログファイル内の既知のエラーパターンを見つけるために使用。

詳細については、パッケージ ClusterTools2に含まれている、各ツールのマニュアルページを参照してください。https://github.com/SUSE/cluster-tools.gitにあるプロジェクトホームページも参照してください。

1.2 ソフトウェアリポジトリのセットアップ

SUSE Linux Enterpriseに基づくオペレーティングシステムに含まれるソフトウェアはRPMパッケージとして配布されます。このパッケージは、他のパッケージに依存する可能性のあるインストールパッケージの形式です。サーバまたはインストールメディアで、これらのパッケージはソフトウェアリポジトリ(チャネルと呼ばれる場合もある)に保存されます。

デフォルトで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsを実行しているコンピュータは、複数のリポジトリからパッケージを受信するように設定されています。各標準リポジトリには、最初に出荷されたときのソフトウェアの状態を示すプールバリアントがあります。プールバリアントのソフトウェアに対する最新の保守更新を含む更新バリアントもあります。

インストール中にシステムを登録した場合は、リポジトリセットアップに以下が含まれている必要があります。

表 1.1: 標準リポジトリ

コンテンツ

ベースリポジトリ(プール)

更新リポジトリ

SUSE Linux Enterprise Serverのベースパッケージ

SLE-Module-Basesystem15-SP2-Pool

SLE-Module-Basesystem15-SP2-Updates

SUSE Linux Enterprise Serverの基本的なサーバ機能

SLE-Module-Server-Applications15-SP2-Pool

SLE-Module-Server-Applications15-SP2-Updates

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに固有のパッケージ

SLE-Module-SAP-Applications15-SP2-Pool

SLE-Module-SAP-Applications15-SP2-Updates

SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionに固有のパッケージ

SLE-Product-HA15-SP2-Pool

SLE-Product-HA15-SP2-Updates

このセクションのテーブルには、「デバッグ情報」リポジトリと「ソース」リポジトリは表示されません。これらも設定されていますが、デフォルトで無効になっています。「デバッグ情報」リポジトリには、通常のパッケージをデバッグするために使用可能なパッケージが含まれています。「ソース」リポジトリには、パッケージのソースコードが含まれています。

インストール方法に応じて、インストールメディアである、SLE-15-SP2-SAP-15.2-0が表示される場合もあります。上記のすべてのベースソフトウェアリポジトリのパッケージが含まれています。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications用の独自のリポジトリがあるため、SUSEはSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに固有のパッケージとパッチを出荷することができます。

注記
注記: 更新リポジトリで直接出荷されるESPOSの更新

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 11とは異なり、Extended Service Pack Overlay Support (ESPOS)に関連する更新は、更新リポジトリから直接出荷されます。これは、設定される個別のESPOSリポジトリがないことを意味します。

標準リポジトリのほか、インストール中、またはYaSTまたはコマンドSUSEConnectを使用して実行中のシステムからSLEモジュールおよびSLE拡張機能を有効にすることができます。

SUSE Linux Enterprise製品ラインで利用可能なすべてのモジュールおよび拡張機能については、https://documentation.suse.com/sles/15-SP2/html/SLES-all/art-modules.htmlを参照してください。

PackageHubの詳細については、A.3項 「PackageHub」を参照してください。

1.3 製品のライフサイクルとサポート

SUSE製品が異なれば、製品のライフサイクルも異なります。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの正確なライフサイクル日付を確認するには、https://www.suse.com/lifecycle/を参照してください。

1.3.1 製品のライフサイクルとサポートサービス

Extended Service Pack Overlap Support (ESPOS)

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読には、ESPOSが含まれています。これにより、2つの連続するサービスパックのサポート期間の重複期間が3年延長されます。この期間中、Long Term Service Pack Support (LTSS)の条件に基づいてサポートとすべての関連する保守の更新を受けることができます。この機能は、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでのみ使用可能です。

ESPOSを使用すると、わずか6カ月ではなく3年半以内にサービスパックのマイグレーションを実行できます。これにより、マイグレーションをより簡単にスケジュールし、制限の少ない時間制約下でマイグレーション前にテストを実行できます。

追加コストで、SUSEではLTSSも提供します。LTSSでは、ESPOS期間の終了後に特定のサービスパックのサポートを受けることができます。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsにはサービスパックごとに1年半の一般的なサポートと3年のESPOSが含まれるため、LTSSは最後のサービスパックにのみ提供される場合があります。SUSE製品のライフサイクルの詳細については、以下を参照してください。

SUSE Linux Enterprise Server Priority Support for SAP Applications

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読には、SUSE Linux Enterprise Server Priority Support for SAP Applicationsが含まれ、SAPから直接SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのテクニカルサポートが提供されます。SUSEテクニカルサポートとSAPのサポートエンジニアが提供する共同サポートインフラストラクチャは、SAP Resolveに基づいており、SAPとSUSEの両方とのシームレスな通信を提供します。このOne Face to the Customerサポートモデルは、複雑さを軽減し、総所有コストを削減します。

詳細については、『SAP Note 1056161: SUSE Priority Support for SAP Applications』(https://launchpad.support.sap.com/#/notes/1056161)を参照してください。

重要
重要: モジュールと拡張機能のライフサイクルとサポート

モジュールと拡張機能には、SLES-SAPとは異なるライフサイクルがあり、SUSEはこれらに異なるサポートサービスを提供しています。

  • モジュール:

    • ライフサイクル:  モジュールによって異なります。

    • サポート:  最新のパッケージのみがサポートされます。サポートはSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読に含まれています。追加の登録キーは必要ありません。

  • 拡張機能

    • ライフサイクル:  SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとともに通常リリースが調整されます。

    • サポート:  サポートは利用できますが、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読に含まれていません。追加の登録キーが必要です。

  • サポートされていない拡張機能(PackageHubとSUSE Linux Enterprise Software Development Kit)

    • ライフサイクル:  SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとともに通常リリースが調整されます。

    • サポート:  セキュリティとパッケージの問題に対する修正以外のサポートはありません。追加の登録キーは必要ありません。

1.3.2 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのサポートステートメント

サポートを受けるには、SUSEの適切な購読が必要です。利用可能な特定のサポートサービスを確認するには、https://www.suse.com/support/にアクセスして製品を選択してください。

サポートレベルは次のように定義されます。

L1

問題の判別。互換性情報、使用サポート、継続的な保守、情報収集、および利用可能なドキュメントを使用した基本的なトラブルシューティングを提供するように設計されたテクニカルサポートを意味します。

L2

問題の切り分け。データの分析、お客様の問題の再現、問題領域の特定、レベル1で解決できない問題の解決、またはレベル3の準備を行うように設計されたテクニカルサポートを意味します。

L3

問題解決。レベル2サポートで特定された製品の欠陥を解決するようにエンジニアリングに依頼して問題を解決するように設計されたテクニカルサポートを意味します。

契約されているお客様およびパートナーの場合、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでは、次のものを除くすべてのパッケージに対してL3サポートを提供します。

  • 技術プレビュー

  • サウンド、グラフィック、フォント、およびアートワーク

  • 追加の顧客契約が必要なパッケージ

  • モジュール「Workstation Extension」の一部として出荷される一部のパッケージは、L2サポートのみです。

  • パッケージ名が -devel で終わるもの(ヘッダファイルや開発者用のリソースを含む)に対しては、メインのパッケージと共にのみサポートが提供されます。

SUSEは、元のパッケージの使用のみをサポートします。つまり、変更も、再コンパイルもされないパッケージをサポートします。

1.3.3 技術プレビュー

技術プレビューとは、今後のイノベーションを垣間見ていただくための、SUSEによって提供されるパッケージ、スタック、または機能を意味します。技術プレビューは、使用中の環境内で新しいテクノロジーをテストする際の利便性のために用意されています。私たちはフィードバックを歓迎しています。技術プレビューをテストする場合は、SUSEの担当者に連絡して、経験や使用例をお知らせください。ご入力いただいた内容は今後の開発のために役立たせていただきます。

技術プレビューには、次の制限事項があります。

  • 技術プレビューはまだ開発中です。したがって、機能が不完全であったり、不安定であったりすることがあり、運用環境での使用には適して「いない」場合があります。

  • 技術プレビューにはサポートが提供「されません」。

  • 技術プレビューは、特定のハードウェアアーキテクチャにのみ使用できる場合があります。

  • 技術プレビューの詳細および機能は、変更される場合があります。その結果、技術プレビューのその後のリリースへのアップグレードは不可能になり、再インストールが必要な場合があります。

  • 技術プレビューはいつでも製品から削除できます。SUSEでは、このようなテクノロジーのサポートされるバージョンを将来的に提供できない場合があります。たとえば、SUSEでプレビューがお客様または市場のニーズを満たしていない、またはエンタープライズ基準に準拠していないことが判明した場合などです。

ご使用の製品に付属している技術プレビューの概要については、https://www.suse.com/releasenotes/x86_64/SLE-SAP/15-SP2/にあるリリースノートを参照してください。

2 インストールの計画

この章はインストールの計画に役立つため、注意してお読みください。要件を一覧表示しており、システムに関するデータを収集するのに役立ちます。

2.1 ハードウェア要件

このセクションでは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールの最小ハードウェア要件を一覧表示し、特定のSAPソフトウェアの想定されるハードウェア要件に関する基本的なガイダンスを示します。SAPソフトウェアのハードウェア要件の最新情報については、https://service.sap.com/sizingにある公式サイジングガイドラインを参照してください。

サポートされているCPU

Intel 64/AMD64

IBM POWER 8 (PowerVM搭載)

IBM POWER 9 (PowerVM搭載)

ハードディスク

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、システムボリュームに対して最低41GB(スワップなし)のハードディスク容量が必要です。それに加えて、スワップパーティション用に適切なハードディスク容量を予約します。

SAP NetWeaverなどのSAPアプリケーションをインストールするには、アプリケーションの/dataパーティションのオペレーティングシステムに必要なスペースのほか、最低200GBの空きディスク容量が必要です。

SAP HANAをインストールするには、次のいずれかが必要です。

  • SAP BusinessOne認定マシン

  • SAP HANA TDI (Tailored Datacenter Integration)の要件を満たす互換性のあるマシン。つまり、オペレーティングシステムに必要な容量のほか、次の空きディスク容量が必要です。

    • パーティション/usr/sap用に52GBの空きディスク容量

    • SAP HANAデータ用の3つのパーティションの容量: /hana/data (RAMと同じサイズ)、/hana/log (RAMと同じサイズで最大512GB)、および/hana/shared (RAMと同じサイズで最大1TB)。

SAP HANA TDIストレージ要件の詳細については、次を参照してください。

https://www.sap.com/docs/download/2015/03/74cdb554-5a7c-0010-82c7-eda71af511fa.pdf

RAM

SUSE Linux Enterprise Serverオペレーティングシステムそれ自体には、CPUコアあたり最低1024MBの合計RAMまたは最低512MBのRAM(どちらか高いほうを選択)が必要です。

インストールするSAPソフトウェアには追加のRAMが必要です。

SAP HANAをインストールするには、マシンに最低24GBのRAMが必要です。

SAP HANAのハードウェア設定に関する詳細については、『SAP Note 1944415: Hardware Configuration Guide and Software Installation Guide for SUSE Linux Enterprise Server with SAP HANA and SAP Business One』(https://launchpad.support.sap.com/#/notes/1944415)を参照してください。

パーティショニングに関する詳細については、2.7項 「パーティショニング」を参照してください。

2.2 インストールイメージ

以前のSLE製品と異なり、SLE 15 SP2製品ライン全体を単一インストールメディアであるSLE 15 SP2オンラインメディア1からインストールできます。ネットワークにアクセスまたは登録しないでインストールする場合は、SLE 15 SP2フルメディア1イメージをダウンロードします。両方のISOイメージはhttps://download.suse.com/から入手できます。

物理DVDにイメージを書き込むか、リムーバブルフラッシュディスクにコピーします。ディスクのサイズが目的のイメージに対して十分であることを確認します。または、仮想マシンへのインストールに仮想DVD-ROMデバイスを使用します。

ヒント
ヒント: インストールメディアイメージをリムーバブルフラッシュディスクにコピーする

次のコマンドを使用して、インストールイメージのコンテンツをリムーバブルフラッシュディスクにコピーします。

tux > sudo dd if=IMAGE of=FLASH_DISK bs=4M && sync

IMAGEをインストールメディアイメージファイルへのパスに置き換えて、FLASH_DISKをフラッシュデバイスに置き換えます。

2.3 オフラインマイグレーション

SUSE Linux Enterprise Serverのマイグレーションパスは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのマイグレーションパスと同じです。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/cha-upgrade-paths.htmlにある『アップグレードガイド』を参照してください。

2.4 インストール方法

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストール方法は複数あります。

2.5 インストールワークフローの概要

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールワークフローは、次のステップで構成されます。

  1. オペレーティングシステム(SUSE Linux Enterprise Server)のインストール。3.1項 「インストールワークフローの使用」を参照してください。

  2. SAPインストールウィザード、パート1: すべての必要なSAPメディアをローカルディスクにコピーするか、使用する共有ストレージメディアを選択する。4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」、特にステップ 1を参照してください。

  3. SAPインストールウィザード、パート2: ユーザにインタラクティブにクエリを実行して、実際のインストールのすべてのパラメータを収集する。4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」、特にステップ 10を参照してください。

  4. SAPインストールウィザード、パート3: SAPインストーラを実行する。4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」、特にステップ 13を参照してください。

これらのステップのほとんどは各ステップ後すぐに実行する必要がないため、システムのインストール方法に柔軟性があります。これは、最初のステップとして単一のインストールを準備し、そこから続行できることを意味します。例:

  • オペレーティングシステム(SUSE Linux Enterprise Server)のみをインストールします。

    あるいは、

  • オペレーティングシステム(SUSE Linux Enterprise Server)をインストールし、SAPメディアをコピーして、SAPインストールパラメータを収集します。

次に、ディスクイメージを作成して、それらを他のシステムにコピーし、SAPインストールパラメータを調整します。最後に、各マシンの個別のインストールを終了します。

2.6 インストールに必要なデータ

オペレーティングシステム

SUSE Linux Enterprise Serverのインストールには、すべての物理サーバについて次のデータが必要です。

  • ホスト名、ドメイン、IPアドレス、サブネットマスク、ドメインsearchlist(DNS)、名前サーバのIP、ゲートウェイ用IPなどの、ネットワーク設定パラメータ

  • SUSE Linux Enterprise Serverインストール用の管理者(root)パスワード

SAPアプリケーション

SAPアプリケーションのインストールでは、通常、次のものを指定する必要があります。

  • SAP SID

  • SAPインスタンス番号

  • SAPアプリケーションのパスワード

インストールするSAPアプリケーションによって、T-Shirt Sizingや仮想ネットワーキング用のパラメータなど、より多くのパラメータが必要な場合があります。

SAP HANAデータベース

SAP HANAのインストールでは、次を指定する必要があります。

  • SAP SID

  • SAPインスタンス番号

  • マルチテナントデータベースコンテナ(MDC)を有効にするかどうか。SAP HANAのマルチテナントサポートにより、1つのSAP HANAインストールとして実行される複数のデータベースを使用できます。(SAP HANA MDCを使用するには、SAP HANA Life Cycle Managerが必要です。)

    シングルテナントインストールの場合は、いいえを選択します。

    1人のSIDadmユーザによって管理されるマルチテナントインスタンスの場合、Yes with low isolation (低分離の場合は、はい)を選択します。

    各データベースが独自のSIDadmユーザを持つ管理対象のマルチテナントインスタンスの場合は、Yes with high isolation (高分離の場合は、はい)を選択します。

  • SAP HANAデータベースのパスワード

SAPソフトウェアの詳細については、https://help.sap.comhttps://support.sap.comにあるSAPドキュメントを参照してください。

2.7 パーティショニング

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、次の2つのステージでパーティショニングテーブルを作成します。

  1. オペレーティングシステムのパーティショニング(ステージ1) (オペレーティングシステムのインストール中)

  2. SAPシステムのパーティショニング(ステージ2) (SAP製品のインストール中)

2.7.1 オペレーティングシステムのパーティショニング(ステージ1)

オペレーティングシステムのインストール中に、オペレーティングシステムのパーティションが作成されます。

/dev/systemという名前の論理ボリュームグループ(LVG)が作成されます。このLVGには次の2つの論理ボリューム(LV)が含まれます。

  • /dev/system/root: デフォルトで60GB、オペレーティングシステムとSAPメディアを考慮

  • /Dev/system/swap: デフォルトで2GB、小さいサイズは設定しない。『SAP Note 1984787: SUSE Linux Enterprise Server 12: Installation notes』(https://launchpad.support.sap.com/#/notes/1984787)も参照してください。

また、bootまたはUEFIパーティションが必要に応じて作成されます。

2.7.2 SAPシステムのパーティショニング(ステージ2)

SAPシステムのパーティショニングは、次の方法で作成できます。

パーティショニングのこの部分は、オペレーティングシステムがインストールされた後でのみ作成できます。これは、パーティションが、再起動後のインストールワークフローまたは実行中のシステムのいずれかで作成されることを意味します。

インストールする製品および特定の使用例によって、必要なハードディスク容量が異なる可能性があります。

AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニングについては、付録B AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニングを参照してください。

3 オペレーティングシステムのインストール

次のセクションでは、基本オペレーティングシステムのインストール手順について説明します。インストールワークフローを使用すると、ローカルインストールメディアを使用するか、ネットワークを介してインストールできます。または、AutoYaSTを使用してインストールできます。

3.1 インストールワークフローの使用

インストールワークフローは、SAPアプリケーション用に最適化された設定を使用したオペレーティングシステムのガイド付きインストールです。インストールワークフロー中に、SAPアプリケーションをインストールするかどうかを選択できます。その場合、SUSE Linux Enterprise Serverのインストールが完了したら、SAPインストールメディアを指定するように求められます。サードパーティの拡張機能をインストールするかどうかも選択できます。

このセクションは、ローカルメディアからインストールを開始することを前提としています。 リモートメディアからインストールを開始する方法については、3.2項 「ネットワークからのSLES-SAPメディアの使用」を参照してください。

詳細については、2.5項 「インストールワークフローの概要」を参照してください。

このセクションでは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsオペレーティングシステムのインストールについて説明します。

重要
重要: Oracleデータベースのインストール

Oracleデータベースを後でインストールできるようにするには、まずSUSE Linux Enterprise Serverをインストールしてから、インストールをSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに変換します。

これは、Oracleデータベースのインストーラで、特定のファイルが存在するかを照会するために必要です。これらのファイルのすべてがSLES-SAPインストールに含まれているわけではありません。

変換の詳細については、3.4項 「SLESインストールのSLES-SAPインストールへの変換」を参照してください。

手順 3.1: OSインストールの開始
    • Intel 64/AMD64では、インストールメディアからブートします。ブートメニューからインストールを選択します。

    • POWERでは、SUSE Linux Enterprise Serverのドキュメントの手順に従ってください。『導入ガイド』インストールの準備パートの章、IBM POWERへのインストール(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    インストールメディアのブートメニュー
    図 3.1: インストールメディアのブートメニュー

    初期オペレーティングシステムの起動時に、Escを押してブートメッセージを表示できます。このプロセスが完了したら、グラフィカルインストールワークフローが開始されます。最初のステップとして、インストールワークフローはそれ自体のアップデートを確認します。その後、インストールが開始できるようになります。

  1. 言語でデフォルトのシステム言語を選択します。

    言語、キーボード、および製品選択
    図 3.2: 言語、キーボード、および製品選択
  2. キーボードレイアウトで、適切なキーボードレイアウトを選択します。選択したレイアウトが物理キーボードに一致しているかどうかをテストするには、キーボードテストテキストボックスを使用します。

  3. SLE 15 SP2では、製品ライン全体に単一のインストールISOを提供します。したがって、このページでインストールする製品を選択する必要があります。

    インストールする製品で、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP2を選択します。

  4. 使用許諾契約に目を通してください。同意する場合は、はい、ライセンス条項に同意しますを選択します。次へで続行します。

    同意しない場合は、中止 › インストールを中止でインストールをキャンセルします。

  5. DHCPを介した自動ネットワーク設定が失敗すると、ネットワーク設定画面が開きます。

    代わりに登録画面が表示される場合は、ネットワーク接続が機能しています。ネットワーク設定を変更するには、ネットワーク設定をクリックします。

    ネットワークを設定し終えたら、次へで続行します。

    重要
    重要: SAPで推奨するようにネットワークを設定する

    SAPで提供されているドキュメントどおりに、ネットワーク接続を設定してください。

    ネットワーク設定については、 『管理ガイド』ネットワークの基礎の章のセクション、YaSTによるネットワーク接続の設定 (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

  6. 登録画面で、電子メールアドレス登録コードを入力します。登録が正常に完了しないと、製品アップデートとテクニカルサポートの資格が受け取れません。

    次へで続行します。

    重要
    重要: このステップで登録

    インストールのこのステップでシステムを必ず登録してください。登録をしないと、最小限のSLEシステムしかインストールされず、アップデートの通知は受け取れません。

    インストール中にネットワークにアクセスせずに完全な(ただしアップデートされていない) SLES-SAPシステムをインストールするには、https://download.suse.comからのSLE 15 SP2パッケージISOイメージを使用してください。次に、このページで登録をスキップするを選択して、次のページでアドオン製品としてSLE 15 SP2パッケージISOイメージを選択します。

    登録
    図 3.3: 登録
  7. 更新リポジトリを有効にするかどうか尋ねられたら、はいを選択します。

  8. システムが正常に登録されたら、YaSTでSUSE Customer CenterからSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsで使用可能なモジュールが一覧表示されます。デフォルトでは、最も一般的なケースが選択されています。追加のモジュールを有効にするには、そのエントリを有効にします。

    注記
    注記: リリースノート

    これ以降の手順では、リリースノートを選択することで、インストールプロセスのどの画面からでもリリースノートを参照できます。

    次へで続行します。

  9. アドオン製品ダイアログを使用して、SUSE Customer Centerで提供されていない他のソフトウェアソース(リポジトリ)をSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに追加できます。このようなアドオン製品には、ご使用のシステム用のサードパーティの製品や、ドライバまたは追加ソフトウェアなどがあります。

  10. システムの役割を選択します。システムの役割は、選択したシナリオに合わせてシステムを調整する事前定義済みの使用例です。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの場合、次のいずれかを選択できます。

    • SAP アプリケーション向け SLES: デフォルト。ほとんどの状況に推奨されます。このシステムの役割には、次のプロパティが含まれています。

      • SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールウィザードのサポート。

      • RDPアクセス(「リモートデスクトッププロトコル」)の有効化。

      • 特別なパーティショニング推奨事項の提供。

    • GNOMEを利用するSLES: 固有なケースで必要になる場合があります。このインストールパスについては、このドキュメントでは説明していません。このインストールパスの詳細については、 『インストールクイックスタート』のセクション、SUSE Linux Enterprise Serverのインストール (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    固有の使用例(高可用性、テキストモード、最小、およびKVM/XEN仮想化ホスト)用に追加のシステムの役割を使用できます。

    次へで続行します。

    システムの役割
    図 3.4: システムの役割
手順 3.2: OSインストールの完了
  1. 次のオプションを有効にするかどうかを選択します。

    • システムとともにSAPアプリケーションをインストールするには、オペレーティングシステムのインストール直後にSAP製品のインストールウイザードを起動するを有効にします。

    • このマシンへのRDPアクセス(リモートデスクトッププロトコル)を有効にするには、Enable RDP service and open port in firewall (PDPサービスを有効にして、ファイアウォールでポートを開く)を有効にします。

      RDPを介した接続の詳細については、第11章 「RDPを介した接続を参照してください。

  2. ボリューム/dev/system/root/dev/system/swapに対して提案されるパーティション設定を確認します。ボリューム/dev/system/data2.7項 「パーティショニング」で説明されているように、後で作成されます。

    適切な値が事前に選択されています。ただし、必要に応じて、パーティションレイアウトを変更します。次のオプションがあります。

    ガイド付き設定

    入力に基づいて新しいパーティショニングの提案を作成します。

    エキスパートパーティショナ

    『導入ガイド』の高度なディスクセットアップの章のセクション、YaSTパーティショナの使用(https://documentation.suse.com/sles-15)で説明されているエキスパートパーティショナを開きます。

    SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに固有のパーティショニングアドバイスについては、2.7項 「パーティショニング」を参照してください。

    提案されたセットアップを変更しないで受け入れるには、次へで続行します。

    推奨のパーティション
    図 3.5: 推奨のパーティション
  3. システムで使用する時計とタイムゾーンを選択します。時刻を手動で調整したり、時刻同期用のNTPサーバを設定したりするには、その他の設定を選択します。詳細については、『導入ガイド』YaSTによるインストールの章のセクション、時計とタイムゾーン(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

  4. システム管理者アカウント(rootと呼ばれる)のパスワードを入力し、パスワードの確認でパスワードを繰り返します。キーボードレイアウトのテストテキストボックスを使用して、すべての特殊文字が正しく表示されているか確認できます。

    SSHログインを介してパスワード不要認証を有効にする場合は、SSH公開鍵の取り込みを介して鍵を取り込むことができます。パスワードを介してrootログインを完全に無効にする場合は、鍵のみをアップロードし、rootパスワードは指定しないでください。この場合、システム管理者としてのログインは、それぞれの鍵を使用したSSH経由でのみ可能です。

    詳細については、『導入ガイド』YaSTによるインストールの章のセクション、システム管理者root向けパスワード(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

    重要
    重要: rootのパスワードは決して忘れないこと

    ユーザrootには、すべての管理タスクを実行する権限があります。このパスワードがなければ、rootとしてシステムにログインできません。ここに入力したパスワードを後で取得することはできません。

  5. インストールの設定画面で、いくつかの提案されるインストール設定を確認し、必要に応じて変更できます。各設定は現在の設定とともに表示されます。設定の一部を変更するには、適切なヘッドライン、他の下線付きアイテムをクリックします。

    重要
    重要: ファイアウォール設定

    SLES-SAPのソフトウェアファイアウォールはデフォルトで有効になっています。ただし、多くの場合、SAP製品が開く必要のあるポートは自動的に開かれません。これは、必要なポートを手動で開くまで、ネットワークの問題が生じる可能性があることを意味します。

    詳細については、9.1項 「firewalldの設定」を参照してください。

    インストールの設定
    図 3.6: インストールの設定
  6. 必要なシステム設定を完了したら、インストールをクリックします。

    ソフトウェアの選択によって、インストールプロセスを開始することを確認するよう求められる前に、さらにライセンス契約に同意する必要がある場合があります。

    警告
    警告: データの削除

    インストールプロセスが完全または部分的にディスク上の既存のデータを上書きします。

    インストールの確認ボックスで、インストールをクリックします。

    オペレーティングシステムのインストールが完了したら、システムは自動的に再起動します。

    • システムのインストール準備のみを選択した場合、システムはデスクトップログイン画面から起動します。

    • SAPアプリケーションを今すぐインストールすることを選択する場合、インストールは再起動後に続行します。第4章 「SAPアプリケーションのインストールに進んでください。

3.2 ネットワークからのSLES-SAPメディアの使用

このセクションでは、ネットワークを介して提供されるインストールメディアからインストールする方法について簡単に説明します。これにより、たとえば、通常のSLESメディアを使用してSLES-SAPをインストールできます。

  1. SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsインストールメディアのコンテンツをWebサーバ(例: example.com)のディレクトリ/srv/www/htdocs/sap_repoにコピーします。

  2. SLESインストールメディアからのブート

  3. /キーを使用して、ブートメニューオプションのいずれかを選択します。次にコマンドラインに追加します。これを実行するには、下に一覧表示されるパラメータを指定します。

    • ネットワークの使用を許可するには、ifcfg=*=dhcpを追加します(これがデフォルトです)。

    • パラメータinstall=SERVER/DIRECTORYを追加します。

  4. 3.1項 「インストールワークフローの使用」の指示に従います。

詳細については、『導入ガイド』の章、リモートインストール) (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

SLESインストールメディアを使用してシステムを初期化する必要がないようにするため、PXEを介してネットワーク経由でブートできます。詳細については、『AutoYaSTガイド』の章、Booting via PXE over the Network (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

3.3 外部AutoYaSTプロファイルの使用

AutoYaSTを使用したインストールの詳細については、次のガイドを参照してください。

AutoYaSTを使用したSAPアプリケーションのパーティショニングに関する詳細については、2.7項 「パーティショニング」を参照してください。

SUSE ManagerサーバからSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsを導入する場合は、SUSE ManagerのReference ManualSystemsAutoinstallation、およびSUSE ManagerのAdvanced Topicsの章、Minimalist AutoYaST Profile for Automated Installations and Useful Enhancements(https://documentation.suse.com/suma)を参照してください。

3.4 SLESインストールのSLES-SAPインストールへの変換

SUSE Linux Enterprise Server 15 SP2またはJeOS 15 SP2のインストールをSLES-SAPのインストールに変換するには、スクリプトMigrate_SLES_to_SLES-for-SAP.shを使用します。スクリプトはシステムを正常に登録し、適切なリポジトリに登録します。

SLES-SAPの登録用の電子メールアドレスと登録コードがあることを確認します。

  1. パッケージ migrate-sles-to-sles4sapをインストールします。

  2. 次のコマンドを実行します。

    root # Migrate_SLES_to_SLES-for-SAP.sh
  3. マイグレーションを続行することを確認するように求められたら、Yを押して、Enterを押します。

  4. 求められたら、登録用の電子メールアドレスを入力し、Enterを押します。

  5. 求められたら、登録キーを入力し、Enterを押します。

    スクリプトが完了するまで待ちます。その後、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsソフトウェアリポジトリに登録され、パッケージ SLES-releaseSLES_SAP-releaseを優先して削除されます。

重要
重要: スクリプトはデフォルトのSLES-SAPパッケージをインストールしない

スクリプトはデフォルトのSLES-SAPインストールに含まれているすべてのパッケージをインストールするわけではありません。ただし、これらは自分で手動インストールできます。デフォルトのパッケージの選択をインストールするには、次のコマンドを使用します。

root # zypper in patterns-sles-sap_server

4 SAPアプリケーションのインストール

このセクションでは、SAPから受け取ったSAPメディアセットのインストールについて説明します。

4.1 SAPインストールウィザードを使用してインストール可能な製品

SAPインストールウィザードを使用して、スタンドアロンのSAP HANAデータベースインスタンスをインストールできます。また、SAPインストールウィザードを使用して、次のSAP製品を(データベースとともに)インストールできます。

  • SAP S/4HANA, on-premise edition 1511

  • SAP NetWeaver 7.5

  • SAP NetWeaver 7.4 Support Release 2

  • SAP NetWeaver 7.4 Support Release 1

  • SAP NetWeaver 7.4

  • SAP Enhancement Package 1 for SAP NetWeaver 7.3

  • SAP NetWeaver 7.3

  • SAP NetWeaver Composition Environment (CE) 7.2

  • SAP EHP1 for SAP NetWeaver Composition Environment (CE) 7.1

  • SAP NetWeaver Composition Environment (CE) 7.1

  • SAP EHP1 for SAP NetWeaver Mobile/Banking 7.1

  • SAP EHP1 SAP NetWeaver Process Integration 7.1

  • SAP EHP1 for SAP NetWeaver Adaptive Computing Controller 7.1

  • SAP NetWeaver Mobile/Banking 7.1

  • SAP NetWeaver Process Integration 7.1

  • SAP NetWeaver Adaptive Computing Controller 7.1

  • SAP Business Suite powered by SAP HANA

  • SAP Business Suite 7i 2016

  • SAP Business Suite 7i 2013 Support Release 2

  • SAP Business Suite 7i 2013 Support Release 1

  • SAP Business Suite 7i 2011 Java

  • SAP Business Suite 7i 2010 Java

  • SAP Business Suite 7 Support Release 1 Java

  • SAP Solution Manager 7.2 Support Release 1

  • SAP Solution Manager 7.1 powered by SAP HANA

  • SAP NetWeaver AS ABAP 7.4, OEM version 1.0

重要
重要: Oracleデータベースのインストールはできない

SAPインストールウィザードでは、Oracleデータベースと一緒に製品をインストールすることはできません。Oracleデータベースをインストールするには、まず、基本製品のSUSE Linux Enterprise Serverをインストールしてから、Oralceデータベースをインストールし、後で、インストールをSLES-SAPに変換します。これは、Oracleデータベースのインストーラで、特定のファイルが存在するかを照会するために必要です。これらのファイルのすべてがSLES-SAPインストールに含まれているわけではありません。

変換の詳細については、3.4項 「SLESインストールのSLES-SAPインストールへの変換」を参照してください。

4.2 最初のステップ

これらの最初のステップは、インストールワークフロー中にのみ関連します。

  1. システムがブートすると、ようこそ画面が表示されます。次へで続行します。

  2. ネットワーク設定画面が開きます。これにより、ネットワーク設定を変更することができます。

    ネットワークを設定し終えたら、次へで続行します。

    重要
    重要: SAPで推奨するようにネットワークを設定する

    SAPアプリケーションのドキュメントに従って、ネットワーク接続を設定してください。

    ネットワーク設定については、 『管理ガイド』ネットワークの基礎の章のセクション、YaSTによるネットワーク接続の設定 (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    (次の画面が読み込まれる間、ようこそ画面が数秒間、再び表示される場合があります。)

  3. 以下のいずれかのオプションを選択してください。

    SAPファイルシステムを作成し、SAP製品のインストールを開始します

    SAPアプリケーションをインストールし、他のシステムにSAPインストールルーチンを提供するサーバとしてシステムを設定できます。

    4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」に進んでください。

    Only create SAP HANA file systems, do not install SAP products now (SAP HANAファイルシステムのみを作成し、今はSAP製品をインストールしません)

    SAP BusinessOne認定ハードウェア上にSAP HANAファイルシステムを作成します。

    重要
    重要: ハードウェア要件

    ご使用のマシンが2.1項 「ハードウェア要件」で詳しく説明されるSAP HANAのハードウェア要件を満たしていることを確認してください。満たしていない場合、このオプションは、新しいファイルシステムを作成せず、インストールワークフローはこの時点で終了します。

    Finish wizard and proceed to OS login (ウィザードを完了し、OSログインに進みます)

    SAPアプリケーションをインストールせず、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのログイン画面に進みます。

    次へで続行します。

4.3 SAPインストールウィザードの使用

SAPインストールウィザードを使用して、SAP NetWeaverシステム(データベースを含む)またはSAP HANAシステムをインストールします。

他のSAPアプリケーションをインストールしたり、より高度なSAP HANAセットアップを作成したりするには、このウィザードではなく、SAPによって提供されるインストール方法のいずれかを直接使用してください。

ヒント
ヒント: 完全にインストールされたシステムへのSAPアプリケーションのインストール

このプロセスは、インストールワークフロー中に表示されるとおりに文書化されています。ただし、インストール済みシステムで使用可能なYaSTモジュールSAPインストールウィザードにも適用されます。

SAPインストーラを起動するには、デスクトップからアプリケーション › システム › YaSTの順に選択し、YaSTコントロールセンターでその他 › SAPインストールウィザードを選択して続行します。

ヒント
ヒント: SAPインストールウィザードの設定

SAPインストールウィザードの設定は/etc/sysconfig/sap-installation-wizardで指定され、文書化されています。ニーズに応じてそれを変更できます。

  1. SAPインストールウィザード画面で、SAPインストールマスタの場所(図4.1「SAPインストールマスタの場所」)を指定します。場所はローカル、リムーバブル、またはリモートインストールソースのいずれかです。

    SAPインストールマスタの場所
    図 4.1: SAPインストールマスタの場所

    ドロップダウンボックスから適切なオプションを選択します。テキストボックスで、次の表に示す形式に従って、ソースへのパスを指定します。

    表 4.1: メディアソースのパス

    オプション

    説明

    パスの形式

    「ローカルソース」

    dir://

    ローカルディレクトリ

    /path/to/dir/

    「リムーバブルソース」

    デバイス://

    ローカルに接続されたハードディスク

    devicename/path/to/dir/on/device

    usb://

    USBマスストレージデバイス

    /path/to/dir/on/USB

    cdrom://

    CDまたはDVD

    //

    「リモートソース」

    nfs://

    NFS共有

    server_name/path/to/dir/on/device

    smb://

    SMB共有

    [user_name:password@]server_name//path/to/dir/on/server[?workgroup=workgroup_name]

    ヒント
    ヒント: リモートの場所の指定

    NFSソースからインストールするには、サーバの名前とメディアデータへの完全なパスを指定します。リモートインストールサーバの設定については、第6章 「SAPメディアセット用のインストールサーバの設定を参照してください。

    以前にインストールサーバからSAPアプリケーションをインストールしたことがある場合、またはシステムをインストールサーバとして設定している場合は、インストールマスタのプロバイダとしてそのサーバを直接選択することもできます。これを行うには、インストールマスタの選択の下のドロップダウンボックスを使用します。

  2. 高度なオプションで、次のオプションから選択します。

    SAP製品に対するインストールプロファイルを収集しますが、インストールは実行しません

    このオプションを使用して、インストールパラメータを設定しますが、実際のインストールは実行しません。このオプションを使用すると、SAPインストーラ(SAPinst)は実際のSAP製品のインストールを実行しないで停止します。ただし、以降の手順はすべて適用されます。

    詳細については、4.4項 「インストールプロファイルを使用したインストールの続行」を参照してください。

    Serve all installation media (including master) to local network via NFS (すべてのインストールメディア(マスタを含む)をFNSを介してローカルネットワークに提供します)

    このシステムを他のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsシステムのインストールサーバとして設定します。このインストールサーバにコピーされるメディアは、NFSを介して提供され、サービスロケーションプロトコル(SLP)を介して検出できます。

    次へで続行します。

    SAPインストールウィザードは、インストールマスタをローカルディスクにコピーします。選択したインストールマスタのタイプによって、インストールは異なる方法で続行されます。

    • SAP HANAデータベースをインストールする場合は、ステップ 8にスキップします。

    • SAP NetWeaverアプリケーションをインストールする場合は、次の手順に進みます。

  3. SAPインストールウィザード画面で、インストールする追加のインストールメディアの場所を指定します。これには、SAPカーネル、データベース、データベースエクスポートが含まれます。

    メディアのコピー

    追加のインストールメディアへのパスを指定します。パスの指定の詳細については、表4.1「メディアソースのパス」を参照してください。

    メディアのコピーの省略

    追加のインストールメディアはコピーしない。追加のインストールメディアが必要ない場合、または追加のインストールメディアをCD/DVDやフラッシュディスクなどのソースから直接インストールする場合は、このオプションを選択します。

    SAP製品に追加のインストールメディアが必要であるにもかかわらずこのオプションを選択する場合は、後でSAPインストーラ(SAPinst)に関連するパスを提供する必要があります。

    次へで続行します。

    インストールメディアをコピーすることを選択する場合、SAPインストールウィザードはローカルハードディスクに関連するファイルをコピーします。

    SAPインストールウィザード: 追加のインストールメディア
    図 4.2: SAPインストールウィザード: 追加のインストールメディア
  4. インストールメディアをコピーした後で、追加のインストールメディアを準備するかどうかを尋ねられます。これを行うには、はいをクリックします。次に、ステップ 3の手順に従います。

    これを行わない場合は、いいえをクリックします。

  5. What Would You Like to Install (インストールするもの)画面のThe SAP product is (SAP製品)の下で、製品をインストールする方法を選択します。

    SAP標準システム

    そのデータベースを含むSAPアプリケーションをインストールします。

    SAPスタンドアロンエンジン

    標準製品に機能を追加するエンジン: SAP TREX、SAP Gateway、およびWeb Dispatcher。

    分散システム

    複数のサーバに分散されたSAPアプリケーション。

    SAP高可用性システム

    高可用性セットアップでのSAP NetWeaverのインストール。

    システムの名前変更

    SAPシステムID、データベースID、インスタンス番号、ホスト名など、さまざまなシステムプロパティを変更できます。これを使用して、同じ製品を異なるシステムに非常に類似した設定でインストールできます。

    SAPインストールウィザード: インストールの種類とデータベース
    図 4.3: SAPインストールウィザード: インストールの種類とデータベース
  6. SAP標準システム分散システム、またはSAP高可用性システムを選択した場合、追加でバックエンドデータベースでバックエンドデータベースを選択します。

    次へで続行します。

  7. 製品を選択してください画面が表示されます。表示される製品は、SAPから受け取ったメディアセットとインストールマスタによって異なります。リストから、インストールする製品を選択します。

    次へで続行します。

    SAPインストールウィザード: 製品の選択
    図 4.4: SAPインストールウィザード: 製品の選択
  8. 補足メディアまたはサードパーティメディアをコピーするかどうかを尋ねられます。これを行う場合は、はいをクリックして、ステップ 3の手順に従います。

    これを行わない場合は、いいえをクリックします。

    注記
    注記: 補足メディア/サードパーティメディアと追加のソフトウェアリポジトリの違い

    どちらのタイプの配信メカニズムでも、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsメディアの一部でもなく、SAPのメディアセットの一部でもないソフトウェアをインストールできます。ただし、配信メカニズムは異なります。

    • 補足メディア/サードパーティメディアは、インストールウィザードとカスタムインストールスクリプトの作成を許可するAutoYaSTファイルを使用してインストールされます。

    • 追加のソフトウェアリポジトリは、購読したままにするRPMパッケージリポジトリです。これは、サードパーティメディアのアップデートと定期的なシステムアップデートを受信することを意味します。

    補足メディアの作成方法については、付録C 補足メディアを参照してください。

  9. SAPをインストールするための追加のソフトウェアリポジトリ画面では、さらにソフトウェアリポジトリを追加できます。たとえば、RPMとしてパッケージ化されたアドオン用。これを実行するには、新しいソフトウェアリポジトリの追加をクリックします。リポジトリの追加の詳細については、『導入ガイド』ソフトウェアをインストールまたは削除するの章のセクション、ソフトウェアリポジトリの追加(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

    注記
    注記: コピーされたSAPメディアの場所

    この時点で、SAPインストールに必要なすべてのデータが/data/SAP_CDsにコピーされています(コピープロセスをスキップすることを選択した場合を除く)。各インストールメディアは個別のディレクトリにコピーされます。たとえば、次のようなディレクトリ構造があります。

    tux > ls /data/SAP_CDs
    742-KERNEL-SAP-Kernel-742
    742-UKERNEL-SAP-Unicode-Kernel-742
    RDBMS-MAX-DB-LINUX_X86_64
    SAP-NetWeaver-740-SR2-Installation-Export-CD-1-3
    SAP-NetWeaver-740-SR2-Installation-Export-CD-2-3
    SAP-NetWeaver-740-SR2-Installation-Export-CD-3-3

    /data/SAP_CDsは、/etc/sysconfig/sap-installation-wizard設定ファイルで指定されているデフォルトのディレクトリです。

  10. インストールする製品に応じて、1つ以上のダイアログが、インストールするSAPアプリケーションのいくつかの設定パラメータの値を指定するよう要求します。

    SAPによって提供されたドキュメントの説明に従って、値を指定します。設定パラメータのヘルプも、ダイアログの左側に表示されます。詳細については、2.6項 「インストールに必要なデータ」を参照してください。

    1つ(または複数)のフォームに入力し、OKで続行します。

    製品パラメータを設定するダイアログ
    図 4.5: 製品パラメータ

    完了したら、SAPインストールウィザードは追加のソフトウェアパッケージをダウンロードします。

  11. インストールを続行するか、または別のSAP製品をインストールする準備をするかを尋ねられます。別のSAP製品を準備することを選択する場合は、この手順の初めから開始します。

  12. SAP HANAの認定を受けておらず、SAP HANA TDI (Tailored Datacenter Integration)用の最小ハードウェア要件を満たしていないシステムにSAP HANAをインストールする場合は、続行するかどうかを尋ねられます。このメッセージを予期せずに受信する場合は、2.1項 「ハードウェア要件」、およびhttps://service.sap.com/sizingにあるSAPのサイジングガイドラインを確認してください(情報にアクセスするにはSAP IDが必要です)。

    それ以外の場合は、はいで続行します。

  13. 以降の手順は、インストールするSAPアプリケーションのタイプによって異なります。

    • SAP HANAデータベースをインストールする場合、さらに質問されることなく、SAP HANAがインストールされます。

    • SAP NetWeaverアプリケーションをインストールする場合、実際のインストールはSAPインストーラ(SAPinst)を使用して実行されます。数秒後、SAPインストーラが自動的に開きます。

      SAPで提供されるドキュメントの説明に従って、SAPインストーラを実行します。ほとんどの設定パラメータはすでに正しく入力されています。

    SAPインストーラ: パラメータの定義
    図 4.6: SAPインストーラ: パラメータの定義
    ヒント
    ヒント: インストールログファイル

    SAPアプリケーションのインストールが失敗する場合は、インストールログファイルを参照してください。/var/adm/autoinstallにあります。失敗したインストールは、名前が.errで終わるファイルに記録されます。

    ログファイルの詳細については、第13章 「重要なログファイルを参照してください。

  14. 最後の画面はインストールが完了しましたです。

    このインストールでAutoYaSTファイルを作成するには、AutoYaST用にこのシステムのクローンを作成するを有効にします。AutoYaSTファイルは/root/autoinst.xmlに配置されます。

    完了をクリックします。

4.4 インストールプロファイルを使用したインストールの続行

SAPインストールウィザードの以前の実行中にCollect installation profiles but do not execute installation (インストールプロファイルは収集しますが、インストールは実行しません)を選択した場合、このセクションには、選択したSAPアプリケーションのインストールの続行方法が表示されます。

インストールプロファイルを収集する場合、SAPインストールウィザードでは、製品イメージが/data/SAP_CDsにコピーされます。またこのウィザードでは、パス/data/SAP_INSTの下にあるすべての製品のインストール環境も準備されます。

/data/SAP_INST/0/Instmaster
/data/SAP_INST/1/Instmaster
/data/SAP_INST/2/Instmaster
[...]

これらのファイルは以下で再使用されます。インストールを続行するには、次の手順に従います。

  1. /etc/sysconfig/sap-installation-wizardで、以下を設定します。

    SAP_AUTO_INSTALL="yes"
  2. SAP HANA/SAP BusinessOneのインストールの場合、SAPインストールウィザードは後で/data/SAP_INST/numberのAutoYaSTファイルに記載されているパラメータを使用します。

    任意のパラメータを変更する必要がある場合は、この時点でAutoYaSTファイルを調整してください。

  3. YaSTコントロールセンターを開いて、SAPインストールウィザードを開始します。

  4. 保留中のインストールを続行するかどうかを尋ねられます。インストールを選択します。

  5. それ以降のすべての操作は、SAPインストーラ内で行われます。SAPで提供されるドキュメントの説明に従って、SAPインストーラの手順を実行します。

    • SAP NetWeaverのインストールの場合、SAPインストーラのすべてのパラメータが微調整用に再度提供されます。

    • SAP HANA/SAP BusinessOneのインストールの場合、インストーラはパラメータを変更することを提案しません。

4.5 SAPインストールウィザードを使用しないSAPアプリケーションのパーティショニング

SAPインストールウィザードを使用しない場合、コマンドラインから直接SAPアプリケーションのパーティショニングを作成することもできます。まず、ディレクトリ/usr/share/YaST2/include/sap-installation-wizard/で正しいパーティショニングファイルを見つけるか、独自のパーティショニングファイルを作成します。詳細については、2.7.2項 「SAPシステムのパーティショニング(ステージ2)」を参照してください。

正しいパーティショニングXMLファイルを決定したら、次のコマンドを実行します。

root # yast2 sap_create_storage_ng ABSOLUTE_PATH_TO_PARTITIONING_FILE

4.6 AutoYaSTを使用したSAPアプリケーションの自動インストール

AutoYaSTからSAPインストールウィザードを使用して、SAPアプリケーションのインストールを自動化できます。

4.6.1 SAP HANAのインストール

次のAutoYaSTスニペットは、SAP HANAまたはSAP TREXのインストールの自動化方法を示しています。

<sap-inst>
  <products config:type="list">
    <product>
      <media config:type="list">
        <medium>
          <url>nfs://server/path1</url>
          <type>sap</type>
        </medium>
        <medium>
          <url>nfs://server/path3</url>
          <type>supplement</type>
        </medium>
      </media>
      <sapMasterPW>PASSWORD</sapMasterPW>
      <sid>SID</sid>
      <sapInstNr>INSTANCE_NUMBER</sapInstNr>
      <sapMDC>no</sapMDC>
    </product>
  </products>
</sap-inst>
  • sapMDC 要素は SAP HANAにのみ適用できます。

  • sapMDCsapVirtHostname 要素は 分散インストールまたは高可用性インストールに指定する必要があります。

パーティショニングを含む完全なSAP HANAの例については、/usr/share/doc/packages/sap-installation-wizard/hana-autoyast.xmlを参照してください。

4.6.2 SAP NetWeaverのインストール

SAP NetWeaverの場合、次の例は、インストールの自動化方法を示しています。具体的には、この例では、SAP NetWeaver 7.5 ABAPサーバ分散システムのASCSインスタンスがMaxDB (製品ID NW_ABAP_ASCS:NW750.ADA.ABAP)と一緒にインストールされるように調整されています。SAP NetWeaverに基づいて他の製品をインストールする場合、次の変数のすべてが必要なわけではないか、これらの変数を他の変数に置き換える必要がある場合があります。

  • SAP NetWeaverインスタンスのマスタパスワード: MASTER_PASSWORD

  • SAP識別子(SID): SID

  • SAPカーネル: KERNEL

  • SAPインスタンス番号: INSTANCE_NUMBER

  • ASCS仮想ホスト名: ASCS_VIRTUAL_HOSTNAME

  • SCS仮想ホスト名: SCS_VIRTUAL_HOSTNAME

<sap-inst>
  <products config:type="list">
    <product>
      <media config:type="list">
        <medium>
          <url>nfs://SERVER/PATH1</url>
          <type>sap</type>
        </medium>
        <medium>
          <url>nfs://SERVER/PATH2</url>
          <type>sap</type>
        </medium>
        <medium>
          <url>nfs://SERVER/PATH3</url>
          <type>supplement</type>
        </medium>
      </media>
      <productID>NW_ABAP_ASCS:NW750.ADA.ABAP</productID>
      <iniFile>
        <![CDATA[
# Password for the Diagnostics Agent specific <dasid>adm user. Provided value
# may be encoded.
DiagnosticsAgent.dasidAdmPassword =

# Windows domain in which the Diagnostics Agent users must be created.
# The property is Microsoft Windows only. This is an optional property.
DiagnosticsAgent.domain =

# Password for the Diagnostics Agent specific SAPService<DASID> user.
# Provided value may be encoded.
# The property is Microsoft Windows only.
DiagnosticsAgent.sapServiceDASIDPassword =

NW_GetMasterPassword.masterPwd = MASTER_PASSWORD

# Human readable form of the Default Login language - valid names are stored
# in a table of the subcomponent NW_languagesInLoadChecks. Used when freshly
# installing an ABAP stack for the machine that performs an ABAP load (in the
# case of a distributed system, that is the database, otherwise it is used by
# the normal installer). The available languages must be declared in the
# LANGUAGES_IN_LOAD parameter of the product.xml . In this file, the one
# character representation of the languages is used. Check the same table in
# the subcomponent mentioned above.
NW_GetSidNoProfiles.SAP_GUI_DEFAULT_LANGUAGE =

# The drive to use (Windows only)
NW_GetSidNoProfiles.sapdrive =

# The /sapmnt path (Unix only)
NW_GetSidNoProfiles.sapmnt = /sapmnt

# The SAP System ID of the system to install
NW_GetSidNoProfiles.sid = SID

# Will this system be unicode system?
NW_GetSidNoProfiles.unicode = true

NW_SAPCrypto.SAPCryptoFile = /data/SAP_CDs/745-UKERNEL-SAP-Unicode-Kernel-745/DBINDEP/SAPEXE.SAR

NW_SCS_Instance.ascsInstanceNumber =

NW_SCS_Instance.ascsVirtualHostname = ASCS_VIRTUAL_HOSTNAME

NW_SCS_Instance.instanceNumber = INSTANCE_NUMBER

NW_SCS_Instance.scsInstanceNumber =

NW_SCS_Instance.scsMSPort =

NW_SCS_Instance.scsVirtualHostname = SCS_VIRTUAL_HOSTNAME

NW_System.installSAPHostAgent = true

NW_Unpack.igsExeSar =

NW_Unpack.igsHelperSar =

NW_Unpack.sapExeDbSar =

NW_Unpack.sapExeSar =

NW_Unpack.sapJvmSar =

NW_Unpack.xs2Sar =

NW_adaptProfile.templateFiles =

# The FQDN of the system.
NW_getFQDN.FQDN =

# Do we want to set the FQDN for the system?
NW_getFQDN.setFQDN = false

# The path to the JCE policy archive to install into the Java home directory
# if it is not already installed.
NW_getJavaHome.jcePolicyArchive =

hostAgent.domain =

# Password for the SAP Host Agent specific sapadm user. Provided value may be
# encoded.
hostAgent.sapAdmPassword = MASTER_PASSWORD

nwUsers.sapDomain =

nwUsers.sapServiceSIDPassword =

nwUsers.sidadmPassword =
            ]]>
      </iniFile>
    </product>
  </products>
</sap-inst>

5 SAP HANAクラスタのアップグレード

概要

この章では、YaSTモジュールSUSE HANA Cluster Update (SUSE HANAクラスタのアップデート)を使用してSAP HANAクラスタをアップグレードする方法について説明します。これはウィザードとして機能し、すべてのSAP HANAクラスタ保守手順について説明します。

SAP HANAの公式ドキュメントでは、いわゆる「ニアゼロのダウンタイムアップグレードプロセス」について説明しています。YaSTモジュールは、このプロセスに基づいており、SUSEクラスタに関連する手順の一部を処理します。すべての手順が自動的に実行できるわけではありません。一部の手順は、SAP HANA管理者が手動で実行する必要があります。YaSTモジュールはプロセス中に通知します。

このYaSTモジュールは 「SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 12 SP3」 以降のyast2-sap-haパッケージで利用可能です。現在、このウィザードはSAP HANAスケールアップパフォーマンス最適化シナリオに対応するためにのみ準備されています。

アップグレードは次のタスクをカバーします。

5.1 アップグレードの準備

  1. 両方のノードに yast2-hana-update パッケージをインストールします。

    root # zypper install yast2-hana-update

    インストール後、YaSTコントロールセンターSUSE HANA Cluster Update (SUSE HANAクラスタのアップデート)モジュールが見つかります。

  2. セカンダリノードで、YaSTコントロールセンターを起動して、SUSE HANA Cluster Update (SUSE HANAクラスタのアップデート)モジュールを開きます。

  3. YaSTモジュールで、前提条件を確認します。次の手順に進む前にこれらのすべての操作を完了してください。このウィザードは「HANAスケールアップパフォーマンス最適化」シナリオのみをサポートしていることに注意してください。

  4. SAP HANAシステムをアップグレードするには、セカンダリノードを選択します。

  5. インストールメディアの場所を選択します。

    SAPメディアが配置される場所をポイントします。必要に応じて、Mount an update medium on all hosts (すべてのホストにアップデートメディアをマウントする)をオンにして、NFS共有とパスを指定します。

    重要
    重要: SAP HANAバージョン1.0と2.0の違い

    SAP HANAバージョン1.0からバージョン2.0にアップグレードする場合は、This is a HANA 1.0 to HANA 2.0 upgrade (これはHANA 1.0からHANA 2.0へのアップグレードです)をオンにしてください。

    YaSTモジュールは以前のセカンダリノードから以前のプライマリノードに「PKI SSFSキー」をコピーします。詳細については、ヘルプボタンを参照してください。

5.2項 「SAP HANAクラスタのアップグレード」に進んでください。

5.2 SAP HANAクラスタのアップグレード

  1. ウィザードによって生成されたアップデート計画を確認してください。

    ウィザードには、自動と手動の2つの手順が示されます。この自動手順では、ウィザードはクラスタリソースを保守モードにしてから、自動手順で開始します。手動手順はSAP HANA固有で、SAP HANA管理者によって実行される必要があります。詳細については、公式のSAP HANAドキュメントを参照してください。

  2. SAP HANAソフトウェアをアップデートします。

    ウィザードは自動アクションを実行し、SAP HANA管理者がSAP HANAアップグレードを実行するまで待機します。

  3. SAP HANAアップグレードを実行します。

  4. プライマリ(リモート)ノードの計画を確認します。

    SAP HANAアップグレードが実行された後で、ウィザードはアップデート計画を示します。この手順を続行すると、ウィザードによってプライマリノードがセカンダリノードになり、アップグレードの準備が整います。

    この手順にはしばらく時間がかかる場合があることに注意してください。

5.3項 「アップグレードタスクの完了」に進んでください。

5.3 アップグレードタスクの完了

  1. 以前のプライマリノードをアップデートします。

    この手順では--hdbupd_server_nostartオプションに特別の注意を払います。

  2. クラスタの以前の状態に復元します。

    デフォルトで、ウィザードは以前のマスタをSAP HANAシステムレプリケーションのセカンダリとして登録します。システムレプリケーションを元の状態に戻したい場合は、Reverse (リバース)ボタンをクリックします。

  3. アップデートのサマリを確認します。

    SAP HANAの元のバージョンと現在のバージョン、およびクラスタの状態を確認できます。

    注記
    注記: 中間クラスタ状態の処理

    ウィザードがクラスタリソースのステータスアップデートより速い場合は、サマリに中間クラスタ状態が表示されます。クラスタ状態はUNDEFINEDまたはDEMOTEDです。

    これを解決するには、SAPHanaSR-showAttrコマンドでクラスタステータスを再度確認し、以前のセカンダリノードがPROMOTED状態になっていることを確認します。

詳細については、SUSEブログの投稿https://www.suse.com/c/how-to-upgrade-your-suse-sap-hana-cluster-in-an-easy-way/を参照してください。

6 SAPメディアセット用のインストールサーバの設定

SAPインストールウィザードを使用すると、リモートサーバ(NFSやSMBなど)からSAPメディアセットをコピーできます。ただし、そこで提供されるオプションを使用すると、同時に製品をインストールする必要があります。さらに、組織で使用されるすべてのSAPメディアを単一のサーバにコピーすることはできません。

ただし、このようなサーバは自分で簡単に作成できます。たとえば、NFSサーバ上にSAPメディアを配置するには、次の手順に従います。

手順 6.1: NFSサーバへのSAP製品インストールファイルの追加
  1. インストールサーバで、/srv/www/htdocs/sap_repoディレクトリを作成します。

  2. /etc/exportsファイルを開いて、次の行を追加します。

    /srv/www/htdocs/sap_repo *(ro,no_root_squash,sync,no_subtree_check,insecure)
    重要
    重要: 実行可能な権限が表示される必要がある

    クライアントは実行可能なファイルを表示できる必要があります。表示できない場合、SUSEのSAPインストールウィザードで、SAPインストーラを実行できません。

  3. /srv/www/htdocs/sap_repoで、使用しているすべてのSAPメディアのディレクトリを作成します。これらのディレクトリに名前を付け、後で特定できるようにします。たとえば、kerneljavahanaなどの名前を使用できます。

  4. cp -aを使用して、各SAPメディアのコンテンツを対応するディレクトリにコピーします。

    重要
    重要: コピーにWindows*オペレーティングシステムを使用しない

    NTFSのようなWindowsファイルシステムとの間でコピーする場合にWindowsオペレーティングシステムを使用すると、許可設定を破損し、ファイルとディレクトリの大文字小文字の区別ができなくなる可能性があります。

現在は、設定したNFSサーバからインストールできます。SAPインストールウィザードで、次のようなパスを指定します。server_name/srv/www/htdocs/sap_repo。パスの指定の詳細については、表4.1「メディアソースのパス」を参照してください。

初めからNFSサーバを設定する方法については、 『管理ガイド』サービスパート、NFS共有ファイルシステムの章のセクション、NFSサーバのインストール (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

NFSサーバからSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする方法については、『導入ガイド』リモートインストールの章のセクション、NFSリポジトリの手動設定 (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

7 SAP HANAクラスタの設定

YaSTウィザードを使用して、SAP HANAシステムレプリケーションを含むベストプラクティスに従って、SAP HANAまたはSAP S/4HANAデータベースサーバクラスタを設定することができます。セットアップオプションの概要は、1.1.3項 「簡素化されたSAP HANAシステムレプリケーションのセットアップ」を参照してください。

管理者はSAP HANA-SRウィザードを使用して、通常はオンプレミス展開で、モジュールを無人で実行できるようになりました。さらに、AzureでSAP HANAクラスタを設定できるようになりました。YaSTモジュールはAzureで実行されている場合にこれを自動的に認識し、Pacemakerに必要な追加のリソースを設定します。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)の次の「ベストプラクティス」には、セットアップ手順が記載されています。

  • パフォーマンス最適化シナリオおよび多層/チェーンシナリオ: Setting up a SAP HANA SR Performance Optimized Infrastructure

  • コスト最適化シナリオ: Setting up a SAP HANA SR Cost Optimized Infrastructure

重要
重要: ウィザードは初期設定にのみ使用可能

以下で説明するYaSTウィザードは、初期クラスタ設定にのみ使用できます。

クラスタを再設定するには、別のYaSTモジュールクラスタ(パッケージ yast2-clusterから入手可能)を使用します。その使用法の詳細については、『管理ガイド』インストール、セットアップ、およびアップグレードパートの章、YaSTクラスタモジュールの使用(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)を参照してください。

7.1 前提条件

次の手順には前提条件があります。

  • SAPインストールウィザードまたはSAP HANA Application Lifecycle Managementによって作成されたSAP HANAインストールを両方に備えている2台のマシン。両方のマシンが同じL2ネットワーク(サブネット)上にある必要があります。

    多層/チェーンシナリオの場合、第3のマシンが他の場所にもある必要があります。

  • マシンは高可用性クラスタとしてまだ設定されていません。

  • openSSHは両方のマシン上で実行されており、ノードはSSHを介して相互接続されています。ただし、まだ実行されていない場合、ウィザードはSSHキー交換自体を実行します。

    SSHに関する詳細については、『セキュリティガイド』ネットワークセキュリティパートの章、SSH: Secure Network Operations (SSH: セキュアなネットワーク運用) (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

  • SBDの同じパス下の両方のノードで使用可能なディスクデバイス。ホストベースのRAID、cLVM2を使用したり、DRBDインスタンスに配置したりしないでください。デバイスは、100MBなどの小さなサイズにすることができます。

  • 次のいずれかを作成しています。

    • プライマリノードのSAP HANAセキュアユーザストアのキー

    • プライマリノードでのSAP HANAの初期バックアップ

  • パッケージ yast2-sap-ha はプライマリノードとセカンダリノードの両方にインストールされます。

  • HANA-Firewallは、すべての関連するネットワークインタフェース上でルールHANA_HIGH_AVAILABILITYおよびHANA_SYSTEM_REPLICATIONに基づいて両方のコンピュータに設定されます。

    HANA-Firewallの設定方法については、9.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照してください。

  • コスト最適化シナリオのみ」: セカンダリノードには、2番目のSAP HANAがインストールされています。データベースは実行されている可能性がありますが、ウィザードによって自動的に停止されます。

  • コスト最適化シナリオのみ」: 非運用環境のSAP HANAインスタンスの場合、モニタリング用にSAP HANAセキュアユーザストアキーQASSAPDBCTRLを作成しています。詳細については、『SAP HANA SR Cost Optimized Scenario』のInstalling the SAP HANA Databases on both cluster nodesの章のセクションPostinstallation configuration、セクションInstall the non-productive SAP HANA database (QAS) (https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。

7.2 セットアップ

次の手順はプライマリノード(マスタとも呼ばれる)で実行する必要があります。続行する前に、7.1項 「前提条件」に一覧表示されている前提条件が満たされていることを確認してください。

  1. YaSTコントロールセンターを開きます。コントロールセンターで、高可用性カテゴリのHA Setup for SAP Products (SAP製品のHAセットアップ)をクリックします。

  2. SAP HANAインスタンスが検出された場合は、スケールアップシナリオPerformance-optimized (パフォーマンス最適化)Cost-optimized (コスト最適化)、またはChained (multi-tier) (チェーン(多層))から選択できます。これらのスケールアップシナリオについては、1.1.3項 「簡素化されたSAP HANAシステムレプリケーションのセットアップ」を参照してください。

    次へで続行します。

    レプリケーションシナリオの選択のスクリーンショット
  3. ウィザードのこのステップでは、選択したスケールアップシナリオの前提条件のリストが表示されます。これらの前提条件は、7.1項 「前提条件」に表示されるものと同じです。

    次へで続行します。

  4. 次のステップでは、クラスタの通信層を設定できます。

    • クラスタの名前を入力します。

    • 通常は、デフォルトの転送モードユニキャストが適切です。

    • Number of rings (リング数)では、通常は単一の通信リングで十分です。

      冗長性を確保するため、多くの場合、複数の通信リングではなく、ネットワークインターフェイスボンディングを使用する方が良いです。詳細については、『管理ガイド』設定および管理パートの章、ネットワークデバイスボンディング(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)を参照してください。

    • 通信リングのリストから、有効な各リングを設定します。これを行うには、選択したものの編集をクリックし、通信するためにネットワークマスク(IPアドレス)およびポート(ポート番号)を選択します。

      OKをクリックして、作業を完了します。

    • さらに、HMAC/SHA1を使用して、設定同期サービスCsync2およびCorosyncセキュア認証を有効にするかどうかを決定します。

      Csync2に関する詳細については、『管理ガイド』インストール、セットアップ、およびアップグレードパート、YaSTクラスタモジュールの使用の章のセクション、すべてのノードへの設定の転送(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)を参照してください。

      Corosyncセキュア認証の詳細については、『管理ガイド』インストール、セットアップ、およびアップグレードパート、YaSTクラスタモジュールの使用の章のセクション、認証設定の定義(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)を参照してください。

    次へで続行します。

    通信層の設定のスクリーンショット
  5. ウィザードでSSHを使用してセカンダリマシンに接続できるかどうかを確認します。可能な場合は、マシンへのrootパスワードを要求します。

    rootパスワードを入力します。

    次回プライマリマシンがセカンダリマシンに接続する必要がある場合、パスワードではなく、SSH証明書を使用して接続します。

  6. 両方のマシンに、ホスト名とIPアドレス(リングごと)を設定します。

    ここで選択したホスト名は、SAP HANAで選択した仮想ホスト名とは独立しています。ただし、SAP HANAとの問題を避けるため、ホスト名にハイフン文字(-)を含めないでください。

    これがSAP HANAの初期インストール中など、以前に実行されていない場合は、すべてのクラスタサーバのホスト名をファイル/etc/hostsに追加する必要があります。このため、/etc/hostsへの追記を有効にします。

    次へで続行します。

  7. NTPがまだ設定されていない場合は、設定してください。これにより、時刻の違いによって2台のマシンで問題が発生することがなくなります。

    1. Reconfigure (再設定)をクリックします。

    2. 一般設定タブで、Now and on Boot (今すぐとブート時)を有効にします。

    3. 追加をクリックして、タイムサーバを追加します。サーバおよび次へをクリックします。次に、クラスタ外のタイムサーバのIPアドレスを指定します。テストをクリックして、サーバへの接続をテストします。

      パブリックタイムサーバを使用するには、選択 › 公開サーバをクリックして、タイムサーバを選択します。OKをクリックして、作業を完了します。

      OKをクリックして、続行します。

    4. セキュリティ設定タブで、ファイアウォールでポートを開くを有効にします。

    5. 次へで続行します。

  8. 次のステップでは、フェンシングオプションを選択します。YaSTウィザードでは、フェンシングメカニズムSBD (「STONITHブロックデバイス」)のみをサポートしています。スプリットブレイン状況を避けるため、SBDはクラスタの状態を保存するディスクデバイスを使用します。

    選択したディスクは、クラスタのすべてのマシンから同じパスで使用できる必要があります。理想的には識別用にby-uuidまたはby-pathのいずれかを使用します。

    ディスクはホストベースのRAID、cLVM2を使用したり、DRBDインスタンスに配置したりしないでください。デバイスは、100MBなどの小さなサイズにすることができます。

    警告
    警告: デバイスのデータは失われる

    選択した1つ以上のSBDデバイスの全データが削除されます。

    使用するデバイスを定義するには、追加をクリックし、by-uuidなどの識別方法を選択して、適切なデバイスを選択します。OKをクリックします。

    追加のSBDコマンドラインパラメータを定義するには、それらをSBD options (SBDオプション)に追加します。

    マシンが特に速く再起動する場合は、Delay SBD start (SBDの起動を遅くする)を有効にします。

    フェンシングの詳細については、『管理ガイド』(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)を参照してください。

    次へで続行します。

  9. 次のページでは、SBDデーモン自体の障害から保護し、このような場合にマシンを強制的に再起動するウォッチドッグを設定できます。

    また、YaSTを使用してすでに設定されているウォッチドッグと、現在ロードされているlsmodによって検出されたウォッチドッグも一覧表示します。

    ウォッチドッグを設定するには、追加を使用します。次に、ハードウェアに適したウォッチドッグを選択し、OKをクリックしてダイアログを閉じます。

    テストするには、ウォッチドッグsoftdogを使用できます。ただし、softdogではなく、運用環境でハードウェアウォッチドッグを使用することを強くお勧めします。ウォッチドッグの選択に関する詳細については、『管理ガイド』ストレージおよびデータレプリケーションパート、Storage Protection (ストレージ保護)の章のセクション、概念の概要Setting Up Storage-based Protection (ストレージベース保護の設定)Setting up the Watchdog (ウォッチドッグの設定) (https://documentation.suse.com/sle-ha-15)を参照してください。

    次へで続行します。

  10. SAP HANAのインストール用(1つ以上のインスタンスも可)パラメータを設定します。コスト最適化シナリオを選択している場合は、非運用SAP HANAインスタンスに関連した詳細を追加入力します。

    運用SAP HANAインスタンス
    • システムIDインスタンス番号がSAP HANA設定のそれらと一致していることを確認します。

    • Replication mode (レプリケーションモード)動作モードは通常、変更する必要はありません。

      これらのパラメータの詳細については、SAPによって提供される、『HANA Administration Guide』を参照してください。

    • 仮想IPアドレスで、プライマリSAP HANAインスタンスの仮想IPアドレスを指定します。Virtual IP Mask (仮想IPマスク)で、仮想IPアドレスに適用するサブネットマスクの長さをCIDR形式で設定します。

    • Prefer site takeover (サイトのテイクオーバーを優先)では、セカンダリインスタンスがプライマリインスタンスのジョブを自動的に引き継ぐ(true)かどうかを定義します。または、クラスタはプライマリマシンでSAP HANAを再起動します。

    • Automatic registration (自動登録)では、プライマリマシンとセカンダリマシンがテイクオーバー後に役割を切り替えるかどうかを決定します。

    • Site name 1 (サイト名1)Site name 2 (サイト名2)の2台のノードで、運用SAP HANAインスタンスのサイト名を指定します。

    • データベースのバックアップを持つことが、SAP HANAレプリケーションを設定するための前提条件です。

      以前にバックアップを作成したことがない場合は、Create initial backup (初期バックアップの作成)を有効にします。Backup settings (バックアップの設定)で、バックアップ用のファイル名Secure store key (セキュアストアキー)を設定します。プライマリノードのSAP HANAセキュアユーザストアのキーは、ウィザードの開始前に作成されている必要があります。

      詳細については、SAPによって提供されるドキュメントを参照してください。

    • 「コスト最適化シナリオのみ」: Production system constraints (運用システムの制約)内で、SAP HANAの運用インスタンスがセカンダリノードで無効になっているときの動作方法を設定します。

      Global allocation limit (グローバル割り当て制限)を設定すると、メモリ使用量を直接制限できます。Preload column tables (列テーブルのプリロード)を有効にすると、メモリ使用量が増加します。

      必要なグローバル割り当て制限については、『How to Perform System Replication for SAP HANA』などのSAPによって提供されているドキュメントを参照してください(https://archive.sap.com/documents/docs/DOC-47702)。

    コスト最適化シナリオのみ」: 非運用SAP HANAインスタンス
    • システムIDインスタンス番号が非運用SAP HANAインスタンスのそれらと一致していることを確認します。

      これらのパラメータは、SAPインスタンスリソースエージェントを使用して、非運用SAP HANAインスタンスのステータスを監視できるようにするために必要です。

    • 非運用インスタンスを停止し、運用インスタンスを開始して、運用システムにおける制約を削除するためのフックスクリプトを生成します。スクリプトはPython 2で記述され、後で必要に応じて変更できます。

      フックスクリプトをクリックして、データベースの正しいユーザ名とパスワードを設定します。OKをクリックします。

      これで、生成されたフックスクリプトの詳細を手動で確認し、変更できるようになりました。完了したら、OKをクリックして、/hana/shared/SID/srHookにフックスクリプトを保存します。

      警告
      警告: パスワードはプレーンテキストで保存される

      デフォルトで、フックスクリプトはプレーンテキストですべての資格情報を保存します。セキュリティを向上させるには、スクリプトを自分で変更してください。

    次へで続行します。

    SAP HANAのオプション(コスト最適化シナリオ)のスクリーンショット
    図 7.1: SAP HANAのオプション(コスト最適化シナリオ)
  11. High-Availability Configuration Overview (高可用性設定の概要)ページで、セットアップが正しいことを確認します。

    設定の詳細を変更するには、下線付き見出しのいずれかをクリックして、該当するウィザードページに戻ります。

    インストールで続行します。

  12. 追加のソフトウェアをインストールするかどうかを尋ねられたら、インストールで確認します。

  13. セットアップが完了した後で、クラスタセットアップのログを表示する画面が表示されます。

    ダイアログを閉じるには、完了をクリックします。

  14. 多層/チェーンシナリオのみ」: 運用SAP HANAインスタンスの管理ユーザアカウントを使用して、システムレプリケーション用にクラスタ外ノードを登録します。

    SIDadm > hdbnsutil -sr_register --remoteHost=SECONDARY_HOST_NAME \
    --remoteInstance=INSTANCE_NUMBER --replicationMode=async \
    --name=SITE_NAME

7.3 SAP HANA-SRウィザードを使用した無人セットアップ

無人セットアップでは、まず、HANAの手動インストールが必要です。その結果が、選択されたすべての設定オプションを含むファイルに保存されます。管理者がインストールを再現する必要がある場合は、このファイルを使用して、インストールを自動的に無人で実行できます。

そのファイルを使用するには、両方のノードで次の手順を実行します。

  1. SAP HANAがインストールされている運用マシンで、sap_ha YaSTモジュールを実行して、設定ファイルを作成します。

  2. 最後の画面で、設定の保存ボタンをクリックします。

  3. 実行する操作を決定します。

    • 設定を確認するには、プライマリSAP HANAマシンに設定をアップロードして検証し、次のコマンドを実行します。

      root # yast2 sap_ha readconfig CONFIGURATION_FILE_PATH

      確認画面でインストールを開始することができます。

    • 提供された設定ファイルに基づいてインストールを無人で開始するには、次のコマンドを実行します。

      root # yast2 sap_ha readconfig CONFIGURATION_FILE_PATH unattended
  4. 提供された設定ファイルに基づいて、クラスタを無人でインポート、検証、インストールします。

    root # yast2 sap_ha readconfig CONFIGURATION_FILE_PATH unattended

7.4 Hawkの使用

ウィザードを使用してクラスタを設定した後で、HA Setup for SAP Products (SAP製品のHAセットアップ)ウィザードの最後の画面からHawkを直接開くことができます。

Hawkに再アクセスするには、ブラウザを開いて、URLとして、Hawk Webサービスを実行しているクラスタノードのIPアドレスまたはホスト名を入力します。または、7.2項 「セットアップ」で設定した仮想IPアドレスを入力します。

https://HAWKSERVER:7630/

Hawkログイン画面で、次のログイン資格情報を使用します。

  • ユーザ名: hacluster

  • パスワード: linux

重要
重要: セキュリティ保護されたパスワード

デフォルトのパスワードはできるだけ早くセキュリティ保護されたパスワードに変更します。

root # passwd hacluster

7.5 詳細情報

8 チューニング

この章では、SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsがSAPアプリケーションと最適に連携できるようにチューニングする方法について説明します。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでは、sapconfsaptuneのいずれかを選択できます。ただし、saptuneは、より多くの機能を提供する、より精巧なツールです。

注記
注記: sapconfコマンドは削除されました

SUSE Linux Enterprise Server、およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 11/12では、sapconfコマンドは同じ名前のパッケージに含まれていました。

SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15では、これが変更されました。コマンドsapconfは、 sapconf パッケージから削除されました。このパッケージには、systemdサービスのみが含まれています。sapconfコマンドラインツール、sapconf/tunedプロファイル、tunedは現在はありません。

8.1 sapconf 4を使用したシステムのチューニング

パッケージsapconfは、SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsで使用できます。このパッケージには、tunedプロファイルsapconfが含まれています。この単一のチューニングプロファイルは、次のタイプのSAPアプリケーション(SAP NetWeaver、SAP HANA、およびSAP HANAベースのアプリケーション)に推奨されるパラメータを設定します。

SUSE® Linux Enterprise Server 12のsapconf4の概要
sapconf4 (tunedベース)
  • sap-netweaver (tunedプロファイル)

  • sap-hana (tunedプロファイル)

  • sap-bobj (tunedプロファイル)

  • sap-ase (tunedプロファイル)

SUSE® Linux Enterprise Server 15のsapconf4の概要
sapconf4 (tunedベース)

sapconf (tunedプロファイル)

以前、システムチューニングに変更を行った場合は、これらの変更がsapconfプロファイルによって上書きされる可能性があることに注意してください。

sapconfは、次の2つの主要部分で構成されています。

  • tunedおよび関連サービスが実行され、sapconfプロファイルが確実に適用されるようにするsystemdサービス。

  • スクリプトおよび設定ファイルを使用して、設定されたsapconfチューニングパラメータを適用する tunedプロファイルsapconf

sapconfを使用するには、パッケージ tuned および sapconf がシステムにインストールされていることを確認します。

注記
注記: SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP2の統合プロファイル

SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15以降では、単一のtunedプロファイルsapconfのみが付属しています。これは、それより前のバージョンのSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに付属していたプロファイルsap-hana/sap-netweaverと同等です。

8.1.1 sapconfの有効化/無効化、およびそのステータスの表示

sapconfのインストール後、tunedが有効になり、sapconfプロファイルがアクティブ化されます。ただし、別のtunedプロファイルがすでに有効になっている場合、sapconfは独自のtunedプロファイルを有効にしません。

sapconfですべてのチューニングパラメータを適用するようにするには、インストール後にコンピュータを再起動してください。

sapconfのステータスは、以下に記載される方法で検査または変更できます。

  • サービスsapconfのステータスを確認するには:

    root # systemctl status sapconf

    サービスはtunedの開始のみを担当し、その後終了するため、「アクティブ(終了済み)」として表示される必要があります。

  • サービスsapconf、およびそれとともにサービスtunedを開始するには:

    root # systemctl start sapconf
  • sapconfが無効な場合は、次のコマンドを使用して有効にし、起動します。

    root # systemctl enable --now sapconf
  • サービスsapconf、およびそれとともにサービスtunedを停止するには:

    root # systemctl stop sapconf

    これにより、tunedも停止されるため、最適化のほとんどの部分がただちに無効にされます。ただし、システムを再起動する必要があるオプションは、この例には入りません。

  • sapconfを無効にするには、次のコマンドを使用します。

    root # systemctl disable sapconf

    sapconfが、ユーザが特定するサービスを特別に有効にしていない場合は、ほとんどのチューニングパラメータと、sapconfが使用するすべてのサービスも無効になります。

同様に、基本サービスtunedのステータスを検査および変更できます。

  • サービスtunedのステータスを確認するには:

    root # systemctl status tuned
  • 現在使用中のtunedプロファイルを確認するには:

    root # tuned-adm active

    このコマンドが現在アクティブなプロファイルの名前をsapconfとして返さない場合は、そのプロファイルを有効にします。

    root # tuned-adm profile sapconf
ヒント
ヒント: sapconfが依存する追加のサービス

sapconfサービス自体とtunedサービスに加えて、sapconfは、次の2つのサービスにも依存します。

  • システムアクティビティに関するデータを収集するsysstat

  • 多くのプロセッサコアが関与する設定でも固有であることが保証されている時間ベースのUUIDを生成するuuidd。これはSAPアプリケーションに必要です。

8.1.2 sapconf4の設定

一般に、sapconfのデフォルト設定では、SAPによって推奨されるパラメータ値をすでに使用しています。ただし、特別なニーズがある場合は、それらに合わせてツールを設定できます。

sapconfの設定は、さまざまな方法で設定可能な2つの部分に分かれています。

/usr/lib/tuned/PROFILE/tuned.conf

このパターンに従うすべてのファイルは、手順8.1「sapconf4プロファイルの設定」のように編集できます。このファイルからパラメータを設定するには、まず、/etc/tunedの下のtunedのカスタムプロファイルディレクトリにコピーしてから、その中の値を変更します。代わりに所定の場所のファイルを変更する場合は、 sapconf パッケージの次のアップデートで加える変更は保存されません。

次の手順は、/usr/lib/tuned/sapconf/tuned.confファイルを調整する方法の例を示すものです。すでに述べたように、これはどのプロファイルでも可能です。次の手順でファイルを設定します。

手順 8.1: sapconf4プロファイルの設定
  1. 新しいカスタムtunedプロファイルディレクトリを作成して、tuned.confファイルをコピーします。

    root # mkdir /etc/tuned/sapconf
    root # cp /usr/lib/tuned/sapconf/tuned.conf /etc/tuned/sapconf/
  2. 新しくコピーしたtuned.conf内で、script.shへの参照を修正して、元のプロファイルからスクリプトを指す絶対パスを使用するように指定します。

    script = /usr/lib/tuned/sapconf/script.sh

    代わりにscript.shをコピーしないでください。sapconfをアップデートする際に互換性に問題が発生します。

  3. /etc/tuned/sapconf/tuned.confのパラメータを編集します。

sapconfをアップデートするたびに、元のコンテンツとカスタムtuned.confのコンテンツを比較してください。

このファイルに関連するログメッセージは、/var/log/tuned/tuned.logに書き込まれます。

/etc/sysconfig/sapconf

このファイルには、sapconfのほとんどのパラメータが含まれています。このファイルのパラメータは、先に述べたスクリプト/usr/lib/tuned/sapconf/script.shを使用して適用されます。

このファイルは直接編集できます。このファイルのパラメータはすべて、コメントやSAP Notesの参照資料で説明されています。参照資料は、https://launchpad.support.sap.com/で参照可能です。

sapconfがアップデートされると、このファイルからカスタマイズされたすべてのパラメータが可能な限り保持されます。ただし、パラメータは、新しい設定ファイルにクリーンな状態で転送できない場合があります。したがって、アップデート中に/etc/sysconfig/sapconf.rpmsaveに移動された以前のカスタム設定と、/etc/sysconfig/sapconfにある新しいバージョンとの違いを、アップデート後に確認することをお勧めします。

このファイルに関連するログメッセージは、/var/log/sapconf.logに書き込まれます。

これらのファイルのいずれかを編集すると、一部の値が行の先頭に#文字でコメント化されていることがわかります。これは、パラメータがチューニングに関連している間は、適切なデフォルトがないことを意味します。

これとは逆に、行の先頭に#文字を追加して、特定のパラメータにコメントを付けることができます。ただし、sapconfが適切にプロファイルを適用しなくなる可能性があるため、コメント付けは避けた方が無難です。

編集した設定を適用するには、sapconfを再起動します。

root # systemctl restart sapconf

特定のパラメータ値が正しく適用されているかどうかの確認手段は、パラメータごとに異なります。したがって、次の例は一例にすぎません。

例 8.1: パラメータの確認

TCP_SLOW_STARTの設定が適用されていることを確認するには、次の手順を実行します。

  • sapconfのログファイルを表示して、値が適用されているかどうかを確認します。/var/log/sapconf.log内で、次のテキストを含む行を確認します。

    Change net.ipv4.tcp_slow_start_after_idle from 1 to 0

    または、sapconfが開始される前に、パラメータがすでに正しく設定されている可能性があります。この場合、sapconfはその値を変更しません。

    Leaving net.ipv4.tcp_slow_start_after_idle unchanged at 1
  • TCP_SLOW_STARTの背後にある基本のオプションは/proc/sys/net.ipv4.tcp_slow_start_after_idleで手動で設定できます。その実際の現在値を確認するには、次のコマンドを使用します。

    root # sysctl net.ipv4.tcp_slow_start_after_idle

8.1.3 sapconfの削除

システムからsapconfを削除するには、次のコマンドを使用してそのパッケージをアンインストールします。

root # zypper rm sapconf

これを実行する際には、sapconfの依存関係はインストールされたままであることに注意してください。ただし、サービスsysstatおよびtunedは、無効な状態になります。いずれかのサービスをまだ使用している場合は、再度有効にしてください。

sapconfがアンインストールされても、特定のパラメータやファイルは削除されません。詳細については、マニュアルページのman 7 sapconfの「PACKAGE REQUIREMENTS」セクションを参照してください。

8.1.4 詳細情報

次のマニュアルページには、sapconfに関する追加情報が記載されています。

  • sapconfで使用されるチューニングパラメータの概要: man 7 tuned-profiles-sapconf

  • sapconfで設定されたすべてのチューニングパラメータの詳細な説明: man 5 sapconf

  • sapconfプロファイルの設定およびカスタマイズに関する情報: man 7 sapconf

https://www.suse.com/c/a-new-sapconf-is-available/にあるsapconfの更新バージョンを詳しく説明するブログシリーズも参照してください。

8.2 sapconf 5を使用したシステムのチューニング

パッケージsapconfは、SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsで使用できます。これは、次のタイプのSAPアプリケーション(SAP NetWeaver、SAP HANA、およびSAP HANAベースのアプリケーション)に推奨されるパラメータを設定します

SUSE® Linux Enterprise Server 12のsapconf5の概要
sapconf5 (tunedなし)
  • sapconf-netweaver (tunedプロファイルの代替としてのsapconfプロファイル)

  • sapconf-hana (tunedプロファイルの代替としてのsapconfプロファイル)

  • sapconf-bobj (tunedプロファイルの代替としてのsapconfプロファイル)

  • sapconf-ase (tunedプロファイルの代替としてのsapconfプロファイル)

SUSE® Linux Enterprise Server 15のsapconf5の概要
sapconf5 (tunedなし)

現在ではプロファイルなし

以前、システムチューニングに変更を行った場合は、これらの変更がsapconfによって上書きされる可能性があることに注意してください。

sapconf 5には、チューニングを適用し、関連するサービスが確実に実行されるようにするsystemdサービスが付属しています。

sapconfを使用するには、パッケージ sapconf がシステムにインストールされていることを確認します。

注記
注記: SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP2にはプロファイルはありません

SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15では、sapconfによるプロファイルのサポートは終了しています。

8.2.1 sapconfの有効化/無効化、およびそのステータスの表示

sapconfのインストール後に、sapconfサービスが有効になります。

sapconfのステータスは、以下に記載される方法で検査または変更できます。

  • サービスsapconfのステータスを確認するには:

    root # systemctl status sapconf

    サービスは「アクティブ(終了済み)」と表示される必要があります。

  • サービスsapconfを開始するには:

    root # systemctl start sapconf
  • sapconfが無効な場合は、次のコマンドを使用して有効にし、起動します。

    root # systemctl enable --now sapconf
  • サービスsapconfを停止するには:

    root # systemctl stop sapconf

    このコマンドは、最適化の大部分を直ちに無効にします。このルールの唯一の例外は、有効/無効にするためにシステムを再起動する必要があるオプションです。

  • sapconfを無効にするには、次のコマンドを使用します。

    root # systemctl disable sapconf

    sapconfが、ユーザが特定するサービスを特別に有効にしていない場合は、ほとんどのチューニングパラメータと、sapconfが使用するすべてのサービスも無効になります。

ヒント
ヒント: sapconfが依存する追加のサービス

sapconfサービスに加えて、次の2つのサービスにも依存します。

  • システムアクティビティに関するデータを収集するsysstat

  • 多くのプロセッサコアが関与する設定でも固有であることが保証されている時間ベースのUUIDを生成するuuidd。これはSAPアプリケーションに必要です。

8.2.2 sapconf5の設定

一般に、sapconfのデフォルト設定では、SAPによって推奨されるパラメータ値をすでに使用しています。ただし、特別なニーズがある場合は、それらに合わせてツールを設定できます。

sapconfのすべてのパラメータは/etc/sysconfig/sapconfファイルにあります。このファイルは直接編集できます。このファイルのパラメータはすべて、コメントやSAP Notesの参照資料で説明されています。参照資料は、https://launchpad.support.sap.com/で参照可能です。

sapconfがアップデートされると、このファイルからカスタマイズされたすべてのパラメータが可能な限り保持されます。ただし、パラメータは、新しい設定ファイルにクリーンな状態で転送できない場合があります。したがって、アップデート中に/etc/sysconfig/sapconf.rpmsaveに移動された以前のカスタム設定と、/etc/sysconfig/sapconfにある新しいバージョンとの違いを、アップデート後に確認することをお勧めします。

このファイルに関連するログメッセージは、/var/log/sapconf.logに書き込まれます。

これらのファイルのいずれかを編集すると、一部の値が行の先頭に#文字でコメント化されていることがわかります。これは、パラメータがチューニングに関連している間は、適切なデフォルトがないことを意味します。

これとは逆に、行の先頭に#文字を追加して、特定のパラメータにコメントを付けることができます。ただし、sapconfが適切にプロファイルを適用しなくなる可能性があるため、コメント付けは避けた方が無難です。

編集した設定を適用するには、sapconfを再起動します。

root # systemctl restart sapconf

特定のパラメータ値が正しく適用されているかどうかの確認手段は、パラメータごとに異なります。したがって、次の例は一例にすぎません。

例 8.2: パラメータの確認

TCP_SLOW_STARTの設定が適用されていることを確認するには、次の手順を実行します。

  • sapconfのログファイルを表示して、値が適用されているかどうかを確認します。/var/log/sapconf.log内で、次のテキストを含む行を確認します。

    Change net.ipv4.tcp_slow_start_after_idle from 1 to 0

    または、sapconfが開始される前に、パラメータがすでに正しく設定されている可能性があります。この場合、sapconfはその値を変更しません。

    Leaving net.ipv4.tcp_slow_start_after_idle unchanged at 1
  • TCP_SLOW_STARTの背後にある基本のオプションは/proc/sys/net.ipv4.tcp_slow_start_after_idleで手動で設定できます。その実際の現在値を確認するには、次のコマンドを使用します。

    root # sysctl net.ipv4.tcp_slow_start_after_idle

8.2.3 sapconfの削除

システムからsapconfを削除するには、次のコマンドを使用してそのパッケージをアンインストールします。

root # zypper rm sapconf

これを実行する際には、sapconfの依存関係はインストールされたままであることに注意してください。ただし、サービスsysstatは無効な状態になります。サービスをまだ使用している場合は、再度有効にしてください。

8.2.4 詳細情報

次のマニュアルページには、sapconfに関する追加情報が記載されています。

  • sapconfで設定されたすべてのチューニングパラメータの詳細な説明: man 5 sapconf

  • sapconfプロファイルの設定およびカスタマイズに関する情報: man 7 sapconf

https://www.suse.com/c/a-new-sapconf-is-available/にあるsapconfの更新バージョンを詳しく説明するブログシリーズも参照してください。

8.2.5 sapconftunedの併用

バージョン5では、sapconfは、tunedに依存しなくなりました。これは、両方のツールを個別に使用できることを意味します。tunedサービスが開始される場合、sapconfはそのログに警告を出力します。

注記
注記: 重要: tunedsapconfの併用

tunedsapconfを同時に使用する場合は、ボットツールが同じシステムパラメータを設定しないように十分注意してください。

8.3 saptuneを使用したシステムのチューニング

saptuneを使用すると、SAP NetWeaver、SAP HANA/SAP BusinessObjects、およびSAP S/4HANAアプリケーション用にシステムをチューニングできます。この方法は、システムチューニングサービスtunedに依存します。

saptuneを使用するには、パッケージ tuned および saptune がシステムにインストールされていることを確認します。

注記
注記: tunedデーモン

sapconf (バージョン4のみ)およびsaptuneの両方がデーモンtunedに依存していますが、さまざまな(非常に類似した)チューニングプロファイルを使用します。したがって、sapconfまたはsaptuneのいずれかのみを一度に有効にできます。

8.3.1 SAPアプリケーションのチューニングのためのsaptuneの有効化

  1. システムをチューニングするには、まず、チューニングソリューションを見つけます。適切なソリューションを見つけるには、次のコマンドを使用します。

    tux > saptune solution list

    saptuneでは、次のチューニングソリューション(SAP Notesのグループ)を認識します。

    • BOBJ:  SAP BusinessObjectsを実行するためのソリューション。

    • HANA:  SAP HANAデータベースを実行するためのソリューション。

    • MAXDB:  SAP MaxDBデータベースを実行するためのソリューション。

    • NETWEAVER:  SAP NetWeaverアプリケーションサーバを実行するためのソリューション。

    • S4HANA-APPSERVER:  SAP S/4HANAアプリケーションサーバを実行するためのソリューション(SAP NetWeaverソリューションと同じ)。

    • S4HANA-APP+DB: SAP S/4HANAアプリケーションサーバとSAP HANAの両方を同じホスト上で実行するためのソリューション(SAP NetWeaver + SAP HANAソリューションと同じ)。

    • S4HANA-DBSERVER:  SAP S/4HANAインストールのSAP HANAデータベースを実行するためのソリューション(SAP HANAソリューションと同じ)。

    • SAP-ASE:  SAP Adaptive Server Enterpriseデータベースを実行するためのソリューション。

    または、特定のSAP Notesからの推奨事項に従って、コンピュータをチューニングできます。チューニングできるNotesのリストは次のコマンドを介して入手できます。。

    root # saptune note list
    • 事前設定されたソリューションを使用してsaptuneを設定するには、次のコマンドを使用します。

      root # saptune solution apply SOLUTION
    • 特定のSAPノートの推奨事項に合わせてsaptuneを設定するには、次のコマンドを使用します。

      root # saptune note apply NOTE
    注記
    注記: 最適化の組み合わせ

    ソリューションとノートを組み合わせることができます。ただし、一度にアクティブにできるのは1つのソリューションのみです。まれに、ノートでオプションまたはパラメータの競合が発生する可能性があります。競合を避けるには、最後のノートが常に以前のノートの競合するオプションまたはパラメータを上書きすることに注意してください。

  2. saptuneを開始し、ブート時に有効にするには、次のコマンドを実行してください。

    root # saptune daemon start

バックグラウンドで、saptuneは、選択したソリューションおよびノートに従って動的にカスタマイズされるsaptuneとも呼ばれるtunedプロファイルを適用します。tuned-adm listを使用して、このプロファイルを表示することもできます。

8.3.2 SAPノートのカスタマイズ

すべてのSAPノートは次のコマンドを使用して自由に設定できます。

root # saptune note customise

このコマンドには、値の変更やパラメータの無効化が含まれています。

8.3.3 新しいSAPノートの作成

新しいSAPノートを次のコマンドを使用して作成できます。

root # saptune note create

saptuneのすべての機能が利用できます。

8.3.4 SAPノートの削除

次のコマンドを使用すると、確認後に対応する上書きを含む、作成済みノートを削除できます。

root # saptune note delete

ノートはその時点では適用されない場合があります。saptuneで提供されたSAPノートは削除できません。代わりに、利用可能な場合は、上書きファイルが削除されます。

8.3.5 SAPノートの名前の変更

次のコマンドを使用すると作成済みノートの名前が変更できます。これには確認後の、対応する上書きが含まれます。

root # saptune note rename

ノートはその時点では適用されない場合があります。saptuneで提供されたSAPノートの名前は変更できません。

8.3.6 SAPノートの設定の表示

ノート提供時の設定は、次のコマンドで一覧表示できます。

root # saptune note show

8.3.7 SAPノートまたはSAPソリューションの確認

コマンドsaptune note verify NOTEおよびsaptune solution verify SOLUTIONは、アクティブまたは要求されたノートごとに次のデータを一覧表示します。

  • パラメータ名

  • 予想される値(デフォルト)

  • 設定された上書き(saptune customiseを使用して作成)

  • 現在のシステム値

  • 現在の状態がSAP推奨事項に従っているかどうか

8.3.8 SAPノートまたはSAPソリューションのアプリケーションのシミュレート

noteの各パラメータを表示するには、次のコマンドを使用します。

root # saptune note simulate

solutionの各パラメータを表示するには、次のコマンドを使用します。

root # saptune solution simulate

現在のシステム値と予想される値(デフォルトおよび上書き)を一覧表示します。

8.3.9 saptuneの無効化

saptuneを無効にして、tunedを停止および無効にするには、次のコマンドを実行します。

root # saptune daemon stop

8.3.10 詳細情報

次のマニュアルページを参照してください。

  • man 8 saptune

  • man 8 saptune_v1

  • man 8 saptune_v2

  • man 8 saptune-migrate

  • man 8 saptune-note

プロジェクトホームページ(https://github.com/SUSE/saptune/)も参照してください。

8.4 sysctlを使用したカーネルパラメータの手動チューニング

sapconf/saptuneを使用してカーネルパラメータをチューニングする際は、sysctlを使用して、カーネルパラメータを手動調整することもできます。また、sapconf/saptuneを使用したカーネルパラメータのチューニングの代わりに、sysctlを使用して、カーネルパラメータを手動調整することもできます。ただし、sysctlを使用したこのような変更は、デフォルトでは再起動後も持続しません。再起動後も持続するようにするには、sysctlによって読み込まれた設定ファイルのいずれかにそれらを追加します。

ヒント
ヒント: sysctlsaptune

SAPシステムにsysctlパラメータを設定する場合は、このような設定を管理する中心的なツールとしてsaptuneを使用することを検討してください。

sysctlに関する詳細については、マニュアルページのsysctl(8)sysctl.conf(5)、およびsysctl.d(5)を参照してください。

8.5 ワークロードメモリ保護のチューニング

SAPアプリケーションを物理メモリに保持することは、パフォーマンスのために不可欠です。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 11 SP1以降およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 12では、ページキャッシュ制限により、ページキャッシュの増加によるディスクへのスワップアウトを防止していました。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15では、ページキャッシュ制限がより高度なワークロードメモリ保護に置き換えられました。

ワークロードメモリ保護は、SAPインスタンスを専用のcgroup (v2)に置き、memory.lowパラメータによって、物理メモリに保持するメモリ容量をカーネルに伝えます。これにより、ページキャッシュの増加を含む、そのcgroupの外側のあらゆる形態のメモリ負荷に対してこのcgroup内のプロセスが保護されます。ワークロードメモリ保護は、このcgroup内のメモリ負荷に対して保護することはできません。これは、1つのホスト上の「すべての」インスタンスのメモリをカバーします。

memory.lowの値は、SAPインスタンスとワークロードの種類によって異なり、手動で設定する必要があります。システムが過度な負荷下にある場合、Linuxカーネルはmemory.low値を無視して、OOMキラーをスワップしたり、呼び出したりしてでも、システム全体を安定化させようとします。

cgroupに関する詳細については、https://documentation.suse.com/sles/15-SP2/html/SLES-all/cha-tuning-cgroups.htmlを参照してください。

8.5.1 アーキテクチャ

WMPは次の3つのコンポーネントに依存します。

cgroup2メモリコントローラ(Linuxカーネル)

cgroup2メモリコントローラパラメータ memory.low では、Linuxカーネルが物理メモリに保持するメモリ容量を定義できます。このメモリ容量は、システム全体が重大なメモリ状況にある場合を除いて、再利用プロセスから除外されます。

WMPは memory.low を使用して、SAPプロセスのメモリがページングされ、ディスクにページアウトされるのを防止します。メモリコントローラを除く、Cgroup1コントローラは、まだ使用可能ですが、マウントされていません。

systemd

Systemdでは、cgroup階層を作成および維持するためのインフラストラクチャを提供し、cgroupパラメータの設定も可能にします。WMPには、systemd設定ファイルが付属し、 memory.low の設定がsystemdメソッドを使用して簡単に行えます。

SAP Start Service

SAP Start Service (sapstartsrv)は、SAPインスタンスの開始と停止を管理します。WMPの重要な機能は、インスタンス自体がインスタンスプロファイルで開始される前の、プログラムの設定可能な実行にあります。WMPでは、このメソッドを使用してプログラムを呼び出し、sapstartsrv/sapstartプロセスを指定のcgroupに移動させるため、SAPインスタンスがそのcgroup内で開始されます。

8.5.2 ワークロードメモリ保護のサポート

WMPは、

  • App Server (SAP NetWeaver、SAP S/4HANA)や

  • SAP HANA 1.0/2.0など1台のホスト上にある1台以上のSAPシステム用Intel 64/AMD64上のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP2でサポートされています。

ワークロードメモリ保護は、SAP HANA以外のデータベースには適用されません。開始メソッドによって、プロセスが専用のcgroup内部または外部で実行される場合があります。内部で実行される場合、memory.lowを決定する際にメモリ消費量を考慮する必要があります。

重要
重要: WMPの制限

WMPを使用することはメリットがありますが、いくつかの制限事項に注意する必要があります。

  • WMPは専用のcgroup内部のメモリ負荷に対して保護できません。

  • WMPはSAPシステムまたはそのインスタンスを相互に保護できません。すべてのSAPプロセスは同じメモリ制限を共有します。複数のSAPシステム(SAP NetWeaverやSAP S/4HANA)がある場合、WMPは1つのSAPアプリケーションを別のSAPアプリケーションから保護できません。

  • SUSEのHAクラスタソリューションのサポートはまだ使用できません。

8.5.3 ワークロードメモリ保護の設定

8.5.3.1 ワークロードメモリ保護の準備

  1. SAPソフトウェア(SAP HANA、SAP NetWeaverなど)がインストールされているか確認します。グループsapsysは、後で sapwmp のパッケージインストール中に必要です。その部分をスキップする場合は、警告メッセージが表示されます(重要: パッケージの順番に注意するを参照)。

  2. SAPシステムの停止:

    root # systemctl stop sapinit

    サービスは有効にすることができますが、すべてのSAPプロセスを終了する必要があります。

  3. パッケージ sapwmpのインストール:

    tux > sudo zypper install sapwmp
    重要
    重要: パッケージの順番に注意する

    次のメッセージは、SAPソフトウェアがシステムにインストールされていない場合にのみ表示されます。

    Warning: sapsys group not found warning: group sapsys does not exist - using root

    パッケージ sapwmp を削除し、SAPソフトウェアをインストールしてから、パッケージを再びインストールします。

    別の方法として、SAPソフトウェアをインストールした「後で」次のコマンドを使用して、所有権と許可を修正できます。

    tux > sudo chgrp sapsys /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture && \
    chmod +s /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture

    次のメッセージは無視して構いません。

    Warning: Found memory controller on v1 hierarchy. Make sure unified hierarchy only is used.

    次の手順で、統合階層への切り替えを実行します。

  4. systemd.unified_cgroup_hierarchy=trueをカーネルコマンドラインに追加するには、次のように/etc/default/grubGRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULTにこれを追加します。

    GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="... systemd.unified_cgroup_hierarchy=true swapaccount=1"

    この変更により、cgroup2コントローラのみが/sys/fs/cgroupにマウントされます。ただし、メモリコントローラを除き、Cgroup1コントローラは、まだ利用可能です。cgroup1を使用するツールは、そのままでは機能せず、設定が必要な場合があります。また、cgroup1に必要なマウント構造を提供する必要があります。

    パラメータswapaccount=1は、WMPが機能するために必要ではありませんが、サポートケースでの分析を支援し、cgroupごとのスワップアウトされたメモリ容量を示します。

  5. GRUB2の設定を再書き込みします。

    tux > sudo grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg

    再起動後(後で実行される)、cgroup階層はv2 (統合階層)のみに切り替えられます。

  6. SAP.slice用のMemoryLowを設定します。

    tux > sudo systemctl set-property SAP.slice MemoryLow=...

    このコマンドは、/etc/systemd/system.control/SAP.slice.d/にドロップインを作成し、MemoryLowを設定します。

    sapwmp のパッケージ には、SAPインスタンスに同じ名前のcgroupを作成するシステム設定SAP.sliceが含まれます。MemoryLowは、最初に述べたcgroupパラメータmemory.lowと等価なsystemdです。MemoryLowの値は、SAPアプリケーションおよびワークロードのタイプによって異なります。

    SAP HANAの場合

    SAP HANAにはグローバル割り当て制限があるため、その値を直接使用できます。

    SAPアプリケーションサーバ(SAP NetWeaver、SAP S/4HANA)

    アプリケーションサーバの場合、ワークロードのサイジングはMemoryLowの値を示す必要があります。sapwmp のパッケージ には、MemoryLowを決定するために役立つ可能性がある監視パートが含まれます。8.5.6項 「メモリ使用量の監視」を参照してください。

    次の点に注意してください。

    • 1台のホスト上のすべてのSAPインスタンスは、SAP.slice内に存在します。MemoryLowは、そのホスト上の「すべての」インスタンスのメモリ容量をカバーする必要があります。SAPシステムまたはそのインスタンスを相互に保護することはできません。

    • SAP HANA以外のデータベースを使用している場合、一部のデータベースプロセスがSAP.sliceに含まれている可能性があります。MemoryLow値を決定する際には、これらのメモリ消費量を考慮する必要があります。

    • MemoryLowの値は、物理メモリの値に非常に近い値、またはこれらの値より大きな値にしないでください。システムサービスおよび追加のインストール済みソフトウェアにもメモリが必要です。SAPアプリケーションを犠牲にしてスワップを広範囲に使用しなければならない場合、システムが応答しなくなる可能性があります。

    注記
    注記: MemoryLow値を正しく計算する

    MemoryLowは、メモリサイズをバイト単位で取得します。値の末尾にK、M、G、Tが付いている場合、指定されたメモリサイズはそれぞれ、キビバイト、メビバイト、ギビバイト、またはテビバイトとして解析されます(1000ではなく、1024をベースとしている場合は、https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_prefixを参照)。または、パーセンテージ値が指定される場合があります。この場合、システムにインストールされている物理メモリを基準として取得されます。

    基礎となるcgroupメモリコントローラは、値をページサイズの倍数に切り上げます。混乱を避けるため、MemoryLowの値としてページサイズの倍数をすでに設定しています。

  7. 各SAPインスタンスプロファイルのバックアップを作成します。プロファイルのエラーはSAPシステムの起動を妨げる可能性があります。

  8. SAPインスタンスごとに、次の行を最後のExecute_行の後のインスタンスプロファイル(通常は/usr/sap/SID/SYS/profile/にある)に追加します。

    Execute_20 = local /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture -a

    必要に応じてExecuteステートメント数を増やして最大にし、行が最後に実行されるようにします。

    重要
    重要

    SAP GUI (トランザクションRZ11)によって管理するためにデータベースにプロファイルをインポートしていない場合「にのみ」インスタンスプロファイルを直接編集します。これを実行する場合は、SAP GUIを使用して、行を追加してください。ファイルシステムにあるプロファイルファイルは上書きされ、手動の変更は失われます。

これでシステムが再起動する準備が整いました。

8.5.3.2 再起動と確認

  1. システムを再起動します。

  2. 再起動後、実際にcgroups v2が使用されていることを確認します。

    root # grep  cgroup /proc/mounts
    cgroup /sys/fs/cgroup cgroup2 rw,nosuid,nodev,noexec,relatime 0 0
  3. cgroupが正常に作成され、低いメモリ値が設定されていることを確認します。

    tux > systemctl show -p MemoryLow SAP.slice
    MemoryLow=18487889920    <- Should be your chosen value (always in bytes)!
    
    # cat /sys/fs/cgroup/SAP.slice/memory.low
    18487889920    <- Should be your chosen value!

    変数MemoryLowは任意の値に設定できますが、変数のコンテンツは常にページサイズの倍数になります。両方の値にわずかに違いがあることに気づく場合には、このことに注意してください。

  4. すべてのSAPインスタンスプロセスが正しいシステムのスライス/cgroup内にあることを確認します。

    sapinit.serviceを有効にしていない場合は、今すぐサービスを開始してください。自動開始がインスタンスプロファイルで有効になっていない場合は、確認する前にインスタンスを開始します。

    例:

    root # systemd-cgls -a /sys/fs/cgroup/SAP.slice
    Directory /sys/fs/cgroup/SAP.slice:
    |-wmp-rd91fd6b3ca0d4c1183659ef4f9a092fa.scope
    | |-2707 /usr/sap/HA0/ERS10/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/H...
    | |-3349 sapstart pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er
    | `-3375 er.sapHA0_ERS10 pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er N...
    |-wmp-r360ebfe09bcd4df4873ef69898576199.scope
    | |-3128 /usr/sap/HA0/D01/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D...
    | |-3572 sapstart pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci
    | |-3624 dw.sapHA0_D01 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci
    ...

    インスタンスごとに、このインスタンスのすべてのプロセスを含むディレクトリwmp-rSCOPEID.scopeが存在します。SCOPEIDは、16進数の128ビットランダム値です。

    SAP HostAgentは、WMPではカバーされておらず、一部はsapinit.sliceに残り、一部はsapadmのユーザスライスに残ります。

  5. プロセスがcgroup内にない場合は、インスタンスプロファイルのExecute行が正しいかどうか確認します。また、各インスタンスの開始が、システムログ/var/log/messagesに記録されます。

    ...
    2020-06-16T18:41:28.317233+02:00 server-03 sapwmp-capture: Found PIDs:
    2020-06-16T18:41:28.317624+02:00 server-03 sapwmp-capture:      17001
    2020-06-16T18:41:28.317813+02:00 server-03 sapwmp-capture:      16994
    2020-06-16T18:41:28.317959+02:00 server-03 sapwmp-capture:      16551
    2020-06-16T18:41:28.319423+02:00 server-03 sapwmp-capture: Successful capture into SAP.slice/wmp-r07a27e12d7f2491f8ccb9aeb0e080aaa.scope
    2020-06-16T18:41:28.319672+02:00 server-03 systemd[1]: Started wmp-r07a27e12d7f2491f8ccb9aeb0e080aaa.scope.
    ...
ヒント
ヒント

WMPセットアップを確認するスクリプトは次の場所にあります:。 https://github.com/scmschmidt/wmp_check

8.5.4 ワークロードメモリ保護の設定

WMPを設定するには、次のように/etc/sapwmp.confを編集します。

# NOTE: Local changes may be reverted after update of WMP package. Check for
#      .rpmsave file to restore & merge changes.

## Description: Slice unit name where workload is put into
## Type:        string
## Default:     "SAP.slice"
DEFAULT_SLICE="SAP.slice"

## Description: Comma-separated list of command names to which capture is
##              applied (matching against /proc/$PID/stat)
## Type:        string
## Default:     sapstart,sapstartsrv
PARENT_COMMANDS=sapstart,sapstartsrv

変更後、すべてのSAPインスタンスを再起動します。

警告
警告

/etc/sapwmp.confを変更する必要はありません。すべき操作を正確に認識するまで実行しないでください。

8.5.5 MemoryLowの値の変更

MemoryLowの値を変更するには、次のコマンドを実行します。

root # systemctl set-property SAP.slice MemoryLow=...

変更はすぐに有効になります。

基礎となるcgroupメモリコントローラは、値をページサイズの倍数に切り上げます。混乱を避けるため、MemoryLowの値としてページサイズの倍数を設定します。

重要
重要

MemoryLowをすでにSAP.sliceに割り当てられているメモリより小さい値に設定しないでください。確認するには、次のコマンドを実行します。

root # systemctl show -p MemoryCurrent SAP.slice

8.5.6 メモリ使用量の監視

メモリ使用量のログを記録することが、memory.lowの値を決定するために必要な場合がありますが、WMPの正しい動作を監視するためにも必要になる場合があります。

モニタリングを有効にするには、付属しているタイマーユニットを有効にします。

root # systemctl enable --now wmp-sample-memory.timer

これで、タイマーがsystemctl list-timersによって一覧表示されるはずです。

root # systemctl list-timers
NEXT    LEFT       LAST    PASSED  UNIT                     ACTIVATES
...
Tue...  9min left  Tue...  4s ago  wmp-sample-memory.timer  wmp-sample-memory.service
...

現在の設定を確認すると、メモリデータが10分ごとに収集され、3分のランダムな遅延が発生していることがわかります。

root # systemctl cat wmp-sample-memory.timer
# /usr/lib/systemd/system/wmp-sample-memory.timer
[Unit]
Description=WMP periodic log of memory consumption

[Timer]
OnCalendar=*:0/10
RandomizedDelaySec=180
AccuracySec=60

[Install]
WantedBy=timers.target

これを変更するには、ドロップインファイルを作成して、systemdをリロードします(たとえば、間隔を30分に増やします):

root # mkdir /etc/systemd/system/wmp-sample-memory.timer.d

# cat <<EOF >/etc/systemd/system/wmp-sample-memory.timer.d/override.conf
[Timer]
OnCalendar=
OnCalendar=*:0/30
EOF

# systemctl daemon-reload

(以前の定義されたOnCalendar=設定を削除するには、最初のOnCalendar=行が重要です。)

メモリ消費量を確認するには、システムログでwmp_memory_currentで書き込まれた行を確認します。

root # grep wmp_memory_current /var/log/messages
...


2020-09-14T12:02:40.337266+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294059008 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499219968 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8364032 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1863335936 memory.swap.current=0
2020-09-14T12:03:00.767838+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294022144 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499473920 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8364032 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1862586368 memory.swap.current=0
2020-09-14T12:04:00.337315+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294022144 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499207680 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8355840 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1862746112 memory.swap.current=0
...

ここによりよい印象を与える再フォーマットされたログ行があります。

2020-09-14T12:02:40.337266+02:00 server-03 wmp_memory_current:
SAP.slice    : memory.low=21474836480 memory.current=2294059008 memory.swap.current=0 ,
user.slice   : memory.low=0           memory.current=5499219968 memory.swap.current=0 ,
init.scope   : memory.low=0           memory.current=8364032    memory.swap.current=0 ,
system.slice : memory.low=0           memory.current=1863335936 memory.swap.current=0

/sys/fs/cgroup/の直下のcgroupごとにコンマで区切られた1つのブロックが存在します。通常のシステムでは、少なくともuser.slicesystem.slice、およびinit.scopeを見つける必要があります。WMPはSAP.sliceを追加します。

各ブロックには、memory.lowおよびmemory.currentの現在の値に関する情報が含まれています。この情報は、このcgroup内プロセスの物理メモリに現在割り当てられている量です。

セットアップ中にスワップアカウンティング(swapaccount=1)を有効にしている場合は、cgroupのスワップアウトされたメモリ容量である、memory.swap.currentもあります。

すべての値はバイト単位です。8.5.3.1項 「ワークロードメモリ保護の準備」ステップ 6を参照してください。

ヒント
ヒント

テーブルまたはCSVとして情報を出力するスクリプトは次の場所にあります。https://github.com/scmschmidt/wmp_log_extract

8.5.7 正しい運用の確認

メモリ消費量およびスワッピングの監視(8.5.6項 「メモリ使用量の監視」を参照)のほか、すべてのSAPインスタンスプロセスがSAP.sliceの下のスコープ内であることも定期的に確認する必要があります。

これを行うには、「systemd-cgls」を実行し、各インスタンスプロセスを確認します。

例:

root # systemd-cgls -a /sys/fs/cgroup/SAP.slice
Directory /sys/fs/cgroup/SAP.slice:
|-wmp-rd91fd6b3ca0d4c1183659ef4f9a092fa.scope
| |-2707 /usr/sap/HA0/ERS10/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/H...
| |-3349 sapstart pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er
| `-3375 er.sapHA0_ERS10 pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er N...
|-wmp-r360ebfe09bcd4df4873ef69898576199.scope
| |-3128 /usr/sap/HA0/D01/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D...
| |-3572 sapstart pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci
| |-3624 dw.sapHA0_D01 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci
...

より簡単なテストで、システムで使用されるすべての<SID>に対するcgroupを含むすべてのプロセスを一覧表示します。

例:

tux > ps -eo user,pid,cgroup:60,args | grep -e [h]a0adm
ha0adm    2062 0::/user.slice/user-1001.slice/user@1001.service/init.scope  /usr/lib/systemd/systemd --user
ha0adm    2065 0::/user.slice/user-1001.slice/user@1001.service/init.scope  (sd-pam)
ha0adm    2480 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope    /usr/sap/HA0/ASCS00/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as -D -u ha0adm
ha0adm    2688 0::/SAP.slice/wmp-ra42489517eb846c282c57681e627a496.scope    /usr/sap/HA0/ERS10/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er -D -u ha0adm
ha0adm    3081 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope    sapstart pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as
ha0adm    3106 0::/SAP.slice/wmp-r0951160bb5454f4fa32be03a6e8bc98a.scope    /usr/sap/HA0/D01/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci -D -u ha0adm
ha0adm    3133 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope    ms.sapHA0_ASCS00 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as
ha0adm    3134 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope    en.sapHA0_ASCS00 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as
ha0adm    3327 0::/SAP.slice/wmp-ra42489517eb846c282c57681e627a496.scope    sapstart pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er
...

すべてのインスタンスプロセスは0::/SAP.slice/の下のスコープ内にある必要があります。

警告
警告

sapstartsrvプロセスはユーザスライスに一時的に存在する可能性があります。これは、プロセスが手動で開始されたか、sapcontrolコマンドの実行時にプロセスが欠落して開始された場合に発生します。インスタンスを再起動すると、正常に修正されます。sapstartsrvを除くインスタンスプロセスをSAP.sliceの外部で実行しないようにしてください。

8.5.8 ワークロードメモリ保護のアンインストール

  1. SAPシステムを完全に停止します。sapinit.serviceを停止する必要がありますが、有効なままにしておくことができます。すべてのSAPプロセスを終了する必要があります。

  2. 設定MemoryLowなどのSAP.sliceに行われた変更をすべて削除します。

    root # systemctl revert SAP.slice
  3. sapwmp パッケージ の削除:

    root # zypper remove sapwmp

    このステップはオプションです。パッケージは影響を及ぼすことなくシステムにとどまることができます。

  4. /etc/default/grubGRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULTからsystemd.unified_cgroup_hierarchy=trueを削除します。

    このステップはオプションです。WMPを使用せずにcgroup2を保持できます。

  5. GRUB2の設定を再書き込みします。

    root # grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg

    次のブート後に、システムはハイブリッドcgroup階層に戻されます。

  6. 各SAPインスタンスプロファイル(通常は/usr/sap/SID/SYS/profile/にある)からsapwmp-captureを呼び出す行を削除します。

    Execute_20 = local /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture -a
    重要
    重要: バックアップが必要

    インスタンスプロファイルを編集する前に、バックアップを作成してください! プロファイルのエラーはSAPシステムの起動を妨げる可能性があります!

    重要
    重要: プロファイルを直接編集することについて

    SAP GUI (トランザクションRZ11)によって管理するためにデータベースにプロファイルをインポートしていない場合「にのみ」インスタンスプロファイルを直接編集します。これを実行する場合は、SAP GUIを使用して、行を追加してください。ファイルシステムにあるプロファイルファイルは上書きされ、手動の変更は失われます。

  7. システムを再起動して、SAPシステムが正常に起動されていることを確認します。

9 ファイアウォール

この章では、ファイアウォールと暗号化を使用してシステムへのアクセスを制限する方法について説明し、システムにリモートで接続する方法に関する情報を提供します。

9.1 firewalldの設定

デフォルトで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールワークフローにより、firewalldが有効になっています。

注記
注記: SuSEfirewall2に代わるfirewalld

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 GAでは、SuSEfirewall2に代わる、新しいデフォルトのソフトウェアファイアウォールとして、firewalldが導入されています。SuSEfirewall2は、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 GAから削除されておらず、デフォルトでインストールされていないにもかかわらず、まだ主要リポジトリの一部になっています。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 GAより古いリリースからアップグレードする場合、SuSEfirewall2は変更されないため、firewalldに手動でアップグレードする必要があります(セキュリティガイドを参照)。

ファイアウォールは次のネットワークアクセスを許可するように手動で設定する必要があります。

  • SAPアプリケーション

  • データベース(データベースベンダーのドキュメントを参照。SAP HANAの場合は、9.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照)

さらに、ポート1128 (TCP)および1129 (UDP)を開きます。

SAPアプリケーションでは、ファイアウォール内に多数のオープンポートとポート範囲が必要です。正確な番号は選択したインスタンスによって異なります。詳細については、SAPによって提供されるドキュメントを参照してください。

9.2 HANA-Firewallの設定

SAP HANAのファイアウォールの設定を簡素化するために、パッケージ HANA-Firewallをインストールします。HANA-Firewallは、既存のSuSEfirewall2設定にルールセットを追加します。

HANA-Firewallは、次のパートで構成されます。

  • YaSTモジュールSAP HANA Firewall (SAP HANAファイアウォール):  グラフィカルユーザインタフェースからSAP HANA用のファイアウォールを設定、適用、および元に戻すことができます。

  • コマンドラインユーティリティhana-firewall:  SAP HANAのファイアウォールルールを含むXMLファイルを作成します。

    必要に応じて、YaSTを使用する代わりに、/etc/sysconfig/hana-firewallにある設定ファイルを使用してルールセットを設定できます。

重要
重要: SAP HANA MDCデータベース

マルチテナントSAP HANA (MDC)データベースの場合、開く必要があるポート番号を自動的に判断することはまだできません。マルチテナントSAP HANAデータベースシステムで作業している場合は、YaSTを使用する前に、コマンドラインでスクリプトを実行して、新しいサービス定義を作成します。

root # cd /etc/hana-firewall.d
root # hana-firewall define-new-hana-service

ディレクトリ/etc/hana-firewall.dに切り替える必要があります。切り替えない場合、使用できない場所に新しいサービスのルールファイルが作成されます。

スクリプトがいくつかの質問をします。重要なことは、開く必要のあるTCPポートとUDPポートの範囲を尋ねることです。

注記
注記: HANA-Firewallパッケージのインストール

続行する前に、パッケージの HANA-Firewall および yast2-hana-firewall がインストールされていることを確認してください。

手順 9.1: HANA-Firewallの使用
  1. ファイアウォールを設定するSAP HANAデータベースが正しくインストールされていることを確認します。

  2. 適切なYaSTモジュールを開くには、アプリケーション › YaSTセキュリティとユーザ › SAP HANA Firewall (SAP HANAファイアウォール)を選択します。

  3. グローバルオプションで、ファイアウォールを有効にするを有効にします。さらに、Allow Remote Shell Access (SSH) (リモートシェルアクセス(SSH)を許可する)かどうかを決定します。

  4. Allowed Services on Network Interface (ネットワークインタフェース上の許可されたサービス)でネットワークインタフェースを選択します。

  5. 左側のリストボックスでネットワークサービスを選択し、をクリックしてネットワークサービスを許可します。右側のリストボックスでサービスを選択し、をクリックしてサービスを削除します。

    事前設定されたサービス以外のサービスを追加するには、次の表記を使用します。

    SERVICE_NAME:CIDR_NOTATION

    CIDR表記の詳細については、https://en.wikipedia.org/wiki/Classless_Inter-Domain_Routingを参照してください。システムで使用可能なサービスを見つけるには、getent servicesを使用します。

    HANA-Firewallスクリーンショット
  6. すべてのネットワークインタフェースについてステップ 4から繰り返します。

  7. 終了したら、OKをクリックします。

    HANA-Firewallのファイアウォールルールがコンパイルされて適用されます。次に、サービスhana-firewallが再起動されます。

  8. 最後に、HANA-Firewallが正しく有効化されたかどうか確認します。

    root # hana-firewall status
    HANA firewall is active. Everything is OK.

詳細については、hana-firewallのマニュアルページを参照してください。

9.3 SAProuterの統合

SAPのSAProuterソフトウェアを使用すると、異なるSAPシステム間、またはSAPシステムと外部ネットワーク間でネットワークトラフィックをプロキシすることができます。SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsはSAProuterをsystemdに統合できるようになりました。これは、SAProuterがオペレーティングシステムで適切に開始および停止され、systemctlを使用して制御できることを意味します。

この機能を使用するには、その前に、次のものがこの順序でインストールされていることを確認してください。

  • SAProuterを含むSAPアプリケーション

  • systemd-saprouterとしてパッケージ化されている SAProuter systemdの統合

最初にインストールするアプリケーションの順序が間違っている場合は、 systemd-saprouterをインストールします。

systemctlを使用してSAProuterを制御するには、次を使用します。

  • SAProuterサービスの有効化: systemctl enable saprouter

  • SAProuterサービスの開始: systemctl start saprouter

  • SAProuterサービスのステータスの表示: systemctl status saprouter

  • SAProuterサービスの停止: systemctl stop saprouter

  • SAProuterサービスの無効化: systemctl disable saprouter

10 ClamSAPを使用したマルウェアに対する保護

ClamSAPは、ClamAVマルウェア対策ツールキットをSAP NetWeaverおよびSAP Mobile Platformアプリケーションに統合します。ClamSAPは、ClamAVとSAP NetWeaver Virus Scan Interface (NW-VSI)の間をリンクする共有ライブラリです。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP2に付属しているClamSAPのバージョンは、NW-VSIバージョン2.0をサポートしています。

10.1 ClamSAPのインストール

  1. アプリケーションホストに、ClamAVとClamSAPのパッケージをインストールします。そのためには、次のコマンドを使用してください。

    tux > sudo zypper install clamav clamsap
  2. デーモンclamdを有効にする前に、マルウェアデータベースを初期化します。

    tux > sudo freshclam
  3. サービスclamdを開始します。

    tux > sudo systemctl start clamd
  4. 次のコマンドを使用してサービスclamdのステータスを確認します。

    tux > systemctl status clamd
    ● clamd.service - ClamAV Antivirus Daemon
    Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/clamd.service; enabled; vendor preset: disabled)
    Active: active (running) since Tue 2017-04-11 10:33:03 UTC; 24h ago
    [...]

10.2 SAP NetWeaverでのウィルススキャナグループの作成

  1. GUIを使用してSAP NetWeaverインストールにログインします。DDICまたはSAP*ユーザとしてログインしないでください。ウィルススキャナをcross-clientに設定する必要があるためです。

  2. トランザクションVSCANGROUPを使用してウィルススキャナグループを作成します。

    編集可能なテーブルを使用してビュー「スキャナグループ」を編集する
  3. ビューモードから変更モードに切り替えるには、Change View (ビューの変更) (ビューの変更)ボタンをクリックします。

    チェックマークをクリックして、This table is cross-client (このテーブルはクロスクライアントです)というメッセージを確認します。テーブルが編集可能になりました。

  4. 最初の空の行を選択します。Scanner Group (スキャナグループ)テキストボックスで、CLAMSAPVSIを指定します。Group Text (グループテキスト)で、CLAMSAPを指定します。

    Business Add-in (ビジネスアドイン)がオフになっていることを確認します。

    編集可能なテーブルを使用してビュー「スキャナグループ」を編集する
  5. フォームを保存するには、保存(保存)ボタンをクリックします。

10.3 SAP NetWeaverでのClamSAPライブラリの設定

  1. SAP NetWeaver GUIで、トランザクションVSCANをコールします。

  2. ビューモードから変更モードに切り替えるには、Change View (ビューの変更) (ビューの変更)ボタンをクリックします。

    チェックマークをクリックして、This table is cross-client (このテーブルはクロスクライアントです)というメッセージを確認します。テーブルが編集可能になりました。

  3. New entries (新しいエントリ)をクリックします。

  4. 必要に応じて、次のフォームに入力します。

    • Provider Type (プロバイダタイプ): Adapter (Virus Scan Adapter)

    • プロバイダ名: VSA_HOSTNAME (例: VSA_SAPSERVER)

    • Scanner Group (スキャナグループ): 10.2項 「SAP NetWeaverでのウィルススキャナグループの作成」で設定したスキャナグループの名前(例: CLAMSAPVSI)

    • サーバ: HOSTNAME_SID_INSTANCE_NUMBER (例: SAPSERVER_P04_00)

    • Adapter Path (アダプタのパス): libclamsap.so

    新しいエントリ: 追加されたエントリの詳細フォーム
  5. フォームを保存するには、保存ボタンをクリックします。

10.4 ClamSAPの実行

ClamSAPを実行するには、トランザクションVSCANに移動します。続いて[開始]をクリックします。

ビュー「ウィルススキャンプロバイダ定義」を変更する
図 10.1: ビューウィルススキャンプロバイダ定義を変更する

その後、ClamSAPとClamAVの詳細を含む概要が表示されます(図10.2「ClamSAPデータの概要」を参照)。

ClamSAPデータの概要
図 10.2: ClamSAPデータの概要

10.5 詳細情報

詳細については、プロジェクトホームページhttps://sourceforge.net/projects/clamsap/も参照してください。

11 RDPを介した接続

RDPオプションを有効にしてSLES-SAPをインストールした場合、またはKIWIイメージからインストールした場合、RDPはサービスxrdpを介してマシンで有効になります。または、このセクションの終わりで説明するように、RDPを後で有効にすることもできます。

次のような、RDPをサポートする任意のソフトウェアを使用して接続できます。

  • Linux:  Vinagre (SUSE Linux Enterprise Desktop/SLE-WEおよびopenSUSEで利用可能)またはRemmina (openSUSEで利用可能)

  • Windows:  リモートデスクトップ接続

重要
重要: 接続パラメータ

次のパラメータで接続を設定してください。

  • ポート:  3389

  • 色の深さ:  16ビットまたは24ビットのみ

手順 11.1: RDPの設定

インストール中にRDP接続を設定していない場合は、次の手順を使用して後で実行することもできます。

  1. まず、ファイアウォールの例外を作成します。RDP用に開く必要のあるポートを設定するファイルを作成して開始します。

    rootとして、xrdpという名前、および次のコンテンツを含む新しいファイルを/etc/sysconfig/SuSEfirewall2.d/services/の下に作成します。

    ## Name: Remote Desktop Protocol
    TCP="3389"
  2. /etc/sysconfig/SuSEfirewall2ファイルを開き、FW_CONFIGURATIONS_EXT、​FW_CONFIGURATIONS_DMZ、およびFW_CONFIGURATIONS_INTの​設定行をxrdpを含めるように変更します。他のサービスが有効になっていない場合、各行は次のようになります。

    FW_CONFIGURATIONS_EXT="xrdp"
    FW_CONFIGURATIONS_DMZ="xrdp"
    FW_CONFIGURATIONS_INT="xrdp"

    他のサービスがある場合は、スペース文字を使用して引用符を区切ります。

  3. 次に、xrdp自体を設定します。

    パッケージ xrdp がインストールされていない場合、インストールします。

    root # zypper install xrdp
  4. ファイアウォールを再起動します。

    root # systemctl restart SuSEfirewall2
  5. サービスを有効にして起動します。

    root # systemctl enable xrdp
    root # systemctl start xrdp

    これでマシンに接続できるようになりました。

12 オペレーティングシステムイメージの作成

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsからカスタムオペレーティングシステムイメージを作成する複数の方法があります。推奨される方法は一般的にKIWIを使用する方法で、これはXML設定ファイルを取り込んでから、完全に自動的に実行します。

または、再使用する前に、クリーンアップされる既存のインストールからイメージを作成することもできます。

12.1 KIWIによるイメージの作成

KIWIは、新しい物理マシンまたは仮想マシンに簡単にコピー可能なオペレーティングシステムイメージを作成するツールです。このセクションでは、KIWIを使用したSLES-SAPイメージの作成について説明します。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは現在、パッケージkiwi-template-sapのテンプレートを使用したKIWIによるイメージの作成をサポートしています。ただし、現在の実装では、次のような特定の制限があります。

  • VMXディスクイメージの構築のみがサポートされています。他のイメージタイプの構築はサポートされていません。

  • Open Build Serviceにはすべての必要なパッケージが含まれているわけではないため、/tmp/SLES4SAP.isoにあるSUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsのISOイメージを指定する必要があります。

基本的なイメージを構築するには、次の2つのコマンドを使用します。

  1. ルートファイルシステムの構築:

    root # kiwi -p SLES4SAP --root fsroot
  2. VMXイメージの構築:

    root # kiwi --create fsroot --type vmx -d build

SAPinstを使用したグラフィカルインストールを実行可能にするには、イメージのデフォルト設定で次の操作を有効にします。

  • IceWMデスクトップのインストール

  • サービスxrdpが自動起動し、RDPを介してマシンに接続できるようにする詳細については、第11章 「RDPを介した接続を参照してください。

KIWIおよびSLES-SAPに関する詳細:

  • SLES-SAPのKIWIの設定については、/usr/share/kiwi/image/SLES4SAP/READMEを参照してください。

  • 一般的なKIWIについては、『openSUSE-KIWI Image System Cookbook』(https://doc.opensuse.org/projects/kiwi/doc/)を参照してください。

12.2 インスタンスをマスタイメージとして使用する前にクリーンアップする

初めからKIWIイメージを生成するのではなく、複数のシステムですでに設定されているマスタインスタンスのイメージを使用する方が適切な場合があります。たとえば、ご使用のイメージにKIWIを使用してインストールできない追加のソフトウェアや設定を含める必要がある場合などです。

ただし、通常、このようなイメージには、システムの他の部分と一緒にコピーしてはならない特定の設定データが含まれています。

手動でクリーンアップする必要がないようにするには、スクリプトclone-master-clean-up (同じ名前のパッケージから入手可能)を使用します。

これにより、次のデータが自動的に削除されます。

  • スワップデバイス(ゼロワイプしてから、再度有効化)

  • SUSE登録情報とリポジトリ、およびZypper ID

  • ユーザおよびホストのSSHキーとドメインおよびホスト名

  • 生成されたHANA-Firewallスクリプト(ただし設定自体は除く)

  • シェル履歴、メール、cronジョブ、一時ファイル(/tmp/var/tmp)、ログファイル(/var/log)、ランダムシード、systemdジャーナル、collectd統計、postfix設定、/rootの一部

  • /var/cache/var/crash/var/lib/systemd/coredump

また、次の設定がデフォルトに復元されます。

  • DHCPおよびネットワーク設定を使用しないネットワークインタフェースス(/etc/hostname/etc/hosts、および/etc/resolv.conf)

  • sudo設定

さらに、新しいrootパスワードを設定することを選択できます。/etc/fstabのUUIDベースのエントリは、デバイス文字列に置き換えられます。このスクリプトは、インストールワークフローの最初のブートセクションが元のインストールに使用されている場合は、次のブート時に再度実行されるようにします。

12.2.1 clone-master-clean-upの設定

clone-master-clean-upを実行する前に、次の方法でスクリプトを設定できます。

  • 特定のデータをクリーンアップしないようにスクリプトを設定するには、設定ファイル/etc/sysconfig/clone-master-clean-upを使用します。

    このファイルには、使用可能なオプションの簡単な説明も記載されています。

  • 追加のディレクトリまたはファイルをクリーンアップするようにスクリプトを設定するには、このようなディレクトリおよびファイルの絶対パスを含むリストを作成します。

    /additional/file/to/delete.now
    /additional/directory/to/remove

    このリストを/var/adm/clone-master-clean-up/custom_removeとして保存します。

12.2.2 clone-master-clean-upの使用

スクリプトを使用するには、次のコマンドを実行します。

root # clone-master-clean-up

次に、指示に従います。

12.2.3 詳細情報

次のソースは、clone-master-clean-upに関する追加情報を提供します。

  • 一般的な情報については、マニュアルページのclone-master-clean-upを参照してください。

  • さらに削除に役立つ可能性のあるファイルとディレクトリについては、/var/adm/clone-master-clean-up/custom_remove.templateを参照してください。

13 重要なログファイル

この製品の最も重要なログファイルは以下のとおりです。

  • SAPインストールウィザードはYaSTモジュールです。そのログエントリは/var/log/YaST/y2logにあります。

  • すべてのSAPナリッジはライブラリにバンドルされています。そのログエントリは/var/log/SAPmedia.logにあります。

  • 自動インストールに関連するログファイルは/var/adm/autoinstall/logsにあります。

A SLES-SAP用の追加ソフトウェア

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでは、購読に含まれていないソフトウェアを簡単にインストールできます。

  • 拡張機能とモジュールにより、SUSEによって作成され、サポートされている追加のソフトウェアをインストールできます。拡張機能とモジュールに関する詳細については、『導入ガイド』初期のシステム設定パートの章、モジュール、拡張機能、およびサードパーティ製アドオン製品のインストール(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

  • SUSE Connect Program (SUSE Connectプログラム)では、サードパーティによって作成され、サポートされている、特にSLES-SAP向けのパッケージをインストールできます。また、サードパーティのトレーニングとサポートにも簡単にアクセスできます。A.2項 「SUSE Connectプログラム」を参照してください。

  • SUSE Package Hubでは、サポートなしで、SUSE Linux Enterpriseコミュニティによって作成されたパッケージをインストールできます。A.3項 「PackageHub」を参照してください。

A.1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの基本製品の特定

SUSE製品を特定し、区別するには、以下のファイルのいずれかを使用します。

/etc/os-release

シェル互換の変数割り当てに類似した、キー値ペアを持つテキストファイル。各キーは別々の行にあります。

CPE_NAMEキーを検索できます。ただし、異なるリリースおよびサービスパック間で、値が変更されている可能性があります。さらに詳細が必要な場合は、https://www.suse.com/support/kb/doc/?id=7023490にある記事を参照してください。

/etc/product.d/baseproduct

XMLファイルへのリンク。/etc/product.d/ディレクトリには、異なる.prodファイルが含まれています。

購入した製品、システムをインストールした方法に応じて、リンク/etc/product.d/baseproductは異なる.prodファイルを指す可能性があります。たとえば、sle-module-sap-applications.prodCPE_NAMEと同じ情報がタグ <cpeid>に保存されます。

その他の情報として、両方のファイルにオペレーティングシステムと基本製品が含まれています。基本製品(キーCPE_NAMEおよびタグ <cpeid>)は、Common Platform Enumeration仕様に従います。

基本的に、コマンドgrepまたはxmlstarlet (どちらも製品で使用可能)のいずれかを使用して、ファイル/etc/product.d/baseproductから情報を引き出すことができます。XMLもテキストであるため、出力の形式がそれほど重要でない場合は、単純な検索grepを使用します。ただし、検索がより高度な場合、別のスクリプトでの出力が必要な場合、または出力にXMLタグを避けたい場合は、代わりに、xmlstarletコマンドを使用します。

たとえば、基本製品を取得するには、次のようにgrepを使用します。

tux > grep cpeid /etc/products.d/baseproduct
<cpeid>cpe:/o:suse:sle-module-sap-applications:RELEASE:spSP_NUMBER</cpeid>

RELEASESP_NUMBERはプレースホルダで、製品リリース番号とサービスパックを示しています。

xmlstarletでも同じことができます。XPath (情報に導く手順)が必要です。適切なオプションを使用すると、 <cpeid>/</cpeid> タグを避けることができます。

tux > xmlstarlet sel -T -t -v "/product/cpeid" /etc/products.d/baseproduct
cpe:/o:suse:sle-module-sap-applications:RELEASE:spSP_NUMBER

(grepでは難しい)より高度な検索では、他の製品に必要なすべての依存関係を一覧表示します。basenamesle-module-sap-applications.prodを指していると仮定して、次のコマンドは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに必要なすべての製品依存関係を出力します。

>tux > xmlstarlet sel -T -t -v "/product/productdependency[@relationship='requires']/@name" /etc/products.d/baseproduct
SUSE_SLE
sle-ha

A.2 SUSE Connectプログラム

SUSE Connect Program (SUSE Connectプログラム)を使用してYaSTコントロールセンターからSUSE Connectプログラムを起動します。使用可能なオプションから選択します。ソフトウェアリポジトリを有効にするには、リポジトリの追加をクリックします。

SUSE Connectプログラムによって有効化されるすべてのソフトウェアは、サードパーティから提供されます。サポートについては、対象のベンダーにお問い合わせください。SUSEでは、これらのオファリングのサポートは提供していません。

注記
注記: SUSEConnectコマンドラインツール

SUSEConnectコマンドラインツールは、異なる目的の別のツールです。SUSE製品のインストールを登録できます。

A.3 PackageHub

PackageHubでは、以前はopenSUSEでのみ使用可能であったSLEの多数のパッケージを用意しています。SUSE Package Hubのパッケージは、コミュニティによって作成され、サポートなしで提供されています。たとえば、セクションには次のものが含まれます。

  • Rプログラミング言語

  • Haskellプログラミング言語

  • KDE5デスクトップ

PackageHubを有効にするには、https://packagehub.suse.com/how-to-use/に記載されるようにリポジトリを追加します。

詳細については、https://packagehub.suse.comにあるPackageHubのWebサイトを参照してください。

B AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニング

SAPシステムのパーティショニングは、/usr/share/YaST2/include/sap-installation-wizard/ディレクトリのファイルによって制御されます。次のファイルを使用できます。

  • SAP NetWeaverまたはSAP S/4HANAアプリケーションサーバのインストール:  base_partitioning.xml

  • SAP HANAまたはSAP S/4HANAデータベースサーバのインストール:  hana_partitioning.xml

  • SAP BusinessOne認定ハードウェアへのSAP HANAまたはSAP S/4HANAデータベースサーバのインストール:  ハードウェア固有のパーティショニングファイル

ファイルは、/etc/sap-installation-wizard.xmlで定義されているように選択されます。ここでは、 パーティショニング要素 のコンテンツが決定要因となります。

たとえば、インストールがHAまたは分散データベースに基づいている場合、パーティショニングは必要ありません。この場合、 パーティショニング要素 NOに設定され、base_partitioning.xmlファイルが使用されます。

注記
注記: autoinst.xmlはここでは使用できない

autoinst.xmlは、オペレーティングシステムのインストールにのみ使用されます。SAPシステムのパーティショニングを制御することはできません。

パーティショニングを制御するファイルは、 パーティショニング要素 セクションのみを含むAutoYaST制御ファイルです。ただし、これらのファイルは、AutoYaST形式のいくつかの拡張機能を使用できます。

  • partitioning_defined タグが trueに設定される場合、パーティショニングはユーザの介入なしに実行されます。

    デフォルトでは、これはSAP HANA用に認定されたシステム(Dell、Fujitsu、HP、IBM、またはLenovoなど)でSAP HANAファイルシステムを作成する場合にのみ使用されます。

  • パーティションごとに、 size_min タグを指定できます。サイズ値は、RAM*N形式の文字列として指定できます。このようにして、パーティションの最小サイズを指定できます(使用可能なメモリ(RAM)のサイズのN倍)。

手順 B.1: カスタムSAPパーティショニングセットアップの作成

次の手順は、TREXのパーティショニングセットアップの作成方法を示しています。ただし、他のアプリケーションのパーティショニングセットアップの作成も同様に機能します。

  1. /usr/share/YaST2/include/sap-installation-wizard/で、新しいXMLファイルを作成します。たとえば、それにTREX_partitioning.xmlという名前を付けます。

  2. base_partitioning.xmlのコンテンツを新しいファイルにコピーして、新しいファイルをニーズに合わせて調整します。

  3. 最後に、カスタムファイルを含むように、/etc/sap-installation-wizard.xmlを調整します。 TREXlistitemで、次の行を挿入します。

    <partitioning>TREX_partitioning</partitioning>
重要
重要: base_partitioning.xmlは編集しない

base_partitioning.xmlは直接編集しないでください。次回のアップデートで、このファイルは上書きされます。

AutoYaSTを使用したパーティショニングの詳細については、『AutoYaSTガイド』の章のパーティショニング(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

C 補足メディア

補足メディアを使用して、パートナーやお客様は独自のタスクまたはワークフローをインストールウィザードに追加できます。

これは、AutoYaST XMLファイルの一部となるXMLファイルを追加することで実行されます。ワークフローに含めるため、このファイルをproduct.xmlと呼ぶ必要があります。

これは、独自のRPMの追加、独自のスクリプトの実行、クラスタファイルシステムの設定、独自のダイアログやスクリプトの作成など、さまざまなタイプの追加に使用できます。

C.1 product.xml

product.xmlファイルは、通常のAutoYaST XMLファイルのように見えますが、いくつかの制限があります。

この制限が存在するのは、以前にインストールの第1ステージが実行されているため、第2ステージに関連するXMLの部分のみが実行されるためです。

2つのXMLファイル(autoyast.xmlproduct.xml)は、メディアが読み込まれた後でマージされ、追加のワークフローのため、ただちに新しいAutoYaST XMLファイルが生成されます。

次の領域またはセクションがマージされます。

<general>
  <ask-list>         1
  ...
<software>           2
  <post-packages>
  ...
<scripts>
  <chroot-scripts>   3
  <post-scripts>     4
  <init-scripts>     5
  ...

1

C.2項 「独自のAutoYaST Askダイアログ」を参照してください。

2

C.3項 「追加のパッケージをインストールする」を参照してください。

3

パッケージのインストール後、最初のブート前

4

インストール済みシステムの最初のブート中、サービスは実行されていません。

5

インストール済みシステムの最初のブート中、すべてのサービスが稼働しています。

他のすべてのセクションが置き換えられます。

カスタマイズオプションに関する詳細については、『AutoYaSTガイド』、設定およびインストールのオプションの章のセクション独自のユーザスクリプト (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

C.2 独自のAutoYaST Askダイアログ

AutoYaSTのAsk機能の詳細については、『AutoYaSTガイド』、設定およびインストールのオプションの章のセクション、インストール時のユーザへの値の確認 (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

補足メディアの場合、ダイアログをcontステージ(<stage>cont</stage>)内でのみ使用できます。つまり、ダイアログは最初の再起動後に実行されます。

ダイアログを含むファイルは、ベースAutoYaST XMLファイルとマージされます。

ベストプラクティスとして、ダイアログにダイアログ番号と要素番号がある必要があり、10の手順があることが最適です。これは、後で追加を含めるのに役立ち、決定に応じてダイアログまたは要素をジャンプするためのターゲットとして使用することができます。また、これはベースダイアログでも使用され、適切なダイアログ番号と要素番号を指定すると、ベースダイアログの間にダイアログを配置できます。

ファイルに質問に対する回答を保存して、後でスクリプトのいずれかで使用することができます。インストールウィザードはこのようなファイルを/tmpディレクトリからメディアデータもコピーされるディレクトリにコピーするため、これにはプレフィックス/tmp/ayを使用する「必要がある」ことに注意してください。これが実行されるのは、次の補足メディアが同じダイアログまたは同じ回答ファイルを持つ可能性があり、ここに保存される値が上書きされるためです。

いくつかのオプションを使用した例を示します。

<?xml version="1.0"?>
<!DOCTYPE profile>
<profile xmlns="http://www.suse.com/1.0/yast2ns"
         xmlns:config="http://www.suse.com/1.0/configns">
<general>
  <ask-list config:type="list">
      <ask>
          <stage>cont</stage>
          <dialog config:type="integer">20</dialog>
          <element config:type="integer">10</element>
          <question>What is your name?</question>
          <default>Enter your name here</default>
          <help>Please enter your full name within the field</help>
          <file>/tmp/ay_q_my_name</file>
          <script>
             <filename>my_name.sh</filename>
             <rerun_on_error config:type="boolean">true</rerun_on_error>
             <environment config:type="boolean">true</environment>
             <source><![CDATA[
function check_name() {
           local name=$1
           LC_ALL=POSIX
           [ -z "$name" ] && echo "You need to provide a name." && return 1
           return 0
}
check_name "$VAL"
]]>
             </source>
             <debug config:type="boolean">false</debug>
             <feedback config:type="boolean">true</feedback>
          </script>
      </ask>
  </ask-list>
</general>
</profile>

C.3 追加のパッケージをインストールする

product.xmlファイル内にRPMパッケージをインストールすることもできます。これを行うため、第2ステージのインストールに<post-packages>要素を使用できます。

詳細については、『AutoYaSTガイド』、設定およびインストールのオプションの章のセクション、Installing Packages in Stage 2 (第2ステージでのパッケージのインストール) (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。次に一例を示します。

...
<software>
 <post-packages config:type="list">
  <package>yast2-cim</package>
 </post-packages>
</software>
...

C.4 補足メディアのディレクトリ例

補足メディアディレクトリの最小例には、product.xmlと呼ばれるファイルのみが含まれます。

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