生ディスクイメージを使用した、仮想マシンへのSLE Microの展開
- 概要
SLE Microでは、仮想マシンに直接展開できる生イメージ(「事前構築のイメージ」とも呼ばれる)が提供されています。
- 目的
仮想化された展開により、ハードウェアリソースが節約されます。
- 所要時間
この記事の理解には20分ほどを要します。
- 目標
SLE Microを仮想マシンに正常に展開します。
- 要件
libvirt
とKVM仮想化環境がインストールおよび実行されているVMホストサーバ。イメージの展開用に最低32GBのディスク容量。
(オプション) 設定メディア (例: USBフラッシュデバイス)。
1 事前構築のイメージについて #
事前構築のイメージとは、実行中のオペレーティングシステムを、すぐに使用できる形で表したものです。これらのイメージは、インストーラを使用する従来の方法でインストールするのではなく、ターゲットホストのハードディスクにコピーします。このトピックでは、これらの事前構築のイメージに関する基本的な情報について説明します。
事前構築のイメージは、そのイメージで提供されているツールを使用して、最初のブート時に設定することを目的としています。ブートローダは、1.2項 「最初のブートの検出」で説明されているように最初のブートを検出します。各イメージにはデフォルトでマウントされるサブボリュームが付属しており、最初のブート設定時に変更できます。サブボリュームに関する詳細については、1.1項 「デフォルトパーティショニング」を参照してください。
1.1 デフォルトパーティショニング #
事前構築のイメージは、デフォルトのパーティション方式で用意されています。このパーティションは、最初のブート時にIgnitionまたはCombustionを使用して変更できます。
デフォルトのパーティション方式を変更する場合は、ルートファイルシステムをBtrfsにする必要があります。
イメージごとに次のサブボリュームがあります。
/home /root /opt /srv /usr/local /var
/etc
ディレクトリはoverlayFSとしてマウントされ、そこでは上位ディレクトリが/var/lib/overlay/1/etc/
にマウントされます。
デフォルトでマウントされているサブボリュームは、/etc/fstab
のx-initrd.mount
オプションで認識できます。その他のサブボリュームまたはパーティションは、IgnitionまたはCombustionのいずれかによって設定する必要があります。
1.2 最初のブートの検出 #
最初のブート時にのみ展開が設定されます。最初のブートとそれ以降のブートを区別するため、最初のブートの終了後にフラグファイル/boot/writable/firstboot_happened
が作成されます。このファイルがファイルシステムに存在しないと、属性ignition.firstboot
がカーネルコマンドラインに渡され、それによってIgnitionとCombustionの両方がトリガされて(initrdで)実行されます。最初のブートの完了後、/boot/writable/firstboot_happened
フラグファイルが作成されます。
設定ファイルが不適切であるか欠落しているために適切な設定にならない場合でも、/boot/writable/firstboot_happened
フラグファイルが作成されます。
1.2.1 以降のブート時にシステムの再設定を強制する #
最初のブートが発生した後で、システムを再設定する必要がある場合は、それ以降のブート時に再設定を強制することができます。ここでは2つのオプションがあります。
ignition.firstboot=1
属性をカーネルコマンドラインに渡すことができます。フラグファイル
/boot/writable/firstboot_happened
を削除できます。
2 設定デバイスの準備 #
デフォルトでは、SSHキーを使用した場合にのみSLE Microへのroot
SSHログインが許可されます。展開プロセス中に、インストールされたシステムにアクセスするために使用できる非特権ユーザを作成することをお勧めします。非特権ユーザアカウントは、最初のブート時にCombustionツールまたはIgnitionツールのいずれかを使用して作成できます。システムの展開時に非特権ユーザを作成すると、Cockpit Webインタフェースにアクセスする際にも役立ちます。
設定デバイスを準備するには、次の手順に従います。
SLE Microでサポートされている任意のファイルシステム(Ext3、Ext4など)にディスクをフォーマットします。
>
sudo mkfs.ext4 /dev/sdYデバイスのラベルを、
ignition
(Ignitionまたはのいずれかが使用されている場合)またはcombustion
combustion (Combustionのみが使用されている場合)に設定します。必要に応じて(たとえばWindowsホストの場合)、ラベルに大文字を使用します。デバイスにラベルを付けるには、次のコマンドを実行します。>
sudo e2label /dev/sdY ignition仮想化システムまたはハードウェアがサポートしている任意のタイプの設定ストレージメディアを使用できます(ISOイメージ、USBメモリなど)。
デバイスをマウントします。
>
sudo mount /dev/sdY /mnt使用する設定ツールに応じて、2.1.1.1項 「
config.ign
」または2.2項 「Combustionを使用したSLE Micro展開の設定」に示すようにディレクトリ構造を作成します。>
sudo mkdir /mnt/ignition/あるいは、
>
sudo mkdir -p /mnt/combustion/IgnitionまたはCombustionで使用される設定のすべての要素を準備します。
2.1.1 Ignitionの動作 #
システムを初めてブートすると、Ignitionがinitramfs
の一部としてロードされ、設定ファイルを特定のディレクトリ(USBフラッシュディスク上、またはURLを指定可能)内で検索します。カーネルによってファイルシステムが一時ファイルシステムから実際のルートファイルシステムに切り替わる前(switch_root
コマンドが発行される前)に、すべての変更処理が実行されます。
Ignitionでは、JSON形式の設定ファイルconfig.ign
が使用されます。その設定は手動で記述できるほか、https://ignite.opensuse.orgにあるFuel Ignition Webアプリケーションを使用して生成することもできます。
Fuel IgnitionはIgnitionの語彙をまだ完全には網羅していません。そのため、結果として生成されるJSONファイルをさらに手動で微調整しなければならない場合があります。
2.1.1.1
config.ign
#
設定メディアのignition
サブディレクトリに設定ファイルconfig.ign
を置く必要があります。このような設定メディアとして、たとえばignition
をラベルとするUSBメモリが考えられます。ディレクトリ構造は次のようになる必要があります。
<root directory> └── ignition └── config.ign
Ignition設定でディスクイメージを作成するために、https://ignite.opensuse.orgにあるFuel Ignition Webアプリケーションを使用できます。
config.ign
には、複数のデータタイプ(オブジェクト、文字列、整数、ブール、オブジェクトのリスト)が含まれています。仕様の全詳細については、Ignition
specification v3.3.0を参照してください。
version
属性は必須であり、SLE Microの場合、その値は3.3.0
またはそれ以下のバージョンに設定する必要があります。そのように設定しないとIgnitionの実行に失敗します。
root
としてシステムにログインするには、少なくともroot
のパスワードを記述する必要があります。ただし、SSHキーを使用してアクセスを確立することをお勧めします。パスワードの設定では、必ずセキュアなパスワードを使用します。ランダムに生成されたパスワードを使用する場合は、少なくとも10文字を使用してください。パスワードを手動で作成する場合は、11文字以上を使用し、大文字、小文字、および数字を組み合わせてください。
2.1.2 Ignitionの設定例 #
2.1.2.1 設定例 #
このセクションでは、組み込みのJSON形式でのIgnition設定の例をいくつか示します。
1.1項 「デフォルトパーティショニング」では、事前構築されたイメージを実行するときに、デフォルトでマウントされるサブボリュームが列挙されます。デフォルトではマウントされないサブボリューム上で新しいユーザを追加する場合やファイルを変更する場合は、まずそのサブボリュームを宣言して、それもマウントされるようにする必要があります。ファイルシステムのマウントに関する詳細については2.1.2.1.1.3項 「filesystems
属性」を参照してください。
version
属性は必須
各config.fcc
はバージョン1.4.0以下を含む必要があります。バージョンは対応するIgnition仕様に変換されます。
2.1.2.1.1 ストレージの設定 #
storage
属性は、パーティションの設定、RAID、ファイルシステムの定義、ファイルの作成などに使用されます。パーティションを定義するには、disks
属性を使用します。filesystems
属性は、パーティションをフォーマットし、特定のパーティションのマウントポイントを定義するために使用されます。files
属性は、ファイルシステムのファイルの作成に使用できます。先に述べた属性のそれぞれについて、次のセクションで説明します。
2.1.2.1.1.1 disks
属性 #
disks
属性は、これらのデバイス上でパーティションを定義できるデバイスのリストです。disks
属性には、少なくとも1つのdevice
属性が含まれている必要があり、その他の属性はオプションです。次の例では、単一の仮想デバイスを使用し、ディスクを4つのパーティションに分割します。
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "storage": { "disks": [ { "device": "/dev/vda", "partitions": [ { "label": "root", "number": 1, "typeGuid": "4F68BCE3-E8CD-4DB1-96E7-FBCAF984B709" }, { "label": "boot", "number": 2, "typeGuid": "BC13C2FF-59E6-4262-A352-B275FD6F7172" }, { "label": "swap", "number": 3, "typeGuid": "0657FD6D-A4AB-43C4-84E5-0933C84B4F4F" }, { "label": "home", "number": 4, "typeGuid": "933AC7E1-2EB4-4F13-B844-0E14E2AEF915" } ], "wipeTable": true } ] } }
2.1.2.1.1.2 raid
属性 #
raid
は、RAIDアレイのリストです。raid
の次の属性は必須です:
- level
特定のRAIDアレイのレベル(linear、raid0、raid1、raid2、raid3、raid4、raid5、raid6)
- devices
絶対パスで参照されるアレイ内のデバイスのリスト
- name
mdデバイスに使用される名前
次に例を示します。
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "storage": { "raid": [ { "devices": [ "/dev/sda", "/dev/sdb" ], "level": "raid1", "name": "system" } ] } }
2.1.2.1.1.3 filesystems
属性 #
filesystems
には次の属性が含まれている必要があります:
- device
デバイスへの絶対パス。通常、物理ディスクの場合は
/dev/sda
- format
ファイルシステム形式(Btrfs、Ext4、xfs、vfat、またはswap)
注記SLE Microの場合、
root
ファイルシステムはBtrfsにフォーマットする必要があります。
次の例は、filesystems
属性の使用方法を示しています。/opt
ディレクトリは、/dev/sda1
パーティションにマウントされ、Btrfsにフォーマットされます。デバイスは消去されません。
次に例を示します。
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "storage": { "filesystems": [ { "device": "/dev/sda1", "format": "btrfs", "path": "/opt", "wipeFilesystem": false } ] } }
普通、通常のユーザのホームディレクトリは/home/USER_NAME
ディレクトリにあります。デフォルトでは/home
がinitrdにマウントされないので、ユーザを正しく作成するには、このマウントを明示的に定義する必要があります。
{ "ignition": { "version": "3.1.0" }, "passwd": { "users": [ { "name": "root", "passwordHash": "PASSWORD_HASH", "sshAuthorizedKeys": [ "ssh-rsa SSH_KEY_HASH" ] } ] }, "storage": { "filesystems": [ { "device": "/dev/sda3", "format": "btrfs", "mountOptions": [ "subvol=/@/home" ], "path": "/home", "wipeFilesystem": false } ] } }
2.1.2.1.1.4 files
属性 #
files
属性を使用して、マシンに任意のファイルを作成できます。デフォルトのパーティション方式の外部でファイルを作成するには、filesystems
属性を使用してディレクトリを定義する必要があることに注意してください。
次の例では、ホスト名がfiles
属性を使用して作成されます。ファイル/etc/hostname
はsl-micro1のホスト名で作成されます。
JSONでは、ファイルモードを420
などの10進数で指定できることに注意してください。
JSON:
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "storage": { "files": [ { "overwrite": true, "path": "/etc/hostname", "contents": { "source": "data:,sl-micro1" }, "mode": 420 } ] } }
2.1.2.1.1.5 directories
属性 #
directories
属性は、ファイルシステムに作成されるディレクトリのリストです。directories
属性には、少なくとも1つのpath
属性が含まれている必要があります。
次に例を示します。
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "storage": { "directories": [ { "path": "/home/tux", "user": { "name": "tux" } } ] } }
2.1.2.1.2 ユーザ管理 #
passwd
属性は、ユーザを追加するために使用されます。Cockpitなどの一部のサービスでは、root以外のユーザを使用してログインする必要があるため、ここで非特権ユーザを少なくとも1人定義します。または、5.3項 「ユーザの追加」の説明に従って、実行中のシステムからこのようなユーザを作成できます。
システムにログインするには、root
と通常のユーザを作成し、それぞれのパスワードを設定します。たとえば、openssl
コマンドを使用して、パスワードをハッシュする必要があります。
openssl passwd -6
このコマンドは、選択したパスワードのハッシュを作成します。このハッシュをpassword_hash
属性の値として使用します。
次に例を示します。
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "passwd": { "users": [ { "name": "root", "passwordHash": "PASSWORD_HASH", "sshAuthorizedKeys": [ "ssh-rsa SSH_KEY_HASH USER@HOST" ] } ] } }
users
属性には、少なくとも1つのname
属性が含まれている必要があります。ssh_authorized_keys
は、ユーザのsshキーのリストです。
2.1.2.1.3 systemd
サービスの有効化 #
systemd
属性で指定して、systemd
サービスを有効にできます。
次に例を示します。
{ "ignition": { "version": "3.0.0" }, "systemd": { "units": [ { "enabled": true, "name": "sshd.service" } ] } }
2.2 Combustionを使用したSLE Micro展開の設定 #
Combustionは、最初のブート時にシステムを設定できるdracutモジュールです。Combustionを使用すると、デフォルトパーティションの変更、ユーザのパスワードの設定、ファイルの作成、パッケージのインストールなどができます。
2.2.1 Combustionの動作 #
ignition.firstboot
引数をカーネルのコマンドラインに渡した後でCombustionが呼び出されます。Combustionは、script
という名前の付属のファイルを読み込み、そこに含まれるコマンドを実行して、ファイルシステムに変更を加えます。script
にネットワークフラグを記述していると、Combustionによってネットワークの設定が試みられます。/sysroot
がマウントされた後、Combustionは/etc/fstab
にあるマウントポイントをすべて有効にしようと試み、その後transactional-update
を呼び出して、root
パスワードの設定やパッケージのインストールなどの他の変更を適用します。
設定ファイルscript
は、combustion
をラベルとする設定メディアのcombustion
サブディレクトリに置く必要があります。ディレクトリ構造は次のようになる必要があります。
<root directory> └── combustion └── script └── other files
Combustionは、Ignitionとともに使用することができます。その場合は、設定メディアにignition
というラベルを付け、ignition
ディレクトリとconfig.ign
を次に示すようなディレクトリ構造に含めます。
<root directory> └── combustion └── script └── other files └── ignition └── config.ign
このシナリオでは、IgnitionはCombustionの前に実行されます。
2.2.2 Combustionの設定例 #
2.2.2.1 script
設定ファイル #
script
設定ファイルは、Combustionによってtransactional-update
シェルで解析および実行される一連のコマンドです。この記事では、Combustionで実行される設定タスクの例を示します。
script
ファイルはシェルで解釈されることから、その先頭行には必ずインタープリタ宣言を記述します。たとえば、Bashの場合は次のように記述します。
#!/bin/bash
実際のシステムにログインするには、少なくともroot
パスワードを指定します。ただし、SSHキーを使用した認証を確立することをお勧めします。root
パスワードを使用する必要がある場合は、セキュアなパスワードを設定してください。ランダムに生成されたパスワードを使用する場合は、少なくとも10文字を使用してください。パスワードを手動で作成する場合は、11文字以上を使用し、大文字、小文字、および数字を組み合わせてください。
2.2.2.1.1 ネットワーク設定 #
最初のブート時にネットワーク接続を設定および使用するには、次のステートメントをscript
に追加します。
# combustion: network
このステートメントを使用すると、rd.neednet=1
引数がdracutに渡されます。ネットワーク設定はデフォルトでDHCPを使用します。別のネットワーク設定が必要な場合は、2.2.2.1.2項 「initramfsでの変更の実行」の説明に従って進めます。
このステートメントを使用しない場合、システムはネットワーク接続がない設定のままになります。
2.2.2.1.2 initramfsでの変更の実行 #
initramfs環境の変更が必要になる場合があります。たとえば、NetworkManager用のカスタムネットワーク設定を/etc/NetworkManager/system-connections/
に書き込む場合などです。そのためには、prepare
ステートメントを使用します。
たとえば、静的IPアドレスで接続を作成し、DNSを設定する場合は、次のようにします。
#!/bin/bash # combustion: network prepare set -euxo pipefail nm_config() { umask 077 # Required for NM config mkdir -p /etc/NetworkManager/system-connections/ cat >/etc/NetworkManager/system-connections/static.nmconnection <<-EOF [connection] id=static type=ethernet autoconnect=true [ipv4] method=manual dns=192.168.100.1 address1=192.168.100.42/24,192.168.100.1 EOF } if [ "${1-}" = "--prepare" ]; then nm_config # Configure NM in the initrd exit 0 fi # Redirect output to the console exec > >(exec tee -a /dev/tty0) 2>&1 nm_config # Configure NM in the system curl example.com # Leave a marker echo "Configured with combustion" > /etc/issue.d/combustion
2.2.2.1.3 パーティショニング #
SLE Micro生イメージは、1.1項 「デフォルトパーティショニング」で説明されるように、デフォルトのパーティショニングスキームで提供されます。異なるパーティショニングを使用することもできます。次の一連のスニペット例では、/home
を別のパーティションに移動します。
次のスクリプトは、スナップショットに含まれていない変更を実行します。このスクリプトが失敗してスナップショットが破棄された場合、/dev/vdb
デバイスへの変更など、特定の変更は表示されたままになり、元に戻すことはできません。
次のスニペットは、/dev/vdb
デバイス上にパーティションが1つのみのGPTパーティショニングスキーマを作成します。
sfdisk /dev/vdb <<EOF label: gpt type=linux EOF partition=/dev/vdb1
パーティションはBtrfsにフォーマットされます。
wipefs --all ${partition} mkfs.btrfs ${partition}
次のスニペットによって、/home
の移動可能なコンテンツが新しい/home
フォルダの場所に移動されます。
mount /home mount ${partition} /mnt rsync -aAXP /home/ /mnt/ umount /home /mnt
次のスニペットは、/etc/fstab
の古いエントリを削除して新しいエントリを作成します。
awk -i inplace '$2 != "/home"' /etc/fstab echo "$(blkid -o export ${partition} | grep ^UUID=) /home btrfs defaults 0 0" >>/etc/fstab
2.2.2.1.4 新しいユーザの作成 #
Cockpitなどの一部のサービスでは、root以外のユーザを使用してログインする必要があるため、ここで非特権ユーザを少なくとも1人定義します。または、5.3項 「ユーザの追加」の説明に従って、実行中のシステムからこのようなユーザを作成できます。
新しいユーザアカウントを追加するには、まず、ユーザのパスワードを表すハッシュ文字列を作成します。openssl passwd -6
コマンドを使用します。
パスワードハッシュを取得したら、次の行をscript
に追加します。
mount /home useradd -m EXAMPLE_USER echo 'EXAMPLE_USER:PASSWORD_HASH' | chpasswd -e
2.2.2.1.5 root
のパスワードの設定 #
root
パスワードを設定する前に、openssl passwd
-6
などを使用して、そのパスワードのハッシュを生成します。パスワードを設定するには、script
に次の行を追加します。
echo 'root:PASSWORD_HASH' | chpasswd -e
2.2.2.1.6 SSHキーの追加 #
次のスニペットは、root
のSSHキーを保存するディレクトリを作成してから、設定デバイス上にあるSSH公開鍵をauthorized_keys
ファイルにコピーします。
mkdir -pm700 /root/.ssh/ cat id_rsa_new.pub >> /root/.ssh/authorized_keys
SSHを介したリモートログインを使用する必要がある場合は、SSHサービスを有効にする必要があります。詳細については、2.2.2.1.7項 「サービスの有効化」を参照してください。
2.2.2.1.7 サービスの有効化 #
SSHサービスなどのシステムサービスを有効にするには、script
に次の行を追加します。
systemctl enable sshd.service
2.2.2.1.8 パッケージのインストール #
特定のパッケージでは追加のサブスクリプションが必要になる場合があるので、システムの事前登録が必要なことがあります。また、追加のパッケージをインストールするには、利用可能なネットワーク接続が必要になる場合もあります。
最初のブート設定時に、システムに追加パッケージをインストールできます。たとえば、以下を追加して、vim
エディタをインストールできます。
zypper --non-interactive install vim-small
設定が完了し、設定したシステムでブートすると、zypper
を使用できなくなることに注意してください。後で変更を実行するには、transactional-update
コマンドを使用して、変更されたスナップショットを作成する必要があります。
3 仮想マシンの準備 #
このセクションでは、新しい仮想マシンを準備する方法と、そのマシンにSLE Microを展開するために実行する手順について説明します。
仮想化されたSLE Microを実行する予定のVMホストサーバにSLE Microディスクイメージをダウンロードします。
Virtual Machine Managerを起動し、
› を選択します。以前にダウンロードしたSLE Microディスクイメージのパスと、展開するLinux OSのタイプ(
Generic Linux 2020
など)を指定します。 で確定します。SLE Micro仮想マシンに割り当てるメモリの量とプロセッサの数を指定し、 で確定します。
仮想マシンの名前と使用するネットワークを指定します。
暗号化されたSLE Microイメージを展開する場合は、次の追加の手順を実行します。
4 JeOS Firstbootを使用した設定 #
設定デバイスを提供せずにSLE Microを初めて起動する場合、JeOS Firstbootを使用すると、システムの最小限の設定を実行できます。展開プロセスをより細かく制御する必要がある場合は、設定デバイスとIgnitionまたはCombustionの設定を使用してください。詳細については、2.1項 「Ignitionを使用したSLE Micro展開の設定」および2.2項 「Combustionを使用したSLE Micro展開の設定」を参照してください。
JeOS Firstbootを使用してシステムを設定するには、次の手順を実行します。
Enterキーを押して確定します。
にウェルカム画面が表示されます。次の画面で、キーボードを選択して、ライセンス契約を確認し、タイムゾーンを選択します。
root
のパスワードを入力し、確定します。図 3: rootパスワードの入力 #暗号化した展開では、JeOS Firstbootによって次の処理が実行されます。
デフォルトのパスフレーズを置き換える新しいパスフレーズの入力を要求します。
新しいLUKSキーを生成し、パーティションを再暗号化します。
LUKSヘッダにセカンダリキースロットを追加し、TPMデバイスに対して封印します。
暗号化したイメージを展開する場合は、次のステップに従います。
希望する保護方法を選択し、
をクリックして確定します。LUKS暗号化の回復パスワードを入力し、同じパスワードをもう一度入力します。ルートファイルシステムが再度暗号化されます。
図 4: 暗号化方法の選択 #展開が成功したら、5.4項 「CLIからのSLE Microの登録」の説明に従って、システムを登録し、非特権ユーザを作成します。
5 展開後の手順 #
5.1 暗号化されたディスクイメージの展開 #
SLE Microの暗号化された生ディスクイメージは、自動的にはディスク容量いっぱいまで拡張されません。この手順では、イメージを希望するサイズに拡張する手順について説明します。
qemu-img
コマンドを使用して、ディスクイメージを目的のサイズまで大きくします。parted
コマンドを使用して、LUKSデバイスが存在するパーティション(パーティション番号3など)のサイズを目的のサイズに変更します。cryptsetup resize luks
コマンドを実行します。パスフレーズを要求されるので、それを入力して、暗号化したデバイスのサイズを変更します。transactional-update shell
コマンドを実行して、ディスクの現在のスナップショットで読み込み書き込みシェルを開きます。Btrfsファイルシステムのサイズを目的のサイズに変更します。次に例を示します。#
btrfs fi resize max /exit
でシェルを終了し、reboot
でシステムを再起動します。
5.2 暗号化されたシステムの再暗号化 #
システムはセキュリティ保護されていません。したがって、ディスクの再暗号化が完了するまで機密データを保存しないでください。
JeOS Firstbootにより、展開フレーズ中に新しいパスフレーズの入力が求められます。入力すると、システムは自動的に再暗号化されるため、それ以上のアクションは必要はありません。
SLE Microの暗号化イメージは、デフォルトのLUKSパスフレーズを使用して提供されています。システムをセキュリティ保護するため、必ずシステムの展開後にパスフレーズを変更してください。そのためには、次の説明に従います。次の手順は同じシェルセッションで実行してください。
必要な関数をシェルにインポートします。
#
source /usr/share/fde/luks基礎となるLUKSデバイスを特定し、さらに使用される変数を定義します。
#
luks_name=$(expr "`df --output=source / | grep /dev/`" : ".*/\(.*\)")また、以下を実行します。
#
luks_dev=$(luks_get_underlying_device "$luks_name")デフォルトのパスフレーズ1234を保存するキーファイルと、新しいパスフレーズを含むキーファイルを作成します。
回復パスワードを変更します。
#
cryptsetup luksChangeKey --key-filePATH_TO_DEFAULT --pbkdf pbkdf2 "${luks_dev}" PATH_TO_NEWPATH_TO_DEFAULTは、デフォルトのパスフレーズを含むキーファイルのパスです。PATH_TO_NEWは、新しいパスフレーズを含むキーファイルのパスです。
LUKSデバイスを再暗号化します。
#
cryptsetup reencrypt --key-filePATH_TO_NEW ${luks_dev}新しいランダムキーを作成してTPMで封印します。
>
sudo
fdectl regenerate-key --passfile PATH_TO_NEWステップ 3で作成したキーファイルを両方とも削除します。
次のコマンドを実行して、
grub.cfg
ファイルを更新します。>
sudo
transactional-update grub.cfgシステムを再起動します。
5.3 ユーザの追加 #
SLE Microでは、SSH経由でのログインやCockpitへのアクセスに非特権ユーザが必要であるため、該当するアカウントを作成する必要があります。
非特権ユーザをIgnitionまたはCombustionで定義している場合、この手順はオプションです。JeOS Firstbootを使用してシステムを展開した場合は、root
パスワードのみを設定し、以下で説明するように非特権アカウントを手動で作成する必要があります。
次のように、
useradd
コマンドを実行します。#
useradd -m USER_NAME
そのアカウントのパスワードを設定します。
#
passwdUSER_NAME必要に応じて、ユーザを
wheel
グループに追加します。#
usermod -aG wheelUSER_NAME
5.4 CLIからのSLE Microの登録 #
展開が正常に完了したら、テクニカルサポートを利用したり、更新を受け取ったりするためにシステムを登録する必要があります。システムの登録は、transactional-update
register
コマンドを使用してコマンドラインから実行できます。
SUSE Customer CenterでSLE Microを登録するには、次の手順に従います。
transactional-update register
を次のように実行します。#
transactional-update register -rREGISTRATION_CODE -e EMAIL_ADDRESSローカル登録サーバで登録するには、さらに次のようにサーバへのURLも入力します。
#
transactional-update register -rREGISTRATION_CODE -e EMAIL_ADDRESS \ --url "https://suse_register.example.com/"REGISTRATION_CODEは、SLE Microのコピーで受け取った登録コードで置き換えます。EMAIL_ADDRESSは、各自または各自の組織が登録の管理に使用しているSUSEアカウントに関連付けられたEメールアドレスで置き換えます。
システムを再起動して、最新のスナップショットに切り替えます。
これで、SLE Microが登録されました。
このセクションの説明対象以外の情報については、SUSEConnect --help
でのインラインドキュメントを参照してください。
6 法的事項 #
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