SUSE Edgeドキュメント #
『SUSE Edgeドキュメント』をお読みいただきありがとうございます。このドキュメントには、クイックスタートガイド、検証済みの設計、コンポーネントの使用に関するガイダンス、サードパーティ統合、エッジコンピューティングインフラストラクチャとワークロードを管理するためのベストプラクティスが記載されています。
1 SUSE Edgeとは #
SUSE Edgeは、インフラストラクチャとクラウドネイティブなアプリケーションをエッジにデプロイするという独自の課題に対処することに特化した、緊密に統合されて包括的に検証されたエンドツーエンドのソリューションです。SUSE Edgeが重点を置いているのは、独創的でありながら高い柔軟性とスケーラビリティを持つセキュアなプラットフォームを提供し、初期デプロイメントイメージの構築からノードのプロビジョニングとオンボーディング、アプリケーションのデプロイメント、可観測性、ライフサイクル全体の運用にまで対応することです。このプラットフォームは、最良のオープンソースソフトウェアに基づいてゼロから構築されており、SUSEが持つ、30年にわたってセキュアで安定した定評あるSUSE Linuxプラットフォームを提供してきた歴史と、Rancherポートフォリオによって拡張性に優れ機能豊富なKubernetes管理を提供してきた経験の両方に合致するものです。SUSE Edgeは、これらの機能の上に構築されており、小売、医療、輸送、物流、通信、スマート製造、産業用IoTなど、さまざまな市場セグメントに対応できる機能を提供します。
2 設計理念 #
このソリューションは、顧客の要件や期待はさまざまであるため「万能」なエッジプラットフォームは存在しないという考え方に基づいて設計されています。エッジデプロイメントにより、実に困難な問題を解決し、継続的に進化させることが要求されます。たとえば、大規模なスケーラビリティ、ネットワークの可用性の制限、物理的なスペースの制約、新たなセキュリティの脅威と攻撃ベクトル、ハードウェアアーキテクチャとシステムリソースのバリエーション、レガシインフラストラクチャやレガシアプリケーションのデプロイとインタフェースの要件、耐用年数を延長している顧客ソリューションといった課題があります。こうした課題の多くは、従来の考え方(たとえば、データセンター内やパブリッククラウドへのインフラストラクチャやアプリケーションのデプロイメント)とは異なるため、はるかに細かく設計を検討し、一般的な前提の多くを再検討する必要があります。
たとえば、SUSEはミニマリズム、モジュール性、操作のしやすさに価値を見出しています。システムは複雑化するほど故障しやすくなるため、エッジ環境ではミニマリズムが重要です。数百、数十万カ所に及ぶとなると、複雑なシステムは複雑な故障が発生します。また、SUSEのソリューションはモジュール性を備えているため、ユーザの選択肢を増やしながら、デプロイしたプラットフォームが不必要に複雑になることを解消できます。さらに、ミニマリズムおよびモジュール性と、操作のしやすさとのバランスを取ることも必要です。人間はプロセスを何千回も繰り返すとミスを犯す可能性があるため、プラットフォーム側で潜在的なミスを確実に回復し、技術者が現場に出向かなくても済むようにすると同時に、一貫性と標準化を実現するよう努める必要もあります。
3 どのクイックスタートを使用すべきか #
動作環境とライフサイクル要件はさまざまであるため、SUSEでは、SUSE Edgeを運用する市場セグメントやユースケースに大まかに一致する別個のデプロイメントパターンを多数サポートしています。また、これらの各デプロイメントパターンに対応するクイックスタートガイドを作成し、ユーザのニーズに基づいてSUSE Edgeプラットフォームに習熟できるようにしています。以下に、現在サポートされている3つのデプロイメントパターンを、各クイックスタートのページへのリンクと併せて説明します。
3.1 ダイレクトネットワークプロビジョニング #
ダイレクトネットワークプロビジョニングでは、デプロイ先のハードウェアの詳細がわかっている場合に、アウトオブバンド管理インタフェースに直接アクセスして、プロビジョニングプロセス全体をオーケストレーションして自動化します。このシナリオで顧客が期待するソリューションとは、エッジサイトを一元的な場所から完全に自動化してプロビジョニングすることができ、ブートイメージの作成をはるかに上回る機能を備えていて、エッジロケーションでの手動操作を最小限に抑えられるソリューションです。つまり、ラックに搭載して電源をオンにし、必要なネットワークを物理ハードウェアに接続するだけで、自動化プロセスによってアウトオブバンド管理(Redfish APIなど)を介してマシンの電源が投入され、ユーザの介入なしにインフラストラクチャのプロビジョニング、オンボーディング、デプロイメントが処理されるソリューションです。これが機能するための鍵は、管理者がシステムを把握している、つまりどのハードウェアがどこにあるかを管理者が把握していることと、デプロイメントが中央で処理されることが想定されていることです。
このソリューションは最も堅牢です。管理者がハードウェアの管理インタフェースを直接操作して既知のハードウェアを扱うことに加え、ネットワークの利用可否に対する制約が少ないためです。機能面では、このソリューションは、Cluster APIとMetal3を広範に使用して、ベアメタルからオペレーティングシステム、Kubernetes、階層化アプリケーションまでを自動プロビジョニングし、デプロイメント後にSUSE Edgeの他の一般的なライフサイクル管理機能にリンクする機能を提供します。このソリューションのクイックスタートについては、第1章 「Metal3を使用したBMCの自動デプロイメント」を参照してください。
3.2 「Phone Home」ネットワークプロビジョニング #
場合によっては、中央管理クラスタでハードウェアを直接管理できない環境で運用することがあります(たとえば、リモートネットワークがファイアウォールの背後にある場合や、アウトオブバンド管理インタフェースがない場合などがあり、エッジでよく見られる「PC」タイプのハードウェアで一般的です)。このシナリオの場合のために、SUSEでは、ハードウェアのブートストラップ時にその配置先がわかっていなくても、クラスタとそのワークロードをリモートでプロビジョニングできるツールを提供しています。エッジコンピューティングについて考える場合、ほとんどの人はこう考えます。エッジコンピューティングとは、不明な部分がある数千あるいは数万台のシステムがエッジロケーションで起動し、安全にPhone Home通信を行い、そのシステムの身元を検証し、実行すべき処理についての指示を受信することです。ここで要件として期待されるのは、工場でマシンを事前イメージングしたり、USBなどでブートイメージをアタッチしたりする以外には、ユーザがほとんど介入しなくてもプロビジョニングとライフサイクル管理ができることです。この領域での主な課題は、こうしたデバイスの規模、一貫性、セキュリティ、ライフサイクルに対処することです。
このソリューションでは、非常に柔軟で一貫性のある方法でシステムをプロビジョニングおよびオンボーディングできます。システムの場所、タイプや仕様、初回電源投入日時などは問いません。SUSE Edgeでは、Edge Image Builderを使用してシステムを非常に柔軟にカスタマイズできます。また、ノードのオンボーディングとKubernetesのプロビジョニングにはRancherのElementalが提供する登録機能を活用するとともに、オペレーティングシステムへのパッチの適用にはSUSE Managerを活用します。このソリューションのクイックスタートについては、第2章 「Elementalを使用したリモートホストのオンボーディング」を参照してください。
3.3 イメージベースのプロビジョニング #
スタンドアロン環境、エアギャップ環境、またはネットワークが制限された環境で運用する必要があるお客様向けに、SUSE Edgeでは、必要なデプロイメントアーティファクトがすべて含まれる、完全にカスタマイズされたインストールメディアを生成できるソリューションを提供しています。これにより、シングルノードとマルチノード両方の高可用性Kubernetesクラスタを、必要なワークロードと追加の階層化コンポーネントを含めてエッジに設定できます。これはすべて、外部とのネットワーク接続や集中管理プラットフォームの介入なしに行うことができます。ユーザエクスペリエンスは、インストールメディアをターゲットシステムに提供するという点では「Phone Home」ソリューションによく似ていますが、このソリューションは「インプレースでブートストラップ」する点が異なります。このシナリオでは、生成されたクラスタをRancherに接続して継続的に管理する(つまり、大幅な再設定や再デプロイメントなしに、「非接続」動作モードから「接続」動作モードに移行する)ことも、分離した状態のまま動作を続行することもできます。どちらの場合も、一貫した同じメカニズムを適用してライフサイクル操作を自動化できることに注意してください。
さらに、このソリューションを使用すると、「ダイレクトネットワークプロビジョニング」モデルと「Phone Homeネットワークプロビジョニング」モデルの両方をサポートする集中型インフラストラクチャをホストできる管理クラスタを迅速に作成することもできます。この方法では、あらゆるタイプのエッジインフラストラクチャを最も迅速・簡単にプロビジョニングできます。このソリューションでは、SUSE Edge Image Builderの機能を多用して、完全にカスタマイズされた無人インストールメディアを作成します。クイックスタートについては、第3章 「Edge Image Builderを使用したスタンドアロンクラスタ」を参照してください。
4 SUSE Edgeで使用されるコンポーネント #
SUSE Edgeは、SUSEの既存コンポーネント(LinuxチームとRancherチームが構築したコンポーネントを含む)と、SUSEがインフラストラクチャの要件と複雑さの両方に対処できるようにするためにEdgeチームが構築した追加機能とコンポーネントの両方で構成されています。コンポーネントのリスト、各コンポーネントの概要説明へのリンク、およびSUSE Edgeでの用途については、以下を参照してください。
Rancher (第4章 「Rancher」)
Rancher Dashboard拡張機能(第5章 「Rancher Dashboard拡張機能」)
Fleet (第6章 「Fleet」)
SLE Micro (第7章 「SLE Micro」)
Metal³ (第8章 「Metal3」)
Edge Image Builder (第9章 「Edge Image Builder」)
NetworkManager Configurator (第10章 「Edgeネットワーキング」)
Elemental (第11章 「Elemental」)
Akri (第12章 「Akri」)
K3s (第13章 「K3s」)
RKE2 (第14章 「RKE2」)
Longhorn (第15章 「Longhorn」)
NeuVector (第16章 「NeuVector」)
MetalLB (第17章 「MetalLB」)
KubeVirt (第18章 「Edge Virtualization」)