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適用先 SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 SP5

5 クラスタアップグレードとソフトウェアパッケージの更新

概要

この章では、次の2つの異なるシナリオ(SUSE Linux Enterprise High Availability Extensionの別バージョン(メジャーリリースまたはサービスパック)へのクラスタアップグレード、およびクラスタノード上の各パッケージの更新)について説明します。5.2項 「最新の製品バージョンへのクラスタアップグレード」および5.3項 「クラスタノード上のソフトウェアパッケージの更新」を参照してください。

クラスタをアップグレードする場合、アップグレードを開始する前に、5.2.1項 「SLE HAおよびSLE HA Geoでサポートされるアップグレードパス」および5.2.2項 「アップグレード前に必要な準備」を確認してください。

5.1 用語集

次に、この章で使用される最も重要な用語の定義を示します。

メジャーリリース, 一般出荷(GA)バージョン

SUSE Linux Enterprise (または任意のソフトウェア製品)のメジャーリリースとは、新しい機能やツールを導入する、非推奨になっていたコンポーネントを削除する、後方互換性のない変更が存在する、などの特徴を持った新バージョンです。

オフラインマイグレーション

新しい製品バージョンに後方互換性のない大幅な変更が含まれる場合、クラスタをオフラインマイグレーションでアップグレードする必要があります。つまり、すべてのノードをオフラインにしてクラスタ全体をアップグレードしてから、すべてのノードをオンラインに戻す必要があります。

ローリングアップグレード

ローリングアップグレードでは、一度に1つずつクラスタノードをアップグレードし、残りのクラスタは実行中のままにします。つまり、最初のノードをオフラインにしてアップグレードし、オンラインに戻してクラスタに参加させます。その後、すべてのクラスタノードがメジャーバージョンにアップグレードされるまで、1つずつアップグレードを続けます。

サービスパック(SP)

複数のパッチを組み合わせて、インストールまたは展開しやすい形式にします。サービスパックには番号が付けられ、通常、プログラムのセキュリティ修正、更新、アップグレード、または拡張機能が含まれます。

アップデート

パッケージの新しいマイナーバージョンのインストール。

アップグレード

パッケージまたは配布の新しい主要バージョンのインストール。これにより新機能がもたらされます。オフラインマイグレーションおよびローリングアップグレードも参照してください。

5.2 最新の製品バージョンへのクラスタアップグレード

サポートされるアップグレードパスおよびアップグレードの実行方法は、現在の製品バージョンおよび移行したいターゲットバージョンの両方によって異なります。

  • ローリングアップグレードは、製品バージョンのGAから次のサービスパックまで、および1つのサービスパックから次のサービスパックまでの間でのみサポートされます。

  • あるメジャーバージョンから次のメジャーバージョン(たとえば、SLE HA11からSLE HA 12など)、または特定のメジャーバージョンに属するサービスパックから次のメジャーバージョン(たとえば、SLE HA 11SP3からSLE HA 12)へアップグレードするには、オフラインマイグレーションが必要です。

基本システム(SUSE Linux Enterprise Server)のアップグレードの詳細については、アップグレードするターゲットバージョンの『SUSE Linux Enterprise Server導入ガイド』を参照してください。このガイドはhttps://documentation.suse.com/#sles/で入手できます。

5.2.1項は、SLE HA (Geo)でサポートされているアップグレードパスの概要、および参照する追加のマニュアルを示しています。

重要
重要: 混合クラスタおよびアップグレード後に元に戻す操作はサポートされない
  • SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 11/SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12で実行する混合クラスタはサポートされていません。

  • 製品バージョン12へのアップグレードプロセス後に、製品バージョン11に戻す処理は、サポートされていません。

5.2.1 SLE HAおよびSLE HA Geoでサポートされるアップグレードパス

アップグレード元とアップグレード先

アップグレードパス

詳細情報の参照先

SLE HA 11 SP3からSLE HA (Geo) 12

オフラインマイグレーション

  • 基本システム: 『SUSE Linux Enterprise Server 12導入ガイド』の「Updating and Upgrading SUSE Linux Enterprise」のパート

  • SLE HA: クラスタ全体のオフラインマイグレーション

  • SLE HA Geo: 『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 Geo Clustering Quick Start』の「Upgrading from SLE HA (Geo) 11 SP3 to SLE HA Geo 12」の項

SLE HA (Geo) 11 SP4からSLE HA (Geo) 12 SP1

オフラインマイグレーション

  • 基本システム: 『SUSE Linux Enterprise Server 12 SP1導入ガイド』の「Updating and Upgrading SUSE Linux Enterprise」のパート

  • SLE HA: クラスタ全体のオフラインマイグレーション

  • SLE HA Geo: 『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 SP1 Geo Clustering Quick Start』の「Upgrading to the Latest Product Version」の項

SLE HA (Geo) 12からSLE HA (Geo) 12 SP1

ローリングアップグレード

  • 基本システム: 『SUSE Linux Enterprise Server 12 SP1導入ガイド』の「Updating and Upgrading SUSE Linux Enterprise」のパート

  • SLE HA: クラスタ全体のローリングアップグレードの実行

  • SLE HA Geo: 『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 SP1 Geo Clustering Quick Start』の「Upgrading to the Latest Product Version」の項

SLE HA (Geo) 12 SP1からSLE HA (Geo) 12 SP2

ローリングアップグレード

SLE HA (Geo) 12 SP2からSLE HA (Geo) 12 SP3

ローリングアップグレード

  • 基本システム: 『SUSE Linux Enterprise Server 12 SP3導入ガイド』の「Updating and Upgrading SUSE Linux Enterprise」のパート

  • SLE HA: クラスタ全体のローリングアップグレードの実行

  • SLE HA Geo: 『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 SP3 Geo Clustering Guide』の「Upgrading to the Latest Product Version」の項

SLE HA (Geo) 12 SP3からSLE HA (Geo) 12 SP4

ローリングアップグレード

  • 基本システム: 『SUSE Linux Enterprise Server 12 SP4導入ガイド』の「Updating and Upgrading SUSE Linux Enterprise」のパート

  • SLE HA: クラスタ全体のローリングアップグレードの実行

  • SLE HA Geo: 『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 SP4 Geo Clustering Guide』の「Upgrading to the Latest Product Version」の項

SLE HA (Geo) 12 SP4からSLE HA (Geo) 12 SP5

ローリングアップグレード

  • 基本システム: 『SUSE Linux Enterprise Server 12 SP5導入ガイド』の「Updating and Upgrading SUSE Linux Enterprise」のパート

  • SLE HA: クラスタ全体のローリングアップグレードの実行

  • SLE HA Geo: 『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12 SP5 Geo Clustering Guide』の「Upgrading to the Latest Product Version」の項

詳細情報の参照先」の列に示すマニュアルはすべてhttps://documentation.suse.comで入手できます。

5.2.2 アップグレード前に必要な準備

バックアップ

システムバックアップが最新で、復元可能かどうかを確認します。

テスト

運用環境で実行する前に、まず、クラスタセットアップのステージングインスタンスでアップグレード手順をテストします。

これにより、メンテナンス期間に要するタイムフレームを予測できます。発生する可能性のある予期しない問題を検出し、解決するのにも役立ちます。

5.2.3 オフラインマイグレーション

この項は次のシナリオに適用されます。

  • SLE HA 11 SP3からSLE HA 12へのアップグレード

  • SLE HA 12 SP4からSLE HA 11 SP1へのアップグレード

クラスタがまだこれらより古い製品バージョンに基づいている場合は、まず、必要なターゲットバージョンにアップグレードするためのソースとして使用できるバージョンのSUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionにクラスタをアップグレードします。

High Availability Extension 12クラスタスタックでは、さまざまなコンポーネントに大幅な変更が導入されています(たとえば、/etc/corosync/corosync.conf、OCFS2のディスクフォーマットなど)。したがって、SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 11バージョンからのローリングアップグレードはサポートされません。代わりに、手順5.1「クラスタ全体のオフラインマイグレーション」で説明されているように、すべてのクラスタノードをオフラインにしてから、クラスタ全体を移行する必要があります。

手順 5.1: クラスタ全体のオフラインマイグレーション
  1. 各クラスタノードにログインし、次のコマンドを使用してクラスタスタックを停止します。

    root # rcopenais stop
  2. クラスタノードごとに、目的のターゲットバージョンのSUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionへのアップグレードを実行します。すでにGeoクラスタがセットアップされている場合、そのGeoクラスタをアップグレードするには、『Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension Geo Clustering Quick Start』に記載されている追加の指示を参照してください。個々のアップグレードプロセスの詳細を確認するには、5.2.1項 「SLE HAおよびSLE HA Geoでサポートされるアップグレードパス」を参照してください。

  3. アップグレードプロセスが完了した後で、SUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionのアップグレード済みバージョンがインストールされた各ノードを再起動します。

  4. クラスタセットアップでOCFS2を使用する場合は、次のコマンドを実行して、オンデバイス構造をアップデートします。

    root # o2cluster --update PATH_TO_DEVICE

    SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 12および12 SPxに付属しているアップデートされたOCFS12バージョンで必要とされるディスクに、パラメータが追加されます。

  5. Corosyncバージョン2の/etc/corosync/corosync.confをアップデートするには:

    1. 1つのノードにログインして、YaSTクラスタモジュールを起動します。

    2. 通信チャネルカテゴリに切り替えて、新しいパラメータ(クラスタ名および期待する得票数)の値を入力します。詳細については、手順4.1「最初の通信チャネルの定義(マルチキャスト)」または手順4.2「最初の通信チャネルの定義(ユニキャスト)」をそれぞれ参照してください。

      Corosyncバージョン2で無効になっていたり、見つからない他のオプションをYaSTが検出する場合、変更を求めるプロンプトが表示されます。

    3. YaSTで変更内容を確認します。YaSTが変更を/etc/corosync/corosync.confに書き込みます。

    4. クラスタに対してCsync2が設定されている場合は、次のコマンドを使用して、アップデートされたCorosync設定を他のクラスタノードにプッシュします。

      root # csync2 -xv

      Csync2の詳細については、4.5項 「すべてのノードへの設定の転送」を参照してください。

      または、/etc/corosync/corosync.confをすべてのクラスタノードに手動でコピーして、更新されたCorosync設定の同期を取ります。

  6. 各ノードにログインして、次のコマンドを使用してクラスタスタックを起動します。

    root # systemctl start pacemaker
  7. crm statusまたはHawk2を使用してクラスタの状態を確認します。

  8. ブート時に起動するように以下のサービスを設定します。

    root # systemctl enable pacemaker
    root # systemctl enable hawk
    root # systemctl enable sbd
注記
注記: CIB構文バージョンのアップグレード

リソースをグループ化するタグと一部のACLの機能は、pacemaker-2.0以上のCIB構文バージョンでのみ動作します(現在のバージョンを確認するには、cibadmin -Q |grep validate-withコマンドを使用します)。SUSE Linux Enterprise High Availability Extension 11 SPxからアップグレードした場合、デフォルトではCIBバージョンがアップグレード「されません」。最新のCIBバージョンに手動でアップグレードするには、以下のコマンドのいずれかを使用します:

root # cibadmin --upgrade --force

または

root # crm configure upgrade force

5.2.4 ローリングアップグレード

この項は次のシナリオに適用されます。

  • SLE HA 12からSLE HA 12 SP1へのアップグレード

  • SLE HA 12 SP1からSLE HA 12 SP2へのアップグレード

  • SLE HA (Geo) 12 SP2からSLE HA (Geo) 12 SP3へのアップグレード

  • SLE HA (Geo) 12 SP3からSLE HA (Geo) 12 SP4へのアップグレード

  • SLE HA (Geo) 12 SP4からSLE HA (Geo) 12 SP5へのアップグレード

警告
警告: アクティブなクラスタスタック

ノードのアップグレードを開始する前に、「そのノード上の」クラスタスタックを「停止」します。

ソフトウェアの更新中にノード上のクラスタリソースマネージャがアクティブな場合、アクティブノードのフェンシングのような予期しない結果を招く場合があります。

手順 5.2: クラスタ全体のローリングアップグレードの実行
  1. アップグレードするノードでrootとしてログインし、クラスタスタックを停止します。

    root # systemctl stop pacemaker
  2. 目的のターゲットバージョンのSUSE Linux Enterprise ServerおよびSUSE Linux Enterprise High Availability Extensionへのアップグレードを実行します。個々のアップグレードプロセスの詳細を確認するには、5.2.1項 「SLE HAおよびSLE HA Geoでサポートされるアップグレードパス」を参照してください。

  3. アップグレードしたノードでクラスタスタックを再起動して、ノードをクラスタに再加入させます。

    root # systemctl start pacemaker
  4. 次のノードをオフラインにし、そのノードに関して手順を繰り返します。

  5. crm statusまたはHawk2を使用してクラスタの状態を確認します。

重要
重要: ローリングアップグレードの時間制限

最新の製品バージョンに装備されている新機能は、「すべての」クラスタノードが最新の製品バージョンにアップグレードされた後でないと使用できません。混合バージョンのクラスタは、ローリングアップグレード中の短いタイムフレームでのみサポートされます。ローリングアップグレードは1週間以内に完了してください。

クラスタノードに異なるCRMバージョンが検出される場合、Hawk2の状態画面に警告も表示されます。

5.3 クラスタノード上のソフトウェアパッケージの更新

警告
警告: アクティブなクラスタスタック

ノードの更新を開始する前に、クラスタスタックが影響を受けるか否かによって、「そのノード上の」クラスタスタックを「停止」するか、「ノードを保守モード」にします。詳細については、ステップ 1を参照してください。

ソフトウェアの更新中にノード上のクラスタリソースマネージャがアクティブな場合、アクティブノードのフェンシングのような予期しない結果を招く場合があります。

  1. ノード上にパッケージ更新をインストールする前に、次の内容を確認してください。

    • その更新は、SUSE Linux Enterprise High Availability ExtensionまたはGeo Clustering Extensionに属するパッケージに影響しますか。影響する場合は、ソフトウェアの更新を開始する前に、ノード上でクラスタスタックを停止します。

      root # systemctl stop pacemaker
    • パッケージ更新には再起動が必要ですか。必要な場合は、ソフトウェアの更新を開始する前に、ノード上でクラスタスタックを停止します。

      root # systemctl stop pacemaker
    • これらの状況のいずれにも該当しない場合は、クラスタスタックを停止する必要はありません。その場合は、ソフトウェアの更新を開始する前に、ノードを保守モードにします。

      root # crm node maintenance NODE_NAME

      保守モードの詳細については、16.2項 「保守タスクのためのさまざまなオプション」を参照してください。

  2. YaSTまたはZypperを使用してパッケージ更新をインストールします。

  3. 更新が正常にインストールされたら、次のいずれかを行います。

    • それぞれのノードでクラスタスタックを起動します(ステップ 1で停止した場合)。

      root # systemctl start pacemaker
    • または、ノードの保守フラグを削除して、ノードを通常モードに戻します。

      root # crm node ready NODE_NAME
  4. crm statusまたはHawk2を使用してクラスタの状態を確認します。

5.4 その他の情報

アップグレード先の製品の変更点と新機能の詳細については、それぞれのリリースノートを参照してください。リリースノートは、https://www.suse.com/releasenotes/で入手できます。

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