対象となる使用例は次のとおりです。
UnixからLinuxへのマイグレーションとプラットフォームの再構築
SAPアプライアンス
SAPクラウドの展開
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsは、以降のセクションで説明されるソフトウェアコンポーネントとサービスで構成されます。図SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsのオファリングは、SUSEの他の製品でも利用可能なソフトウェアコンポーネントとサービス(緑色)およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsでのみ利用可能なソフトウェアコンポーネントとサービス(青色)の概要を示しています。
図1.1「SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsのオファリング」で示されているように、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsは、SUSE Linux Enterprise Serverがベースとなっていますが、SUSE Linux Enterprise High Availability Extension、インストールワークフローなどのいくつかの追加のソフトウェアコンポーネントが含まれています。これらのソフトウェアコンポーネントについては、以降のセクションで簡単に説明します。
現在のリリースはSUSE Linux Enterprise Server 15 SP3をベースとしています。SUSE Linux Enterprise Serverは、物理環境と仮想環境の両方でミッションクリティカルなコンピューティングに対応する非常に相互運用性の高いプラットフォームです。
このコンポーネントは次のもので構成されます。
ポリシー重視の柔軟なクラスタリング
クラスタ対応のファイルシステムとボリューム管理
継続的なデータレプリケーション
セットアップとインストール
管理ツール
リソースエージェント、SAPにも対応
仮想化対応
SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionには、特にSAPアプリケーションと作業するための次の2つのリソースエージェントが用意されています。
SAPInstance: SAP製品のインスタンスを開始および停止できます。
SAPDatabase: SAPアプリケーションでサポートされているすべてのデータベース(SAP HANA、SAP MaxDB、SAP ASE、Oracle、Sybase、IBM DB2)を開始および停止できます。
SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionに関する詳細については、『管理ガイド』(https://documentation.suse.com/sle-ha-15)、およびSUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsリソースライブラリのホワイトペーパーおよびベストプラクティスガイド(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsは、SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionのコンポーネントおよび2つの追加のリソースエージェント(RA)を使用したSAP HANAシステムレプリケーションをサポートしています。また、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsには、クラスタのセットアップを簡素化するYaSTウィザードが付属しています。
SAPHanaリソースエージェント #SUSEのこのリソースエージェントは、SAP HANAデータベースインスタンスでテイクオーバーが必要かどうかを確認することで、スケールアップシナリオをサポートします。純粋なSAPソリューションとは異なり、テイクオーバーは自動化できます。
これはマスタ/スレーブリソースとして設定されています。マスタは、プライマリモードで実行されているSAP HANAデータベースに対応し、スレーブは同期(セカンダリ)ステータスで動作するインスタンスに対応します。テイクオーバーの場合、セカンダリ(スレーブリソースインスタンス)を自動的に昇格して、新しいプライマリ(マスタリソースインスタンス)にすることができます。
このリソースエージェントは、次のスケールアップシナリオのシステムレプリケーションをサポートしています。
パフォーマンス最適化シナリオ: 同じSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionクラスタの2つのサーバ(AとB)。一方はプライマリ(A)、他方はセカンダリ(B)。プライマリサーバ(A)からのSAP HANAインスタンスはセカンダリサーバ(B)に同期的に複製されます。
コスト最適化シナリオ: AとBの基本的なセットアップは、「パフォーマンス最適化シナリオ」と同じです。ただし、セカンダリサーバ(B)は、開発またはQA用の追加のSAP HANAデータベースなどの、非生産的な目的にも使用されます。運用データベースは、ハードディスクなどの永続的メモリにのみ保存されます。テイクオーバーが必要な場合、テイクオーバーが処理される前に、非生産的なサーバは停止されます。生産的なデータベースのシステムリソースは、SAPフック呼び出しスクリプトを介して可能な限り迅速に増加します。
チェーン/多層シナリオ: 3つのサーバ(A、B、およびC)。そのうちの2つは同じSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionクラスタにあります(AおよびB)。3番目のサーバ(C)は、外部に配置されます。プライマリサーバ(A)のSAP HANAシステムはセカンダリサーバ(B)に同期的に複製されます。セカンダリサーバ(B)は、外部サーバ(C)に非同期的に複製されます。
AからBへのテイクオーバーが発生する場合、BとCの間の接続はそのままです。ただし、Bは2つのサーバ(AとC)のソースになることはできません。これは「スター」トポロジであり、現在のSAP HANAバージョン(SPS11など)ではサポートされていないためです。
SAP HANAコマンドを使用して、すべき操作を手動で決定できます。
BをAに接続できるように、BとCの間の接続を切断できます。
外部サイト(C)へのレプリケーションがローカルシステムレプリケーションより重要な場合、BとCの間の接続を保持できます。
すべてのシナリオで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsは、シングルテナントとマルチテナント(MDC)両方のSAP HANAデータベースをサポートしています。つまり、複数のSAPアプリケーションにサービスを提供するSAP HANAデータベースを使用できます。
SAPHanaTopologyリソースエージェント #
クラスタの設定をできるだけ簡単にするため、SUSEではSAPHanaTopologyリソースエージェントを開発しました。このエージェントはSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionクラスタのすべてのノード上で実行され、SAP HANAシステムレプリケーションのステータスと設定に関する情報を収集します。これは、通常の(ステートレス)クローンとして設計されています。
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsには現在、ベストプラクティスに従って、このようなクラスタの初期セットアップを管理するYaSTウィザードが追加で付属しています。このウィザードは、パッケージyast2-sap-haの一部で、を介して、YaSTを使用して起動できます。
詳細については、第7章 「SAP HANAクラスタの設定」を参照してください。
詳細については、以下を参照してください。
https://documentation.suse.com/sles-15にある『管理ガイド』
https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/にあるリソースライブラリの「ベストプラクティス」特に、『Setting up a SAP HANA SR performance optimized infrastructure』および『Setting up a SAP HANA SR cost optimized infrastructure』
インストールワークフローは、SUSE Linux Enterprise ServerオペレーティングシステムとSAPアプリケーション両方のガイド付きインストールパスを提供します。詳細については、2.5項 「インストールワークフローの概要」を参照してください。
さらに、インストールワークフローは、補足メディアを使用して、サードパーティベンダーまたはお客様が拡張できます。補足メディアの作成方法の詳細については、付録C 補足メディアを参照してください。
ClamSAPは、ClamAVマルウェア対策ツールキットをSAP NetWeaverおよびSAP Mobile Platformアプリケーションに統合し、クロスプラットフォーム脅威検出を可能にします。たとえば、ClamSAPを使用して、SAPアプリケーションがHTTPアップロードでの悪意のあるアップロードをスキャンできるようにします。
詳細については、第10章 「ClamSAPを使用したマルウェアに対する保護」を参照してください。
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsには、安全性の高いSAP HANAインストールの設定に役立つ追加の機能が含まれています。
SAP HANAのセキュリティ保護には、多数の追加のファイアウォールルールが必要な場合があります。SAP HANAのファイアウォールセットアップを簡素化するため、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsには、事前設定されたルールを提供し、firewalldと統合するパッケージHANA-Firewallが含まれています。
詳細については、9.2項 「HANA-Firewallの設定」を参照してください。
ベースとなっているオペレーティングシステムを強化する方法については、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsリソースライブラリ(https://www.suse.com/products/sles-for-sap/resource-library/)を参照してください。そこで、『OS Security Hardening for SAP HANA』というドキュメントを見つけてください。
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsは、簡素化された運用管理を可能にするいくつかの機能を組み合わせています。
saptuneを使用したシステムのチューニング #
システムチューニングアプリケーションsaptuneを使用すると、SAPがSAP S/4HANA、SAP NetWeaver、またはSAP HANA/SAP BusinessOneを使用するために推奨している、システムの自動的かつ包括的なチューニングが可能となります。これを行うために、saptuneは、tunedプロファイルを有効にします。以上により、使用しているハードウェアコンポーネントによって、使用可能なRAM容量などいくつかのカーネルパラメータをチューニングできます。
詳細については、8.1項 「saptuneを使用したシステムのチューニング」を参照してください。
SAPアプリケーションのソフトウェア依存関係の取り扱いを簡素化するため、SUSEでは、特定のアプリケーションに関連する依存関係RPMパッケージを組み合わせた複数のパターンを作成しました。
ソフトウェアパターンのパッケージの選択は、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsの特定のリリース(サービスパックまたはメジャーバージョン)の開発中に定義されます。このパッケージの選択は、この特定のリリースの有効期間にわたって維持されます。ご使用中のSUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsのバージョンよりも後でリリースされたSAPアプリケーションで作業する場合、依存関係がパターンから欠落している場合があります。
SAPアプリケーションの依存関係に関する明確な情報については、SAPが提供するドキュメントを参照してください。
ClusterTools2 #
ClusterTools2は、Corosync & Pacemakerクラスタを設定および管理するのに役立つツールを提供します。これらの中には、可用性の高いシステムリソースを作成するのに役立つwow、クラスタを管理できるClusterServiceがあります。
また、ClusterTools2では、通常のクラスタタスクを自動化するスクリプトを提供します。
チェックを実行するスクリプト。たとえば、システムがpacemakerクラスタを作成するために正しく設定されているかどうかの確認に使用。
設定を簡素化するスクリプト。たとえば、Corosync設定の作成に使用。
システムを監視するスクリプトと、システム情報を表示または収集するスクリプト。たとえば、ログファイル内の既知のエラーパターンを見つけるために使用。
詳細については、パッケージClusterTools2に含まれている、各ツールのマニュアルページを参照してください。
SUSE Linux Enterpriseに基づくオペレーティングシステムに含まれるソフトウェアはRPMパッケージとして配布されます。このパッケージは、他のパッケージに依存する可能性のあるインストールパッケージの形式です。サーバまたはインストールメディアで、これらのパッケージはソフトウェアリポジトリ(「チャネル」と呼ばれる場合もある)に保存されます。
デフォルトで、SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsを実行しているコンピュータは、複数のリポジトリからパッケージを受信するように設定されています。各標準リポジトリには、最初に出荷されたときのソフトウェアの状態を示す「プール」バリアントがあります。「プール」バリアントのソフトウェアに対する最新の保守更新を含む「更新」バリアントもあります。
インストール中にシステムを登録した場合は、リポジトリセットアップに以下が含まれている必要があります。
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コンテンツ |
ベースリポジトリ(「プール」) |
更新リポジトリ |
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SUSE Linux Enterprise Serverのベースパッケージ |
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SUSE Linux Enterprise Serverの基本的なサーバ機能 |
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SUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsに固有のパッケージ |
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SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionに固有のパッケージ |
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このセクションのテーブルには、「デバッグ情報」リポジトリと「ソース」リポジトリは表示されません。これらも設定されていますが、デフォルトで無効になっています。「デバッグ情報」リポジトリには、通常のパッケージをデバッグするために使用可能なパッケージが含まれています。「ソース」リポジトリには、パッケージのソースコードが含まれています。
インストール方法に応じて、インストールメディアである、SLE-15-SP3-SAP-15.3-0が表示される場合もあります。上記のすべてのベースソフトウェアリポジトリのパッケージが含まれています。
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applications用の独自のリポジトリがあるため、SUSEはSUSE Linux Enterprise Server for SAP applicationsに固有のパッケージとパッチを出荷することができます。
SUSE Linux Enterprise Server for SAP applications 11とは異なり、Extended Service Pack Overlay Support (ESPOS)に関連する更新は、更新リポジトリから直接出荷されます。これは、設定される個別のESPOSリポジトリがないことを意味します。
標準リポジトリのほか、インストール中、またはYaSTまたはコマンドSUSEConnectを使用して実行中のシステムからSLEモジュールおよびSLE拡張機能を有効にすることができます。
SUSE Linux Enterprise製品ラインで利用可能なすべてのモジュールおよび拡張機能については、https://documentation.suse.com/sles-15/html/SLES-all/art-modules.htmlを参照してください。
PackageHubの詳細については、A.3項 「PackageHub」を参照してください。