この章では、SUSE Linux Enterprise Server for SAP ApplicationsがSAPアプリケーションと最適に連携できるようにチューニングする方法について説明します。
saptune
を使用したシステムのチューニング #
saptune
を使用すると、SAP NetWeaver、SAP HANA/SAP BusinessObjects、およびSAP S/4HANAアプリケーション用にシステムをチューニングできます。この方法は、システムチューニングサービスtuned
に依存します。
saptune
を使用するには、パッケージtunedとsaptuneがシステムにインストールされていることを確認してください。
saptune
の有効化 #システムをチューニングするには、まず、チューニングソリューションを見つけます。適切なソリューションを見つけるには、次のコマンドを使用します。
tux >
saptune solution list
saptune
では、次のチューニングソリューション(SAP Notesのグループ)を認識します。
BOBJ
:
SAP BusinessObjectsを実行するためのソリューション。
HANA
:
SAP HANAデータベースを実行するためのソリューション。
MAXDB
:
SAP MaxDBデータベースを実行するためのソリューション。
NETWEAVER
:
SAP NetWeaverアプリケーションサーバを実行するためのソリューション。
S4HANA-APPSERVER
:
SAP S/4HANAアプリケーションサーバを実行するためのソリューション。
S4HANA-APP+DB
:
SAP S/4HANAアプリケーションサーバとSAP HANAの両方を同じホスト上で実行するためのソリューション。
S4HANA-DBSERVER
:
SAP S/4HANAインストールのSAP HANAデータベースを実行するためのソリューション。
SAP-ASE
:
SAP Adaptive Server Enterpriseデータベースを実行するためのソリューション。
NETWEAVER+HANA
:
SAPアプリケーションサーバとSAP HANAの両方を同じホスト上で実行するためのソリューション。
または、特定のSAP Notesからの推奨事項に従って、コンピュータをチューニングできます。チューニングできるNotesのリストは次のコマンドを介して入手できます。。
root #
saptune note list
事前設定されたソリューションを使用してsaptune
を設定するには、次のコマンドを使用します。
root #
saptune solution apply SOLUTION
特定のSAPノートの推奨事項に合わせてsaptune
を設定するには、次のコマンドを使用します。
root #
saptune note apply NOTE
ソリューションとノートを組み合わせることができます。ただし、一度にアクティブにできるのは1つのソリューションのみです。まれに、ノートでオプションまたはパラメータの競合が発生する可能性があります。競合を避けるには、最後のノートが常に以前のノートの競合するオプションまたはパラメータを上書きすることに注意してください。
saptune
を開始し、ブート時に有効にするには、次のコマンドを実行してください。
root #
saptune daemon start
バックグラウンドで、saptune
は、選択した「ソリューション」および「ノート」に従って動的にカスタマイズされるsaptune
とも呼ばれるtuned
プロファイルを適用します。tuned-adm list
を使用して、このプロファイルを表示することもできます。
すべてのSAPノートは次のコマンドを使用して自由に設定できます。
root #
saptune note customise
このコマンドには、値の変更やパラメータの無効化が含まれています。
このコマンドを使用すると、作成されたノートを削除できます。対応する上書きファイルが利用可能な場合は、それも削除されます。
root #
saptune note delete test
Note to delete is a customer/vendor specific Note. Do you really want to delete this Note (test2)? [y/n]: y
ノートはその時点では適用されない場合があります。次の点に注意してください。
アクションを完了するには確認が必要です。
saptune
で提供された内部SAPノートは削除できません。代わりに、利用可能な場合は、上書きファイルが削除されます。
ノートがすでに適用されている場合、コマンドは、ノートを削除する前に元に戻す必要があるという情報で終了します。
このコマンドを使用すると、作成されたノートを新しい名前に変更することができます。対応する上書きファイルが利用可能な場合は、このファイルの名前も変更されます。
root #
saptune note rename test test2
Note to rename is a customer/vendor specific Note. Do you really want to rename this Note (test) to the new name 'test2'? [y/n]: y
ノートはその時点では適用されない場合があります。次の点に注意してください。
アクションを完了するには確認が必要です。
saptune
で提供された内部SAPノートの名前は変更できません。
ノートがすでに適用されている場合、コマンドは、ノートを削除する前に元に戻す必要があるという情報で終了します。
コマンドsaptune note verify NOTE
およびsaptune solution verify SOLUTION
は、アクティブまたは要求されたノートごとに次のデータを一覧表示します。
パラメータ名
予想される値(デフォルト)
設定された上書き(saptune customise
を使用して作成)
現在のシステム値
現在の状態がSAP推奨事項に従っているかどうか
note
の各パラメータを表示するには、次のコマンドを使用します。
root #
saptune note simulate
solution
の各パラメータを表示するには、次のコマンドを使用します。
root #
saptune solution simulate
現在のシステム値と予想される値(デフォルトおよび上書き)を一覧表示します。
次のマニュアルページを参照してください。
man 8 saptune
man 8 saptune_v1
man 8 saptune_v2
man 8 saptune-migrate
man 8 saptune-note
プロジェクトホームページ(https://github.com/SUSE/saptune/)も参照してください。
sysctl
を使用したカーネルパラメータの手動チューニング #
saptune
を使用してカーネルパラメータをチューニングする際は、sysctl
を使用して、カーネルパラメータを手動調整することもできます。また、saptuneを使用したカーネルパラメータのチューニングの代わりに、sysctlを使用して、カーネルパラメータを手動調整することもできます。ただし、sysctl
を使用したこのような変更は、デフォルトでは再起動後も持続しません。再起動後も持続するようにするには、sysctl
によって読み込まれた設定ファイルのいずれかにそれらを追加します。
sysctl
とsaptune
SAPシステムにsysctl
パラメータを設定する場合は、このような設定を管理する中心的なツールとしてsaptune
を使用することを検討してください。
sysctl
に関する詳細については、マニュアルページのsysctl(8)
、sysctl.conf(5)
、およびsysctl.d(5)
を参照してください。
SAPアプリケーションを物理メモリに保持することは、パフォーマンスのために不可欠です。古い製品バージョンでは、ページキャッシュ制限により、ページキャッシュの増加によるディスクへのスワップアウトが防止されていました(SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 11 SP1以降およびSUSELinux Enterprise Server for SAP Applications 12)。SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15では、ページキャッシュ制限がより高度なワークロードメモリ保護に置き換えられました。
ワークロードメモリ保護は、SAPインスタンスを専用のcgroup (v2)に置き、memory.low
パラメータによって、物理メモリに保持するメモリ容量をカーネルに伝えます。これにより、ページキャッシュの増加を含む、そのcgroupの外側のあらゆる形態のメモリ負荷に対してこのcgroup内のプロセスが保護されます。ワークロードメモリ保護は、このcgroup内のメモリ負荷に対して保護することはできません。これは、1つのホスト上の「すべての」インスタンスのメモリをカバーします。
memory.low
の値は、SAPインスタンスとワークロードの種類によって異なり、手動で設定する必要があります。システムが過度な負荷下にある場合、Linuxカーネルはmemory.low
値を無視して、OOMキラーをスワップしたり、呼び出したりしてでも、システム全体を安定化させようとします。スワップしたり、OOMキラーを呼び出したりしてでも、システム全体を安定化させようとします。
cgroupに関する詳細については、https://documentation.suse.com/sles-15/html/SLES-all/cha-tuning-cgroups.htmlを参照してください。
WMPは次の3つのコンポーネントに依存します。
cgroup2メモリコントローラパラメータmemory.lowを使用すると、Linuxカーメルが物理メモリに保持するメモリ容量を定義できます。このメモリ容量は、システム全体が重大なメモリ状況にある場合を除いて、再利用プロセスから除外されます。
WMPはmemory.lowを使用して、SAPプロセスからのメモリがページングされたり、ディスクにスワップアウトされたりしないようにします。メモリコントローラを除いて、cgroup1コントローラは引き続き利用できますが、マウントされなくなりました。
systemd
Systemdでは、cgroup階層を作成および維持するためのインフラストラクチャを提供し、cgroupパラメータの設定を可能にします。Systemdでは、cgroup階層を作成および維持するためのインフラストラクチャが提供され、cgroupパラメータの設定を可能にします。WMPではsystemd
設定ファイルを提供しが提供され、systemd
メソッドを介して、memory.lowを簡単に設定できるようにします。
SAP Start Serviceは、SAPインスタンスの開始と停止を管理します。WMPの重要な機能は、インスタンス自体がインスタンスプロファイルで開始される前の、プログラムの設定可能な実行にあります。WMPでは、このメソッドを使用してプログラムを呼び出し、sapstart
プロセスを指定のcgroupに移動させるため、SAPインスタンスがそのcgroup内で開始されます。
WMPは、
App Server (SAP NetWeaver、SAP S/4HANA)や
SAP HANA 1.0/2.0など1台のホスト上にある1台以上のSAPシステム用Intel 64/AMD64およびPOWER上のSUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications 15 SP3でサポートされています。
ワークロードメモリ保護は、SAP HANA以外のデータベースには適用されません。開始メソッドによって、プロセスが専用のcgroup内部または外部で実行される場合があります。内部で実行される場合、memory.low
を決定する際にメモリ消費量を考慮する必要があります。
WMPを使用することはメリットがありますが、いくつかの制限事項に注意する必要があります。
WMPは専用のcgroup内部のメモリ負荷に対して保護できません。
WMPはSAPシステムまたはそのインスタンスを相互に保護できません。すべてのSAPプロセスは同じメモリ制限を共有します。複数のSAPシステム(SAP NetWeaverやSAP S/4HANA)がある場合、WMPは1つのSAPアプリケーションを別のSAPアプリケーションから保護できません。
SUSEのHAクラスタソリューションのサポートはまだ使用できません。
SAPソフトウェア(SAP HANA、SAP NetWeaverなど)がインストールされているか確認します。グループsapsys
は、後でsapwmpのパッケージのインストール中に必要になります。その部分をスキップする場合は、警告メッセージが表示されます(重要: パッケージの順序に注意してくださいを参照)。
SAPシステムの停止:
root #
systemctl
stop sapinit
サービスは有効にすることができますが、すべてのSAPプロセスを終了する必要があります。
次のようにパッケージsapwmpをインストールします。
tux >
sudo
zypper
install sapwmp
次のメッセージは、SAPソフトウェアがシステムにインストールされていない場合にのみ表示されます。
Warning: sapsys group not found warning: group sapsys does not exist - using root
パッケージsapwmpを削除し、まずSAPソフトウェアをインストールしてから、再度sapwmpをインストールします。
別の方法として、SAPソフトウェアをインストールした「後で」次のコマンドを使用して、所有権と許可を修正できます。
tux >
sudo
chgrp
sapsys /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture && \ chmod +s /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture
次のメッセージは無視して構いません。
Warning: Found memory controller on v1 hierarchy. Make sure unified hierarchy only is used.
次の手順で、統合階層への切り替えを実行します。
systemd.unified_cgroup_hierarchy=true
をカーネルコマンドラインに追加するには、次のように/etc/default/grub
のGRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT
にこれを追加します。
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="... systemd.unified_cgroup_hierarchy=true swapaccount=1"
この変更により、cgroup2コントローラのみが/sys/fs/cgroup
にマウントされます。ただし、メモリコントローラを除き、Cgroup1コントローラは、まだ利用可能です。cgroup1を使用するツールは、そのままでは機能せず、設定が必要な場合があります。また、cgroup1に必要なマウント構造を提供する必要があります。
パラメータswapaccount=1
は、WMPが機能するために必要ではありませんが、サポートケースでの分析を支援し、cgroupごとのスワップアウトされたメモリ容量を示します。
GRUB2の設定を再書き込みします。
tux >
sudo
grub2-mkconfig
-o /boot/grub2/grub.cfg
再起動後(後で実行される)、cgroup階層はv2 (統合階層)のみに切り替えられます。
SAP.slice
用のMemoryLow
を設定します。
tux >
sudo
systemctl
set-property SAP.slice MemoryLow=...
このコマンドは、/etc/systemd/system.control/SAP.slice.d/
にドロップインを作成し、MemoryLow
を設定します。
sapwmpパッケージには、SAPインスタンスに同じ名前のcgroupを作成するsystemd設定SAP.slice
が含まれます。MemoryLow
は、最初に述べたcgroupパラメータmemory.low
と等価なsystemdです。MemoryLow
の値は、SAPアプリケーションおよびワークロードのタイプによって異なります。
SAP HANAにはグローバル割り当て制限があるため、その値を直接使用できます。
アプリケーションサーバの場合、ワークロードのサイジングはMemoryLow
の値を示す必要があります。sapwmpパッケージには、MemoryLow
を決定するために役立つ可能性がある監視パートが含まれます。8.3.6項 「メモリ使用量の監視」を参照してください。
次の点に注意してください。
1台のホスト上のすべてのSAPインスタンスは、SAP.slice
内に存在します。MemoryLow
は、そのホスト上の「すべての」インスタンスのメモリ容量をカバーする必要があります。SAPシステムまたはそのインスタンスを相互に保護することはできません。
SAP HANA以外のデータベースを使用している場合、一部のデータベースプロセスがSAP.slice
に含まれている可能性があります。MemoryLow
値を決定する際には、これらのメモリ消費量を考慮する必要があります。
MemoryLow
の値は、物理メモリの値に非常に近い値、またはこれらの値より大きな値にしないでください。システムサービスおよび追加のインストール済みソフトウェアにもメモリが必要です。SAPアプリケーションを犠牲にしてスワップを広範囲に使用しなければならない場合、システムが応答しなくなる可能性があります。
MemoryLow
値を正しく計算する
MemoryLow
は、メモリサイズをバイト単位で取得します。値の末尾にK、M、G、Tが付いている場合、指定されたメモリサイズはそれぞれ、キビバイト、メビバイト、ギビバイト、またはテビバイトとして解析されます(1000ではなく、1024をベースとしている場合は、https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_prefixを参照)。または、パーセンテージ値が指定される場合があります。この場合、システムにインストールされている物理メモリを基準として取得されます。
基礎となるcgroupメモリコントローラは、値をページサイズの倍数に切り上げます。混乱を避けるため、MemoryLow
の値をページサイズの倍数に設定してください。
各SAPインスタンスプロファイルのバックアップを作成します。プロファイルのエラーはSAPシステムの起動を妨げる可能性があります。
SAPインスタンスごとに、次の行を最後のExecute_
行の後のインスタンスプロファイル(通常は/usr/sap/SID/SYS/profile/
にある)に追加します。
Execute_20 = local /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture -a
必要に応じて、Executeステートメントの数を増やして最も高いものにし、その行が最後に実行されるようにします。
SAP GUI (トランザクションRZ11)によって管理するためにデータベースにプロファイルをインポートしていない場合「にのみ」インスタンスプロファイルを直接編集します。これらのプロファイルをインポートしている場合は、SAP GUIを使用して、行を追加してください。ファイルシステムにあるプロファイルファイルは上書きされ、手動の変更は失われます。
これでシステムが再起動する準備が整いました。
システムを再起動します。
再起動後に、cgroups v2が実際に使用されていることを確認します。
root #
grep
cgroup /proc/mounts cgroup /sys/fs/cgroup cgroup2 rw,nosuid,nodev,noexec,relatime 0 0
cgroupが正常に作成され、低いメモリ値が設定されていることを確認します。
tux >
systemctl
show -p MemoryLow SAP.slice MemoryLow=18487889920 <- Should be your chosen value (always in bytes)! # cat /sys/fs/cgroup/SAP.slice/memory.low 18487889920 <- Should be your chosen value!
変数MemoryLow
は任意の値に設定できますが、変数のコンテンツは常にページサイズの倍数になります。これらの値にわずかに違いがあることに気づく場合には、このことに注意してください。
すべてのSAPインスタンスプロセスが正しいシステムのスライス/cgroup内にあることを確認します。
sapinit.service
を有効にしていない場合は、今すぐサービスを開始してください。自動開始がインスタンスプロファイルで有効になっていない場合は、確認する前にインスタンスを開始します。
例:
root #
systemd-cgls
-a /sys/fs/cgroup/SAP.slice Directory /sys/fs/cgroup/SAP.slice: |-wmp-rd91fd6b3ca0d4c1183659ef4f9a092fa.scope | |-3349 sapstart pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er | `-3375 er.sapHA0_ERS10 pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er N... |-wmp-r360ebfe09bcd4df4873ef69898576199.scope | |-3572 sapstart pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci | |-3624 dw.sapHA0_D01 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci ...
インスタンスのsapstartsrv
プロセスは、常にSIDadm
のユーザスライスに残ります。sapstart
プロセスとその子のみがターゲットcgroupに移動されます。
インスタンスごとに、このインスタンスのすべてのプロセスを含むディレクトリwmp-rSCOPEID.scope
が存在します。SCOPEIDは16進数のランダムな128ビット値です。
SAP HostAgentは、WMPではカバーされておらず、一部はsapinit.slice
に残り、一部はsapadm
のユーザスライスに残ります。
プロセスがcgroup内にない場合は、インスタンスプロファイルのExecute
行が正しいかどうか確認します。また、各インスタンスの開始が、システムログ/var/log/messages
に記録されます。
... 2020-06-16T18:41:28.317233+02:00 server-03 sapwmp-capture: Found PIDs: 2020-06-16T18:41:28.317624+02:00 server-03 sapwmp-capture: 17001 2020-06-16T18:41:28.317813+02:00 server-03 sapwmp-capture: 16994 2020-06-16T18:41:28.317959+02:00 server-03 sapwmp-capture: 16551 2020-06-16T18:41:28.319423+02:00 server-03 sapwmp-capture: Successful capture into SAP.slice/wmp-r07a27e12d7f2491f8ccb9aeb0e080aaa.scope 2020-06-16T18:41:28.319672+02:00 server-03 systemd[1]: Started wmp-r07a27e12d7f2491f8ccb9aeb0e080aaa.scope. ...
正しいセットアップを確認するには、wmp-check
を実行します。スクリプトはワークロードメモリ保護のセットアップを確認します。
cgroup2の正しいセットアップ。
キャプチャプログラムの所有権と許可。
SAPインスタンスプロファイルのWMPエントリ。
実行中のSAPインスタンスプロセスの正しいcgrop。
SAP.slice
の正しいセットアップ。
MemoryLowの正常な設定。ただし、MemoryLow値が適切に選択されているかどうかを判断することはできません。
オプションのメモリサンプラーのセットアップ。
オプションのスワップアカウンティングのセットアップ。
SAPインスタンスプロファイルは/usr/sap/SID/SYS/profile/
の下にあることを想定しています。
WMPを設定するには、次のように/etc/sapwmp.conf
を編集します。
# NOTE: Local changes may be reverted after update of WMP package. Check for # .rpmsave file to restore & merge changes. ## Description: Slice unit name where workload is put into ## Type: string ## Default: "SAP.slice" DEFAULT_SLICE="SAP.slice" ## Description: Comma-separated list of command names to which capture is ## applied (matching against /proc/$PID/stat) ## Type: string ## Default: sapstart PARENT_COMMANDS=sapstart
変更後、すべてのSAPインスタンスを再起動します。
/etc/sapwmp.conf
を変更する必要はありません。何をしようとしているのかはっきりわかるまで実行しないでください。
MemoryLow
の値を変更するには、次のコマンドを実行します。
root #
systemctl
set-property SAP.slice MemoryLow=...
変更はすぐに有効になります。
基礎となるcgroupメモリコントローラは、値をページサイズの倍数に切り上げます。混乱を避けるため、MemoryLow
の値をページサイズの倍数に設定してください。
MemoryLow
の値
MemoryLow
をすでにSAP.slice
に割り当てられているメモリより小さい値に設定しないでください。確認するには、次のコマンドを実行します。
root #
systemctl
show -p MemoryCurrent SAP.slice
メモリ使用量のログを記録することは、memory.low
の値を決定するためだけでなく、WMPの正しい動作を監視するためにも必要になる場合があります。
監視を有効にするには、付属しているタイマーユニットを有効にします。
root #
systemctl
enable --now wmp-sample-memory.timer
これで、タイマーがsystemctl list-timers
によって一覧表示されるはずです。
root #
systemctl
list-timers NEXT LEFT LAST PASSED UNIT ACTIVATES ... Tue... 9min left Tue... 4s ago wmp-sample-memory.timer wmp-sample-memory.service ...
現在の設定を確認すると、メモリデータが10分ごとに収集され、3分のランダムな遅延が発生していることがわかります。
root #
systemctl
cat wmp-sample-memory.timer # /usr/lib/systemd/system/wmp-sample-memory.timer [Unit] Description=WMP periodic log of memory consumption [Timer] OnCalendar=*:0/10 RandomizedDelaySec=180 AccuracySec=60 [Install] WantedBy=timers.target
これを変更するには、ドロップインファイルを作成して、systemdをリロードします(たとえば、間隔を30分に増やします):
root #
mkdir
/etc/systemd/system/wmp-sample-memory.timer.d # cat <<EOF >/etc/systemd/system/wmp-sample-memory.timer.d/override.conf [Timer] OnCalendar= OnCalendar=*:0/30 EOF # systemctl daemon-reload
(以前の定義されたOnCalendar=設定を削除するには、最初のOnCalendar=行が重要です。)
メモリ消費量を確認するには、システムログでwmp_memory_current
で書き込まれた行を確認します。
root #
grep
wmp_memory_current /var/log/messages ... 2020-09-14T12:02:40.337266+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294059008 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499219968 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8364032 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1863335936 memory.swap.current=0 2020-09-14T12:03:00.767838+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294022144 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499473920 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8364032 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1862586368 memory.swap.current=0 2020-09-14T12:04:00.337315+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294022144 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499207680 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8355840 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1862746112 memory.swap.current=0 ...
ここによりよい印象を与える再フォーマットされたログ行があります。
2020-09-14T12:02:40.337266+02:00 server-03 wmp_memory_current: SAP.slice : memory.low=21474836480 memory.current=2294059008 memory.swap.current=0 , user.slice : memory.low=0 memory.current=5499219968 memory.swap.current=0 , init.scope : memory.low=0 memory.current=8364032 memory.swap.current=0 , system.slice : memory.low=0 memory.current=1863335936 memory.swap.current=0
/sys/fs/cgroup/
のすぐ下のcgroupごとに、コンマ区切りのブロックが1つ存在します。通常のシステムでは、少なくともuser.slice
、system.slice
、およびinit.scope
を見つける必要があります。WMPはSAP.slice
を追加します。
各ブロックには、memory.low
とmemory.current
の現在の値、およびこのcgroup内プロセスの物理メモリに現在割り当てられている量に関する情報が含まれています。
セットアップ中にスワップアカウンティング(swapaccount=1
)を有効にした場合は、cgroupのスワップアウトされたメモリ容量である、memory.swap.current
もあります。
すべての値はバイト単位です。8.3.3.1項 「ワークロードメモリ保護の準備」のステップ 6を参照してください。
テーブルまたはCSVとして情報を出力するスクリプトは次の場所にあります。https://github.com/scmschmidt/wmp_log_extract
メモリ消費量およびスワッピングの監視(8.3.6項 「メモリ使用量の監視」を参照)のほか、すべてのSAPインスタンスプロセスがSAP.slice
の下のスコープ内であることも定期的に確認する必要があります。
これを行うには、systemd-cgls
を実行し、各インスタンスプロセスを確認します。
例:
root #
systemd-cgls
-a /sys/fs/cgroup/SAP.slice Directory /sys/fs/cgroup/SAP.slice: |-wmp-rd91fd6b3ca0d4c1183659ef4f9a092fa.scope | |-3349 sapstart pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er | `-3375 er.sapHA0_ERS10 pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er N... |-wmp-r360ebfe09bcd4df4873ef69898576199.scope | |-3572 sapstart pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci | |-3624 dw.sapHA0_D01 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_D01_sapha0ci ...
より簡単なテストで、システムで使用されるすべてのSID
に対するcgroupを含むすべてのプロセスを一覧表示します。
例:
tux >
ps
-eo user,pid,cgroup:60,args |grep
-e [h]a0adm ha0adm 2062 0::/user.slice/user-1001.slice/user@1001.service/init.scope /usr/lib/systemd/systemd --user ha0adm 2065 0::/user.slice/user-1001.slice/user@1001.service/init.scope (sd-pam) ha0adm 3081 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope sapstart pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as ha0adm 3133 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope ms.sapHA0_ASCS00 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as ha0adm 3134 0::/SAP.slice/wmp-r73c594e050904c9c922a312dd9a28fd4.scope en.sapHA0_ASCS00 pf=/usr/sap/HA0/SYS/profile/HA0_ASCS00_sapha0as ha0adm 3327 0::/SAP.slice/wmp-ra42489517eb846c282c57681e627a496.scope sapstart pf=/usr/sap/HA0/ERS10/profile/HA0_ERS10_sapha0er ...
sapstartsrv
を除くすべてのインスタンスプロセスは0::/SAP.slice/
の下のスコープ内にある必要があります。
正しいセットアップを確認するには、wmp-check
ツールを使用します。詳しくは「8.3.3.2項 「再起動と確認」」を参照してください。
SAPシステムを完全に停止します。sapinit.service
を停止する必要がありますが、有効なままにしておくことができます。すべてのSAPプロセスを終了する必要があります。
設定MemoryLow
などのSAP.slice
に行われた変更をすべて削除します。
root #
systemctl
revert SAP.slice
次のようにパッケージsapwmpを削除します。
root #
zypper
remove sapwmp
このステップはオプションです。パッケージは影響を及ぼすことなくシステムにとどまることができます。
/etc/default/grub
のGRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT
からsystemd.unified_cgroup_hierarchy=true
を削除します。
このステップはオプションです。WMPを使用せずにcgroup2を保持できます。
GRUB2の設定を再書き込みします。
root #
grub2-mkconfig
-o /boot/grub2/grub.cfg
次のブート後に、システムはハイブリッドcgroup階層に戻されます。
各SAPインスタンスプロファイル(通常は/usr/sap/SID/SYS/profile/
にある)からsapwmp-captureを呼び出す行を削除します。
Execute_20 = local /usr/lib/sapwmp/sapwmp-capture -a
インスタンスプロファイルを編集する前に、バックアップを作成してください! プロファイルのエラーはSAPシステムの起動を妨げる可能性があります!
SAP GUI (トランザクションRZ11)によって管理するためにデータベースにプロファイルをインポートしていない場合「にのみ」インスタンスプロファイルを直接編集します。これらのプロファイルをインポートしている場合は、SAP GUIを使用して、行を追加してください。ファイルシステムにあるプロファイルファイルは上書きされ、手動の変更は失われます。
システムを再起動して、SAPシステムが正常に起動されていることを確認します。