20 分散ロックマネージャ(DLM:Distributed Lock Manager) #
カーネル内の分散ロックマネージャ(DLM)は、OCFS2、GFS2、Cluster MD、およびCluster LVM (lvmlockd)によって使用されるベースコンポーネントで、各層でアクティブ/アクティブ構成のストレージが提供されます。
20.1 DLM通信のプロトコル #
シングルポイント障害を回避するには、高可用性クラスタに対する冗長通信パスが重要となります。これはDLM通信においても当てはまります。ネットワークボンディング(Link Aggregation Control Protocol、LACP)が何らかの理由で使用できない場合、Corosyncで冗長通信チャネル(2番目のリング)を定義することを強くお勧めします。詳細については、手順4.3「冗長通信チャネルの定義」を参照してください。
DLMは、/etc/corosync/corosync.conf
の設定に応じて、TCPまたはSCTPプロトコルのいずれかを使用してポート21064を介して通信します。
none
に設定する場合(冗長リング設定が無効であることを意味する)、DLMは自動的にTCPを使用します。ただし、冗長通信チャネルを使用しない場合には、TCPリンクがダウンすると、DLM通信は失敗します。passive
に設定され(これは通常の設定です)、/etc/corosync/corosync.conf
の2番目の通信リングが正しく設定されている場合、DLMは自動的にSCTPを使用します。この場合、DLMメッセージングには、SCTPによって提供される冗長性機能があります。
20.2 DLMクラスタリソースの設定 #
DLMはPacemakerからのクラスタメンバーシップサービスを使用し、それらのサービスはユーザスペースで実行されます。したがって、DLMは、クラスタ内の各ノードに存在するクローンリソースとして設定する必要があります。
OCFS2、GFS2、Cluster MD、およびCluster LVM (lvmlockd)のすべてがDLMを使用するため、DLMに1つのリソースを設定するだけで十分です。DLMリソースはクラスタ内のすべてのノード上で実行されるので、リソースはクローンリソースとして設定されます。
OCFS2およびCluster LVMの両方を含むセットアップがある場合、OCFS2およびCluster LVMの両方に「1つの」DLMリソースを設定するだけで十分です。この場合、手順20.1「DLMのベースグループの設定」を使用してDLMを設定します。
ただし、相互に独立してDLMを使用するリソースを保持する必要がある場合(複数のOCFS2マウントポイントなど)、グループの代わりに別々のコロケーションと順序制約を使用します。この場合、手順20.2「独立したDLMリソースの設定」を使用してDLMを設定します。
この設定は複数のプリミティブおよび1つのベースクローンを含むベースグループで構成されます。ベースグループとベースクローンはどちらも、後でさまざまなシナリオで使用できます(例: OCFS2およびCluster LVM)。必要に応じてそれぞれのプリミティブを持つベースグループを拡張する必要があるだけです。ベースグループは内部コロケーションおよび順序付けを持つため、個々のグループ、クローン、その依存性をいくつも指定する必要がなく、セットアップ全体を容易にします。
root
または同等の権限でノードにログインします。crm configure
を実行します。DLMのプリミティブリソースを作成します。
crm(live)configure#
primitive dlm ocf:pacemaker:controld \ op monitor interval="60" timeout="60"
dlm
リソースおよび追加のストレージ関連のリソース用にベースグループを作成します。crm(live)configure#
group g-storage dlm
g-storage
グループのクローンを作成して、すべてのノードで実行できるようにします。crm(live)configure#
clone cl-storage g-storage \ meta interleave=true target-role=Started
show
で変更内容をレビューします。すべて正しければ、
commit
で変更を送信し、quit
でcrmライブ設定を終了します。
STONITHを使用しないクラスタはサポートされていません。テストおよびトラブルシューティングの目的でグローバルクラスタオプションstonith-enabled
をfalse
に設定すると、DLMリソースとそれに依存するすべてのサービス(Cluster LVM、GFS2、OCFS2など)は起動できません。
この設定は、プリミティブおよびクローンで構成されますが、グループは含まれません。コロケーションと順序制約を追加することによって、DLMを使用する複数のリソース間で依存関係が発生することを回避できます(複数のOCFS2マウントポイントなど)。
root
または同等の権限でノードにログインします。crm configure
を実行します。DLMのプリミティブリソースを作成します。
crm(live)configure#
primitive dlm ocf:pacemaker:controld \ op start timeout=90 interval=0 \ op stop timeout=100 interval=0 \ op monitor interval=60 timeout=60
dlm
リソースのクローンを作成して、すべてのノードで実行できるようにします。crm(live)configure#
clone cl-dlm dlm meta interleave=true
show
で変更内容をレビューします。すべて正しければ、
commit
で変更を送信し、quit
でcrmライブ設定を終了します。