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SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP6

ガイド

発行日: 2024 年 12 月 12 日

Copyright © 2010–2024 SUSE LLC and contributors. All rights reserved.

この文書は、GNUフリー文書ライセンスのバージョン1.2または(オプションとして)バージョン1.3の条項に従って、複製、頒布、および/または改変が許可されています。ただし、この著作権表示およびライセンスは変更せずに記載すること。ライセンスバージョン1.2のコピーは、GNUフリー文書ライセンスセクションに含まれています。

SUSEの商標については、https://www.suse.com/company/legal/を参照してください。サードパーティ各社とその製品の商標は、所有者であるそれぞれの会社に所属します。商標記号(®、™など)は、SUSEおよびその関連会社の商標を示します。アスタリスク(*)は、第三者の商標を示します。

本書のすべての情報は、細心の注意を払って編集されています。しかし、このことは絶対に正確であることを保証するものではありません。SUSE LLC、その関係者、著者、翻訳者のいずれも誤りまたはその結果に対して一切責任を負いかねます。

序文

SUSE® Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SAPのソフトウェア開発のための参照プラットフォームです。SAPアプリケーション用に最適化されています。 このドキュメントでは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールおよびカスタマイズについて説明します。

SUSE Linux Enterprise High Availabilityは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの一部でもあります。

1 利用可能なマニュアル

このマニュアルには、システムまたはオンラインで利用できる追加のドキュメントリソースへのリンクが含まれています。

オンラインマニュアル

さまざまな形式のこのガイドの最新バージョンについては、https://documentation.suse.com/#sles-sapにアクセスしてください。ホワイトペーパーなどのリソースについては、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。

他の製品のオンラインマニュアルは、https://documentation.suse.com/で検索してください。

注記
注記: 最新のアップデート

最新のマニュアルアップデートは、通常、英語版マニュアルで入手できます。

SUSE Knowledgebase

問題が発生した場合は、https://www.suse.com/support/kb/でオンラインで入手できる技術情報文書(TID)を確認してください。SUSE Knowledgebaseを検索して、お客様のニーズに応じた既知のソリューションを見つけます。

リリースノート

リリースノートはhttps://www.suse.com/releasenotes/を参照してください。

ご使用のシステムで

オフラインで使用するために、リリースノートはシステム上の/usr/share/doc/release-notesでも入手できます。個々のパッケージのマニュアルは、/usr/share/doc/packagesで入手できます。

「マニュアルページ」には、多くのコマンドについても説明されています。説明を表示するには、manコマンドに確認したいコマンドの名前を付加して実行してください。システムにmanコマンドがインストールされていない場合は、sudo zypper install manコマンドでインストールします。

2 ドキュメントの改善

このドキュメントに対するフィードバックや貢献を歓迎します。フィードバックを提供するための次のチャネルが利用可能です。

サービス要求およびサポート

ご使用の製品に利用できるサービスとサポートのオプションについては、https://www.suse.com/support/を参照してください。

サービス要求を提出するには、SUSE Customer Centerに登録済みのSUSEサブスクリプションが必要です。https://scc.suse.com/support/requestsに移動して、ログインし、新規作成をクリックします。

バグレポート

https://bugzilla.suse.com/から入手できるドキュメントを使用して、問題を報告してください。

このプロセスを容易にするには、このドキュメントのHTMLバージョンの見出しの横にあるReport an issue (問題を報告する)アイコンをクリックしてください。これにより、Bugzillaで適切な製品とカテゴリが事前に選択され、現在のセクションへのリンクが追加されます。バグレポートの入力を直ちに開始できます。

Bugzillaアカウントが必要です。

ドキュメントの編集に貢献

このドキュメントに貢献するには、このドキュメントのHTMLバージョンの見出しの横にあるEdit source document (ソースドキュメントの編集)アイコンをクリックしてください。GitHubのソースコードに移動し、そこからプルリクエストをオープンできます。

GitHubアカウントが必要です。

注記
注記: Edit source document (ソースドキュメントの編集)は英語でのみ利用可能

Edit source document (ソースドキュメントの編集)アイコンは、各ドキュメントの英語版でのみ使用できます。その他の言語では、代わりにReport an issue (問題を報告する)アイコンを使用してください。

このドキュメントに使用されるドキュメント環境に関する詳細については、リポジトリのREADMEを参照してください。

メール

ドキュメントに関するエラーの報告やフィードバックは<>宛に送信していただいても構いません。ドキュメントのタイトル、製品のバージョン、およびドキュメントの発行日を記載してください。また、関連するセクション番号とタイトル(またはURL)、問題の簡潔な説明も記載してください。

3 マニュアルの表記規則

このマニュアルでは、次の通知と表記規則が使用されています。

  • /etc/passwd: ディレクトリ名とファイル名

  • PLACEHOLDER: PLACEHOLDERは、実際の値で置き換えられます。

  • PATH: 環境変数

  • ls--help: コマンド、オプションおよびパラメータ

  • user: ユーザまたはグループの名前

  • package_name: ソフトウェアパッケージの名前

  • AltAltF1: 押すキーまたはキーの組み合わせ。キーはキーボードのように大文字で表示されます。

  • ファイルファイル › 名前を付けて保存: メニュー項目、ボタン

  • AMD/Intel この説明は、AMD64/Intel 64アーキテクチャにのみ当てはまります。矢印は、テキストブロックの先頭と終わりを示します。

    IBM Z, POWER この説明は、IBM ZおよびPOWERアーキテクチャにのみ当てはまります。矢印は、テキストブロックの先頭と終わりを示します。

  • Chapter 1, Example chapter: このガイドの別の章への相互参照。

  • root特権で実行する必要のあるコマンド。これらのコマンドの先頭にsudoコマンドを置いて、特権のないユーザとしてコマンドを実行することもできます。

    # command
    > sudo command
  • 特権のないユーザでも実行できるコマンド:

    > command
  • コマンドは、行末のバックスラッシュ文字(\)で2行または複数行に分割できます。バックスラッシュは、コマンドの呼び出しが行末以降も続くことをシェルに知らせます。

    > echo a b \
    c d
  • コマンド(プロンプトで始まる)と、シェルによって返される各出力の両方を示すコード ブロック:

    > command
    output
  • 通知

    警告
    警告: 警告の通知

    続行する前に知っておくべき、無視できない情報。セキュリティ上の問題、データ損失の可能性、ハードウェアの損傷、または物理的な危険について警告します。

    重要
    重要: 重要な通知

    続行する前に知っておくべき重要な情報です。

    注記
    注記: メモの通知

    追加情報。たとえば、ソフトウェアバージョンの違いに関する情報です。

    ヒント
    ヒント: ヒントの通知

    ガイドラインや実際的なアドバイスなどの役に立つ情報です。

  • コンパクトな通知

    注記

    追加情報。たとえば、ソフトウェアバージョンの違いに関する情報です。

    ヒント

    ガイドラインや実際的なアドバイスなどの役に立つ情報です。

4 サポート

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのサポートステートメントと、技術プレビューに関する一般情報を次に示します。製品ライフサイクルの詳細については、https://www.suse.com/lifecycleを参照してください。

サポート資格をお持ちの場合、https://documentation.suse.com/sles-15/html/SLES-all/cha-adm-support.htmlを参照して、サポートチケットの情報を収集する方法の詳細を確認してください。

4.1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのサポートステートメント

サポートを受けるには、SUSEの適切な購読が必要です。利用可能な特定のサポートサービスを確認するには、https://www.suse.com/support/にアクセスして製品を選択してください。

サポートレベルは次のように定義されます。

L1

問題の判別。互換性情報、使用サポート、継続的な保守、情報収集、および利用可能なドキュメントを使用した基本的なトラブルシューティングを提供するように設計されたテクニカルサポートを意味します。

L2

問題の切り分け。データの分析、お客様の問題の再現、問題領域の特定、レベル1で解決できない問題の解決、またはレベル3の準備を行うように設計されたテクニカルサポートを意味します。

L3

問題解決。レベル2サポートで特定された製品の欠陥を解決するようにエンジニアリングに依頼して問題を解決するように設計されたテクニカルサポートを意味します。

契約されているお客様およびパートナーの場合、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでは、次のものを除くすべてのパッケージに対してL3サポートを提供します。

  • 技術プレビュー。

  • サウンド、グラフィック、フォント、およびアートワーク。

  • 追加の顧客契約が必要なパッケージ。

  • モジュール「Workstation Extension」の一部として出荷される一部のパッケージは、L2サポートのみです。

  • 名前が-develで終わるパッケージ(ヘッダファイルや開発者用のリソースを含む)に対しては、メインのパッケージとともにサポートが提供されます。

SUSEは、元のパッケージの使用のみをサポートします。つまり、変更も、再コンパイルもされないパッケージをサポートします。

4.2 技術プレビュー

技術プレビューとは、今後のイノベーションを垣間見ていただくための、SUSEによって提供されるパッケージ、スタック、または機能を意味します。技術プレビューは、ご利用中の環境で新しい技術をテストする機会を参考までに提供する目的で収録されています。私たちはフィードバックを歓迎しています。技術プレビューをテストする場合は、SUSEの担当者に連絡して、経験や使用例をお知らせください。ご入力いただいた内容は今後の開発のために役立たせていただきます。

技術プレビューには、次の制限があります。

  • 技術プレビューはまだ開発中です。したがって、機能が不完全であったり、不安定であったり、運用環境での使用には適していなかったりする場合があります。

  • 技術プレビューにはサポートが提供されません

  • 技術プレビューは、特定のハードウェアアーキテクチャでしか利用できないことがあります。

  • 技術プレビューの詳細および機能は、変更される場合があります。その結果、技術プレビューのその後のリリースへのアップグレードは不可能になり、再インストールが必要な場合があります。

  • SUSEで、プレビューがお客様や市場のニーズを満たしていない、またはエンタープライズ標準に準拠していないことを発見する場合があります。技術プレビューは製品から予告なく削除される可能性があります。SUSEでは、このようなテクノロジーのサポートされるバージョンを将来的に提供できない場合があります。

ご使用の製品に付属している技術プレビューの概要については、https://www.suse.com/releasenotesにあるリリースノートを参照してください。

1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとは

SUSE® Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SAPユーザの特定のニーズに対処するソフトウェアとサービスのバンドルです。すべてのSAPソフトウェアソリューション用に最適化された唯一のオペレーティングシステムです。

対象となる使用例は次のとおりです。

  • UnixからLinuxへのマイグレーションおよびプラットフォーム変更

  • SAPアプライアンス

  • SAPクラウドの展開

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、ソフトウェアコンポーネントおよびサービス提供から構成されています。サービス提供については、次の各セクションで説明します。図SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリングは、SUSEのその他の製品でも使用できるソフトウェアコンポーネントおよびサービス(緑色)とSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでのみ使用できるソフトウェアコンポーネントおよびサービス(青色)を示しています。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリング
図 1.1: SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリング

1.1 ソフトウェアコンポーネント

図1.1「SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのオファリング」で示されているように、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SUSE Linux Enterprise Serverをベースとしていますが、SUSE Linux Enterprise High Availabilityやインストールワークフローなどのいくつかの追加のソフトウェアコンポーネントが含まれています。これらのソフトウェアコンポーネントについては、以降のセクションで簡単に説明します。

1.1.1 SUSE Linux Enterprise Server

現在のリリースはSUSE Linux Enterprise Server 15 SP6をベースとしています。SUSE Linux Enterprise Serverは、物理環境と仮想環境の両方でミッションクリティカルなコンピューティングに対応する非常に相互運用性の高いプラットフォームです。

1.1.2 SUSE Linux Enterprise High Availability

このコンポーネントは次のもので構成されます。

  • ポリシー重視の柔軟なクラスタリング

  • クラスタ対応のファイルシステムとボリューム管理

  • 継続的なデータレプリケーション

  • セットアップとインストール

  • 管理ツール

  • リソースエージェント、SAPにも対応

  • 仮想化対応

SUSE Linux Enterprise High Availabilityには、特にSAPアプリケーションと作業するための次の2つのリソースエージェントが用意されています。

  • SAPInstance: SAP製品のインスタンスを開始および停止できます。

  • SAPDatabase: SAPアプリケーションがサポートしているすべてのデータベース(SAP HANA、SAP MaxDB、SAP ASE、Oracle、Sybase、IBM DB2)を開始および停止できます。

SUSE Linux Enterprise High Availabilityの詳細については、管理ガイド(https://documentation.suse.com/sles-15)および、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)のホワイトペーパーおよびベストプラクティスガイドを参照してください。

1.1.3 簡素化されたSAP HANAシステムレプリケーションのセットアップ

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、SUSE Linux Enterprise High Availabilityのコンポーネントおよび2つの追加のリソースエージェント(RA)を使用したSAP HANA System Replicationをサポートしています。また、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、クラスタのセットアップを簡素化するYaSTウィザードが付属しています。

1.1.3.1 SAPHanaリソースエージェント

SUSEのこのリソースエージェントは、SAP HANAデータベースインスタンスでテイクオーバーが必要かどうかを確認することで、スケールアップシナリオをサポートします。純粋なSAPソリューションとは異なり、テイクオーバーは自動化できます。

これは親/子リソースとして設定されています。親は、プライマリモードで実行されているSAP HANAデータベースに対応し、子は同期(セカンダリ)ステータスで動作するインスタンスに対応します。テイクオーバーの場合、セカンダリ(子リソースインスタンス)を自動的に昇格して、新しいプライマリ(親リソースインスタンス)にすることができます。

このリソースエージェントは、次のスケールアップシナリオのシステムレプリケーションをサポートしています。

  • パフォーマンス最適化シナリオ.  同じSUSE Linux Enterprise High Availabilityクラスタの2つのサーバ(AとB)。一方はプライマリ(A)および他方はセカンダリ(B)。プライマリサーバ(A)からのSAP HANAインスタンスはセカンダリサーバ(B)に同期的に複製されます。

  • コスト最適化シナリオ.  AとBの基本的なセットアップは、「パフォーマンス最適化シナリオ」と同じです。ただし、セカンダリサーバ(B)は、開発またはQA用の追加のSAP HANAデータベースなどの、非生産的な目的にも使用されます。運用データベースは、ハードディスクなどの永続的メモリにのみ保存されます。テイクオーバーが必要な場合、テイクオーバーが処理される前に、非生産的なサーバは停止されます。生産的なデータベースのシステムリソースは、SAPフック呼び出しスクリプトを介して可能な限り迅速に増加します。

  • チェーン/多層シナリオ.  3つのサーバ(A、B、およびC)。そのうちの2つが同じSUSE Linux Enterprise High Availabilityクラスタに配置されます(AとB)。3番目のサーバ(C)は、外部に配置されます。プライマリサーバ(A)のSAP HANAシステムはセカンダリサーバ(B)に同期的に複製されます。セカンダリサーバ(B)は、外部サーバ(C)に非同期的に複製されます。

    AからBへのテイクオーバーが発生した場合、BとCの接続はそのままです。ただし、Bは2つのサーバ(AとC)のソースになることができません。これは星型トポロジであり、現在のSAP HANAバージョン(SPS11など)ではサポートされていないためです。

    SAP HANAコマンドを使用して、すべき操作を手動で決定できます。

    • BとCの接続は切断できるため、BはAに接続できます。

    • 外部サイト(C)へのレプリケーションがローカルシステムのレプリケーションより重要である場合、BとCの接続を維持できます。

すべてのシナリオに対して、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、シングルテナントとマルチテナント(MDC)両方のSAP HANAデータベースをサポートしています。つまり、複数のSAPアプリケーションにサービスを提供するSAP HANAデータベースを使用できます。

1.1.3.2 SAPHanaTopologyリソースエージェント

クラスタの設定をできるだけ簡単にするため、SUSEではSAPHanaTopologyリソースエージェントを開発しました。このエージェントは、SUSE Linux Enterprise High Availabilityクラスタのすべてのノードで動作し、SAP HANAシステムのレプリケーションのステータスおよび設定に関する情報を収集します。これは、通常の(ステートレス)クローンとして設計されています。

1.1.3.3 SAP HANAクラスタを設定するためのYaSTウィザード

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには現在、ベストプラクティスに従って、このようなクラスタの初期セットアップを管理するYaSTウィザードが追加で付属しています。このウィザードは、パッケージyast2-sap-haの一部で、SAP製品のHAセットアップを介してYaSTを使用して開始できます。

詳細については、第7章 「SAP HANAクラスタの設定を参照してください。

1.1.3.4 詳細の参照先

詳細については、以下を参照してください。

1.1.4 インストールワークフロー

インストールワークフローは、SUSE Linux Enterprise ServerオペレーティングシステムとSAPアプリケーション両方のガイド付きインストールパスを提供します。詳細については、2.5項 「インストールワークフローの概要」を参照してください。

さらに、インストールワークフローは、補足メディアを使用して、サードパーティベンダーまたはお客様が拡張できます。補足メディアの作成方法の詳細については、付録C 補足メディアを参照してください。

1.1.5 ClamSAPを使用したマルウェア保護

ClamSAPは、ClamAVマルウェア対策ツールキットをSAP NetWeaverおよびSAP Mobile Platformアプリケーションに統合し、クロスプラットフォーム脅威検出を可能にします。たとえば、ClamSAPを使用して、SAPアプリケーションがHTTPアップロードでの悪意のあるアップロードをスキャンできるようにします。

詳細については、第11章 「ClamSAPを使用したマルウェアに対する保護を参照してください。

1.1.6 SAP HANAセキュリティ

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、安全性の高いSAP HANAインストールの設定に役立つ追加の機能が含まれています。

1.1.6.1 SAP HANAのファイアウォール

SAP HANAのセキュリティ保護には、多数の追加のファイアウォールルールが必要な場合があります。SAP HANAのファイアウォールセットアップを簡素化するために、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、事前設定されたルールを提供し、firewalldと統合するパッケージHANA-Firewallが含まれています。

詳細については、10.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照してください。

1.1.6.2 SAP HANA用の強化ガイド

ベースとなっているオペレーティングシステムを強化する方法については、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。そこで、ドキュメント『OS Security Hardening for SAP HANA』を検索してください。

1.1.7 簡素化された運用管理

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、簡素化された運用管理を可能にするいくつかの機能を組み合わせています。

1.1.7.1 saptuneを使用したシステムのチューニング

システムチューニングアプリケーションsaptuneを使用すると、SAP S/4HANA、SAP NetWeaver、またはSAP HANA/SAP BusinessOneと共に使用するためにSAPで推奨するようにシステムを自動的かつ包括的にチューニングできます。これを行うために、saptuneは、tunedプロファイルを有効にします。以上により、使用しているハードウェアコンポーネントによって、使用可能なRAM容量などいくつかのカーネルパラメータをチューニングできます。

詳細については、第8章 「saptuneを使用したシステムのチューニングを参照してください。

1.1.7.2 SAPアプリケーションの依存関係を提供するパターン

SAPアプリケーションのソフトウェア依存関係の取り扱いを簡素化するため、SUSEでは、特定のアプリケーションに関連する依存関係RPMパッケージを組み合わせた複数のパターンを作成しました。

  • SAP BusinessOneサーバベース

  • SAP HANAサーバベース

  • SAP NetWeaverサーバベース

重要
重要: パッケージがパターンから欠落している可能性がある

ソフトウェアパターンのパッケージの選択は、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの特定のリリース(サービスパックまたはメジャーバージョン)の開発中に定義されます。このパッケージの選択は、この特定のリリースの有効期間にわたって維持されます。ご使用中のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのバージョンよりも後でリリースされたSAPアプリケーションで作業する場合、依存関係がパターンから欠落している場合があります。

SAPアプリケーションの依存関係に関する明確な情報については、SAPが提供するドキュメントを参照してください。

1.1.7.3 ClusterTools2

ClusterTools2には、CorosyncおよびPacemakerのクラスタのセットアップと管理を支援するツールが用意されています。その中には、可用性の高いシステムリソースの作成に役立つwowや、クラスタを管理できるClusterServiceがあります。

また、ClusterTools2では、通常のクラスタタスクを自動化するスクリプトを提供します。

  • チェックを実行するスクリプト。たとえば、システムがpacemakerクラスタを作成するために正しく設定されているかどうかの確認に使用。

  • 設定を簡素化するスクリプト。たとえば、Corosync設定の作成に使用。

  • システムを監視するスクリプトと、システム情報を表示または収集するスクリプト。たとえば、ログファイル内の既知のエラーパターンを見つけるために使用。

詳細については、パッケージ ClusterTools2.に含まれている、各ツールのマニュアルページを参照してください。

1.2 ソフトウェアリポジトリのセットアップ

SUSE Linux Enterpriseに基づくオペレーティングシステムに含まれるソフトウェアはRPMパッケージとして配布されます。このパッケージは、他のパッケージに依存する可能性のあるインストールパッケージの形式です。サーバまたはインストールメディアで、これらのパッケージはソフトウェアリポジトリ(チャネルと呼ばれる場合もある)に保存されます。

デフォルトで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsを実行しているコンピュータは、複数のリポジトリからパッケージを受信するように設定されています。各標準リポジトリには、最初に出荷されたときのソフトウェアの状態を示すプールバリアントがあります。プールバリアントのソフトウェアに対する最新の保守更新を含む更新バリアントもあります。

インストール中にシステムを登録した場合は、リポジトリセットアップに以下が含まれている必要があります。

表 1.1: 標準リポジトリ

コンテンツ

ベースリポジトリ(プール)

更新リポジトリ

SUSE Linux Enterprise Serverのベースパッケージ

SLE-Module-Basesystem15-SP6-Pool

SLE-Module-Basesystem15-SP6-Updates

SUSE Linux Enterprise Serverの基本的なサーバ機能

SLE-Module-Server-Applications15-SP6-Pool

SLE-Module-Server-Applications15-SP6-Updates

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに固有のパッケージ

SLE-Module-SAP-Applications15-SP6-Pool

SLE-Module-SAP-Applications15-SP6-Updates

SUSE Linux Enterprise High Availabilityに固有のパッケージ

SLE-Product-HA15-SP6-Pool

SLE-Product-HA15-SP6-Updates

このセクションの表は、「デバッグ情報」および「ソース」リポジトリを示していません。これらも設定されていますが、デフォルトで無効になっています。デバッグ情報」リポジトリには、通常のパッケージをデバッグするために使用可能なパッケージが含まれています。「ソース」リポジトリには、パッケージのソースコードが含まれています。

インストール方法に応じて、インストールメディアである、SLE-15-SP6-SAP-15.6-0が表示される場合もあります。上記のすべてのベースソフトウェアリポジトリのパッケージが含まれています。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには独自のリポジトリがあるため、SUSEは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications固有のパッケージおよびパッチを出荷できます。

注記
注記: 更新リポジトリで直接出荷されるESPOSの更新

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 11とは異なり、Extended Service Pack Overlay Support (ESPOS)に関連する更新は、Updateリポジトリから直接出荷されます。これは、設定される個別のESPOSリポジトリがないことを意味します。

標準リポジトリに加えて、インストール中または実行中のシステムからYaSTまたはSUSEConnectコマンドを使用してSLEのモジュールおよびSLEの拡張機能を有効にできます。

SUSE Linux Enterprise製品ラインで使用できるすべてのモジュールおよび拡張機能については、https://documentation.suse.com/sles-15/html/SLES-all/art-modules.htmlを参照してください。

SUSE Package Hubの詳細については、A.3項 「SUSE Package Hub」を参照してください。モジュールおよび拡張機能のライフサイクルおよびサポートについては、1.3項 「含まれるサービス」を参照してください。

1.3 含まれるサービス

Extended Service Pack Overlap Support (ESPOS)

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読には、Extended Service Pack Overlap Support (ESPOS)が含まれています。これにより、2つの連続するサービスパックのサポート期間の重複期間が3年延長されます。この期間中、長期サービスパックサポート(LTSS)の条項に従ってサポートおよび関連するすべての保守更新を受け取ります。

Extended Service Pack Overlap Supportの場合、6カ月のみではなく3年半以内にサービスパックのマイグレーションを実行できます。このため、マイグレーションを容易にスケジュールし、時間の制約が軽減された状況でマイグレーション前にテストを行うことができます。追加コストを支払うことでSUSEはLTSSも提供します。LTSSでは、ESPOS期間の終了後に特定のサービスパックのサポートを受けることができます。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、1年半の一般的なサポートとそれぞれのサービスパックに対する3年間のESPOSが含まれています。

各SLEファミリの最後のサービスパックにはESPOSは含まれていません。これにはESPOSの代わりに一般的なより長期のサポート期間が含まれています。そのため、LTSSは最後のサービスパックに対してのみ使用できます。その他すべてのサービスパックには3年間のESPOSがすでに含まれています。これはLTSSと同じです。

詳細については、次のリソースを参照してください。

SUSE Linux Enterprise Server Priority Support for SAP Applications

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読には、SUSE Linux Enterprise Server Priority Support for SAP Applicationsが含まれています。SAPから直接SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのテクニカルサポートを提供します。SUSE Technical SupportおよびSAPのサポートエンジニアによってジョイントサポートインフラストラクチャが提供されます。これはSAP Resolveに基づき、SAPとSUSEの両方とのシームレス通信を提供します。このOne Face to the Customer(お客様に対する一元窓口)サポートモデルによって、複雑さが軽減され、総所有コストが低減されます。

詳細については、『SAP Note 1056161: SUSE Priority Support for SAP Applications』(https://launchpad.support.sap.com/#/notes/1056161)を参照してください。

重要
重要: モジュールおよび拡張機能のライフサイクルおよびサポート

モジュールおよび拡張機能のライフサイクルはSLES for SAPとは異なります。SUSEではモジュールおよび拡張機能に対して異なるサポートが提供されます。

  • モジュール:

    • ライフサイクル.  モジュールによって異なります。

    • サポート.  最新のパッケージのみがサポートされます。サポートはSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読に含まれています。追加の登録キーは必要ありません。

  • 拡張機能

    • ライフサイクル.  SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとともに通常リリースが調整されます。

    • サポート.  サポートは利用できますが、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの購読に含まれていません。追加の登録キーが必要です。

  • サポートされない拡張機能(SUSE Package HubおよびSUSE Software Development Kit)

    • ライフサイクル.  SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsとともに通常リリースが調整されます。

    • サポート.  セキュリティおよびパッケージングの問題の修正以外のサポートはありません。追加の登録キーは必要ありません。

2 インストールの計画

この章はインストールの計画に役立ちますので注意深くお読みください。要件が一覧表示されており、システムに関するデータの収集に役立ちます。

2.1 ハードウェア要件

このセクションでは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールの最小ハードウェア要件を一覧表示し、特定のSAPソフトウェアの想定されるハードウェア要件に関する基本的なガイダンスを示します。SAPソフトウェアのハードウェア要件の最新情報については、https://service.sap.com/sizingにある公式サイジングガイドラインを参照してください。

サポートされているCPU

Intel 64

IBM POWER 8 (PowerVM搭載)

IBM POWER 9 (PowerVM搭載)

ハードディスク

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsには、システムボリュームに対して最低41GB(スワップなし)のハードディスク容量が必要です。それに加えて、スワップパーティション用に適切なハードディスク容量を予約します。

SAP NetWeaverなどのSAPアプリケーションをインストールするには、アプリケーションの/dataパーティションのオペレーティングシステムに必要な容量のほか、最低200GBの空きディスク容量が必要です。

SAP HANAをインストールするには、次のいずれかが必要です。

  • SAP BusinessOne認定マシン

  • SAP HANA TDI (Tailored Datacenter Integration)の要件を満たす互換性のあるマシン。つまり、オペレーティングシステムに必要な容量のほか、次の空きディスク容量が必要です。

    • パーティション/usr/sap用に52GBの空きディスク容量

    • SAP HANAデータ用の3つのパーティションの容量: /hana/data (RAMと同じサイズ)、/hana/log (RAMと同じサイズで最大512GB)、および/hana/shared (RAMと同じサイズで最大1TB)。

SAP HANAの詳細については、https://help.sap.com/docs/SAP_HANA_PLATFORM (セクション実装 › SAP HANAマスタガイド › SAP HANA展開オプション › オンプレミス展開)を参照してください。

RAM

SUSE Linux Enterprise Serverオペレーティングシステムそれ自体には、CPUコアあたり最低1024MBの合計RAMまたは最低512MBのRAM(どちらか高いほうを選択)が必要です。

インストールするSAPソフトウェアには追加のRAMが必要です。

SAP HANAをインストールするには、マシンに最低24GBのRAMが必要です。

SAP HANAのハードウェアの設定の詳細については、『SAP Note 1944415: Hardware Configuration Guide and Software Installation Guide for SUSE Linux Enterprise Server with SAP HANA and SAP Business One』(https://launchpad.support.sap.com/#/notes/1944415)を参照してください。

パーティショニングに関する詳細については、2.7項 「パーティショニング」を参照してください。

2.2 インストールイメージ

以前のSLE製品と異なり、SLE 15 SP6製品ライン全体を単一インストールメディアであるSLE 15 SP6 Online media 1からインストールできます。ネットワークアクセスや登録なしでインストールするには、SLE 15 SP6 Full media 1イメージをダウンロードしてください。両方のISOイメージはhttps://download.suse.com/から入手できます。

物理DVDにイメージを書き込むか、リムーバブルフラッシュディスクにコピーします。ディスクのサイズが目的のイメージに対して十分であることを確認します。仮想マシンにインストールするときは、仮想DVD-ROMデバイスを使用します。

ヒント
ヒント: インストールメディアイメージをリムーバブルフラッシュディスクにコピーする

次のコマンドを使用して、インストールイメージのコンテンツをリムーバブルフラッシュディスクにコピーします。

> sudo dd if=IMAGE of=FLASH_DISK bs=4M && sync

IMAGEをインストールメディアイメージファイルへのパスに置き換え、FLASH_DISKをフラッシュデバイスに置き換えます。

2.3 オフラインマイグレーション

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのマイグレーションパスは、SUSE Linux Enterprise Server with Enhanced Service Pack Overlay Support (ESPOS)のマイグレーションパスと同じです。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/cha-upgrade-paths.htmlにある『SUSE Linux Enterprise Serverアップグレードガイド』を参照してください。

2.4 インストール方法

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストール方法は複数あります。

2.5 インストールワークフローの概要

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールワークフローは、次のステップで構成されます。

  1. オペレーティングシステム(SUSE Linux Enterprise Server)のインストール。3.1項 「インストールワークフロー」を参照してください。

  2. SAPインストールウィザード、パート1: すべての必要なSAPメディアをローカルディスクにコピーするか、使用する共有ストレージメディアを選択する。4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」、特にステップ 1を参照してください。

  3. SAPインストールウィザード、パート2: ユーザにインタラクティブにクエリを実行して、実際のインストールのすべてのパラメータを収集する。4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」、特にステップ 10を参照してください。

  4. SAPインストールウィザード、パート3: SAPインストーラを実行する。4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」、特にステップ 13を参照してください。

これらのステップのほとんどは各ステップ後すぐに実行する必要がないため、システムのインストール方法に柔軟性があります。つまり、最初のステップとして単一のインストールを準備し、そこから続行できます。例:

  • オペレーティングシステム(SUSE Linux Enterprise Server)のみをインストールします。

    あるいは、

  • オペレーティングシステム(SUSE Linux Enterprise Server)をインストールし、SAPメディアをコピーして、SAPインストールパラメータを収集します。

次に、ディスクイメージを作成して、それらを他のシステムにコピーし、SAPインストールパラメータを調整します。最後に、各マシンの個別のインストールを終了します。

2.6 インストールに必要なデータ

オペレーティングシステム

SUSE Linux Enterprise Serverのインストールには、すべての物理サーバについて次のデータが必要です。

  • ホスト名、ドメイン、IPアドレス、サブネットマスク、ドメイン検索リスト(DNS)、名前サーバのIP、ゲートウェイ用IPなどの、ネットワーク設定パラメータ

  • SUSE Linux Enterprise Serverインストール用の管理者(root)パスワード

SAPアプリケーション

SAPアプリケーションのインストールでは、通常、次のものを指定する必要があります。

  • SAP SID

  • SAPインスタンス番号

  • SAPアプリケーションのパスワード

インストールするSAPアプリケーションによって、T-Shirt Sizingや仮想ネットワーキング用のパラメータなど、より多くのパラメータが必要な場合があります。

SAP HANAデータベース

SAP HANAのインストールでは、次を指定する必要があります。

  • SAP SID

  • SAPインスタンス番号

  • マルチテナントデータベースコンテナ(MDC)を有効にするかどうか。SAP HANAのマルチテナントサポートにより、1つのSAP HANAインストールとして実行される複数のデータベースを使用できます。(SAP HANA MDCを使用するには、SAP HANA Lifecycle Managerが必要です。)

    シングルテナントインストールの場合は、いいえを選択します。

    1人のSIDadmユーザによって管理するマルチテナントインスタンスの場合は、Yes with low isolation (低分離ではい)を選択します。

    各データベースが独自のSIDadmユーザを持つ管理対象のマルチテナントインスタンスの場合は、Yes with high isolation (高分離の場合は、はい)を選択します。

  • SAP HANAデータベースのパスワード

SAPソフトウェアのインストールの詳細については、https://help.sap.comおよびhttps://support.sap.comにあるSAP文書を参照してください。

2.7 パーティショニング

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは、次の2つのステージでパーティショニングテーブルを作成します。

  1. オペレーティングシステムのパーティショニング(ステージ1) (オペレーティングシステムのインストール中)

  2. SAPシステムのパーティショニング(ステージ2) (SAP製品のインストール中)

2.7.1 オペレーティングシステムのパーティショニング(ステージ1)

オペレーティングシステムのインストール中に、オペレーティングシステムのパーティションが作成されます。

/dev/systemという名前の論理ボリュームグループ(LVG)が作成されます。このLVGには次の2つの論理ボリューム(LV)が含まれます。

  • /dev/system/root: デフォルトで60GB、オペレーティングシステムおよびSAPメディア用。

  • /dev/system/swap: デフォルトで2GB、小さいサイズの設定を回避。『SAP Note 2578899: SUSE Linux Enterprise Server 15: Installation notes』(https://launchpad.support.sap.com/#/notes/2578899)も参照してください。

また、bootまたはUEFIパーティションが必要に応じて作成されます。

2.7.2 SAPシステムのパーティショニング(ステージ2)

SAPシステムのパーティショニングは、次の方法で作成できます。

パーティショニングのこの部分は、オペレーティングシステムがインストールされた後でのみ作成できます。これは、パーティションが、再起動後のインストールワークフローまたは実行中のシステムのいずれかで作成されることを意味します。

インストールしている製品および特定のユースケースに応じて、必要なハードディスク容量は異なります。

AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニングについては、付録B AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニングを参照してください。

3 オペレーティングシステムのインストール

次のセクションでは、基本オペレーティングシステムのインストール手順について説明します。インストールワークフローを使用すると、ローカルインストールメディアを使用するか、ネットワークを介してインストールできます。または、AutoYaSTを使用してインストールできます。

3.1 インストールワークフロー

インストールワークフローは、SAPアプリケーション用に最適化された設定を使用したオペレーティングシステムのガイド付きインストールです。インストールワークフロー中に、SAPアプリケーションをインストールするかどうかを選択できます。その場合、SUSE Linux Enterprise Serverのインストールが完了したら、SAPインストールメディアを指定するように求められます。サードパーティの拡張機能をインストールするかどうかも選択できます。

このセクションは、ローカルメディアからインストールを開始することを前提としています。 リモートメディアからインストールを開始する方法については、3.2項 「ネットワークからSLES for SAPメディアを使用する」を参照してください。

詳細については、2.5項 「インストールワークフローの概要」を参照してください。

このセクションでは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsオペレーティングシステムのインストールについて説明します。

重要
重要: Oracleデータベースのインストール

Oracleデータベースを後でインストールできるようにするには、まずSUSE Linux Enterprise Serverをインストールし、次にインストールをSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに変換します。

これは、Oracleデータベースのインストーラで、特定のファイルが存在するかを照会するために必要です。これらのファイルのすべてがSLES for SAPインストールに含まれているわけではありません。

変換の詳細については、3.4項 「SLESインストールをSLES for SAPインストールに変換する」を参照してください。

手順 3.1: OSインストールの開始
    • AMD64/Intel 64では、インストールメディアからブートします。ブートメニューからインストールを選択します。

    • POWERについては、SUSE Linux Enterprise ServerのドキュメントDeployment Guide, Part Installation Preparation, Chapter Installation on IBM POWER(https://documentation.suse.com/sles-15)の手順に従ってください。

    初期オペレーティングシステムの起動時に、Escを押してブートメッセージを表示できます。このプロセスが完了したら、グラフィカルインストールワークフローが開始されます。最初のステップとして、インストールワークフローはそれ自体のアップデートを確認します。その後、インストールが開始できるようになります。

  1. 言語でデフォルトのシステム言語を選択します。

    言語、キーボード、および製品選択
    図 3.1: 言語、キーボード、および製品選択
  2. キーボードレイアウトで、適切なキーボードレイアウトを選択します。選択したレイアウトが物理キーボードに一致しているかどうかをテストするには、キーボードテストテキストボックスを使用します。

  3. SLE 15 SP6では、製品ライン全体に単一のインストールISOを提供します。したがって、このページでインストールする製品を選択する必要があります。

    インストールする製品で、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP6を選択します。

  4. 使用許諾契約に目を通してください。同意する場合は、はい、ライセンス条項に同意しますを選択します。次へで続行します。

    同意しない場合は、中止 › インストールを中止でインストールをキャンセルします。

  5. (オプション) DHCPを介した自動ネットワーク設定が失敗すると、ネットワーク設定画面が開きます。

    ただし、代わりに登録画面が表示された場合、ネットワーク接続が機能していることを示します。ネットワーク設定を変更するには、ネットワーク設定をクリックします。

    ネットワークを設定し終えたら、次へで続行します。

    重要
    重要: SAPで推奨するようにネットワークを設定する

    SAPで提供されているドキュメントどおりに、ネットワーク接続を設定してください。

    ネットワーキングの設定については、 Administration Guide, Chapter Basic Networking, Section Configuring a Network Connection with YaST (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

  6. 登録画面で、電子メールアドレス登録コードを入力します。登録成功は、製品の更新を受け取り、テクニカルサポートを受ける資格を得るための前提条件です。

    次へで続行します。

    重要
    重要: このステップで登録

    インストールのこのステップでシステムを必ず登録してください。登録をしないと、最小限のSLEシステムしかインストールできず、更新を受け取ることができなくなります。

    インストール中にネットワークにアクセスせずに完全な(ただしアップデートされていない) SLES for SAPシステムをインストールするには、https://download.suse.comからのSLE 15 SP6パッケージISOイメージを使用してください。次にこのページで登録を行なわずに次へ進むを選択し、次のページでアドオン製品としてSLE 15 SP6 パッケージISOイメージを選択できます。

  7. 更新リポジトリを有効にするかどうか尋ねられたら、はいを選択します。

  8. システムが正常に登録されたら、YaSTでSUSE Customer CenterからSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsで使用可能なモジュールが一覧表示されます。デフォルトでは、最も一般的なケースが選択されています。追加のモジュールを有効にするには、そのエントリを有効にします。

    注記
    注記: リリースノート

    これ以降の手順では、リリースノートを選択することで、インストールプロセスのどの画面からでもリリースノートを参照できます。

    次へで続行します。

  9. (オプション) アドオン製品ダイアログを使用して、SUSE Customer Centerで提供されていない他のソフトウェアソース(リポジトリ)をSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに追加できます。このようなアドオン製品には、ご使用のシステム用のサードパーティの製品や、ドライバまたは追加ソフトウェアなどがあります。

  10. システムの役割を選択します。システムの役割は、選択したシナリオに合わせてシステムを調整する事前定義済みの使用例です。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの場合、次のいずれかを選択できます。

    • SAP アプリケーション向け SLES: デフォルト。ほとんどの状況に推奨されます。このシステムの役割には、次のプロパティが含まれています。

      • SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールウィザードのサポート。

      • RDPアクセス(「リモートデスクトッププロトコル」)の有効化。

      • 特別なパーティショニング推奨事項の提供。

    • GNOMEを利用するSLES: 固有なケースで必要になる場合があります。このインストールパスについては、このドキュメントでは説明していません。このインストールパスの詳細については、 Installation Quick Start, Section Installing SUSE Linux Enterprise Server (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    特定のユースケース(高可用性、テキストモード、最小、およびKVM/XEN仮想化ホスト)に追加のシステムの役割を使用できます。

    次へで続行します。

    システムの役割
    図 3.2: システムの役割
手順 3.2: OSインストールの完了
  1. 次のオプションを有効にするかどうかを選択します。

    • システムとともにSAPアプリケーションをインストールするには、オペレーティングシステムのインストール直後にSAP製品のインストールウィザードを起動するを有効にします。

    • このマシンへのRDPアクセス(リモートデスクトッププロトコル)を有効にするには、RDPサービスを有効にしてファイアウォールでポートを開くを有効にします。

      RDPを介した接続の詳細については、第12章 「RDPを介した接続を参照してください。

  2. ボリューム/dev/system/rootおよび/dev/system/swapに対して提案されたパーティションセットアップを確認します。ボリューム/dev/system/dataは、2.7項 「パーティショニング」で説明されているように、後で作成されます。

    適切な値が事前に選択されています。ただし、必要に応じて、パーティションレイアウトを変更します。次のオプションがあります。

    ガイド付き設定

    入力に基づいて新しいパーティショニングの提案を作成します。

    熟練者向けパーティション設定

    熟練者向けパーティション設定を開きます。Deployment Guide, Chapter Advanced Disk Setup, Section Using the YaST Partitioner(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに固有のパーティショニングアドバイスについては、2.7項 「パーティショニング」を参照してください。

    提案されたセットアップを変更しないで受け入れるには、次へで続行します。

  3. システムで使用する時計とタイムゾーンを選択します。時刻を手動で調整したり、時刻同期用のNTPサーバを設定したりするには、その他の設定を選択します。詳細については、Deployment Guide, Chapter Installation with YaST, Section Clock and Time Zone(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

  4. システム管理者アカウント(rootと呼ばれる)のパスワードを入力し、パスワードの確認にも入力します。キーボードレイアウトのテストテキストボックスを使用して、すべての特殊文字が正しく表示されているか確認できます。

    SSHログインを介してパスワード不要認証を有効にする場合は、SSH公開鍵の取り込みを介して鍵を取り込むことができます。パスワードを介してrootログインを完全に無効にする場合は、鍵のみをアップロードし、rootパスワードは指定しないでください。この場合、システム管理者としてのログインは、それぞれの鍵を使用したSSH経由でのみ可能です。

    詳細については、Deployment Guide, Chapter Installation with YaST, Section Password for the System Administrator root(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

    重要
    重要: rootのパスワードは、決して忘れないでください

    ユーザrootには、すべての管理タスクを実行する権限があります。このパスワードがなければ、rootとしてシステムにログインできません。ここに入力したパスワードを後で取得することはできません。

  5. インストール設定画面で、いくつかの提案されるインストール設定を確認し、必要に応じて変更できます。各設定は現在の設定とともに表示されます。設定の一部を変更するには、適切なヘッドライン、他の下線付きアイテムをクリックします。

    重要
    重要: ファイアウォール設定

    SLES for SAPのソフトウェアファイアウォールは、デフォルトで有効になっています。ただし、多くの場合、SAP製品が開く必要のあるポートは自動的に開かれません。これは、必要なポートを手動で開くまで、ネットワークの問題が生じる可能性があることを意味します。

    詳細については、10.1項 「firewalldの構成」を参照してください。

    インストール設定
    図 3.3: インストール設定
  6. 必要なシステム設定を完了したら、インストールをクリックします。

    ソフトウェアの選択によって、インストールプロセスを開始することを確認するよう求められる前に、さらにライセンス契約に同意する必要がある場合があります。

    警告
    警告: データの削除

    インストールプロセスが完全または部分的にディスク上の既存のデータを上書きします。

    インストールの確認ボックスで、インストールをクリックします。

    オペレーティングシステムのインストールが完了したら、システムは自動的に再起動します。

    • システムのインストール準備のみを選択した場合、システムはデスクトップログイン画面から起動します。

    • SAPアプリケーションを直ちにインストールすることを選択した場合、インストールは再起動後に続行します。第4章 「SAPアプリケーションのインストールに進んでください。

3.2 ネットワークからSLES for SAPメディアを使用する

このセクションでは、ネットワークを介して提供されるインストールメディアからインストールする方法について簡単に説明します。これにより、たとえば、通常のSLESメディアを使用してSLES for SAPをインストールできます。

  1. SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsインストールメディアのコンテンツをWebサーバ(例: example.com)のディレクトリ/srv/www/htdocs/sap_repoにコピーします。

  2. SLESインストールメディアからのブート

  3. /キーを使用して、ブートメニューオプションのいずれかを選択します。次にコマンドラインに追加します。これを実行するには、下に一覧表示されるパラメータを指定します。

    • ネットワークの使用を許可するには、ifcfg=*=dhcpを追加します(これがデフォルトです)。

    • パラメータinstall=SERVER/DIRECTORYを追加します。

  4. 3.1項 「インストールワークフロー」の指示に従います。

詳細については、Deployment Guide, Chapter Remote Installation(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

SLESインストールメディアを使用してシステムを初期化する必要がないようにするため、PXEを介してネットワーク経由でブートできます。詳細については、AutoYaST Guide, Chapter Booting via PXE over the Network(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

3.3 外部AutoYaSTプロファイルの使用

AutoYaSTを使用したインストールの詳細については、次のガイドを参照してください。

AutoYaSTを使用したSAPアプリケーションのパーティショニングに関する詳細については、2.7項 「パーティショニング」を参照してください。

SUSE ManagerサーバからSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsを展開する予定の場合、『SUSE Manager Reference Manual, Systems, Autoinstallation』および『SUSE Manager Advanced Topics, Chapter Minimalist AutoYaST Profile for Automated Installations and Useful Enhancements』(https://documentation.suse.com/suma;)を参照してください。

3.4 SLESインストールをSLES for SAPインストールに変換する

SUSE Linux Enterprise Server 15 SP6またはJeOS 15 SP6のインストールをSLES for SAPのインストールに変換するには、スクリプトMigrate_SLES_to_SLES-for-SAP.shを使用します。このスクリプトは、システムを正しく登録し、適切なリポジトリにサブスクライブします。

登録用のメールアドレスおよびSLES for SAPの登録コードがあることを確認します。

  1. パッケージ migrate-sles-to-sles4sap.

  2. 次のコマンドを実行します。

    # Migrate_SLES_to_SLES-for-SAP.sh
  3. マイグレーションを続行することを確認するように求められたら、Yを押して、Enterを押します。

  4. 求められたら、登録用の電子メールアドレスを入力し、Enterを押します。

  5. 求められたら、登録キーを入力し、Enterを押します。

    スクリプトが完了するまで待ちます。その後、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsソフトウェアリポジトリにサブスクライブされ、パッケージSLES-releaseが削除され、代わりにSLES_SAP-releaseが選択されます。

重要
重要: スクリプトはデフォルトのSLES for SAPパッケージをインストールしない

スクリプトはデフォルトのSLES for SAPインストールに含まれているすべてのパッケージをインストールするわけではありません。ただし、これらは自分で手動インストールできます。デフォルトのパッケージの選択をインストールするには、次のコマンドを使用します。

# zypper in patterns-server-enterprise-sap_server
警告
警告: パブリッククラウド上のマイグレーションスクリプト

パブリッククラウドインスタンス(特に従量課金制インスタンス)では、請求は、利用資格を識別し、実際の消費量を計算する社内メカニズムによって異なります。これは、オペレーティングシステム内のリポジトリのマイグレーションのみを実行するため、マイグレーションスクリプトを無効にします。

マイグレーションを実行するには、クラウドソリューションプロバイダを使用してイメージのマイグレーションガイドラインに従う必要があります。

4 SAPアプリケーションのインストール

このセクションでは、SAPから受け取ったSAPメディアセットのインストールについて説明します。

4.1 SAPインストールウィザードを使用してインストール可能な製品

SAPインストールウィザードを使用して、スタンドアロンのSAP HANAデータベースインスタンスをインストールできます。また、SAPインストールウィザードを使用して、次のSAP製品を(データベースとともに)インストールできます。

  • SAP S/4HANA, on-premise edition 1511

  • SAP NetWeaver 7.5

  • SAP NetWeaver 7.4 Support Release 2

  • SAP NetWeaver 7.4 Support Release 1

  • SAP NetWeaver 7.4

  • SAP Enhancement Package 1 for SAP NetWeaver 7.3

  • SAP NetWeaver 7.3

  • SAP NetWeaver Composition Environment (CE) 7.2

  • SAP EHP1 for SAP NetWeaver Composition Environment (CE) 7.1

  • SAP NetWeaver Composition Environment (CE) 7.1

  • SAP EHP1 for SAP NetWeaver Mobile/Banking 7.1

  • SAP EHP1 SAP NetWeaver Process Integration 7.1

  • SAP EHP1 for SAP NetWeaver Adaptive Computing Controller 7.1

  • SAP NetWeaver Mobile/Banking 7.1

  • SAP NetWeaver Process Integration 7.1

  • SAP NetWeaver Adaptive Computing Controller 7.1

  • SAP Business Suite powered by SAP HANA

  • SAP Business Suite 7i 2016

  • SAP Business Suite 7i 2013 Support Release 2

  • SAP Business Suite 7i 2013 Support Release 1

  • SAP Business Suite 7i 2011 Java

  • SAP Business Suite 7i 2010 Java

  • SAP Business Suite 7 Support Release 1 Java

  • SAP Solution Manager 7.2 Support Release 1

  • SAP Solution Manager 7.1 powered by SAP HANA

  • SAP NetWeaver AS ABAP 7.4, OEM version 1.0

重要
重要: Oracleデータベースのインストールはできない

SAPインストールウィザードでは、Oracleデータベースと一緒に製品をインストールすることはできません。Oracleデータベースをインストールするには、まず基本製品のSUSE Linux Enterprise Serverをインストールし、次にOracleデータベースをインストールし、後でインストールをSLES for SAPに変換します。これは、Oracleデータベースのインストーラで、特定のファイルが存在するかを照会するために必要です。これらのファイルのすべてがSLES for SAPインストールに含まれているわけではありません。

変換の詳細については、3.4項 「SLESインストールをSLES for SAPインストールに変換する」を参照してください。

4.2 最初のステップ

これらの最初のステップは、インストールワークフロー中にのみ関連します。

  1. システムがブートすると、ようこそ画面が表示されます。次へで続行します。

  2. ネットワーク設定画面が開きます。これにより、ネットワーク設定を変更することができます。

    ネットワークを設定し終えたら、次へで続行します。

    重要
    重要: SAPで推奨するようにネットワークを設定する

    SAPアプリケーションのドキュメントに従って、ネットワーク接続を設定してください。

    ネットワーキングの設定については、 Administration Guide, Chapter Basic Networking, Section Configuring a Network Connection with YaST (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    (次の画面が読み込まれる間、ようこそ画面が数秒間、再び表示される場合があります。)

  3. 以下のいずれかのオプションを選択してください。

    SAPファイルシステムを作成してSAP製品のインストールを開始する

    SAPアプリケーションをインストールし、SAPインストールルーチンを他のシステムに提供するサーバとしてシステムをセットアップできます。

    4.3項 「SAPインストールウィザードの使用」に進んでください。

    Only create SAP HANA file systems, do not install SAP products now (SAP HANAファイルシステムのみを作成し、今はSAP製品をインストールしません)

    SAP BusinessOne認定ハードウェア上にSAP HANAファイルシステムを作成します。

    重要
    重要: ハードウェア要件

    ご使用のマシンが2.1項 「ハードウェア要件」で詳しく説明されるSAP HANAのハードウェア要件を満たしていることを確認してください。満たしていない場合、このオプションは新しいファイルシステムを作成せず、この時点でインストールワークフローが終了します。

    ウィザードを完了してOSログインに進む

    SAPアプリケーションをインストールせず、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのログイン画面に進みます。

    次へで続行します。

4.3 SAPインストールウィザードの使用

SAPインストールウィザードを使用して、SAP NetWeaverシステム(データベースを含む)またはSAP HANAシステムをインストールします。

他のSAPアプリケーションをインストールしたり、より高度なSAP HANAセットアップを作成したりするには、このウィザードではなく、SAPによって提供されるインストール方法のいずれかを直接使用してください。

ヒント
ヒント: 完全にインストールされたシステムへのSAPアプリケーションのインストール

このプロセスは、インストールワークフロー中に表示されるとおりに文書化されています。ただし、インストール済みシステムで使用可能なYaSTモジュールSAPインストールウィザードにも適用されます。

SAPインストーラを起動するには、デスクトップからアプリケーション › システム › YaSTの順に選択し、YaSTコントロールセンターでその他 › SAPインストールウィザードを選択して続行します。

ヒント
ヒント: SAPインストールウィザードの設定

SAPインストールウィザードの設定は/etc/sysconfig/sap-installation-wizardで指定され、文書化されています。ニーズに応じてそれを変更できます。

  1. SAPインストールウィザード画面で、SAPインストールマスタの場所(図4.1「SAPインストールマスタの場所」)を指定します。場所はローカル、リムーバブル、またはリモートインストールソースのいずれかです。

    SAPインストールマスタの場所
    図 4.1: SAPインストールマスタの場所

    ドロップダウンリストから適切なオプションを選択します。テキストボックスで、次の表に示す形式に従って、ソースへのパスを指定します。

    表 4.1: メディアソースのパス

    オプション

    説明

    パスの形式

    「ローカルソース」

    dir://

    ローカルディレクトリ

    /path/to/dir/

    「リムーバブルソース」

    デバイス://

    ローカルに接続されたハードディスク

    devicename/path/to/dir/on/device

    usb://

    USBマスストレージデバイス

    /path/to/dir/on/USB

    cdrom://

    CDまたはDVD

    //

    「リモートソース」

    nfs://

    NFS共有

    server_name/path/to/dir/on/device

    smb://

    SMB共有

    [user_name:password@]server_name//path/to/dir/on/server[?workgroup=workgroup_name]

    ヒント
    ヒント: リモートの場所の指定

    NFSソースからインストールするには、サーバの名前およびメディアデータへの完全なパスを指定します。リモートインストールサーバの設定については、第6章 「SAPメディアセット用のインストールサーバの設定を参照してください。

    以前にインストールサーバからSAPアプリケーションをインストールしたことがある場合、またはシステムをインストールサーバとして設定している場合は、インストールマスタのプロバイダとしてそのサーバを直接選択することもできます。これを行うには、インストールマスタの選択の下のドロップダウンリストを使用します。

  2. 高度なオプションで、次のオプションから選択します。

    SAP製品に対するインストールプロファイルを収集しますが、インストールは実行しません

    このオプションを使用して、インストールパラメータを設定しますが、実際のインストールは実行しません。このオプションを使用すると、SAPインストーラ(SAPinst)は実際のSAP製品のインストールを実行しないで停止します。ただし、以降の手順はすべて適用されます。

    詳細については、4.4項 「インストールプロファイルを使用したインストールの続行」を参照してください。

    Serve all installation media (including master) to local network via NFS (すべてのインストールメディア(マスタを含む)をFNSを介してローカルネットワークに提供します)

    このシステムを他のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsシステムのインストールサーバとして設定します。このインストールサーバにコピーされるメディアはNFSを通じて提供され、サービスロケーションプロトコル(SLP)を介して検出できます。

    次へで続行します。

    SAPインストールウィザードは、インストールマスタをローカルディスクにコピーします。選択したインストールマスタのタイプによって、インストールは異なる方法で続行されます。

    • SAP HANAデータベースをインストールする場合は、ステップ 8にスキップします。

    • SAP NetWeaverアプリケーションをインストールする場合は、次の手順に進みます。

  3. SAPインストールウィザード画面で、インストールする追加のインストールメディアの場所を指定します。これには、SAPカーネル、データベースおよびデータベースのエクスポートを含めることができます。

    メディアのコピー

    追加のインストールメディアへのパスを指定します。パスの指定の詳細については、表4.1「メディアソースのパス」を参照してください。

    メディアのコピーの省略

    追加のインストールメディアはコピーしない。追加のインストールメディアが必要ない場合、または追加のインストールメディアをCD/DVDやフラッシュディスクなどのソースから直接インストールする場合は、このオプションを選択します。

    SAP製品に追加のインストールメディアが必要であるにもかかわらずこのオプションを選択する場合は、後でSAPインストーラ(SAPinst)に関連するパスを提供する必要があります。

    次へで続行します。

    インストールメディアをコピーすることを選択する場合、SAPインストールウィザードはローカルハードディスクに関連するファイルをコピーします。

    SAPインストールウィザード: 追加のインストールメディア
    図 4.2: SAPインストールウィザード: 追加のインストールメディア
  4. インストールメディアをコピーした後で、追加のインストールメディアを準備するかどうかを尋ねられます。これを行うには、はいをクリックします。次に、ステップ 3の手順に従います。

    これを行わない場合は、いいえをクリックします。

  5. What Would You Like to Install (インストールするもの)画面のThe SAP product is (SAP製品)の下で、製品をインストールする方法を選択します。

    SAP標準システム

    そのデータベースを含むSAPアプリケーションをインストールします。

    SAPスタンドアロンエンジン

    機能を標準製品(SAP TREX、SAP GatewayおよびWeb Dispatcher)に追加するエンジンです。

    分散システム

    複数のサーバに分散されたSAPアプリケーション。

    SAP高可用性システム

    高可用性セットアップでのSAP NetWeaverのインストール。

    システムの名前変更

    SAPシステムID、データベースID、インスタンス番号、ホスト名など、さまざまなシステムプロパティを変更できます。これを使用して、同じ製品を異なるシステムに非常に類似した設定でインストールできます。

    SAPインストールウィザード: インストールタイプおよびデータベース
    図 4.3: SAPインストールウィザード: インストールタイプおよびデータベース
  6. SAP標準システム分散システム、またはSAP高可用性システムを選択した場合、追加でバックエンドデータベースでバックエンドデータベースを選択します。

    次へで続行します。

  7. 製品を選択してください画面が表示されます。表示される製品は、SAPから受け取るメディアセットおよびインストールマスタによって異なります。リストから、インストールする製品を選択します。

    次へで続行します。

    SAPインストールウィザード: 製品の選択
    図 4.4: SAPインストールウィザード: 製品の選択
  8. 補足メディアまたはサードパーティメディアをコピーするかどうかを尋ねられます。これを行うには、はいをクリックし、ステップ 3の手順に従います。

    これを行わない場合は、いいえをクリックします。

    注記
    注記: 補足メディア/サードパーティメディアの違いおよび追加のソフトウェアリポジトリ

    どちらのタイプの配信メカニズムでも、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsメディアの一部でもなく、SAPのメディアセットの一部でもないソフトウェアをインストールできます。ただし、配信メカニズムは異なります。

    • 補足メディア/サードパーティメディアは、インストールウィザードおよびカスタムインストールスクリプトを作成できるAutoYaSTファイルを使用してインストールされます。

    • 追加のソフトウェアリポジトリは、購読したままにするRPMパッケージリポジトリです。これは、サードパーティメディアのアップデートと定期的なシステムアップデートを受信することを意味します。

    補足メディアの作成方法については、付録C 補足メディアを参照してください。

  9. SAPをインストールするための追加のソフトウェアリポジトリ画面では、さらにソフトウェアリポジトリを追加できます。たとえば、RPMとしてパッケージ化されたアドオン用。これを実行するには、新しいソフトウェアリポジトリの追加をクリックします。リポジトリの追加の詳細については、Deployment Guide, Chapter Installing and Removing Software, Section Adding Software Repositories(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

    注記
    注記: コピーされたSAPメディアの場所

    この時点で、SAPインストールに必要なすべてのデータが/data/SAP_CDsにコピーされています(コピープロセスをスキップすることを選択した場合を除く)。各インストールメディアは個別のディレクトリにコピーされます。たとえば、次のようなディレクトリ構造があります。

    > ls /data/SAP_CDs
    742-KERNEL-SAP-Kernel-742
    742-UKERNEL-SAP-Unicode-Kernel-742
    RDBMS-MAX-DB-LINUX_X86_64
    SAP-NetWeaver-740-SR2-Installation-Export-CD-1-3
    SAP-NetWeaver-740-SR2-Installation-Export-CD-2-3
    SAP-NetWeaver-740-SR2-Installation-Export-CD-3-3

    /data/SAP_CDsは、/etc/sysconfig/sap-installation-wizard設定ファイルで指定されたデフォルトのディレクトリです。

  10. インストールする製品に応じて、1つ以上のダイアログが、インストールするSAPアプリケーションのいくつかの設定パラメータの値を指定するよう要求します。

    SAPによって提供されたドキュメントの説明に従って、値を指定します。設定パラメータのヘルプも、ダイアログの左側に表示されます。詳細については、2.6項 「インストールに必要なデータ」を参照してください。

    1つ(または複数)のフォームに入力し、OKで続行します。

    製品パラメータを設定するダイアログ
    図 4.5: 製品パラメータ

    完了したら、SAPインストールウィザードは追加のソフトウェアパッケージをダウンロードします。

  11. インストールを続行するか、または別のSAP製品をインストールする準備をするかを尋ねられます。別のSAP製品を準備することを選択する場合は、この手順の初めから開始します。

  12. (オプション) SAP HANAの認定を受けておらず、SAP HANA TDI (Tailored Datacenter Integration)の最小ハードウェア要件を満たしていないシステムにSAP HANAをインストールする場合、続行するかどうかを尋ねられます。予期せずこのメッセージが表示された場合は、2.1項 「ハードウェア要件」およびSAPのサイジングガイドライン(https://service.sap.com/sizing)を確認してください(情報にアクセスするにはSAP IDが必要です)。

    それ以外の場合は、はいで続行します。

  13. 以降の手順は、インストールするSAPアプリケーションのタイプによって異なります。

    • SAP HANAデータベースをインストールする場合、さらに質問されることなく、SAP HANAがインストールされます。

    • SAP NetWeaverアプリケーションをインストールする場合、実際のインストールはSAPインストーラ(SAPinst)を使用して実行されます。数秒後、SAPインストーラが自動的に開きます。

      SAPで提供されるドキュメントの説明に従って、SAPインストーラを実行します。ほとんどの設定パラメータはすでに正しく入力されています。

    SAPインストーラ: パラメータの定義
    図 4.6: SAPインストーラ: パラメータの定義
    ヒント
    ヒント: インストールログファイル

    SAPアプリケーションのインストールが失敗する場合は、インストールログファイルを参照してください。これらのファイルは、/var/adm/autoinstallにあります。失敗したインストールは、名前が.errで終わるファイルに記録されます。

    ログファイルの詳細については、第14章 「重要なログファイルを参照してください。

  14. 最後の画面はインストールが完了しましたです。

    このインストールでAutoYaSTファイルを作成するには、AutoYaST用にこのシステムのクローンを作成するを有効にします。AutoYaSTファイルは/root/autoinst.xmlに配置されます。

    完了をクリックします。

4.4 インストールプロファイルを使用したインストールの続行

SAPインストールウィザードの以前の実行中にCollect installation profiles but do not execute installation (インストールプロファイルは収集しますが、インストールは実行しません)を選択した場合、このセクションには、選択したSAPアプリケーションのインストールの続行方法が表示されます。

インストールプロファイルを収集する場合、SAPインストールウィザードでは、製品イメージが/data/SAP_CDsにコピーされます。またこのウィザードでは、パス/data/SAP_INSTの下にあるすべての製品のインストール環境も準備されます。

/data/SAP_INST/0/Instmaster
/data/SAP_INST/1/Instmaster
/data/SAP_INST/2/Instmaster
[...]

これらのファイルは以下で再使用されます。インストールを続行するには、次の手順に従います。

  1. /etc/sysconfig/sap-installation-wizardで、次を設定します。

    SAP_AUTO_INSTALL="yes"
  2. SAP HANA/SAP BusinessOneのインストールの場合、SAPインストールウィザードは後で/data/SAP_INST/numberのAutoYaSTファイルに記載されているパラメータを使用します。

    任意のパラメータを変更する必要がある場合は、この時点でAutoYaSTファイルを調整してください。

  3. YaSTコントロールセンターを開き、SAPインストールウィザードを開始します。

  4. 保留中のインストールを続行するかどうかを尋ねられます。インストールを選択します。

  5. それ以降のすべての操作は、SAPインストーラ内で行われます。SAPで提供されるドキュメントの説明に従って、SAPインストーラの手順を実行します。

    • SAP NetWeaverのインストールの場合、SAPインストーラのすべてのパラメータが微調整用に再度提供されます。

    • SAP HANA/SAP BusinessOneのインストールの場合、インストーラはパラメータを変更することを提案しません。

4.5 SAPインストールウィザードを使用しないSAPアプリケーションのパーティショニング

SAPインストールウィザードを使用しない場合、コマンドラインから直接SAPアプリケーションのパーティショニングを作成することもできます。まず、ディレクトリ/usr/share/YaST2/include/sap-installation-wizard/で正しいパーティションファイルを見つけるか、独自のパーティションファイルを作成します。詳細については、2.7.2項 「SAPシステムのパーティショニング(ステージ2)」を参照してください。

正しいパーティショニングXMLファイルを決定したら、次のコマンドを実行します。

# yast2 sap_create_storage_ng ABSOLUTE_PATH_TO_PARTITIONING_FILE

4.6 AutoYaSTを使用したSAPアプリケーションの自動インストール

AutoYaSTからSAPインストールウィザードを使用して、SAPアプリケーションのインストールを自動化できます。

4.6.1 SAP HANAのインストール

次のAutoYaSTスニペットは、SAP HANAまたはSAP TREXのインストールの自動化方法を示しています。

<sap-inst>
  <products config:type="list">
    <product>
      <media config:type="list">
        <medium>
          <url>nfs://server/path1</url>
          <type>sap</type>
        </medium>
        <medium>
          <url>nfs://server/path3</url>
          <type>supplement</type>
        </medium>
      </media>
      <sapMasterPW>PASSWORD</sapMasterPW>
      <sid>SID</sid>
      <sapInstNr>INSTANCE_NUMBER</sapInstNr>
    </product>
  </products>
</sap-inst>
  • sapVirtHostname要素は分散インストールまたは高可用性インストールに指定する必要があります。

パーティショニングを含む完全なSAP HANAの例については、/usr/share/doc/packages/sap-installation-wizard/hana-autoyast.xmlを参照してください 。

4.6.2 SAP NetWeaverのインストール

SAP NetWeaverの場合、次の例は、インストールの自動化方法を示しています。具体的には、この例では、SAP NetWeaver 7.5 ABAPサーバ分散システムのASCSインスタンスがMaxDB (製品ID NW_ABAP_ASCS:NW750.ADA.ABAP)と一緒にインストールされるように調整されています。SAP NetWeaverに基づいて他の製品をインストールする場合、次の変数のすべてが必要なわけではないか、これらの変数を他の変数に置き換える必要がある場合があります。

  • SAP NetWeaverインスタンスのマスタパスワード: MASTER_PASSWORD

  • SAP識別子(SID): SID

  • SAPカーネル: KERNEL

  • SAPインスタンス番号: INSTANCE_NUMBER

  • ASCS仮想ホスト名: ASCS_VIRTUAL_HOSTNAME

  • SCS仮想ホスト名: SCS_VIRTUAL_HOSTNAME

<sap-inst>
  <products config:type="list">
    <product>
      <media config:type="list">
        <medium>
          <url>nfs://SERVER/PATH1</url>
          <type>sap</type>
        </medium>
        <medium>
          <url>nfs://SERVER/PATH2</url>
          <type>sap</type>
        </medium>
        <medium>
          <url>nfs://SERVER/PATH3</url>
          <type>supplement</type>
        </medium>
      </media>
      <productID>NW_ABAP_ASCS:NW750.ADA.ABAP</productID>
      <iniFile>
        <![CDATA[
# Password for the Diagnostics Agent specific <dasid>adm user. Provided value
# may be encoded.
DiagnosticsAgent.dasidAdmPassword =

# Windows domain in which the Diagnostics Agent users must be created.
# The property is Microsoft Windows only. This is an optional property.
DiagnosticsAgent.domain =

# Password for the Diagnostics Agent specific SAPService<DASID> user.
# Provided value may be encoded.
# The property is Microsoft Windows only.
DiagnosticsAgent.sapServiceDASIDPassword =

NW_GetMasterPassword.masterPwd = MASTER_PASSWORD

# Human readable form of the Default Login language - valid names are stored
# in a table of the subcomponent NW_languagesInLoadChecks. Used when freshly
# installing an ABAP stack for the machine that performs an ABAP load (in the
# case of a distributed system, that is the database, otherwise it is used by
# the normal installer). The available languages must be declared in the
# LANGUAGES_IN_LOAD parameter of the product.xml . In this file, the one
# character representation of the languages is used. Check the same table in
# the subcomponent mentioned above.
NW_GetSidNoProfiles.SAP_GUI_DEFAULT_LANGUAGE =

# The drive to use (Windows only)
NW_GetSidNoProfiles.sapdrive =

# The /sapmnt path (Unix only)
NW_GetSidNoProfiles.sapmnt = /sapmnt

# The SAP System ID of the system to install
NW_GetSidNoProfiles.sid = SID

# Will this system be unicode system?
NW_GetSidNoProfiles.unicode = true

NW_SAPCrypto.SAPCryptoFile = /data/SAP_CDs/745-UKERNEL-SAP-Unicode-Kernel-745/DBINDEP/SAPEXE.SAR

NW_SCS_Instance.ascsInstanceNumber =

NW_SCS_Instance.ascsVirtualHostname = ASCS_VIRTUAL_HOSTNAME

NW_SCS_Instance.instanceNumber = INSTANCE_NUMBER

NW_SCS_Instance.scsInstanceNumber =

NW_SCS_Instance.scsMSPort =

NW_SCS_Instance.scsVirtualHostname = SCS_VIRTUAL_HOSTNAME

NW_System.installSAPHostAgent = true

NW_Unpack.igsExeSar =

NW_Unpack.igsHelperSar =

NW_Unpack.sapExeDbSar =

NW_Unpack.sapExeSar =

NW_Unpack.sapJvmSar =

NW_Unpack.xs2Sar =

NW_adaptProfile.templateFiles =

# The FQDN of the system.
NW_getFQDN.FQDN =

# Do we want to set the FQDN for the system?
NW_getFQDN.setFQDN = false

# The path to the JCE policy archive to install into the Java home directory
# if it is not already installed.
NW_getJavaHome.jcePolicyArchive =

hostAgent.domain =

# Password for the SAP Host Agent specific sapadm user. Provided value may be
# encoded.
hostAgent.sapAdmPassword = MASTER_PASSWORD

nwUsers.sapDomain =

nwUsers.sapServiceSIDPassword =

nwUsers.sidadmPassword =
            ]]>
      </iniFile>
    </product>
  </products>
</sap-inst>

5 SAP HANAクラスタのアップグレード

この章では、YaSTモジュールSUSE HANA Cluster Update (SUSE HANAクラスタのアップデート)を使用してSAP HANAクラスタをアップグレードする方法について説明します。これは、ウィザードとして機能し、すべてのSAP HANAクラスタの保守手順をガイドします。

SAP HANAの公式ドキュメントでは、いわゆる「ニアゼロのダウンタイムアップグレードプロセス」について説明しています。YaSTモジュールは、このプロセスに基づいており、SUSEクラスタに関連する手順の一部を処理します。すべての手順が自動的に実行できるわけではありません。一部の手順は、SAP HANA管理者が手動で実行する必要があります。YaSTモジュールはプロセス中に通知します。

このYaSTモジュールは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 12 SP3以降のyast2-sap-haパッケージで使用できます。現在、このウィザードは「SAP HANAスケールアップパフォーマンス最適化」シナリオに対応するためにのみ準備されています。

アップグレードは次のタスクをカバーします。

5.1 アップグレードの準備

2つのノード(プライマリとセカンダリ)の間でrootのパスワード不要SSHアクセスが可能であることを確認します。一部のクラウドサービスプロバイダは、デフォルトでrootのSSHアクセスを設定していない可能性があることに注意してください。

  1. 次のように両方のノードにyast2-hana-updateパッケージをインストールします。

    # zypper install yast2-hana-update

    インストール後、YaSTコントロールセンターSUSE HANA Cluster Update (SUSE HANAクラスタのアップデート)モジュールが見つかります。

  2. セカンダリノードで、YaSTコントロールセンターを開始し、SUSE HANAクラスタの更新モジュールを開きます。

  3. YaSTモジュールで、前提条件を確認します。次の手順に進む前にこれらのすべての操作を完了してください。このウィザードは「HANAスケールアップパフォーマンス最適化」シナリオのみをサポートしていることに注意してください。

  4. SAP HANAシステムをアップグレードするには、セカンダリノードを選択します。

  5. インストールメディアの場所を選択します。

    SAPメディアが配置される場所をポイントします。必要に応じて、すべてのホストに更新メディアをマウントするをオンにし、NFS共有およびパスを提供します。

    重要
    重要: SAP HANAバージョン1.0と2.0の相違点

    SAP HANAバージョン1.0からバージョン2.0にアップグレードする場合は、This is a HANA 1.0 to HANA 2.0 upgrade (これはHANA 1.0からHANA 2.0へのアップグレードです)をオンにしてください。

    YaSTモジュールは以前のセカンダリノードから以前のプライマリノードに「PKI SSFSキー」をコピーします。詳細については、ヘルプボタンを参照してください。

5.2項 「SAP HANAクラスタのアップグレード」に進んでください。

5.2 SAP HANAクラスタのアップグレード

  1. ウィザードによって生成されたアップデート計画を確認してください。

    このウィザードには2つの手順(自動と手動)が表示されます。この自動手順では、ウィザードはクラスタリソースを保守モードにしてから、自動手順で開始します。この手動手順は、SAP HANA専用で、SAP HANA管理者が実行する必要があります。詳細については、公式のSAP HANAドキュメントを参照してください。

  2. SAP HANAソフトウェアをアップデートします。

    このウィザードは、自動アクションを実行し、SAP HANA管理者がSAP HANAのアップグレードを実行するまで待機します。

  3. SAP HANAアップグレードを実行します。

  4. プライマリ(リモート)ノードの計画を確認します。

    SAP HANAアップグレードが実行された後で、ウィザードはアップデート計画を示します。この手順を続行すると、ウィザードによってプライマリノードがセカンダリノードになり、アップグレードの準備が整います。

    この手順にはしばらく時間がかかる場合があることに注意してください。

5.3項 「アップグレードタスクの完了」に進んでください。

5.3 アップグレードタスクの完了

  1. 以前のプライマリノードをアップデートします。

    このステップの--hdbupd_server_nostartオプションには特に注意してください。

  2. クラスタの以前の状態に復元します。

    デフォルトで、ウィザードは以前のマスタをSAP HANAシステムレプリケーションのセカンダリとして登録します。システムレプリケーションを元の状態に戻したい場合は、Reverse (リバース)ボタンをクリックします。

  3. アップデートのサマリを確認します。

    SAP HANAの元のバージョンと現在のバージョンおよびクラスタの状態を確認できます。

    注記
    注記: 中間クラスタ状態の処理

    ウィザードがクラスタリソースのステータスアップデートより速い場合は、サマリに中間クラスタ状態が表示されます。クラスタの状態はUNDEFINEDまたはDEMOTEDです。

    これを解決するには、SAPHanaSR-showAttrコマンドを使用してクラスタのステータスを再確認し、以前のセカンダリノードの状態がPROMOTEDになっていることを確認します。

詳細については、SUSEブログの投稿https://www.suse.com/c/how-to-upgrade-your-suse-sap-hana-cluster-in-an-easy-way/を参照してください。

6 SAPメディアセット用のインストールサーバの設定

SAPインストールウィザードを使用すると、リモートサーバ(NFSやSMBなど)からSAPメディアセットをコピーできます。ただし、そこで提供されるオプションを使用すると、同時に製品をインストールする必要があります。さらに、組織で使用されるすべてのSAPメディアを単一のサーバにコピーすることはできません。

ただし、このようなサーバは自分で簡単に作成できます。たとえば、NFSサーバ上にSAPメディアを配置するには、次の手順に従います。

手順 6.1: NFSサーバへのSAP製品インストールファイルの追加
  1. インストールサーバで、/srv/www/htdocs/sap_repoディレクトリを作成します。

  2. ファイル/etc/exportsを開き、次の行を追加します。

    /srv/www/htdocs/sap_repo *(ro,no_root_squash,sync,no_subtree_check,insecure)
    重要
    重要: 実行可能な権限が表示される必要がある

    クライアントは実行可能なファイルを表示できる必要があります。表示できない場合、SUSEのSAPインストールウィザードで、SAPインストーラを実行できません。

  3. /srv/www/htdocs/sap_repoで、所有しているすべてのSAPメディアのディレクトリを作成します。これらのディレクトリに名前を付け、後で特定できるようにします。たとえば、kerneljava、またはhanaのような名前を使用できます。

  4. cp -aを使用して、各SAPメディアのコンテンツを対応するディレクトリにコピーします。

    重要
    重要: コピーにWindows*オペレーティングシステムを使用しない

    NTFSのようなWindowsファイルシステムとの間でコピーする場合にWindowsオペレーティングシステムを使用すると、ファイルとディレクトリのパーミッション設定や大文字小文字の設定が壊れる可能性があります。

現在は、設定したNFSサーバからインストールできます。SAPインストールウィザードで、次のようにパスを指定します: server_name/srv/www/htdocs/sap_repo。パスの指定の詳細については、表4.1「メディアソースのパス」を参照してください。

NFSサーバを最初から設定する方法については、 Administration Guide, Part Services, Chapter Sharing File Systems with NFS, Section Installing NFS Server (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

NFSサーバからSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする方法については、Deployment Guide, Chapter Remote Installation, Section Setting Up an NFS Repository Manually (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

7 SAP HANAクラスタの設定

YaSTウィザードを使用して、SAP HANAシステムレプリケーションを含むベストプラクティスに従って、SAP HANAまたはSAP S/4HANAデータベースサーバクラスタを設定することができます。セットアップオプションの概要は、1.1.3項 「簡素化されたSAP HANAシステムレプリケーションのセットアップ」を参照してください。

管理者はSAP HANA-SRウィザードを使用して、通常はオンプレミス展開で、モジュールを無人で実行できるようになりました。さらに、AzureでSAP HANAクラスタを設定できるようになりました。YaSTモジュールはAzureで実行されている場合にこれを自動的に認識し、Pacemakerで必要な追加のリソースを設定します。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)の次の「ベストプラクティス」には、セットアップ手順が記載されています。

  • パフォーマンス最適化シナリオおよび多層/チェーンシナリオ: Setting up an SAP HANA SR Performance Optimized Infrastructure

  • コスト最適化シナリオ: Setting up an SAP HANA SR Cost Optimized Infrastructure

重要
重要: ウィザードは初期設定にのみ使用可能

以下で説明するYaSTウィザードは、初期クラスタ設定にのみ使用できます。

クラスタを再設定するには、別のYaSTモジュールクラスタ(パッケージ yast2-clusteryastから使用可能)を使用します。その使用法の詳細については、Administration Guide, Part Installation, Setup and Upgrade, Chapter Using the YaST Cluster Module(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

7.1 前提条件

次の手順には前提条件があります。

  • SAPインストールウィザードまたはSAP HANA Application Lifecycle Managementによって作成されたSAP HANAインストールを両方に備えている2台のマシン。両方のマシンが同じL2ネットワーク(サブネット)上にある必要があります。

    多層/チェーンシナリオの場合、第3のマシンが他の場所にもある必要があります。

  • マシンは高可用性クラスタとしてまだ設定されていません。

  • openSSHは両方のマシンで動作しており、ノード同士をSSHを介して相互に接続できます。ただし、まだ実行されていない場合、ウィザードはSSHキー交換自体を実行します。

    SSHに関する詳細については、Security and Hardening Guide, Part Network Security, Chapter SSH: Secure Network Operations(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

  • SBDの同じパス下の両方のノードで使用可能なディスクデバイス。ホストベースのRAID、cLVM2を使用したり、DRBDインスタンスに配置したりしないでください。デバイスは、100MBなどの小さなサイズにすることができます。

  • 次のいずれかを作成しています。

    • プライマリノードのSAP HANAセキュアユーザストアのキー

    • プライマリノードでのSAP HANAの初期バックアップ

  • パッケージyast2-sap-haは、プライマリノードとセカンダリノードの両方にインストールされます。

  • HANA-Firewallは、すべての関連ネットワークインタフェースにおいて、HANA_HIGH_AVAILABILITYHANA_SYSTEM_REPLICATIONのルールを用いて両方のコンピュータでセットアップされます。

    HANA-Firewallの設定方法については、10.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照してください。

  • コスト最適化シナリオのみ」: セカンダリノードには、2番目のSAP HANAがインストールされています。データベースは実行されている可能性がありますが、ウィザードによって自動的に停止されます。

  • 「コスト最適化シナリオのみ」: 非運用環境のSAP HANAインスタンスの場合、モニタリング用にSAP HANAセキュアユーザストアキーQASSAPDBCTRLを作成しています。詳細については、『SAP HANA System Replication Scale-Up - Cost Optimized Scenario』ドキュメント(https://documentation.suse.com/sles-sap/)を参照してください。

7.2 セットアップ

次の手順はプライマリノード(マスタとも呼ばれる)で実行する必要があります。続行する前に、7.1項 「前提条件」に一覧表示されている前提条件が満たされていることを確認してください。

  1. YaSTコントロールセンターを開きます。コントロールセンターで、高可用性カテゴリのHA Setup for SAP Products (SAP製品のHAセットアップ)をクリックします。

  2. SAP HANAインスタンスが検出された場合は、スケールアップシナリオPerformance-optimized (パフォーマンス最適化)Cost-optimized (コスト最適化)、またはChained (multi-tier) (チェーン(多層))から選択できます。これらのスケールアップシナリオについては、1.1.3項 「簡素化されたSAP HANAシステムレプリケーションのセットアップ」を参照してください。

    次へで続行します。

    Screenshot of replication scenario selection
  3. ウィザードのこのステップでは、選択したスケールアップシナリオの前提条件のリストが表示されます。これらの前提条件は、7.1項 「前提条件」に表示されるものと同じです。

    次へで続行します。

  4. 次のステップでは、クラスタの通信層を設定できます。

    • クラスタの名前を入力します。

    • 通常は、デフォルトの転送モードユニキャストが適切です。

    • Number of rings (リング数)では、通常は単一の通信リングで十分です。

      冗長性を確保するため、多くの場合、複数の通信リングではなく、ネットワークインタフェースボンディングを使用する方が良いです。詳細については、Administration Guide, Part Configuration and Administration, Chapter Network Device Bonding(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    • 通信リングのリストから、有効な各リングを設定します。これを行うには、選択したものの編集をクリックし、次に通信するためにネットワークマスク(IPアドレス)およびポート(ポート番号)を選択します。

      OKをクリックして、作業を完了します。

    • また、HMAC/SHA1を使用して、設定同期化サービスCsync2およびCorosyncセキュア認証を有効にするかどうかを決定します。

      Csync2に関する詳細については、Administration Guide Part Installation, Setup and Upgrade, Chapter Using the YaST Cluster Module, Section Transferring the Configuration to All Nodes(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

      Corosyncセキュア認証の詳細については、Administration Guide, Part Installation, Setup and Upgrade, Chapter Using the YaST Cluster Module, Section Defining Authentication Settings(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

    Screenshot of communication layer configuration
  5. ウィザードでSSHを使用してセカンダリマシンに接続できるかどうかを確認します。可能な場合は、マシンへのrootパスワードを要求します。

    rootパスワードを入力します。

    次回プライマリマシンがセカンダリマシンに接続する必要がある場合、パスワードではなく、SSH証明書を使用して接続します。

  6. 両方のマシンで、ホスト名およびIPアドレス(各リング用)をセットアップします。

    ここで選択したホスト名は、SAP HANAで選択した仮想ホスト名とは独立しています。ただし、SAP HANAとの問題を避けるため、ホスト名にハイフン文字(-)を含めないでください。

    これがSAP HANAの初期インストール中など、以前に実行されていない場合は、すべてのクラスタサーバのホスト名をファイル/etc/hostsに追加する必要があります。このため、/etc/hostsへの追記を有効にします。

    次へで続行します。

  7. NTPがまだ設定されていない場合は、設定してください。これにより、時刻の違いによって2台のマシンで問題が発生することがなくなります。

    1. Reconfigure (再設定)をクリックします。

    2. 一般的な設定タブで、今すぐ開始し、システム起動時に開始するよう設定を有効にします。

    3. 追加をクリックして、タイムサーバを追加します。サーバ次への順にクリックします。次に、クラスタ外のタイムサーバのIPアドレスを指定します。テストをクリックして、サーバへの接続をテストします。

      公開タイムサーバを使用するには、選択 › 公開サーバの順にクリックし、タイムサーバを選択します。OKをクリックして、作業を完了します。

      OKをクリックして、続行します。

    4. セキュリティ設定タブで、ファイアウォールでポートを開くを有効にします。

    5. 次へで続行します。

  8. 次のステップでは、フェンシングオプションを選択します。YaSTウィザードでは、フェンシングメカニズムSBD (「STONITHブロックデバイス」)のみをサポートしています。スプリットブレイン状況を避けるため、SBDはクラスタの状態を保存するディスクデバイスを使用します。

    選択したディスクは、クラスタのすべてのマシンから同じパスで使用できる必要があります。理想的には識別用にby-uuidまたはby-pathのいずれかを使用します。

    ディスクはホストベースのRAID、cLVM2を使用したり、DRBDインスタンスに配置したりしないでください。デバイスは、100MBなどの小さなサイズにすることができます。

    警告
    警告: デバイスのデータは失われる

    選択した1つ以上のSBDデバイスの全データが削除されます。

    使用するデバイスを定義するには、追加をクリックしてからby-uuidなどの識別方法を選択し、適切なデバイスを選択します。OKをクリックします。

    追加のSBDコマンドラインパラメータを定義するには、それらをSBD options (SBDオプション)に追加します。

    マシンが特に速く再起動する場合は、Delay SBD start (SBDの起動を遅くする)を有効にします。

    フェンシングの詳細については、『Administration Guide』(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

  9. 次のページでは、SBDデーモン自体の障害から保護し、そのような場合にマシンを強制的に再起動するウォッチドッグの設定が可能です。

    また、YaSTを使用してすでに設定されているウォッチドッグ、および現在読み込まれている(lsmodによって検出された)ウォッチドッグが一覧表示されています。

    ウォッチドッグを設定するには、追加を使用します。次にハードウェアに適したウォッチドッグを選択し、OKをクリックしてダイアログを閉じます

    テストするには、ウォッチドッグsoftdogを使用できます。ただし、softdogではなく、運用環境でハードウェアウォッチドッグを使用することを強くお勧めします。ウォッチドッグの選択に関する詳細については、Administration Guide, Part Storage and Data Replication, Chapter Storage Protection, Section Conceptual Overview, Section Setting Up Storage-based Protection, Section Setting up the Watchdog(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

    次へで続行します。

  10. SAP HANAのインストール用(1つ以上のインスタンスも可)パラメータを設定します。コスト最適化シナリオを選択している場合は、非運用SAP HANAインスタンスに関連した詳細を追加入力します。

    運用SAP HANAインスタンス
    • システムIDおよびインスタンス番号が、SAP HANA設定のそれらと一致していることを確認します。

    • レプリケーションモードおよび操作モードは通常、変更する必要はありません。

      これらのパラメータの詳細については、SAPによって提供される、『HANA Administration Guide』を参照してください。

    • 仮想IPアドレスで、プライマリSAP HANAインスタンスの仮想IPアドレスを指定します。Virtual IP Mask (仮想IPマスク)で、仮想IPアドレスに適用するサブネットマスクの長さをCIDR形式で設定します。

    • Prefer site takeover (サイトのテイクオーバーを優先)では、セカンダリインスタンスがプライマリインスタンスのジョブを自動的に引き継ぐ(true)かどうかを定義します。または、クラスタはプライマリマシンでSAP HANAを再起動します。

    • 自動登録は、テイクオーバー後にプライマリマシンとセカンダリマシンが役割を切り替えるかどうかを決定します。

    • サイト名1サイト名2で2つのノードの運用SAP HANAインスタンスのサイト名を指定します。

    • データベースのバックアップを持つことが、SAP HANAレプリケーションを設定するための前提条件です。

      以前にバックアップを作成したことがない場合は、Create initial backup (初期バックアップの作成)を有効にします。バックアップ設定で、バックアップ用のファイル名およびセキュアストアキーを設定します。プライマリノードのSAP HANAセキュアユーザストアのキーは、ウィザードの開始前に作成されている必要があります。

      詳細については、SAPによって提供されるドキュメントを参照してください。

    • 「コスト最適化シナリオのみ」: Production system constraints (運用システムの制約)内で、SAP HANAの運用インスタンスがセカンダリノードで無効になっているときの動作方法を設定します。

      Global allocation limit (グローバル割り当て制限)を設定すると、メモリ使用量を直接制限できます。Preload column tables (列テーブルのプリロード)を有効にすると、メモリ使用量が増加します。

      必要なグローバル割り当て制限については、SAPが提供するドキュメントを参照してください。

    コスト最適化シナリオのみ」: 非運用SAP HANAインスタンス
    • システムIDおよびインスタンス番号が、非運用SAP HANAインスタンスのそれらと一致していることを確認します。

      これらのパラメータは、SAPインスタンスリソースエージェントを使用して、非運用SAP HANAインスタンスのステータスを監視できるようにするために必要です。

    • 非運用インスタンスを停止し、運用インスタンスを開始し、運用システムの制約を取り除くフックスクリプトを生成します。このスクリプトは、Python 2で記述され、必要に応じて後で変更できます。

      フックスクリプトをクリックしてから、データベースの正しいユーザ名およびパスワードを設定します。OKをクリックします。

      生成されたフックスクリプトの詳細を、手動で確認および変更できるようになりました。完了したら、OKをクリックして、フックスクリプトを/hana/shared/SID/srHookに保存します。

      警告
      警告: パスワードはプレーンテキストで保存される

      デフォルトで、フックスクリプトはプレーンテキストですべての資格情報を保存します。セキュリティを向上させるには、スクリプトを自分で変更してください。

    次へで続行します。

    SAP HANAのオプション(コスト最適化シナリオ)のスクリーンショット
    図 7.1: SAP HANAのオプション(コスト最適化シナリオ)
  11. High-Availability Configuration Overview (高可用性設定の概要)ページで、セットアップが正しいことを確認します。

    設定の詳細を変更するには、下線付き見出しのいずれかをクリックして、該当するウィザードページに戻ります。

    インストールで続行します。

  12. 追加のソフトウェアをインストールするかどうかを尋ねられたら、インストールで確認します。

  13. セットアップが完了した後で、クラスタセットアップのログを表示する画面が表示されます。

    ダイアログを閉じるには、完了をクリックします。

  14. 多層/チェーンシナリオのみ」: 運用SAP HANAインスタンスの管理ユーザアカウントを使用して、システムレプリケーション用にクラスタ外ノードを登録します。

    SIDadm > hdbnsutil -sr_register --remoteHost=SECONDARY_HOST_NAME \
    --remoteInstance=INSTANCE_NUMBER --replicationMode=async \
    --name=SITE_NAME

7.3 SAP HANA-SRウィザードを使用した無人セットアップ

無人セットアップでは、まず、HANAの手動インストールが必要です。その結果が、選択されたすべての設定オプションを含むファイルに保存されます。管理者がインストールを再現する必要がある場合、このファイルを使用してインストールを無人で自動的に実行できます。

そのファイルを使用するには、両方のノードで次の手順を実行します。

  1. SAP HANAがインストールされている運用マシンで、sap_ha YaSTモジュールを実行して、設定ファイルを作成します。

  2. 最後の画面で、設定の保存ボタンをクリックします。

  3. 実行する操作を決定します。

    • 設定を確認するには、プライマリSAP HANAマシンに設定をアップロードして検証し、次のコマンドを実行します。

      # yast2 sap_ha readconfig CONFIGURATION_FILE_PATH

      確認画面でインストールを開始することができます。

    • 提供された設定ファイルに基づいてインストールを無人で開始するには、次のコマンドを実行します。

      # yast2 sap_ha readconfig CONFIGURATION_FILE_PATH unattended
  4. 提供された設定ファイルに基づいて、クラスタを無人でインポート、検証、インストールします。

    # yast2 sap_ha readconfig CONFIGURATION_FILE_PATH unattended

7.4 Hawkの使用

ウィザードを使用してクラスタを設定した後で、HA Setup for SAP Products (SAP製品のHAセットアップ)ウィザードの最後の画面からHawkを直接開くことができます。

Hawkに再度アクセスするには、ブラウザを開き、URL欄にHawk Webサービスを実行している任意のクラスタノードのIPアドレスまたはホスト名を入力します。または、7.2項 「セットアップ」で設定した仮想IPアドレスを入力します。

https://HAWKSERVER:7630/

Hawkログイン画面で、次のログイン資格情報を使用します。

  • ユーザ名: hacluster

  • パスワード: linux

重要
重要: セキュリティ保護されたパスワード

デフォルトのパスワードはできるだけ早くセキュリティ保護されたパスワードに変更します。

# passwd hacluster

7.5 詳細の参照先

8 saptuneを使用したシステムのチューニング

この章では、SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsがSAPアプリケーションと最適に連携できるようにチューニングする方法について説明します。

saptuneを使用すると、SAP NetWeaver、SAP HANA/SAP BusinessObjects、およびSAP S/4HANAの各アプリケーション用にシステムをチューニングできます。

重要
重要

この章では、tunedを使用しなくなったsaptuneバージョン3について説明します。

8.1 saptuneの有効化

saptuneを有効にしてSAPアプリケーションをチューニングするには、次の手順を使用します。

  1. システムをチューニングするには、まず、チューニングソリューションを見つけます。適切なソリューションを見つけるには、次のコマンドを使用します。

    > saptune solution list

    saptuneでは、次のチューニングソリューション(SAPノートのグループ)を認識します。

    • BOBJ SAP BusinessObjectsを実行するためのソリューション。

    • HANA SAP HANAデータベースを実行するためのソリューション。

    • MAXDB SAP MaxDBデータベースを実行するためのソリューション。

    • NETWEAVER SAP NetWeaverアプリケーションサーバを実行するためのソリューション。

    • S4HANA-APPSERVER SAP S/4HANAアプリケーションサーバを実行するためのソリューション。

    • S4HANA-APP+DB SAP S/4HANAアプリケーションサーバとSAP HANAの両方を同じホストで実行するためのソリューション。

    • S4HANA-DBSERVER SAP S/4HANAインストールのSAP HANAデータベースを実行するためのソリューション。

    • SAP-ASE SAP Adaptive Server Enterpriseデータベースを実行するためのソリューション。

    • NETWEAVER+HANA SAPアプリケーションサーバとSAP HANAの両方を同じホストで実行するためのソリューション。

    • NETWEAVER+MAXDB SAPアプリケーションサーバとMAXDBの両方を同じホストで実行するためのソリューション。

    または、特定のSAP Notesからの推奨事項に従って、コンピュータをチューニングできます。チューニングできるNotesのリストは次のコマンドを介して入手できます。

    # saptune note list
    • 事前設定されたソリューションを使用してsaptuneを設定するには、次のコマンドを使用します。

      # saptune solution apply SOLUTION
    • 特定のSAPノートの推奨事項に合わせてsaptuneを設定するには、次のコマンドを使用します。

      # saptune note apply NOTE
  2. saptuneを開始し、起動時にこれを有効にするには、次のコマンドを実行します。

    # saptune service enablestart

    sapconfおよびtunedが停止していて無効になっていることを確認するには、代わりに次のコマンドを実行します。

    # saptune service takeover
注記
注記: 最適化の組み合わせ

ソリューションおよびノートを組み合わせることも可能です。ただし、一度にアクティブにできるのは1つのソリューションのみです。まれに、ノートでオプションまたはパラメータの競合が発生する可能性があります。競合を避けるために、ノートを慎重に編成してください。最後のノートが、以前のノートの競合するオプションまたはパラメータよりも常に優先されます。

8.2 saptuneの無効化

saptuneを無効にして停止するには、次のコマンドを実行します。

# saptune service disablestop

8.3 saptuneの更新

saptuneを新しいバージョンに更新するには、パッケージを更新するだけです。

パッケージの更新にはSAPノートおよびSAPソリューションの更新が含まれている可能性があるため、saptune service restartを使用してsaptuneを再起動し、チューニングを再適用します。その後、すべての推奨事項がまだ満たされているかどうかをsaptune note verifyを使用して確認します。

重要
重要

saptuneツールは、tunedを利用しなくなりました。saptune 3を設定するようにtunedを構成しても機能しません。saptune 3を開始して有効にするには、次の方法のいずれかを使用します。

  • saptune service enablestart

    saptune.serviceを有効にして開始します。

  • saptune service takeover

    saptune.serviceを有効にして開始し、sapconfおよびtunedを無効にします。

  • saptune daemon start

    非推奨。saptuneサービスのテイクオーバーにリダイレクトされます。

8.4 SAPノートの管理

次の各セクションでは、SAPノートの作成、削除、名前変更などの方法について説明します。

8.4.1 SAPノートのカスタマイズ

すべてのSAPノートは次のコマンドを使用して自由に設定できます。

# saptune note customise NOTE

このコマンドには、値の変更やパラメータの無効化が含まれています。

8.4.2 新しいSAPノートの作成

新しいSAPノートを次のコマンドを使用して作成できます。

# saptune note create NOTE

saptuneのすべての機能が利用できます。

8.4.3 SAPノートの削除

次のコマンドは、作成したノートを削除します。対応する上書きファイルが利用可能な場合は、それも削除されます。

# saptune note delete test
Note to delete is a customer/vendor specific Note.
Do you really want to delete this Note (test2)? [y/n]: y

ノートはその時点では適用されない場合があります。次の点に注意してください。

  • アクションを完了するには確認が必要です。

  • saptuneで提供された内部SAPノートは削除できません。代わりに、利用可能な場合は、上書きファイルが削除されます。

  • ノートがすでに適用されている場合、コマンドは、ノートを削除する前に元に戻す必要があるという情報で終了します。

8.4.4 SAPノートの名前の変更

このコマンドを使用すると、作成されたノートを新しい名前に変更することができます。対応する上書きファイルが利用可能な場合は、このファイルの名前も変更されます。

# saptune note rename test test2
Note to rename is a customer/vendor specific Note.
Do you really want to rename this Note (test) to the new name 'test2'? [y/n]: y

ノートはその時点では適用されない場合があります。次の点に注意してください。

  • アクションを完了するには確認が必要です。

  • saptuneで提供された内部SAPノートの名前は変更できません。

  • ノートがすでに適用されている場合、コマンドは、ノートを削除する前に元に戻す必要があるという情報で終了します。

8.4.5 SAPノートの設定の表示

ノート提供時の設定は、次のコマンドで一覧表示できます。

# saptune note show NOTE

8.4.6 SAPノートまたはSAPソリューションの確認

コマンドsaptune note verify NOTEおよびsaptune solution verify SOLUTIONは、アクティブまたはリクエストされた各ノートについて、次のデータを一覧表示します。

  • パラメータ名

  • 予想される値(デフォルト)

  • 設定されたオーバーライド(saptune customiseを使用して作成)

  • 現在のシステム値

  • 現在の状態がSAPの推奨に従っているかどうか

8.4.7 SAPノートまたはSAPソリューションの適用のシミュレート

noteの各パラメータを表示するには、次のコマンドを使用します。

# saptune note simulate

solutionの各パラメータを表示するコマンドを次に示します。

# saptune solution simulate

このコマンドは、現在のシステム値および予想される値(デフォルトと上書き)を一覧表示します。

8.4.8 SAPノートを元に戻す

SAPノートを元に戻すには、次のコマンドを実行します。

# saptune note revert NOTE

これにより、SAPノートのすべてのパラメータが適用時の値に戻ります。

すべてを元に戻すには、次のコマンドを実行します。

# saptune note revert all

8.4.9 SAPノートの編集

各カスタムSAPノートは、次のコマンドで編集できます。

# saptune note edit NOTE

8.4.10 有効化または適用されたすべてのSAPノートの一覧表示

すべての有効化されたSAPノートを一覧表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune note enabled

すべての適用されたSAPノートを一覧表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune note applied

8.5 SAPソリューションの管理

この章では、SAPソリューションの操作を説明します。

8.5.1 新しいSAPソリューションの作成

新しいSAPソリューションを作成するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution create SOLUTION

8.5.2 SAPソリューションの削除

SAPソリューションを削除するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution delete myHANA

Solution to delete is a customer/vendor specific Solution.
Do you really want to delete this Solution 'myHANA'? [y/n]: y

SAPソリューションはその時点では適用されない場合があります。次の点に注意してください。

  • アクションを完了するには確認が必要です。

  • saptuneで提供されたSAPソリューションは削除できません。

  • SAPソリューションがすでに適用されている場合、コマンドは、SAPソリューションを削除する前に元に戻す必要があるという情報で終了します。

8.5.3 SAPソリューションの名前の変更

SAPソリューションの名前を変更するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution rename myHANA myHANA2

Solution to rename is a customer/vendor specific Solution.
Do you really want to rename this Solution 'myHANA' to the new name 'myHANA2'? [y/n]:

SAPソリューションはその時点では適用されない場合があります。次の点に注意してください。

  • アクションを完了するには確認が必要です。

  • saptuneで提供されたSAPソリューションの名前は変更できません。

  • SAPソリューションがすでに適用されている場合、コマンドは、SAPソリューションの名前を変更する前に元に戻す必要があるという情報で終了します。

8.5.4 SAPソリューションの設定の表示

SAPソリューションの設定を一覧表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution show SOLUTION

8.5.5 別のSAPソリューションへの切り替え

saptuneバージョン3.1以降、saptune solution change SOLUTIONコマンドを使用して簡単に別のソリューションに切り替えられるようになりました。

内部的にはまず現在のソリューションが元に戻され、その後新しいソリューションが適用されることに注意してください。追加のノートを設定する場合、その順序は保持されません。

同じソリューションがすでに適用されている場合、何も実行されません。同じソリューションが適用されていない場合、現在のソリューションが元に戻され、新しいソリューションが適用されます。このコマンドを実行すると、変更を実行する前に確認を求められます。これは、--forceオプションを追加することによって無効にできます。

8.5.6 SAPソリューションを元に戻す

SAPソリューションを元に戻すには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution revert SOLUTION

SAPソリューションを適用する必要があります。これにより、まだ適用されているSAPソリューションのすべてのSAPノートの部分が元に戻されます。

8.5.7 カスタムSAPソリューションの編集

カスタムSAPソリューションを編集するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution edit SOLUTION

8.5.8 有効化/適用されたSAPソリューションの一覧表示

有効化されたSAPソリューションを一覧表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution enabled

適用されたSAPソリューションを一覧表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune solution applied

適用されたSAPソリューションのSAPノートが元に戻された場合、文字列(partial)がソリューション名に追加されています。

8.6 検証とトラブルシューティング

saptuneの現在のステータスを表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune status

出力には次の項目が含まれます。

  • saptunesapconf、およびtunedサービスのステータス

  • パッケージおよび実行中のsaptuneのバージョン

  • 設定されたSAPソリューションおよびSAPノートに関する詳細

  • ステージングに関する詳細

  • systemdシステム状態のステータス

  • 仮想化環境(saptuneバージョン3.1の新機能)

  • チューニングのコンプライアンス(saptuneバージョン3.1の新機能)

問題が発生した場合は、saptune_checkコマンドを使用します(バージョン3.1では、saptune checkコマンドも使用できます)。このコマンドは、チェックを実行して、問題を報告し、解決方法に関するアドバイスを提供します。

8.7 マシンが読み取り可能な出力

バージョン3.1以降、saptuneは、次のコマンドに対してマシンが読み取り可能な出力(JSON)をサポートしています。

  • saptune [daemon|service] status

  • saptune note list|verify|enabled|applied

  • saptune solution list|verify|enabled|applied

  • saptune status

  • saptune version

マシンが読み取り可能な出力によって、saptuneをスクリプトおよび設定管理ソリューションに統合できます。

JSON出力を生成するには、最初のオプションとして--format jsonを追加します。次に例を示します。

> saptune --format json note applied | jq
{
"$schema": "file:///usr/share/saptune/schemas/1.0/saptune_note_applied.schema.json",
"publish time": "2023-08-29 17:05:45.627",
"argv": "saptune --format json note applied",
"pid": 1538,
"command": "note applied",
"exit code": 0,
"result": {
    "Notes applied": [
    "941735",
    "1771258",
    "1980196",
    "2578899",
    "2684254",
    "2382421",
    "2534844",
    "2993054",
    "1656250"
    ]
},
"messages": []
}

まだJSON出力をサポートしていないコマンドを実行すると、resultブロックが"implemented": falseに設定されて失敗します。

[+]
> saptune --format json staging status | jq
{
"$schema": "file:///usr/share/saptune/schemas/1.0/saptune_staging_status.schema.json",
"publish time": "2023-08-29 17:08:16.708",
"argv": "saptune --format json staging status",
"pid": 1653,
"command": "staging status",
"exit code": 1,
"result": {
    "implemented": false
},
"messages": []
}

8.8 ステージング

新しいsaptuneパッケージには、バイナリの変更(バグ修正など)と、新規または変更されたSAPノートおよびSAPソリューションの両方を含めることができます。特定の状況では、システム設定を変更せずにバグ修正や新機能を展開することが推奨されます。

ステージングが有効である場合、パッケージの更新におけるSAPノートおよびSAPソリューションの変更はすぐに有効には「なりません」。これらはステージング領域に配置され、後で確認してリリースできます。

重要
重要

現在の実装では、ステージングが有効になっている場合、パッケージの更新によってステージングが上書きされます。

ステージングはデフォルトでは無効になっています。有効にするには、次のコマンドを実行します。

# saptune staging enable

この時点から、saptuneパッケージで提供されるSAPノートおよびSAPソリューションの変更は、ステージング領域に配置されます。ステージング領域を表示するには、次のコマンドを実行します。

# saptune staging list

次のコマンドを使用して、ステージング領域と作業領域におけるSAPノートとSAPソリューションの違いの概要を表形式で出力できます。

# saptune staging diff [NOTE...|SOLUTION...|all]

違いを確認したら、リリースに潜在的な問題があるかどうか、または追加の手順が必要かどうかを確認するために分析を行うことができます。そのためには次のコマンドを実行します。

# saptune staging analysis [NOTE...|SOLUTION...|all]

SAPノートまたはSAPソリューションをステージング領域からリリースするには、次のコマンドを使用します。

# saptune staging [--force|--dry-run] [NOTE..|SOLUTION...|all]

このコマンドは、分析(saptune staging analysisを参照)を提示し、確認を求めた後にリリースを実行します。

8.9 sysctlを使用したカーネルパラメータの手動チューニング

saptuneを使用してカーネルパラメータをチューニングする際は、sysctlを使用して、カーネルパラメータを手動調整することもできます。また、saptuneを使用したカーネルパラメータのチューニングの代わりに、sysctlを使用して、カーネルパラメータを手動調整することもできます。ただし、sysctlを使用したこのような変更は、デフォルトでは再起動後も持続しません。再起動後も持続するようにするには、sysctlによって読み込まれた設定ファイルのいずれかにそれらを追加します。

ヒント
ヒント: sysctl および saptune

SAPシステムにsysctlパラメータを設定する場合は、このような設定を管理する中心的なツールとしてsaptuneを使用することを検討してください。

sysctlの詳細については、sysctl(8)sysctl.conf(5)、およびsysctl.d(5)のマニュアルページを参照してください。

8.10 詳細の参照先

次のマニュアルページを参照してください。

  • man 8 saptune

  • man 8 saptune-migrate

  • man 8 saptune-note

プロジェクトホームページ(https://github.com/SUSE/saptune/)も参照してください。

9 ワークロードメモリ保護のチューニング

SAPアプリケーションを物理メモリに保持することは、パフォーマンスのために不可欠です。以前の製品バージョンでは、ページキャッシュ制限によって、ページキャッシュが増加してもディスクにスワップアウトできませんでした(SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 11 SP1以降およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 12)。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15では、ページキャッシュ制限がより高度なワークロードメモリ保護に置き換えられました。

ワークロードメモリ保護は、SAPインスタンスを専用のcgroup (v2)に配置し、memory.lowパラメータを用いて、物理メモリに保持するメモリ容量をカーネルに伝えます。これにより、ページキャッシュの増加を含む、そのcgroupの外側のあらゆる形態のメモリ負荷に対してこのcgroup内のプロセスが保護されます。ワークロードメモリ保護は、このcgroup内のメモリ負荷に対して保護することはできません。これは、1つのホスト上の「すべての」インスタンスのメモリをカバーします。

memory.lowの値は、SAPインスタンスの種類およびワークロードによって異なるため、手動設定する必要があります。システムに過度の負荷がかかっている場合、Linuxカーネルは、memory.lowの値を無視し、スワップやOOMキラーの呼び出しによってシステム全体を安定させようとします。

cgroupに関する詳細については、https://documentation.suse.com/sles-15/html/SLES-all/cha-tuning-cgroups.htmlを参照してください。

9.1 アーキテクチャ

ワークロードメモリ保護は次の2つのコンポーネントに依存しています。

cgroup2メモリコントローラ(Linuxカーネル)

cgroup2メモリコントローラパラメータmemory.lowを使用すると、Linuxカーネルが物理メモリに保持するメモリ容量を定義できます。このメモリ容量は、システム全体が重大なメモリ状況にある場合を除いて、再利用プロセスから除外されます。

ワークロードメモリ保護はmemory.lowを使用して、SAPプロセスからのメモリがページングされたり、ディスクにスワップアウトされたりしないようにします。メモリコントローラを除いて、cgroup1コントローラは引き続き利用できますが、マウントされなくなりました。

systemd

systemdは、cgroupの階層を作成および維持するためのインフラストラクチャを提供し、cgroupパラメータの設定を可能にします。

9.2 ワークロードメモリ保護のサポート

ワークロードメモリ保護は、Appサーバ(SAP NetWeaver、SAP S/4HANA)など、1つのホスト上の1つまたは複数のSAPシステムに対してAMD64/Intel 64およびPOWER上のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP6でサポートされています。SUSE High Availabilityクラスタソリューションがサポートされています。

ワークロードメモリ保護は、SAP HANA以外のデータベースには適用されません。開始メソッドによって、プロセスが専用のcgroup内部または外部で実行される場合があります。内部で実行される場合、memory.lowを決定する際にメモリ消費量を考慮する必要があります。

重要
重要: ワークロードメモリ保護の制限

ワークロードメモリ保護の使用にはメリットがありますが、特定の制限に注意する必要があります。

  • ワークロードメモリ保護は専用のcgroup内部のメモリ負荷に対して保護できません。

  • ワークロードメモリ保護はSAPシステムまたはそのインスタンスを相互に保護することはできません。すべてのSAPプロセスは同じメモリ制限を共有します。複数のSAPシステム(SAP NetWeaverやSAP S/4HANAなど)がある場合、ワークロードメモリ保護は、一方のSAPアプリケーションから他方のSAPアプリケーションを保護できません。

ワークロードメモリ保護を使用する場合、SAPシステムはsystemdを使用する必要があります。systemd統合の詳細については、SAP Notes: 139184 - Linux: systemd integration for sapstartsrvおよびSAP Host Agent and 3189534 - Linux: systemd integration for sapstartsrv and SAP HANAを参照してください。

重要
重要

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP5以降、パッケージsapwmpは廃止されました。マイグレーションについては、9.5項 「sapwmpを使用したワークロードメモリ保護からのマイグレーション(SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP4以前のSLES)」を参照してください。

9.3 ワークロードメモリ保護の設定

9.3.1 ワークロードメモリ保護の準備

SAPスタートサービスは、SAPインスタンスを専用のSAP.slice cgroupに配置します。ワークロードメモリ保護を使用するには、統合cgroup2階層に切り替え、MemoryLow=を正しく設定します。

  1. すべてのSAPインスタンスおよびSAPホストエージェントを停止します。

    サービスは有効にすることができますが、すべてのSAPプロセスを終了する必要があります。

  2. 次のように/etc/default/grubGRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULTに追加することによって、systemd.unified_cgroup_hierarchy=trueをカーネルコマンドラインに追加します。

    GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="... systemd.unified_cgroup_hierarchy=true swapaccount=1"

    この変更により、cgroup2コントローラのみが/sys/fs/cgroupにマウントされます。ただし、Cgroup1コントローラ(メモリコントローラを除く)は引き続き使用できます。cgroup1を使用するツールは、そのままでは機能せず、再設定が必要な場合があります。また、cgroup1に必要なマウント構造を提供する必要があります。

    パラメータswapaccount=1は、ワークロードメモリ保護が機能するために必要ではありませんが、サポートケースでの分析を支援し、cgroupごとのスワップアウトされたメモリ容量を示します。

  3. GRUB2の設定を再書き込みします。

    > sudo grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg

    再起動後(後で実行される)、cgroup階層はv2 (統合階層)のみに切り替えられます。

  4. SAP.slice用にMemoryLowを設定します。

    > sudo systemctl set-property SAP.slice MemoryLow=...

    このコマンドは、/etc/systemd/system.control/SAP.slice.d/にドロップインを作成し、MemoryLowを設定します。

    SAP.sliceは、SAPプロセスを含むcgroupの名前です。MemoryLowは、最初に述べたcgroupパラメータmemory.lowと等価なsystemdです。MemoryLowの値は、SAPアプリケーションの種類とワークロードによって異なります。

    SAP HANAの場合

    SAP HANAにはグローバル割り当て制限があるため、その値を直接使用できます。

    SAPアプリケーションサーバ(SAP NetWeaver、SAP S/4HANA)

    アプリケーションサーバの場合、ワークロードのサイジングはMemoryLowの値を示す必要があります。

    次の点に注意してください。

    • 1台のホスト上のすべてのSAPインスタンスは、SAP.slice内に存在します。MemoryLowは、そのホスト上の「すべての」インスタンスのメモリ容量をカバーする必要があります。SAPシステムまたはそのインスタンスを相互に保護することはできません。

    • SAP HANA以外のデータベースを使用している場合、一部のデータベースプロセスがSAP.sliceに含まれている可能性があります。MemoryLow値を決定する際には、これらのメモリ消費量を考慮する必要があります。

    • MemoryLowの値は、物理メモリの値に非常に近い値、またはこれらの値より大きな値にしないでください。システムサービスおよび追加でインストールされたソフトウェアもメモリを必要とします。SAPアプリケーションを犠牲にしてスワップを広範囲に使用しなければならない場合、システムが応答しなくなる可能性があります。

    注記
    注記: MemoryLow値を正しく計算する

    MemoryLowは、メモリサイズをバイト単位で取得します。値の末尾にK、M、G、Tが付いている場合、指定されたメモリサイズはそれぞれ、キビバイト、メビバイト、ギビバイト、またはテビバイトとして解析されます(1000ではなく、1024をベースとしている場合は、https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_prefixを参照)。または、パーセンテージ値が指定される場合があります。この場合、システムにインストールされている物理メモリを基準として取得されます。

    基礎となるcgroupメモリコントローラは、値をページサイズの倍数に切り上げます。混乱を避けるため、MemoryLowの値をページサイズの倍数に設定してください。

これでシステムが再起動する準備が整いました。

9.3.2 再起動と確認

  1. システムを再起動します。

  2. 再起動後に、cgroups v2が実際に使用されていることを確認します。

    # grep  cgroup /proc/mounts
    cgroup /sys/fs/cgroup cgroup2 rw,nosuid,nodev,noexec,relatime 0 0
  3. 低いメモリ値が設定されていることを確認します。

    > systemctl show -p MemoryLow SAP.slice
    MemoryLow=18487889920    <- Should be your chosen value (always in bytes)!
    
    # cat /sys/fs/cgroup/SAP.slice/memory.low
    18487889920    <- Should be your chosen value!

    変数MemoryLowは任意の値に設定できますが、変数の内容は常にページサイズの倍数です。これらの値にわずかに違いがあることに気づく場合には、このことに注意してください。

9.4 MemoryLowの値の変更

MemoryLowの値を変更するには、次のコマンドを実行します。

# systemctl set-property SAP.slice MemoryLow=...

変更はすぐに有効になります。

基礎となるcgroupメモリコントローラは、値をページサイズの倍数に切り上げます。混乱を避けるため、MemoryLowの値をページサイズの倍数に設定してください。

重要
重要: MemoryLowの値

MemoryLowをすでにSAP.sliceに割り当てられているメモリより小さい値に設定しないでください。確認するには、次のコマンドを実行します。

# systemctl show -p MemoryCurrent SAP.slice

9.5 sapwmpを使用したワークロードメモリ保護からのマイグレーション(SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP4以前のSLES)

サービスパックSP4以前からアップグレードしていて、systemd対応のインスタンスにまだ切り替えていない場合、マイグレーションを実行する必要があります。

手順 9.1: マイグレーションの手順
  1. systemdが有効なSAPシステムに切り替えます。詳細については、139184 - Linux: systemd integration for sapstartsrv and SAP Host Agent and 3189534 - Linux: systemd integration for sapstartsrv and SAP HANAを参照してください。

  2. すべてのインスタンスプロファイルからsapwmp-captureを呼び出す行を削除します(例: Execute_20 = local /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture -a)。すべてのSAPサービスは、変更後に再起動する必要があります。

  3. MemoryLow=を監視し、再調整します。systemd対応のSAPホストエージェントには、SAP.sliceの下にcgroup (saphostagent.service)が含まれるようになりました。これは保護の対象になっています。

    注記
    注記

    cgroup2マウントにオプションmemory_recursiveprotが設定されている場合(デフォルトで設定されています)、各SAPサービスまたはSAPホストエージェントサービスにMemoryLow=infinityを設定する必要はありません。これを確認するには、次のコマンドを実行します。

    >  mount | grep cgroup2
          cgroup2 on /sys/fs/cgroup type cgroup2
          (rw,nosuid,nodev,noexec,relatime,nsdelegate,memory_recursiveprot)

10 ファイアウォールの設定

この章では、ファイアウォールおよび暗号化を使用してシステムへのアクセスを制限する方法およびシステムにリモート接続する方法について説明します。

10.1 firewalldの構成

デフォルトで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsのインストールワークフローにより、firewalldが有効になっています。

注記
注記: SuSEfirewall2に代わるfirewalld

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 では、SuSEfirewall2に代わる、新しいデフォルトのソフトウェアファイアウォールとして、firewalldが導入されています。SuSEfirewall2はSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15から削除されておらず、引き続きメインリポジトリの一部となっていますが、デフォルトではインストールされません。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15より古いリリースからアップグレードしている場合、SuSEfirewall2は変更されず、firewalldに手動でアップグレードする必要があります(『Security and Hardening Guide』を参照)。

ファイアウォールは次のコンポーネントのネットワークアクセスを可能にするように手動で設定する必要があります。

  • SAPアプリケーション

  • データベース(データベースベンダーのドキュメントを参照。SAP HANAの場合は、10.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照)

さらに、ポート1128 (TCP)と1129 (UDP)を開きます。

SAPアプリケーションでは、ファイアウォール内に複数の開いたポートとポート範囲が必要です正確な番号は選択したインスタンスによって異なります。詳細については、SAPによって提供されるドキュメントを参照してください。

10.2 HANA-Firewallの設定

SAP HANAのファイアウォールの設定を簡素化するために、パッケージ HANA-Firewall.HANA-Firewallは、既存のSuSEfirewall2設定にルールセットを追加します。

HANA-Firewallは、次のパートで構成されます。

  • YaSTモジュールSAP HANA Firewall (SAP HANAファイアウォール) グラフィカルユーザインタフェースからSAP HANAのファイアウォールルールを設定し、適用し、元に戻すことができます。

  • コマンドラインユーティリティhana-firewall SAP HANAのファイアウォールルールを含むXMLファイルを作成します。

    YaSTを使用する代わりに、/etc/sysconfig/hana-firewallにある設定ファイルを使用してファイアウォールルールを設定できます。

重要
重要: SAP HANA MDCデータベース

マルチテナントSAP HANA (MDC)データベースの場合、開く必要があるポート番号を自動的に判断することはまだできません。マルチテナントSAP HANAデータベースシステムで作業している場合は、YaSTを使用する前にスクリプトを実行して新しいサービス定義を作成します。

# cd /etc/hana-firewall.d
# hana-firewall define-new-hana-service

このスクリプトは、開く必要があるTCPポートおよびUDPポートの範囲を含む一連の質問を提示します。

注記
注記: HANA-Firewallパッケージのインストール

続行する前に、パッケージHANA-Firewallおよびyast2-hana-firewallがインストールされていることを確認します。

手順 10.1: HANA-Firewallの使用
  1. ファイアウォールを設定するSAP HANAデータベースが正しくインストールされていることを確認します。

  2. 適切なYaSTモジュールを開くには、アプリケーション › YaSTの順に選択し、セキュリティとユーザ › SAP HANAのシステムファイアウォールの設定の順に選択します。

  3. グローバルオプションで、firewalldを有効化して再読み込みを有効にします。

  4. ゾーンドロップダウンリストから目的のゾーンを選択し、右矢印ボタンを使用して必要なサービスを追加します。

    事前設定されたサービス以外のサービスを追加するには、次の表記を使用します。

    SERVICE_NAME:CIDR_NOTATION

    CIDR表記の詳細については、https://en.wikipedia.org/wiki/Classless_Inter-Domain_Routingを参照してください。システムで使用可能なサービスを見つけるには、getent servicesを使用します。

  5. 終了したら、OKをクリックします。

    HANA-Firewallのファイアウォールルールがコンパイルされて適用されます。次に、サービスhana-firewallが再起動されます。

  6. 最後に、HANA-Firewallが正しく有効化されたかどうか確認します。

    # hana-firewall status
    HANA firewall is active. Everything is OK.

詳細については、hana-firewallのマニュアルページを参照してください。

10.3 SAProuterの統合

SAPのSAProuterソフトウェアを使用すると、異なるSAPシステム間およびSAPシステムと外部ネットワークの間のネットワークトラフィックをプロキシ化できます。SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsはSAProuterをsystemdに統合できるようになりました。つまり、SAProuterはオペレーティングシステムによって適切に開始および停止され、systemctlを使用して制御できます。

この機能を使用するには、その前に、次のものがこの順序でインストールされていることを確認してください。

  • SAProuterを含むSAPアプリケーション

  • saprouter-systemdとしてパッケージ化されているSAProuter systemdの統合

最初にインストールするアプリケーションの順序が間違っている場合は、saprouter-systemdを再インストールします。

systemctlを使用してSAProuterを制御するには、次を使用します。

  • SAProuterサービスの有効化: systemctl enable saprouter

  • SAProuterサービスの開始: systemctl start saprouter

  • SAProuterサービスのステータスの表示: systemctl status saprouter

  • SAProuterサービスの停止: systemctl stop saprouter

  • SAProuterサービスの無効化: systemctl disable saprouter

11 ClamSAPを使用したマルウェアに対する保護

ClamSAPは、ClamAVアンチマルウェアツールキットをSAP NetWeaverおよびSAP Mobile Platformのアプリケーションに統合します。ClamSAPは、ClamAVとSAP NetWeaver Virus Scan Interface (NW-VSI)をリンクする共有ライブラリです。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP6に付属しているClamSAPのバージョンは、NW-VSIバージョン2.0をサポートしています。

重要
重要: 最大ファイルサイズを超える大きなファイルについての誤検出レポートを回避する

デフォルトで、ClamAVはファイルサイズ、ネストレベル、スキャン時間など、さまざまな制限を超えるファイルをスキャンしません。このようなファイルは「OK」として報告されます。clamscanコマンドラインツールおよびclamdスキャンデーモンのClamAVウィルススキャンエンジンの現在のデフォルト設定は、次のように設定されています。

  • ファイルおよびアーカイブはスキャンされますが、サイズ、ネストレベル、スキャン時間などの設定済みまたはデフォルトの制限までしかスキャンされません。

  • スキャンエンジンは、これらのファイルが「OK」であると報告します。

  • これにより、攻撃者がウィルススキャンをバイパスする可能性があります。

アラートを有効にして、clamscanコマンドラインで--alert-exceeds-max=yesオプションを設定するか、またはデーモンベースのスキャンでclamd.confAlertExceedsMax TRUEを使用して設定できます。これらのオプションを設定すると、ステータスタイプHeuristics.Limits.Exceededの「FOUND」レポートが作成されます。フロントエンドやレポートの処理では、このようなファイルを異なる方法で処理する必要があります。

アラートを有効にする前に、フロントエンドがこれらのファイルを突然隔離または削除しないようにしてください。

11.1 ClamSAPのインストール

  1. アプリケーションホストに、ClamAVおよびClamSAPのパッケージをインストールします。そのためには、次のコマンドを使用してください。

    > sudo zypper install clamav clamsap
  2. デーモンclamdを有効にする前に、マルウェアデータベースを初期化します。

    > sudo freshclam
  3. サービスclamdを開始します。

    > sudo systemctl start clamd
  4. 次のコマンドを使用してサービスclamdのステータスを確認します。

    > systemctl status clamd
    ● clamd.service - ClamAV Antivirus Daemon
    Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/clamd.service; enabled; vendor preset: disabled)
    Active: active (running) since Tue 2017-04-11 10:33:03 UTC; 24h ago
    [...]

11.2 SAP NetWeaverでのウィルススキャナグループの作成

  1. GUIを使用してSAP NetWeaverインストールにログインします。DDICまたはSAP*ユーザとしてログインしないでください。ウィルススキャナをcross-clientに設定する必要があるためです。

  2. トランザクションVSCANGROUPを使用してウィルススキャナグループを作成します。

    Edit View Scanner Group with editable table
  3. ビューモードから変更モードに切り替えるには、ビューの変更ボタン(Change View)をクリックします。

    チェックマークをクリックして、This table is cross-client (このテーブルはクロスクライアントです)というメッセージを確認します。テーブルが編集可能になりました。

  4. 最初の空の行を選択します。Scanner Group (スキャナグループ)テキストボックスで、CLAMSAPVSIを指定します。Group Text (グループテキスト)で、CLAMSAPを指定します。

    Business Add-in (ビジネスアドイン)がオフになっていることを確認します。

    Edit View Scanner Group with editable table
  5. フォームを保存するには、保存ボタン(Save)をクリックします。

11.3 SAP NetWeaverでのClamSAPライブラリの設定

  1. SAP NetWeaver GUIで、トランザクションVSCANをコールします。

  2. ビューモードから変更モードに切り替えるには、ビューの変更ボタン(Change View)をクリックします。

    チェックマークをクリックして、This table is cross-client (このテーブルはクロスクライアントです)というメッセージを確認します。テーブルが編集可能になりました。

  3. New entries (新しいエントリ)をクリックします。

  4. 必要に応じて、次のフォームに入力します。

    • Provider Type (プロバイダ タイプ): Adapter (Virus Scan Adapter)

    • Provider Name (プロバイダ名): VSA_HOSTNAME (例: VSA_SAPSERVER)

    • Scanner Group: 11.2項 「SAP NetWeaverでのウィルススキャナグループの作成」で設定したスキャナグループの名前(例: CLAMSAPVSI)

    • サーバ: HOSTNAME_SID_INSTANCE_NUMBER (例: SAPSERVER_P04_00)

    • Adapter Path (アダプタのパス): libclamdsap.so

    Form New Entries: Details of Added Entries
  5. フォームを保存するには、ボタンSaveをクリックします。

11.4 ウィルス定義のデフォルトの場所の設定

デフォルトで、ClamAVはウィルス定義が/var/lib/clamsapにあることを想定しています。このデフォルトの場所を変更するには、次の手順に従います。

  1. GUIを使用してSAP NetWeaverインストールにログインします。DDICまたはSAP*ユーザとしてログインしないでください。ウィルススキャナをcross-clientに設定する必要があるためです。

  2. CLAMSAPVSIグループを選択します。

  3. 左のナビゲーションペインで、Configuration Parameters (設定パラメータ)をクリックします。

  4. ビューモードから変更モードに切り替えるには、ビューの変更ボタン(Change View)をクリックします。

    チェックマークをクリックして、This table is cross-client (このテーブルはクロスクライアントです)というメッセージを確認します。テーブルが編集可能になりました。

    図 11.1:
  5. 新しいエントリをクリックしてINITDRIVERDIRECTORYを選択します。

    図 11.2:
  6. 別のウィルススキャナの場所へのパスを入力します。

  7. フォームを保存するには、保存ボタン(Save)をクリックします。

11.5 ClamSAPの実行

ClamSAPを実行するには、トランザクションVSCANに移動します。続いて[開始]をクリックします。

ビュー「ウィルススキャンプロバイダ定義」を変更する
図 11.3: ビューウィルススキャンプロバイダ定義を変更する

その後、ClamSAPおよびClamAVの詳細を含む概要が表示されます(図11.4「ClamSAPデータの概要」で示される)。

ClamSAPデータの概要
図 11.4: ClamSAPデータの概要

11.6 詳細の参照先

詳細については、プロジェクトホームページhttps://sourceforge.net/projects/clamsap/も参照してください。

12 RDPを介した接続

RDPオプションを有効にしてSLES for SAPをインストールした場合、またはKIWI NGイメージからインストールした場合、RDPはサービスxrdpを介してマシンで有効になります。または、このセクションの終わりで説明するように、RDPを後で有効にすることもできます。

次のような、RDPをサポートする任意のソフトウェアを使用して接続できます。

  • Linux: Vinagre (SUSE Linux Enterprise Desktop/SLE WEおよびopenSUSEで使用可能)またはRemmina (openSUSEで使用可能)

  • Windows: リモートデスクトップ接続

重要
重要: [接続パラメータ]

次のパラメータで接続を設定してください。

  • ポート: 3389

  • カラー設定: 16ビットまたは24ビットのみ

手順 12.1: RDPの設定

インストール中にRDP接続を設定していない場合は、次の手順を使用して後で実行することもできます。

  1. まず、ファイアウォールに必要な例外を作成し、関連するすべてのゾーンでポートTCP3389を開きます。たとえば、内部ネットワークがinternalゾーンを使用している場合は、次のコマンドを使用します。

    # firewall-cmd --zone=internal --add-port=3389/tcp

    これは、新しい設定をテストするための一時的な割り当てです。複数のゾーンを変更する必要がある場合、各ゾーンを一度に1つずつ変更してテストします。

  2. 新しい設定を永続的にします。

    # firewall-cmd --runtime-to-permanent
    # firewall-cmd --reload

    ファイアウォールの使用の詳細については、https://docs.suse.com/sles/15/html/SLES-all/cha-security-firewall.html#sec-security-firewall-firewalldを参照してください。

  3. 次に、xrdpを設定します。

    パッケージxrdpをインストールします:

    # zypper install xrdp
  4. xrdpサービスを有効にして開始します。

    # systemctl enable xrdp
    # systemctl start xrdp

    これでマシンに接続できるようになりました。

13 オペレーティングシステムイメージの作成

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsからカスタムオペレーティングシステムイメージを作成する複数の方法があります。推奨される方法は一般的にKIWI NGを使用する方法で、これはXML設定ファイルを取り込んでから、完全に自動的に実行します。

または、再使用する前に、クリーンアップされる既存のインストールからイメージを作成することもできます。

13.1 KIWI NGでのイメージの作成

KIWI NGは、新しい物理マシンまたは仮想マシンに簡単にコピー可能なオペレーティングシステムイメージを作成するツールです。このセクションでは、KIWI NGを使用したSLES for SAPのイメージの作成について説明します。

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsは現在、パッケージkiwi-template-sapのテンプレートを使用したKIWI NGによるイメージの作成をサポートしています。ただし、現在の実装では、次のような特定の制限があります。

  • VMXディスクイメージの構築のみがサポートされています。他のイメージタイプの構築はサポートされていません。

  • Open Build Serviceにはすべての必要なパッケージが含まれているわけではないため、/tmp/SLES4SAP.isoにあるSUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsのISOイメージを指定する必要があります。

基本的なイメージを構築するには、次の2つのコマンドを使用します。

  1. ルートファイルシステムの構築:

    # kiwi -p SLES4SAP --root fsroot
  2. VMXイメージの構築:

    # kiwi --create fsroot --type vmx -d build

SAPinstを使用したグラフィカルインストールを実行可能にするには、イメージのデフォルト設定で次の操作を有効にします。

  • IceWMデスクトップのインストール

  • サービスxrdpが自動起動し、RDPを介してマシンに接続できるようにする詳細については、第12章 「RDPを介した接続を参照してください。

KIWI NGおよびSLES for SAPの詳細については次の資料を参照してください。

  • SLES for SAPのKIWI NGの設定については、『/usr/share/kiwi/image/SLES4SAP/README』を参照してください。

  • 一般にKIWI NGについては、『openSUSE-KIWI Image System Cookbook』(https://doc.opensuse.org/projects/kiwi/doc/)を参照してください。

13.2 インスタンスをマスタイメージとして使用する前にクリーンアップする

初めからKIWI NGイメージを生成するのではなく、複数のシステムですでに設定されているマスタインスタンスのイメージを使用する方が適切な場合があります。たとえば、ご使用のイメージにKIWI NGを使用してインストールできない追加のソフトウェアや設定を含める必要がある場合などです。

ただし、通常、このようなイメージには、システムの他の部分と一緒にコピーしてはならない特定の設定データが含まれています。

手動でクリーンアップする必要がないようにするには、スクリプトclone-master-clean-up (同じ名前のパッケージから入手可能)を使用します。

これにより、次のデータが自動的に削除されます。

  • スワップデバイス(ゼロワイプしてから、再度有効化)

  • SUSE登録情報とSUSEのリポジトリ、およびZypper ID

  • ユーザおよびホストのSSHキーとドメインおよびホスト名

  • 生成されたHANA-Firewallスクリプト(ただし設定自体は除く)

  • シェル履歴、メール、cronジョブ、一時ファイル(/tmp/var/tmp)、ログファイル(/var/log)、ランダムシード、systemdジャーナル、collectd統計、postfix設定、/rootの一部

  • /var/cache/var/crash/var/lib/systemd/coredump

また、次の設定がデフォルトに復元されます。

  • DHCPおよびネットワーク設定を使用しないネットワークインタフェース(/etc/hostname/etc/hosts、および/etc/resolv.conf)

  • sudo設定

さらに、新しいrootパスワードを設定することを選択できます。/etc/fstabのUUIDベースのエントリは、デバイス文字列に置き換えられます。このスクリプトは、インストールワークフローの最初のブートセクションが元のインストールに使用されている場合は、次のブート時に再度実行されるようにします。

13.2.1 clone-master-clean-upの構成

clone-master-clean-upを実行する前に、次の方法でスクリプトを設定できます。

  • 特定のデータをクリーンアップしないようにスクリプトを設定するには、設定ファイル/etc/sysconfig/clone-master-clean-upを使用します。

    このファイルには、使用可能なオプションの簡単な説明も記載されています。

  • 追加のディレクトリまたはファイルをクリーンアップするようにスクリプトを設定するには、このようなディレクトリおよびファイルの絶対パスを含むリストを作成します。

    /additional/file/to/delete.now
    /additional/directory/to/remove

    このリストを/var/adm/clone-master-clean-up/custom_removeとして保存します。

13.2.2 clone-master-clean-upの使用

スクリプトを使用するには、次のコマンドを実行します。

# clone-master-clean-up

次に、指示に従います。

13.2.3 詳細の参照先

次のソースではclone-master-clean-upに関する追加情報を参照できます。

  • 詳細については、マニュアルページclone-master-clean-upを参照してください。

  • 追加で削除すると役立つ可能性のあるファイルおよびディレクトリについては、/var/adm/clone-master-clean-up/custom_remove.templateを参照してください。

14 重要なログファイル

この製品の最も重要なログファイルは以下のとおりです。

  • SAPインストールウィザードはYaSTモジュールです。ログエントリは/var/log/YaST/y2logにあります。

  • すべてのSAPナリッジはライブラリにバンドルされています。ログエントリは/var/log/SAPmedia.logにあります。

  • 自動インストールに関連するログファイルは/var/adm/autoinstall/logsにあります。

A SLES for SAP用の追加ソフトウェア

SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsでは、購読に含まれていないソフトウェアを簡単にインストールできます。

  • 拡張機能およびモジュールを使用すると、SUSEによって作成され、サポートされている追加のソフトウェアをインストールできます。拡張機能およびモジュールの詳細については、Deployment Guide, Part Initial System Configuration, Chapter Installing Modules, Extensions, and Third Party Add-On Products(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

  • SUSE Connectプログラムを使用すると、サードパーティによって作成され、サポートされているSLES for SAP専用のパッケージをインストールできます。また、サードパーティのトレーニングおよびサポートに簡単にアクセスできます。A.2項 「SUSE Connectプログラム」を参照してください。

  • SUSE Package Hubでは、サポートなしで、SUSE Linux Enterpriseコミュニティによって作成されたパッケージをインストールできます。A.3項 「SUSE Package Hub」を参照してください。

A.1 SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの基本製品の特定

SUSE製品を識別し、区別するには、次のファイルのいずれかを使用します。

/etc/os-release

シェル互換の変数割り当てに類似した、キー値ペアを持つテキストファイル。各キーは別々の行にあります。

CPE_NAMEキーを検索できます。ただし、異なるリリースおよびサービスパックの間でその値が変更されている可能性があります。さらに詳細が必要な場合は、https://www.suse.com/support/kb/doc/?id=7023490にある記事を参照してください。

/etc/products.d/baseproduct

XMLファイルへのリンク。/etc/products.d/ディレクトリにはさまざまな.prodファイルが含まれています。

購入した製品およびシステムのインストール方法に応じて、リンク/etc/products.d/baseproductが異なる.prodファイル(sle-module-sap-applications.prodなど)を指す可能性があります。CPE_NAMEと同じ情報がタグ<cpeid>に保存されます。

その他の情報として、両方のファイルにオペレーティングシステムと基本製品が含まれています。基本製品(キーCPE_NAMEおよびタグ<cpeid>)は、Common Platform Enumeration Specificationに従います。

コマンドgrepまたはxmlstarlet (どちらも製品で使用可能)のいずれかを使用して、ファイル/etc/products.d/baseproductから情報を引き出すことができます。XMLもテキストであるため、出力の形式がそれほど重要でない場合は、単純な検索grepを使用します。ただし、検索がより高度な場合、別のスクリプトでの出力が必要な場合、または出力にXMLタグを避けたい場合は、代わりに、xmlstarletコマンドを使用します。

たとえば、基本製品を取得するには、次のようにgrepを使用します。

> grep cpeid /etc/products.d/baseproduct
<cpeid>cpe:/o:suse:sle-module-sap-applications:RELEASE:spSP_NUMBER</cpeid>

RELEASEおよびSP_NUMBERは、プレースホルダで、製品のリリース番号およびサービスパックを示しています。

xmlstarletでも同じことができます。XPath (情報に導く手順)が必要です。適切なオプションを使用すると、<cpeid>/</cpeid>タグを回避できます。

> xmlstarlet sel -T -t -v "/product/cpeid" /etc/products.d/baseproduct
cpe:/o:suse:sle-module-sap-applications:RELEASE:spSP_NUMBER

(grepでは難しい)より高度な検索では、他の製品に必要なすべての依存関係を一覧表示します。basenamesle-module-sap-applications.prodを指していると仮定して、次のコマンドは、SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsに必要なすべての製品依存関係を出力します。

>> xmlstarlet sel -T -t -v "/product/productdependency[@relationship='requires']/@name" /etc/products.d/baseproduct
SUSE_SLE
sle-ha

A.2 SUSE Connectプログラム

SUSE Connect Program (SUSE Connectプログラム)を使用してYaSTコントロールセンターからSUSE Connectプログラムを起動します。使用可能なオプションから選択します。ソフトウェアリポジトリを有効にするには、リポジトリの追加をクリックします。

SUSE Connectプログラムによって有効化されるすべてのソフトウェアは、サードパーティから提供されます。サポートについては、対象のベンダーにお問い合わせください。SUSEでは、これらのオファリングのサポートは提供していません。

注記
注記: SUSEConnectコマンドラインツール

SUSEConnectコマンドラインツールは、異なる目的の別のツールです。SUSE製品のインストールを登録できます。

A.3 SUSE Package Hub

SUSE Package Hubでは、以前はopenSUSEでのみ使用可能であったSLEの多数のパッケージを用意しています。SUSE Package Hubのパッケージは、コミュニティによって作成され、サポートなしで提供されています。たとえば、セクションには次のものが含まれます。

  • Rプログラミング言語

  • Haskellプログラミング言語

  • KDE5デスクトップ

SUSE Package Hubを有効にするには、https://packagehub.suse.com/how-to-use/の説明に従ってリポジトリを追加します。

詳細については、https://packagehub.suse.comにあるSUSE Package Hub Webサイトを参照してください。

B AutoYaSTを使用したSAPシステムのパーティショニング

SAPシステムのパーティショニングは、ディレクトリ/usr/share/YaST2/include/sap-installation-wizard/からのファイルによって制御されます。次のファイルを使用できます。

  • SAP NetWeaverまたはSAP S/4HANAアプリケーションサーバのインストール.  base_partitioning.xml

  • SAP HANAまたはSAP S/4HANAデータベースサーバのインストール.  hana_partitioning.xml

  • SAP BusinessOne認定ハードウェアへのSAP HANAまたはSAP S/4HANAデータベースサーバのインストール.  ハードウェア固有のパーティショニングファイル

ファイルは、/etc/sap-installation-wizard.xmlで定義されているように選択されます。ここでは、要素partitioningの内容が決定的に重要になります。

たとえば、インストールがHAまたは分散データベースに基づいている場合、パーティショニングは必要ありません。この場合、partitioningNOに設定され、ファイルbase_partitioning.xmlが使用されます。

注記
注記: autoinst.xmlはここでは使用できない

autoinst.xmlは、オペレーティングシステムのインストールにのみ使用されます。SAPシステムのパーティショニングを制御することはできません。

パーティショニングを制御するファイルは、partitioningセクションのみを含むAutoYaST制御ファイルです。ただし、これらのファイルは、AutoYaST形式のいくつかの拡張機能を使用できます。

  • partitioning_definedタグがtrueに設定される場合、パーティショニングはユーザの介入なしに実行されます。

    デフォルトでは、これはSAP HANA用に認定されたシステム(Dell、Fujitsu、HP、IBM、またはLenovoなど)でSAP HANAファイルシステムを作成する場合にのみ使用されます。

  • パーティションごとに、size_minタグを指定できます。サイズ値は、RAM*N形式の文字列として指定できます。このようにして、パーティションの最小サイズを指定できます(使用可能なメモリ(RAM)のサイズのN倍)。

手順 B.1: カスタムSAPパーティショニングセットアップの作成

次の手順は、TREXのパーティショニングセットアップの作成方法を示しています。ただし、他のアプリケーションのパーティショニングセットアップの作成も同様に機能します。

  1. /usr/share/YaST2/include/sap-installation-wizard/で、新しいXMLファイルを作成します。たとえば、TREX_partitioning.xmlという名前を付けます。

  2. base_partitioning.xmlの内容を新しいファイルにコピーし、新しいファイルをニーズに合わせて調整します。

  3. 最後に、カスタムファイルを含むように/etc/sap-installation-wizard.xmlを調整します。TREXlistitemで、次の行を挿入します。

    <partitioning>TREX_partitioning</partitioning>
重要
重要: base_partitioning.xmlは編集しない

base_partitioning.xmlは直接編集しないでください。次回のアップデートで、このファイルは上書きされます。

AutoYaSTを使用したパーティショニングの詳細については、AutoYaST Guide, Chapter Partitioning(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

C 補足メディア

補足メディアを使用して、パートナーやお客様は独自のタスクまたはワークフローをインストールウィザードに追加できます。

これは、AutoYaST XMLファイルの一部となるXMLファイルを追加することで実行されます。ワークフローに含めるため、このファイルをproduct.xmlと呼ぶ必要があります。

これは、さまざまなタイプの追加に使用できます。たとえば、独自のRPMの追加、独自のスクリプトの実行、クラスタファイルシステムの設定、独自のダイアログおよびスクリプトの作成です。

C.1 product.xml

product.xmlファイルは、通常のAutoYaST XMLファイルのように見えますが、いくつかの制限があります。

この制限が存在するのは、以前にインストールの第1ステージが実行されているため、第2ステージに関連するXMLの部分のみが実行されるためです。

2つのXMLファイル(autoyast.xmlおよびproduct.xml)は、メディアが読み取られた後にマージされ、新しいAutoYaST XMLファイルが、追加のワークフローのためにすぐに生成されます。

次の領域またはセクションがマージされます。

<general>
  <ask-list>         1
  ...
<software>           2
  <post-packages>
  ...
<scripts>
  <chroot-scripts>   3
  <post-scripts>     4
  <init-scripts>     5
  ...

1

C.2項 「独自のAutoYaST Askダイアログ」を参照してください。

2

C.3項 「追加のパッケージをインストールする」を参照してください。

3

パッケージのインストール後、最初のブート前

4

インストール済みシステムの最初のブート中、サービスは実行されていません。

5

インストール済みシステムの最初のブート中、すべてのサービスが稼働しています。

他のすべてのセクションが置き換えられます。

カスタマイズオプションの詳細については、 AutoYaST Guide, Chapter Configuration and Installation Options, Section Custom User Scripts (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

C.2 独自のAutoYaST Askダイアログ

AutoYaSTのAsk機能の詳細については、 AutoYaST Guide, Chapter Configuration and Installation Options, Section Ask the User for Values During Installation (https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。

補足メディアの場合、ダイアログをcontステージ(<stage>cont</stage>)内でのみ使用できます。つまり、ダイアログは最初の再起動後に実行されます。

ダイアログを含むファイルは、ベースAutoYaST XMLファイルとマージされます。

ベストプラクティスとして、ダイアログにはダイアログ番号と要素番号を設定し、10のステップで区切るのが最適です。このようにすると、後の追加を含めるのに役立ち、意思決定に応じてダイアログまたは要素をジャンプする際のターゲットとして使用できます。また、これはベースダイアログでも使用され、適切なダイアログ番号と要素番号を指定すると、ベースダイアログの間にダイアログを配置できます。

ファイルに質問に対する回答を保存して、後でスクリプトのいずれかで使用することができます。インストールウィザードはこのようなファイルを/tmpディレクトリからメディアデータもコピーされるディレクトリにコピーするため、これにはプレフィックス/tmp/ayを使用する「必要がある」ことに注意してください。これが実行されるのは、次の補足メディアで同じダイアログや同じ回答ファイル名が使用され、ここに保存された値が上書きされる可能性があるためです。

いくつかのオプションを使用した例を示します。

<?xml version="1.0"?>
<!DOCTYPE profile>
<profile xmlns="http://www.suse.com/1.0/yast2ns"
         xmlns:config="http://www.suse.com/1.0/configns">
<general>
  <ask-list config:type="list">
      <ask>
          <stage>cont</stage>
          <dialog config:type="integer">20</dialog>
          <element config:type="integer">10</element>
          <question>What is your name?</question>
          <default>Enter your name here</default>
          <help>Please enter your full name within the field</help>
          <file>/tmp/ay_q_my_name</file>
          <script>
             <filename>my_name.sh</filename>
             <rerun_on_error config:type="boolean">true</rerun_on_error>
             <environment config:type="boolean">true</environment>
             <source><![CDATA[
function check_name() {
           local name=$1
           LC_ALL=POSIX
           [ -z "$name" ] && echo "You need to provide a name." && return 1
           return 0
}
check_name "$VAL"
]]>
             </source>
             <debug config:type="boolean">false</debug>
             <feedback config:type="boolean">true</feedback>
          </script>
      </ask>
  </ask-list>
</general>
</profile>

C.3 追加のパッケージをインストールする

product.xmlファイル内にRPMパッケージをインストールすることもできます。これを行うため、第2ステージのインストールに<post-packages>要素を使用できます。

詳細については、『 AutoYaST Guide, Chapter Configuration and Installation Options, Section Installing Packages in Stage 2 』(https://documentation.suse.com/sles-15)を参照してください。次に一例を示します。

...
<software>
 <post-packages config:type="list">
  <package>yast2-cim</package>
 </post-packages>
</software>
...

C.4 補足メディアのディレクトリ例

補足メディアディレクトリの最小例には、product.xmlと呼ばれるファイルのみが含まれます。

D Windows管理者のチートシート

D.1 ユーザの管理

ユーザを管理するには、YaSTを起動し、ユーザとグループの管理に切り替えます。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 usersコマンドを実行します。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/cha-yast-userman.html/を参照してください。

D.2 管理者特権の割り当て

Linuxでは、管理者特権が/etc/sudoersファイルで定義されます。YaSTを使用して管理者特権を管理できます。sudo zypper in yast2-sudoコマンドを使用して、必要なYaSTモジュールをインストールします。YaSTを起動し、Sudoセクションに切り替えます。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 sudoコマンドを実行します。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/single-html/SLES-administration/#cha-adm-sudo/を参照してください。

D.3 システムサービスの管理

YaSTのサービスマネージャモジュールを使用して有効なサービスを表示して管理します。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 services-managerコマンドを実行します。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/single-html/SLES-administration/#cha-systemd/を参照してください。

D.4 ファイアウォール設定の管理

YaSTのファイアウォールモジュールを使用すると、ファイアウォールの設定を管理できます。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 firewallコマンドを実行します。

SUSE Linux Enterpriseのファイアウォールを使用すると、各インタフェースのルールを個別に設定できます。ファイアウォール設定で、マスカレード、ポート転送およびブロードキャストを有効にすることもできます。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/cha-security-firewall.html/を参照してください。

D.5 Windowsドメインへの参加(Active Directory/SMBファイル共有)

まず、yast2-auth-clientパッケージをインストールします。ユーザのログオンモジュールを使用して、Windowsドメインに参加します。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 auth-clientコマンドを実行します。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/cha-security-auth.html/を参照してください。

D.6 パーティションとストレージデバイスの管理

YaSTのパーティション設定モジュールを使用して、パーティションレイアウトを表示または変更します。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 diskコマンドを実行します。

データ損失を回避するため、パーティションを変更する前にアンマウントしてください! パーティションをアンマウントするには、端末を開き、mountコマンドを実行します。これは、次のように構成されたエントリのリストを返します: DEVICE on MOUNT_POINT type FILE_SYSTEM_TYPE (FILE_SYSTEM_OPTIONS)。目的のパーティションをアンマウントするには、適切なマウントポイントでsudo umount MOUNT_POINTコマンドを使用します。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/book-storage.html/を参照してください。

D.7 Windows共有の作成

Linuxでは、SambaはWindows共有を作成できるようにするSMBプロトコルを実装しています。YaSTのSambaサーバモジュールを使用して、SMBサーバを設定します。YaSTのncursesバージョンを使用するには、sudo /sbin/yast2 samba-serverコマンドを実行します。詳細については、https://documentation.suse.com/sles/html/SLES-all/cha-samba.html/を参照してください。