16 ネットワークインストールソースをセットアップする #
この章では、SUSE Linux Enterprise Serverをネットワーク経由でインストールする際に必要とされるデータを提供するサーバの作成方法について説明します。
SUSE Linux Enterprise Server用のネットワークインストールソースとして使用するマシンのオペレーティングシステムに応じて、サーバ設定にはいくつかのオプションがあります。インストールサーバを設定する最も簡単な方法は、YaSTを使用することです。
Linux展開用インストールサーバとしては、Microsoft Windowsコンピュータも使用できます。詳細については16.5項 「SMBリポジトリの管理」を参照してください。
16.1 YaSTを使ったインストールサーバのセットアップ #
YaSTでは、ネットワークリポジトリ作成用のグラフィックツールを提供しています。HTTP、FTP、およびNFSによるネットワークインストールサーバをサポートしています。
- インストールサーバにするマシンにログインします。 
- パッケージyast2-instserverをインストールします: - >- sudozypper in yast2-instserver
- › › の順に選択します。 
- リポジトリのタイプを選択します(HTTP、FTP、またはNFS)選択したサービスは、システム起動時に、毎回、自動的に開始されます。選択したタイプのサービスがシステム上ですでに動作していて、サーバ用に手動で設定する場合には、をオンにして、サーバサービスの自動設定を無効にします。どちらの場合でも、サーバ上のインストールデータを保管するディレクトリを設定してください。 
- 必要なリポジトリタイプを設定します。このステップは、サーバサービスの自動設定と関係しています。自動設定を無効にした場合にはスキップされます。 - インストールデータを置くFTPまたはHTTPサーバのルートディレクトリのエイリアスを定義してください。リポジトリは、 - ftp://Server-IP/Alias/Name(FTPの場合)または- http://Server-IP/Alias/Name(HTTPの場合)に格納されます。Nameには、リポジトリの名前を指定します。リポジトリ名は、次のステップで定義します。前のステップでNFSを選択した場合には、ワイルドカードとエクスポートオプションを指定します。NFSサーバは、- nfs://Server-IP/Nameでアクセスできます。NFSとエクスポートについての詳細は、第19章 「NFS共有ファイルシステム」を参照してください。ヒント: ファイアウォールの設定- サーバシステムのファイアウォール設定が、HTTP、NFS、およびFTPポートのトラフィックを許可していることを確認します。現在、そうでない場合は、まず、を有効にするか、をチェックします。 
- リポジトリを設定します。インストール用メディアを宛先にコピーする前に、リポジトリの名前を定義します(製品とバージョンを示し、容易に覚えられる略語が望ましい)。YaSTでは、インストールDVDのコピーの代わりに、メディアのISOイメージを利用できます。そうする場合には、対応するチェックボックスをオンにして、ISOファイルをローカルに保管するディレクトリのパスを指定します。このインストールサーバを使用して配布する製品によっては、サービスパックDVDなどのメディアを追加リポジトリとして追加しなければならない場合があります。ネットワーク内のインストールサーバについて知らせるためにOpenSLPを使う場合には、適切なオプションをオンにします。 ヒント: リポジトリのアナウンス- このオプションがネットワーク設定でサポートされている場合は、OpenSLPを介してリポジトリをアナウンスすることを検討してください。そうすれば、すべてのターゲットマシンでネットワークインストールパスを入力しなくてもよくなります。SLPブートパラメータでブートされたターゲットシステムは、これ以上の設定を行わなくても、ネットワークリポジトリを検出します。このオプションについての詳細は、第7章 「ブートパラメータ」を参照してください。 
- 追加のリポジトリを設定します。YaSTは、アドオンCDまたはサービスパックCDにあるリポジトリを設定する際に特定の名前規則に従います。この設定が受け入れられるのは、アドオンCDのリポジトリ名がインストールメディアのリポジトリ名で始まる場合のみです。言い換えると、DVDのリポジトリ名を - SLES12SP1にした場合は、DVD2のリポジトリ名は- SLES12SP1addon1にする必要があります。
- インストールデータをアップロードします。インストールサーバの設定で最も時間がかかるステップは、実際のインストールメディアのコピーです。メディアをYaSTが要求する順序で挿入し、コピーの手順が終わるまで待ってください。ソースのコピーがすべて完了したら、既存リポジトリの概要に戻り、を選択して設定を終了します。 - インストールサーバは完全に設定されて、使用する準備ができました。これはシステムが起動するたびに、自動的に開始します。それ以上の操作は必要ありません。必要なのは、YaSTの最初のステップで選択したネットワークサービスの自動設定を無効にしていた場合に、サービスを手動で正しく設定し、開始することだけです。 
リポジトリを無効にするには、削除するリポジトリを選択してから、を選択します。システムからインストールデータが削除されます。ネットワークサービスを無効にする場合は、適切なYaSTモジュールを使用します。
インストールサーバが、特定の製品バージョンの複数の製品に対してインストールデータを提供する必要がある場合は、YaSTインストールサーバのモジュールを起動します。既存のリポジトリの概要画面でを選択して、新しいリポジトリを設定します。
YaSTを使用してサーバをインストールサーバとして設定すると、ポート80でリスンするApache Webサーバが自動的にインストールおよび設定されます。
ただし、マシンをRMTサーバ(リポジトリミラーリングツール)として設定すると、NGINX Webサーバが自動的にインストールされ、ポート80でリスンするように設定されます。
同一サーバ上でこれらの両方の機能を有効にしないでください。1台のサーバで両方を同時にホストすることはできません。
16.2 NFSリポジトリの手動設定 #
インストール用のNFSソースのセットアップは、主に2つのステップで行えます。まず、インストールデータを保持するディレクトリ構造を作成して、インストールメディアをその構造にコピーします。2番目のステップでは、インストールデータを保持しているディレクトリをネットワークにエクスポートします。
インストールデータを保持するディレクトリを作成するには、次の手順に従います。
- rootとしてログインします。
- すべてのインストールデータを保持するディレクトリを作成し、このディレクトリに移動します。例: - #mkdir -p /srv/install/PRODUCT/PRODUCTVERSION- #cd /srv/install/PRODUCT/PRODUCTVERSION- PRODUCTは製品名の略語、PRODUCTVERSIONは製品名とバージョンを含む文字列で置き換えます(例: - /srv/install/SLES/15.1)。
- メディアキットに含まれているインストールメディアごとに、以下のコマンドを実行します。 - インストールメディアの内容全体を、インストールサーバのディレクトリにコピーします。 - #cp -a /media/PATH_TO_YOUR_MEDIA_DRIVE .- PATH_TO_YOUR_MEDIA_DRIVEは、インストールメディアの実際のマウントポイントで置き換えてください。 
- ディレクトリの名前をメディア番号に変更します。 - #mv PATH_TO_YOUR_MEDIA_DRIVE DVDX- Xは、インストールメディアの実際の番号で置き換えてください。 
 
SUSE Linux Enterprise Serverでは、YaSTを使用してNFSでリポジトリをエクスポートできます。以下に手順を示します。
- rootとしてログインします。
- › › の順に選択します。 
- およびをオンにして、をクリックします。 
- を選択して、インストールソースのあるディレクトリ(この場合、 - PRODUCTVERSION)に移動します。
- をクリックして、インストールデータのエクスポート先になるマシンのホスト名を入力します。ここでホスト名を指定する代わりに、ワイルドカード、ネットワークアドレス、またはネットワークのドメイン名を使用することもできます。適切なエクスポートオプションを入力するか、デフォルトのままにします。デフォルトでもほとんどのセットアップでは正しく動作します。NFS共有のエクスポートで私用される構文の詳細については - exportsの「man」ページを参照してください。
- をクリックします。SUSE Linux Enterprise Serverのリポジトリを保持しているNFSサーバが自動的に起動し、ブートプロセスに統合されます。 
YaST NFSサーバモジュールを使用するのではなくNFSを介してリポジトリを手動でエクスポートするには、以下の手順に従います。
- rootとしてログインします。
- /etc/exportsファイルを開いて、次の行を入力します。- /PRODUCTVERSION *(ro,root_squash,sync) - これにより、ディレクトリ - /PRODUCTVERSIONは、このネットワークの一部である任意のホスト、またはこのサーバに接続できる任意のホストにエクスポートされます。このサーバへのアクセスを制限するには、一般的なワイルドカード- *の代わりにネットマスクまたはドメイン名を使用してください。詳細は、- exportのマニュアルページを参照してください。設定ファイルを保存して終了します。
- NFSサービスを、システムブート時に起動するサーバのリストに追加するには、次のコ\'83\'7dンドを実行します。 - #systemctl enable nfsserver
- systemctl start nfsserverコマンドを実行してNFSサーバを起動します。後で、NFSサーバの設定の変更が必要になった場合には、設定ファイルを修正して、- systemctl restart nfsserverコマンドでNFSデーモンを再起動してください。
OpenSLPを使用してNFSサーバについてアナウンスし、ネットワーク内のすべてのクライアントにそのアドレスを知らせます。
- rootとしてログインします。
- 次の行を使用して、 - /etc/slp.reg.d/install.suse.nfs.reg環境設定ファイルを作成します。- # Register the NFS Installation Server service:install.suse:nfs://$HOSTNAME/PATH_TO_REPOSITORY/DVD1,en,65535 description=NFS Repository - PATH_TO_REPOSITORYは、サーバ上のインストールソースの、実際のパスに置き換えます。 
- systemctl start slpdコマンドで、OpenSLPデーモンを起動します。
   OpenSLPについての詳細は、/usr/share/doc/packages/openslp/のパッケージのドキュメント、または第41章 「SLP」を参照してください。NFSの詳細については、第19章 「NFS共有ファイルシステム」を参照してください。
  
16.3 FTPリポジトリの手動設定 #
FTPリポジトリの作成は、NFSリポジトリの作成と非常に似ています。FTPリポジトリも、OpenSLPを使用してネットワーク上にアナウンスすることができます。
- 16.2項 「NFSリポジトリの手動設定」で説明されているように、インストールソースを保持するディレクトリを作成します。 
- インストールディレクトリの内容を配布するためのFTPサーバを設定します。 - rootとしてログインし、YaSTソフトウェア管理を使用して- vsftpdパッケージをインストールします。
- FTPサーバのルートディレクトリに入ります。 - #cd- /srv/ftp
- FTPのルートディレクトリに、インストールソースを保持するサブディレクトリを作成します。 - #mkdir REPOSITORY- REPOSITORYは、製品名で置き換えてください。 
- 既存のインストールリポジトリの内容を、FTPサーバのルート環境にマウントします。 - #mount --bind PATH_TO_REPOSITORY /srv/ftp/REPOSITORY- PATH_TO_REPOSITORYとREPOSITORYは、設定に合致する値で置き換えてください。この変更を永続的にする必要がある場合には、 - /etc/fstabに追加します。
- 「 - vsftpd」と入力して、vsftpdを開始します。
 
- ネットワーク設定でサポートされている場合は、OpenSLPを使用してリポジトリをアナウンスします。 - 次の行を使用して、 - /etc/slp.reg.d/install.suse.ftp.reg環境設定ファイルを作成します。- # Register the FTP Installation Server service:install.suse:ftp://$HOSTNAME/REPOSITORY/DVD1,en,65535 description=FTP Repository - REPOSITORYは、サーバ上のリポジトリディレクトリの実際の名前で置き換えてください。 - service:行は、連続した行として入力する必要があります。
- systemctl start slpdコマンドで、OpenSLPデーモンを起動します。
 
16.4 HTTPリポジトリの手動設定 #
HTTPリポジトリの作成は、NFSリポジトリの作成と非常に似ています。HTTPリポジトリも、OpenSLPを使用してネットワーク上でアナウンスできます。
- 16.2項 「NFSリポジトリの手動設定」で説明されているように、インストールソースを保持するディレクトリを作成します。 
- インストールディレクトリの内容を配布するためのHTTPサーバを設定します。 - 42.1.2項 「インストール」の説明に従って、WebサーバのApacheをインストールします。 
- HTTPサーバのルートディレクトリ( - /srv/www/htdocs)に移動し、インストールソースを保持するサブディレクトリを作成します。- #mkdir REPOSITORY- REPOSITORYは、製品名で置き換えてください。 
- インストールソースの場所からWebサーバのルートディレクトリ( - /srv/www/htdocs)へのシンボリックリンクを作成します。- #ln -s /PATH_TO_REPOSITORY/srv/www/htdocs/REPOSITORY
- HTTPサーバの設定ファイル( - /etc/apache2/default-server.conf)を変更して、シンボリックリンクをたどるようにします。以下のように変更します。- Options None - 方法 - Options Indexes FollowSymLinks 
- systemctl reload apache2.を使用して、HTTPサーバ設定を再ロードします。
 
- ネットワーク設定でサポートされている場合は、OpenSLPを使用してリポジトリをアナウンスします。 - 次の行を使用して、 - /etc/slp.reg.d/install.suse.http.reg環境設定ファイルを作成します。- # Register the HTTP Installation Server service:install.suse:http://$HOSTNAME/REPOSITORY/DVD1/,en,65535 description=HTTP Repository - REPOSITORYは、サーバ上のリポジトリへの実際のパスで置き換えてください。 - service:行は、連続した行として入力する必要があります。
- systemctl start slpdで、OpenSLPデーモンを起動します。
 
16.5 SMBリポジトリの管理 #
SMBを使用すれば、Linuxコンピュータがなくても、Microsoft Windowsサーバからインストールソースをインポートして、Linuxの導入を開始することができます。
SUSE Linux Enterprise Serverリポジトリを保持する、エクスポートされたWindows共有を設定するには、次の手順に従います。
- Windowsマシンにログインします。 
- インストールツリー全体を保持する新しいディレクトリを作成し、名前(たとえば、 - INSTALL)を付けます。
- この共有を、Windowsのドキュメントで説明されている方法に従ってエクスポートします。 
- この共有を入力し、 - PRODUCTという名前のサブディレクトリを作成します。PRODUCTは、実際の製品名と置き換えます。
- INSTALL/PRODUCTディレクトリに移動し、各メディアを個別のディレクトリ(たとえば、- DVD1や- DVD2)にコピーします。
SMBをマウントした共有をリポジトリとして使用するには、次の手順に従います。
- インストールターゲットをブートします。 
- を選択します。 
- F4キーを押して、リポジトリを選択します。 
- SMBを選択し、Windowsマシンの名前またはIPアドレス、共有名(この例では - INSTALL/PRODUCT/DVD1)、ユーザ名、およびパスワードを入力します。構文は次のとおりです。- smb://workdomain;user:password@server/INSTALL/DVD1 - Enterを押すと、YaSTが起動して、インストールを実行します。 
16.6 サーバ上のインストールメディアに保存されたISOイメージの使用 #
サーバディレクトリに手動で物理メディアをコピーする代わりに、インストールサーバにインストールメディアのISOイメージをマウントして、リポジトリとして使用することもできます。メディアコピーの代わりに、ISOイメージを使用するHTTP、NFS、またはFTPサーバを設定するには、以下の手順に従ってください。
- ISOイメージをダウンロードして、それをインストールサーバとして使用するコンピュータに保存します。 
- rootとしてログインします。
- 16.2項 「NFSリポジトリの手動設定」、16.3項 「FTPリポジトリの手動設定」、または16.4項 「HTTPリポジトリの手動設定」の説明に従って、インストールデータの場所を選択、作成します。 
- インストールメディアごとにサブディレクトリを作成します。 
- 各ISOイメージを最終的な場所にマウントし、パックを解除するには、次のコマンドを実行します。 - #mount -o loop PATH_TO_ISO PATH_TO_REPOSITORY/PRODUCT/MEDIUMX- PATH_TO_ISOは、ISOイメージのローカルコピーへのパスで置き換えます。PATH_TO_REPOSITORYは、サーバのソースディレクトリで置き換えます。PRODUCTは製品名で、MEDIUMXは、使用するメディアのタイプ(CDまたはDVD)と番号で置き換えます。 
- 前のステップを繰り返して、製品に必要なすべてのISOイメージをマウントします。 
- 16.2項 「NFSリポジトリの手動設定」、16.3項 「FTPリポジトリの手動設定」、または16.4項 「HTTPリポジトリの手動設定」の説明に従って、インストールサーバを開始します。 
   ブート時にISOイメージを自動的にマウントするには、それぞれのマウントエントリを/etc/fstabに追加します。前の例のエントリは、次のようになります。
  
PATH_TO_ISO PATH_TO_REPOSITORY/PRODUCTMEDIUM auto loop